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“ヒーローエンジニア”を探せ!vol.18
アマゾンの新しいプラットフォームサービスを担うエンジニア
今なお拡大成長を続けるオンラインストアAmazon.co.jp。今回登場するのは、アマゾンのプラットフォーム上で「マーチャント@amazon.co.jp」という新しいサービスを手がけるエンジニアだ。
(取材・文/上阪徹 総研スタッフ/宮みゆき 撮影/栗原克己)作成日:08.09.11
“ヒーローエンジニア” アマゾン ジャパン株式会社 アマゾンサービス事業部 インテグレーション部 マネージャー 松原哲範さん
アマゾンの法人向け出店型サービス
 アマゾンには、例えばアパレルや雑貨などのメーカーが、アマゾンのプラットフォーム上でeコマースを行うことができるサービスがある。これが、アマゾンサービス事業部が担っているサービスのひとつ。アマゾン固有のAPIやファイル交換システム、Web上のユーザー・インタフェースを通じて、顧客となるメーカーや販売業者のビジネスをサポートしていく。
ニッチが一泡吹かせる、的なことが好き
 高校時代にマイコンをたくさん持っている友人がいまして。コンピュータと出合って、面白いなと思ったのがそのころ。それで大学に入ると、アルバイトで買ったパソコンを使って独学でプログラミングをするようになったんです。それこそBASICから始めてグラフィックソフトを作ったりして。もともと機械好きで、「こうすればこうなる」という世界が、ものすごく面白かった。

 就職活動の時期になって浮かんだのは、当時注目の的だったUNIXに思う存分触れる会社に行こうというもので(笑)。サン・マイクロシステムズはUNIXの専業メーカーでしたし、一人1台ワークステーションが使えると聞いて。当時、何百万円もしたマシンですから、その環境には本当に憧れました。

 実はもうひとつ、サンを選んだ理由がありました。当時は超大手企業が大量にSEを募集していたんですが、もともと主流というか、メインストリームに乗っかるのって、好きじゃなかったんです。それよりも、新しい会社というか、ニッチな存在が、メインストリームに一泡吹かせる、みたいなほうが好きで(笑)。そのほうが自分に合ってるんじゃないかと。実際のところ、たしかに合っていましたね(笑)。

 日本法人の社員番号は329番。サンは、まだまだ小さな会社でした。実際、最初の5年は「来年も、大丈夫か?」と思っていたくらい。ようやく「この会社は本当に大丈夫だ」と思えたのは、入社後10年過ぎてからですから。サンは独自性と先進性の強い会社だっただけに他社からのプレッシャーは激しかった。でも、そういう競争の真っ只中で仕事ができたのは、刺激的で面白かったですね。
最初の転職は思った以上に大変だった
 配属は社内情報システム部門だったんですが、これが幸運でした。通常の仕事は、アメリカで作ったシステムを日本に導入して、少し修正してテストしてサポートする、というのが一連の流れだったんです。ところが私は、「どうしてもこのリーガル要件を満たさないといけないのにアメリカ本社では作ってもらえない」とか「開発がビジネスの拡大に間に合わない」とか、つまり日本独自でまかなわないといけないシステムを多く担当したんです。しかも急成長中でしたから、要件定義から始まって、設計、開発、テスト、そして展開と一から十まで自分でやっていました。開発に使えるハードウェアやソフトウェアはすべてサンの製品が潤沢に使えて、しかも性能も日進月歩でよくなる時代でしたから、開発者には夢のような環境でしたね。

 当時、いつも頭にあったのは、仕事は常に楽しくなければいけない、ということ。そしてもうひとつが、新しいことにチャレンジすることでした。新しいツールキットに変えると開発は面倒になるんですが、ほんの少しでも取り入れて次の開発に挑んでみる。そういうことをよくやっていましたね。シリコンバレーでは、エンタープライズ・メッセージング・システムの開発チームで仕事をしました。業務アプリケーションをほとんど自前で作っていた会社でしたから、本社のエンジニアと一緒に開発に携われたのは、貴重な経験でした。その後は営業支援系、経理系のシステムが中心でしたが、ちょうど辞めるまでの数年間はEDIを担当しました。この経験が、後につながるんです。

 サンは大好きな会社でした。ところが時代の流れで、ITの間接部門はアウトソーシング化が進んでいくんですよね。もう37歳になっていました。考えが甘かったといえばそれまでですが、私としては承服しかねるものだった。それで、思い切って転職してみようと。サンから出て行ってエンジニアとしてやっていくとなると、マイクロソフトのテクノロジーを知らないわけにはいかないでしょう。それで、ならば思い切ってその中に入っちゃおうと思いまして(笑)。良いアイディアと思ったんですが、予想に反して最初の転職は思った以上に大変なものになったんです。

 マイクロソフトのテクノロジーもですが、職種もやったことのないテクニカルサポート。取引先をもつのも初めて。さらに会社の風土も大きく違うし、環境も違った。強い違和感を感じましたが、簡単に辞めるわけにはいかないとも思ったんです。ぎりぎりまで頑張って、自分なりに納得しないといけないと。後半はチームをリードする立場でもありましたし。それで約2年、何とか頑張り続けました。
このサービスを多くの出店者が待っていた
 アマゾンへの転職のときは、全然違う経験でしたね。転職も二度目になると見えない恐怖がなくなるんですよ。どんな変化が起きるか想像もできる。だから、二回目以降はラクチンなんです。この余裕が初回にも欲しかった(笑)。実はマイクロソフトを選んだときにも、アマゾンには興味があったんです。ただ、自分に合いそうな職種も思い当たらなかったし、なんだか秘密主義のような雰囲気があるじゃないですか(笑)。

 私自身、アマゾンのユーザーでしたので、パーソナライゼーションとか、レコメンデーションとか、やっぱり面白いと思いましたよね。アイデアも面白いけど、それをあのクオリティで実装しているのはすごいな、と。しかも、サイトだけではなく、配送というリアルにつながらないとサービスは実現しない。Webのシステムだけでなく、リアルも含めてのビジネスモデルが確立されている。そこがすごいな、と。しかもデータ量も膨大だろうし。何より、あのドットコムバブルを生き抜いたからには、技術以外の何かもあるんだろうな、と思っていました。実際、それは入社してからわかってくるわけですね。残念ながら詳しくは話せませんけど、これはやっぱり驚くべきものでした。

 そんなアマゾンだったんですが、たまたまEDIの関連職種を募集していたんです。あ、これなら経験があるぞ、と思って。ところが話を聞いてみると、これから募集をかける新しいビジネスを立ち上げる職種があるという。それが、インテグレーション担当でした。何もないところからのスタートで、企業間のBtoBの要素もある。これはいける、と思いました。ちょうど私が入る5年ほど前からアメリカでスタートしていて、日本への導入が待たれていたんです。実際、大勢の出店者さんがこのサービスを待たれていて。それこそ最初は本当に出店が多くて大変なことになるんですけど。
多くの人に喜んでもらえる、という面白さ
 出店者には、二つの商品の見せ方があります。ひとつはアイテム検索で個別の商品ページを探してもらう。もうひとつは、出品者専用ストアで、例えばブランドごとの商品ページを見せていく。これらはすべてアマゾンのシステムを使っていただくことで実現しているわけですね。当然、アマゾンのプラットフォームを使ってもらいますから、技術的な作業が発生します。そのサポートをさせていただくのが、私たちインテグレーション部の仕事です。小規模の出店者さんもあれば、出店に際してSIerが入ってくるような大手さんもあります。本や音楽CD、DVDを除くすべてのカテゴリーですから範囲も広いし、技術レベルも千差万別です。

 すでに開発された定形アプリケーションのインフラがあり、それを利用していただくのが基本ですが、インテグレーションの過程で「こんなことができたら」というニーズがあれば、グローバルの開発チームにフィードバックしていくのも重要な仕事になります。また、新しい機能やツールがどんどん出てきますから、それを新たに導入していく役割もあります。実際、リクエストしていた機能が一年後に組み込まれ始めたりする。システムの進化にグローバルの一員として参加できるという面白みもあるんです。開発者と直接、仕様に関して話をすることも日常茶飯事です。

 さらに、今はいろんな出店者さんと一緒にビジネスを進めていけることにも、面白さをたくさん感じていますよ。みなさん、お客さまのためにいいものを届けたいという強いスピリットがある。それを、一緒にアマゾン上で実現していくことができる。結果として、品揃えの拡大というお客さまにより大きなメリットをアマゾン上で提供できることになるわけです。実際、出店すると、あっという間にお客さまが来店されたりします。やっぱりすごいな、と思いましたね。その影響力の大きさは今も常に感じます。お客さまにも、出店者さんにも、さらにはアマゾンの成長にも貢献できている、というダイレクト感がある仕事なんです。

 しかも、これは経験のある人にはきっとわかってもらえると思いますが、会社と会社とのデータのやりとりって、実は技術的にもビジネス的にも、とても面白いんですよ。何気ない小さなフラグに深い意味が隠されていたりして。そういう実践的なノウハウを蓄積していけるというのも、エンジニアとして面白い経験を積んでいると思っています。
ヒーローの野望 新しいサービスをもっともっと日本に導入したい
 メーカーや販売会社が直接出店しやすい仕組みを作ることで、アマゾンの品揃えを充実させ、お客さまにより便利に使っていただく。そんなマーチャント@amazon.co.jpはまだ始まって2年目のサービスです。しかも、アメリカのアマゾンではほかにもいろんな新しい画期的なサービスが生まれているんですね。最近、Amazon.co.jpでもフルフィルメント by amazonという配送代行サービスを導入しました。そういう新しいサービスをもっともっと日本に導入して根付かせていく。それは、ものすごく醍醐味のある仕事になると思っています。

 また、アマゾンにお客さまが求めているものというのは、単にモノだけにはとどまりません。いろいろな展開があっていいと思うんです。とりわけ私もエンジニア出身ですから開発者向けのサービスをもっと早くに充実させられないか、と日々考えてます。これは、より技術っぽい仕事もしてみたい、という願望も込めて、なんですけど(笑)。

 アマゾンには、これからもまだまだいろんな可能性が秘められていると思っています。それは、エンジニアとしてやるべきことが、まだまだたくさんあることを意味しています。今のアマゾンのシステムも驚嘆すべきものだと思いつつ、もっとシンプルで手軽なものがもしかしたらできるんじゃないか。もっと簡単に多くの人が品物を売る仕組みが、モノに限らずいろいろなサービスが提供できる仕組みが、商品購入という側面にとらわれずにできるかもしれない。例えば、ソーシャルネットワークなど、さまざまなネットワークとの連携、なんてモデルもありうると思う。いろんな面白そうな取り組みに、たくさん挑んでいけそうな空気が実際にある会社なんですよね。それがアマゾンの、大きな魅力だと思っています。
ヒーローを支えるフィールド グローバルの各国は、チームでありライバル
 アマゾンに入社したばかりの頃、大学を卒業してから入ったサンの初期の頃を思い出したという。組織の若さ、社員のエネルギー、急成長のムード、みなぎる勢い……。久しぶりに味わったこうした感覚は、転職者としての松原さんには、かなり刺激的だったようである。しかも、アマゾンにはさまざまなストアの管理部門の存在など、IT系とは違う雰囲気を持った社員もいる。それがまた、新鮮だった。

 さらに松原さんにとって印象的だったのは、社員の一人ひとりに旺盛な独立心を感じたこと。会社に依存している様子があまりないのだ。ここにいる目的があり、ここにいる意味をしっかり見出しているように思えたという。実際、起業家になるために退職し、再び戻ってきて、再びの起業を目指している社員もいるらしい。こうした個性的で専門的なスキルを持つ社員の集まりだけに、ダイナミックで、スピーディーで、ユニークさが尊重される風土があるという。

 だが、少数精鋭でこれだけのビジネスを行っているだけに任される仕事は大きく、責任も重い。社長やVPとダイレクトにコミュニケーションを交わすことも多い。さらに世界でグローバルに展開しているアマゾンは、グローバルで協力をし合いながら大きな成長を目指している一方、各国でライバル心を持ちながら切磋琢磨しているのだという。グローバルチームの一員として、その発展に貢献するという役割に加え、イギリスやドイツと、より良いサービスの提供に向けて競い合っているというのである。

一丸となって協力しながら、一方で世界のエンジニアと競う。こうした刺激的な環境も、多くのエンジニアのモチベーションを支えている。しかも武器になるのはグローバルの巨大なエンジリアリングリソース。これも、みんなでさらに進化させていく。なるほど大きなことを、考えられるようになる会社だと感じた。
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宮みゆき(総研スタッフ)からのメッセージ 宮みゆき(総研スタッフ)からのメッセージ
事業も人員も拡大中のアマゾン ジャパン。1年前に取材でおじゃましたときに比べ、事務所の数も拡大していました。何フロアも見学させていただきましたが、各フロアで入り口のデザインや雰囲気が異なっていて楽しい! そして、アメリカのamazonで人気沸騰中だというダンボールロボット君に癒されてきました。勢いのある会社っていいですね。

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