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松下の名が消える日〜パナソニックを創る350人採用の全貌2
アジアの頭脳を結集!松下の「白物家電」欧州上陸作戦
松下=パナソニックの新たなグローバル戦略が動き出した。来年初頭にも、冷蔵庫、洗濯機を初めて欧州市場に投入し、パナソニックのグローバルブランドを、白物家電の分野でも確立する。「白物」の伝統を継承し、それを世界に発信するエンジニアが求められている。
(取材・文/広重隆樹 総研スタッフ/宮みゆき 撮影/濱野哲也)作成日:08.09.17

【Part1】白物家電の空白地帯、欧州への上陸作戦

欧州にパナソニックの洗濯機、冷蔵庫を!

 この10月に「パナソニック」を冠した名称に一斉に衣替えする松下電器グループ。これまでの国内向けブランド「ナショナル」も2009年度中にすべて「パナソニック」ブランドに統一される。その狙いは、社名とブランド名を一致させることで、グローバル市場での認知度を高め、海外売上を拡大することだ。

 洗濯機、冷蔵庫、エアコン、電子レンジといった、いわゆる「白物家電」を担当する松下ホームアプライアンス(HA)社の場合、海外製造・開発拠点は中国、アジアを中心に欧米を含めすでに34(※図1)もある。この20年で生産のグローバル化は進んだ。今や販売高は海外が52%と国内を上回り、従業員数も海外が国内の2.6倍である。中国、マレーシア、タイにはR&D拠点も置かれ、現地の技術者も育っている。

 急成長する中国などアジア諸国は主力の消費マーケットに変貌しつつある。アジアでも製品はすべてパナソニックブランドで展開しており、ユーザーの認知度は高い。今回の社名変更はこうした現実に合わせたものでもある。とはいえ、プラズマ・液晶テレビ、デジタルカメラなどのデジタル家電に比べると、白物家電には少々異なる事情がある。
「欧州にはエアコン、電子レンジなどは20年以上も前から参入しているが、洗濯機、冷蔵庫は全く入っていない。白物家電にとって欧州マーケットは“空白地帯”だった」というのは、HA社グローバルR&D強化担当の若林寿夫参事だ。

 空白の理由は、欧州には有力な家電メーカーがあり、アジアの生産拠点から大型の白物家電を輸出するのは、コスト的にも不利であることがまず挙げられる。それ以上に大きいのは、「白物家電は生活に密着した製品であり、地域や国ごとの生活習慣を知らなければ開発できない」(若林氏)というものだ。
 しかし、文化の違いを理由に市場参入を躊躇する時代は終わった。「これからのパナソニックは海外売上を伸ばさない限り、生き延びる道はない」(若林氏)ことは、社員の誰もが理解している。
「欧州にパナソニックの洗濯機、冷蔵庫を!」──今、HA社内では、欧州市場向け白物家電の開発が新たに始まっている。名づけて「欧州上陸プロジェクト」のスタートだ。

若林 寿夫氏

松下ホームアプライアンス社
技術本部 技術企画グループ
グローバルR&D強化担当

参事 若林 寿夫氏


飯森 信行氏

松下ホームアプライアンス社
技術本部 技術企画グループ
グローバルR&D強化担当

主幹技師 飯森 信行氏


図1 松下ホームアプライアンス社のグローバル製造・R&D拠点
2008年4月現在

図1 松下ホームアプライアンス社のグローバル製造・R&D拠点

環境技術とUD(ユニバーサル・デザイン)を強みに

 欧州の白物家電市場で松下は後発だ。製品としての強いインパクトがなければ、欧州のユーザーは新規参入者に見向きもしない。後発ならではの特徴とメリット、それは「環境技術とUD」である。
「欧州の家電製品には“エネルギースターマーク”などの環境ラベルがたいてい付いている。消費者はそのラベルの有無で製品を選ぶ傾向が強い」というのは、グローバルR&D担当の飯森信行主幹技師だ。

 環境技術については、松下には優れた技術がある。ヒートポンプ技術、断熱コア技術、創エネ技術、インバータ制御技術など。モノづくりの面においても、工場におけるCO2排出量は、グローバルレベルで2009年度までに23%(原単位06年度比)減らす。
 こうした取り組みは、エコ意識の高い欧州ユーザーに確実に訴求するだろう。それと共に重要なのが製品のデザインだ。
「欧州では冷蔵庫はインテリアの一つとしてとらえられている。フォルムや質感には、日本のユーザー以上に鋭敏。例えば、握りやすさと重厚感で知られるベンツのドアノブのような操作の感覚が商品に求められている。」(飯森氏)

 安全・安心・愛着をキーワードにしたUDは、創業者松下幸之助が75年前に開発した「丸山型こたつ」以来、松下のDNAになっているものだが、欧州の消費者にも独自のこだわりがある。プロダクト・デザイナーだけでなく、製品の機構設計者にも、そうしたデザインへの配慮がより強く求められるようになるだろう。


図2 松下が取り組む環境コア技術

図2 松下が取り組む環境コア技術

世界からのさまざまなニーズに応える家電づくりの面白さ

 欧州上陸プロジェクトのDデイ(市場投入日)は、09年初頭に設定されており、あと何カ月もない。開発のスピードはいやがうえにも速まらざるを得ない。欧州プロジェクトでは、松下社内だけでなく、中国や台湾、タイからも開発技術者を日本に集め、いわばアジア・オールスターズの力で欧州向け製品の開発にあたっている。白物のマザー工場であるHA社の草津拠点に集まったオールスターチームが設計を担当し、これを中国各地の工場で量産、欧州の販売代理店も総動員して、一刻も速い市場参入を果たす。

 欧州上陸第一陣の製品開発はすでに終盤に向かっているが、もちろん続く第二、第三の計画もある。
「将来的には欧州だけでなく、中南米、ロシアなど未踏のマーケットへも参入していかなくてはならない。そのためには、現有勢力では手いっぱい。技術者をキャリア採用で確保し、入り交じり(多様性)の効用も含め、これまでの白物家電の技術を継承発展させ、それをグローバルに展開してほしい」と、若林氏は、エンジニアのキャリア採用に期待する。

 今すぐにでも欲しい技術領域は、まず、エアコン、冷蔵庫などの熱流体機構にかかわる構造設計、熱力学、冷媒、ヒートポンプ、送風などの知見をもつ技術者だ。さらに、インバータなどパワーエレクトロニクスや制御系の技術、さらに真空断熱材などの材料技術についても経験者を求めている。
「白物家電の構造設計は独特のノウハウがあり、即戦力ということでいうなら、同業他社の技術者ということになる。ただ、制御やパワーエレクトロニクス関係は、自動車、ロボット、工作機械など前職の業界は問わず、その経験は十分に応用できる」(若林氏)。

 冷蔵庫や洗濯機は、開発途上国を除けば、世界のほとんどの家庭に普及している製品。国内のニーズもさまざまだが、グローバルレベルとなると、その多様性はさらに広くなる。そうしたニーズに応える面白さは、ほかの製品開発には見られないものだ。
「白物家電への顧客の反応はダイレクト。どんな製品にも必ずフィードバックがあり、そこから次の製品開発が始まる。私たちも、これまでは国内寄りだった視点をグローバルに転換する必要があり、試行錯誤は覚悟している。その苦労を、外部からのエンジニアと共に担っていきたい」と若林氏。
 その苦労の先に見えるのは、グローバル家電企業として、さらに一段と飛躍したパナソニックの姿だ。

若林 寿夫氏

【Part2】「入り交じり」のモノづくり。火花散らすようなコミュニケーションをしたい。

TFT、パネル、駆動など、応用できる技術を最大限活かす

松下ホームアプライアンス社
冷蔵庫ビジネスユニット
主任技師

樋上和也氏
大学(機械系)卒業後、1994年に、冷蔵庫や自販機などを製造する松下グループの松下冷機(2008年4月、松下電器産業に吸収合併)に入社。2007年後半より、冷蔵庫の欧州上陸プロジェクト商品開発機種リーダー。構造設計が専門業務。

 松下冷機入社以来、ずっと冷蔵庫を担当しています。2001年までは国内向け製品、その後、中国・無錫工場生産機種にかかわり、中国市場向け製品の開発を担当してきました。
 冷蔵庫は家庭になくてはならないものですが、その使い方や製品に求めるニーズというのは、世界中どこでも同じではありません。日本の冷蔵庫は、冷蔵室には両開きのドア、冷凍庫や野菜室は引き出し式のドアと、ドアがいくつもあるのが当たり前。ところがこんなに多機能なのは、むしろ日本市場だけの特徴なんですよ。

 欧州では二枚ドアのボトムフリーザと呼ばれる開きドアの冷蔵庫が一般的で、引き出しドアは非常に少ないですよ。自動製氷機能は日本では必須ですが、欧州製品にはほとんどついていません。中国市場の製品はどちらかというと欧州仕様に近い。ですからその経験は、今度の欧州上陸プロジェクトにも役立っています。
 こうした文化の異なる市場に、初めて製品を投入するときには、現地の人々の生活を具体的にイメージしなければなりません。例えば、どんな食品を冷蔵庫に入れるのかわからないければ、庫内トレイやドアポケットの一つさえ設計図を引けないわけです。

 欧州上陸の事前偵察ということで、最近、ドイツとイギリスに出張し、販売店を見学し、消費者のグループ・インタビューに立ち会ってきました。消費者の省エネ・環境意識の高さもよくわかり、勉強になりました。松下の省エネ技術をアピールし、「パナソニック」ブランドを欧州で確立するチャンスだと思いましたね。


腹を割った会話から、目指すものが見えてくる

 私のチームには中国、台湾からもエンジニアが参加しています。さらに松下グループ各ドメインのエンジニアもメンバーに加わり、欧州各国の販社の人とも随時連絡を取りながら、開発を進めています。社長自らがよく「入り交じり」という言葉を使うんですが、私のチームはさまざまな国籍の、多様な知識をもつ人が交わりながらモノづくりをしていますので、欧州プロジェクトはまさしく「入り交じり」ですね。

 入り交じりのプロジェクトでは、コミュニケーションが不可欠です。中国向けにかかわっていたときには、中国人のエンジニアと、ほんとに腹を割って話をするようにしていました。彼らが日本に来たときには、関西弁を教えたりしてね。一緒によく働き、よく飲み食いしながら、公私ともに仲良くなるということが、ワタシ流のチームマネジメントの秘訣です。メールだけじゃ伝わらない、ガチンコ勝負の人づき合い好きなんです。

 これはモノづくりの工程にも言えること。例えばデザイン部門と設計部門と工場部門。それぞれ立場が異なり、考え方も違います。ときには「もっと僕らが作りやすいようにデザインしてくれ」と文句を言うこともあります。まさに社内でせめぎ合いをするわけですが、そういう中から本当のコミュニケーションが生まれるんじゃないかな。

 キャリア採用のエンジニアに助けてもらうこともこれから増えると思いますが、彼らともそんな火花を散らすようなコミュニケーションをしたいですね。僕らは所詮松下流のモノづくりしか知らず、他社のことはわからない。悪いところは悪いとちゃんと指摘して欲しいんです。そういう意味で、新しい人たちが参加してくれることを、楽しみにしています。


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宮みゆき(総研スタッフ)からのメッセージ 宮みゆき(総研スタッフ)からのメッセージ
今回の取材で、中国マーケット向けの冷蔵庫を拝見。その一見シンプルな機能や、あきらかに日本では見かけないデザイン(花柄)が特徴的でした。世界各国のニーズや志向に合わせた白物家電を作っていくやりがいもハンパではないでしょうが、開発者メンバーがグローバルになっていくのも刺激的ですよね。日本発の白物家電が世界中で使われる日が楽しみです。

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