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経験5年の客先常駐型SEが専門技術を求めて転職 セキュリティベンチャーのフォティーンフォティ技術研究所へ
フォティーンフォティ技術研究所は2007年、米国・情報セキュリティ企業出身の2人の技術者を核に設立された。従業員数10人強と小粒ながらセキュリティ研究のスキルと実績は国内トップクラス。そんな同社で研究開発をするソフトウェアエンジニアの面接選考を紹介する。
(取材・文/須田忠博 総研スタッフ/高橋マサシ)作成日:08.09.25
C言語でのプログラミングスキルを明快に示して内定獲得
面接官:金居良治氏[取締役 技術担当] 転職者:永田哲也さん(当時29歳)[現・研究開発部ソフトウェアエンジニア]
面接突破のカギ!
1、C言語での開発力:経験年数相応のスキルレベルにあることを示す。
2、解決策を創出する力:自ら調べ考えて、問題解決をしてきた経験を説明する。
3、人物タイプ:守秘義務順守など、基本的に誠実な人間であることを見せる。
採用プロセス
社長、副社長(CTO)、技術担当取締役の計3人で選考する。
書類選考を行った役員3人が面接する。所要時間は約1時間。面接中に簡単なプログラミング実技試験も行う。
【通過率:約1割】
通常2日以内に連絡する。
※実際の面接は役員3人で行うが、ここでは技術担当取締役の金居氏に代表して面接官を務めていただいた。
募集職種 ソフトウェアエンジニア
仕事内容 セキュリティプロダクトの研究開発
募集資格 C、C++での1年以上相当のソフトウェア開発経験。
Windows(Win32 API)系、UNIX系、組み込み系での1年以上相当の開発経験。
フォティーンフォティ技術研究所の面接スタート!
Part1 経歴の概略、転職理由
客先常駐型SEとして2社を経験
金居:
 【Point1】永田さんは現在、開発を担当しているんですね?
永田:
 VC++でWindowsアプリを作っています。常駐先は損保会社です。今の会社へ転職してから3年間変わりません。
金居:
 以前の会社では逆に、さまざまな業種のさまざまなシステムにかかわっています。そのときも客先常駐だったのですか?
永田:
 はい、2次請け、3次請けでしたから。2年間、客先を転々としました。
金居:
 【Point2】今回、再び転職したいのはどうしてですか?
永田:
 現職の業務では技術的に同じような開発をすることが多くなり、そろそろ新しい技術を身につけねばと考えています。担当顧客が変わればと思うのですが、今のお客さんに気に入られていて離してくれないんですね。それで転職情報を調べたところ御社が目に留まりました。
 セキュリティに特化していることと請け負い開発ではないことに興味がわき、御社ならばかなり高度なセキュリティ技術を吸収できるだろうと考えて応募いたしました。
金居:
 これまでの仕事についてどんな感想をもっていますか?
永田:
 前職では何かについて深く学ぶことができませんでした。一方、今の会社は常駐先が一定して携わるシステム分野も固定的で、Windowsアプリの開発スキルはしっかり身につけられたと思っています。これを踏まえて高度な専門技術を獲得していきたいというのが現時点での感想です。
専門に特化した授業ではなかった大学時代
金居:
 わかりました。ところで、永田さんは情報通信工学科の出身。【Point3】いわゆるコンピュータサイエンスを勉強したんですか?
永田:
 近いのですが、それを専門にする学科ではありません。電気回路、電波、通信、コンピュータなどがごちゃまぜでした。
金居:
 電子回路、あるいはプログラミングはどうですか?
永田:
 電子回路は専門的でなく、プログラミングはPascalを少々。また、情報処理試験を受けるためにCASLを勉強した程度です。
Point1
[面接官]面接の出だしは雑談から入り、必ず答えられる大ざっぱな質問をいくつかします。応募者をリラックスさせるためです。
Point2
[面接官]この質問の狙いは、人物面をとらえることに比重を置いています。誠実なタイプかどうかなどを最初に見ておきたいのです。次に聞いた仕事の感想についても同様です。

[応募者]2度目の転職活動でしたから、面接で聞かれることはおおよそ想像がついていました。心掛けたのは、わかりやすく説明することと、前向きに考える自分自身を正直に出すことです。
Point3
[面接官]大学で教えるコンピュータサイエンスは基礎的なものですが、割としっかりしていて体系的。知識のベースがあるに越したことはありません。採用の審査には直接影響しませんが、一応確かめました。
Part2 経験技術、スキルのレベル
採用を左右するプログラミングの開発能力
金居:
 【Point4】技術経験の内容を詳しく伺います。この3年間、PC基盤システムの開発を担当しているとのことですが、具体的にはどんなことですか?
永田:
 お客さんのクライアントPCにはいろいろな作り込みのモジュールが入っているのですが、それの自動ログオンシステムや認証システム、各種インストーラーなどを開発してきました。
 直近のプロジェクトでは、クライアントの環境をアクティブディレクトリに移行させる一環として、これまでユーザーが共通で使ってきたデータファイルをユーザーごとに権限を分ける必要があり、ファイルのEFS暗号キーやACLアクセス権を入れ替えるシステムなどを開発しました。
金居:
 Windowsのインターフェイスにはいろいろな作り方があります。どんな作り方が多いですか?
永田:
 ユーザーに使ってもらうところは基本的にGUIですが、後はすべて窓なしです。
金居:
 採用の決め手【Point5】GUIアプリはどんな作り方を?
永田:
 ケース・バイ・ケースですが、ダイアログベースですとMFCが多いです。インストーラーのような処理画面ですと、Win32を直接使っています。
金居:
 ネットワーク関係のアプリを作ったことは?
永田:
 認証モジュールのソケットなどの保守はしたことがありますが、一から作った経験はありません。
金居:
 Windowsアプリに関しては、いろいろなものをいろいろな方法で作ってきたと?
永田:
 はい。多岐にわたっています。小さなモジュールを私一人で続けてきました。
金居:
 コードがまったくゼロの状態からスクラッチで完成までもっていく?
永田:
 はい。10年くらい前からずっと動いている基盤モジュールに関しては別ですけど。
金居:
 【Point6】スレッドプログラミングはしますか?
永田:
 GUIで何か重い処理をするときにワーカースレッドを作ったりしますが、スレッドをたくさん作ることはあまりしません。
金居:
 たくさんスレッドがある状態で同期して処理するとか排他するとか、そういう方法はわかりますか?
永田:
 クリティカルセクションやミューテックスについて理解はしています。
コアスキル周辺の知識の幅をチェックする
金居:
 【Point7】デバイスドライバやOSがどう動いて、何をしているのかはわかりますか?
永田:
 多少はわかりますが、プログラミングした経験がないので深い知識はありません。
金居:
 UNIXはどうですか?
永田:
 それほど得意ではありません。
金居:
 オペレーションは何となくできる?
永田:
 多少のコマンドは使えます。Red Hatをインストールして、ちょっとしたサーバを立てたことがあります。
金居:
 UNIXでプログラミングした経験は?
永田:
 サンプルをほんの数行、gccでコンパイルしたことがある程度です。
金居:
 【Point8】職務経歴書に記載したもの以外で何かソフトを作ったことはありますか?
永田:
 趣味で作ることがあります。簡単な便利ツールですね。
金居:
 ネットワークプロトコルの知識は? TCP/IPについてどこかで勉強しましたか?
永田:
 基本的な知識はありますが、仕事で必要なかったので詳しくはありません。
その場で行う実技テストの審査ポイントは2つ
金居:
 わかりました。それでは、採用の決め手【Point9】C言語の簡単なプログラミング実技テストをします。こちらに来てください。
・金居氏は永田さんに問題を出し、ホワイトボードに解答を書くよう求めた。
・永田さんは約10分で書き終えた。
・その答えに対して金居氏が、このプログラムのパフォーマンスを高めるにはどうすればよいかを尋ねた。
・永田さんは2つの方法を答えた。
Point4
[面接官]職務経歴書には書かれていない細かな点まで突っ込んで質問します。いうまでもなく技術レベルを判定するのが目的です。専門用語をどんどんぶつけていくと、知識の範囲もおおよそ推測できます。
Point5 決め手
[面接官]ここではGUIアプリの作り方について尋ねましたが、何か専門的なスキルの高さや知識の深さをチェックする場合には、こういう質問の仕方をします。永田さんのような答えが返ってくると、だいぶわかっていそうだなと安心できるんです。

[応募者]後から考えると、この答え方はわれながらうまかったと思いました(笑)。GUIの作り方についてきちんとした知識があることを伝えただけでなく、Win32のフルスクラッチで作れる技術力をアピールしたことになるからです。
Point6
[面接官]スレッドプログラミングは効率的な半面、使いこなすのが難しい手法です。実際に行っている人、これについての知識がある人は、プログラミングスキルが一定以上にあると判断できます。
Point7
[面接官]ここからの一連の質問は確認のためです。知識の幅はより広いほうがよいにせよ、すべてを知るエンジニアなどいません。例えば、永田さんならWindowsには詳しいけれどもUNIXは経験不足。しかし、それでも構いません。UNIXは入社後にマスターすればいいという考え方をします。
Point8
[面接官]たいていの応募者は、プライベートでのプログラミングについては何も書類に書いてきません。しかし、仕事であっても趣味であっても、プログラミングのスキルに変わりはないのです。ですからこの質問は割としますし、趣味でプログラミングをする人は、何かを作るのが根っから好きなタイプだと私は受け取ります。
Point9 決め手
[面接官]この実技テストで一定のレベルであることを示せなければ、ほかの審査項目がいくらよくても採用には至りません。テストの着目点は2つ。ひとつは、C言語のポインター機能を正しく扱えるか。もうひとつは、どのくらいのスピードで解答できるかです。

[応募者]面接の途中でいきなり実技テストだと言われて驚きました。しかし、問題は簡単で、ふだんC言語を使っていれば造作なく解答できます。
Part3 志向性、セキュリティ技術への関心度
セキュリティ技術への興味の度合い
金居:
 【Point10】当社には大きく、研究職的なリサーチャーとソフトウェアを作る開発者という2つの道があります。永田さんはどちらで進みたいですか?
永田:
 私は開発者を望んでいます。
金居:
 ウイルスの解析や脆弱性の脅威分析、ファイヤーウォールといったセキュリティ関係には本当に興味がありますか?
永田:
 ええ。興味は大いにあります。
金居:
 セキュリティ関係で何かを調べたことがあるとか、定期的に専門メディアを見ているなどは?
永田:
 【Point11】特に知識を増やすようなことは行っていませんが、業務を通じてセキュリティ技術にはその都度、好奇心をくすぐられます。例えば、暗号化のコア技術はどうなっているのかとか。
金居:
 バッファオーバーフローのような、脆弱性を突いて悪意ある行動が取れるのは、どんな仕組みによるものなのか。実際のところはわかりますか?
永田:
 多少はわかります。メモリのスタック上にデータを沢山もってきてリターンアドレスか何かを上書きすると、コードが実行されるといった仕組みではないでしょうか。
金居:
 まあ、そんな感じですね(笑)。
(このあと、金居氏は「人前での発表は好きか」「英語は話せるか」といった質問をし、永田さんのほうからの質問を受けた)
Point10
[面接官]当社は誕生して間もない会社です。社内業務が完全に分かれているわけではありません。どちらに軸足を置きたいと考えているのかを聞くことにしています。
Point11
[面接官]入社に当たって、セキュリティ技術への関心はこの程度で大丈夫です。独学に独学を重ねてきたとか、セミナーに通ったとか、そこまでの関心の高さは求めていません。興味は、入社してからどんどん高まるのが普通ですから。
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高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ 高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ
私はこういう技術特化型の元気なベンチャーが大好きなんです。しかも、「プログラミングの腕」を重視した採用なら尚更。最近はこんな企業が減ってきた気がしますので、勝手な願いですが、もっともっと誕生してほしいと思います。また、今回から画面デザインをリニューアルしました。いかがでしょうか? 次回は1カ月お休みさせていただき、11月下旬の掲載を予定しています。

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