自作・改造大好き！エンジニアの家電工作生活

自分の望みどおりの高い性能で、余計な機能がなく、しかもお値段は手ごろ……そんな夢のような家電を追い求めた結果、家電製品の自作に走ったことはありませんか？　今回は、家族や周囲の反応を省みず、究極の家電を自作するエンジニアたちの武勇伝を集めてみました。

（総研スタッフ／タニー只野　イラスト／おちゃずけ）作成日：08.09.02

　以前、編集部で「これがエンジニアのデフォルトだ!?」と題し、エンジニアにありがちな属性をレポートしたことがある。“エンジニアにあるがち”な属性の上位20位に挙げられたのは「電化製品はスペックにこだわる」「最新の電化製品に目がない」「電化製品が壊れるととりあえず分解する」「自作PCを組んだことがある」など、電化製品に関する項目がズラリ。
　それならば、自作PCだけでなく、家電の改造、自作まで突き進んでいるエンジニアも多いのではないだろうか。そこで今回、家庭で“モノづくり”に取り組んでいるエンジニア140人にアンケート調査を行い、自作家電の面白さについて聞いてみた。

　まずは、エンジニアの属性。職業柄ハード/メーカー系が多いかと思いきや、結果は、ソフト系（54％）、ハード/メーカー系（43％）、素材（3％）と、半々であった。ただ、機械や電子を学んだことのある人は多く、最終学歴で見ると、文系（23％）、理系（77％）と圧倒的に理系率が高い。
　では、なぜ家電の自作を始めたのか。自作に至ったきっかけを聞いてみたところ、「ついやってみたくて（29％）」が第一位に！　自作衝動に駆られたのがきっかけとは、さすがはエンジニアである。「自作の理由？そこに（欲しい）家電があるからさ」と言うことか。そして第二位に、「使っている家電のグレードアップ（22％）」、第三位に「欲しい製品が売っていなかった（19％）」が続いた。「販売されていないなら自分で作る」という、妥協を許さない製品へのこだわりが、自作の一番の原動力となっているようだ。

　続いて、自作した製品を聞いてみたところ、編集部も驚きの製品が続々と挙げられた。真空管アンプ、アクアリウム照明、オーディオ機器はもとより、車の速度計、気象観測機器、精米機など、一般家庭ではあまりお目にかかれない製品まで自作しているようだ。それでは、特に参考になる各製品の自作エピソードと周囲の反応をご紹介しよう。

買おうと思ったら異常に高く、会社に落ちている部品を寄せ集めたらできそうだった。熱感知センサをトイレに取り付けて、人の熱で点灯・熱がなくなって1分経過したら消灯するように遅延タイマーを仕込んだ。しかし、センサの応答度が季節や動きの速度で変わるので、ちょうどいいくらいに調整するのに手間がかかった。機能的には問題ないのだが、お菓子の缶に装置を入れたので見た目がやぼったい。

本人も思っているとおり、「見た目がいまいち」と言われた。

（34歳　男性　既婚　材料化学研究科卒　研究、特許、テクニカルマーケティングほか）

自分自身のスキルアップにもなるかと思い、DVDレコーダーをサーバに改造した。コピープロテクト部分がブラックボックスになっており、思わぬ信号が出てきて苦労した。改造品は不満だけど、改造したことには大満足！

頑張ったのに反応薄。おもしろくないなぁ……。

（38歳　男性　独身　工学部土木工学科卒　品質管理、製品評価、品質保証、生産管理）

音楽をアナログ音源でベスト版に編集する際、前曲の終わりをフェードアウトしながら、次曲の始まりをフェードインさせて、2曲の終わりと始まりを重複させたく、AUDIOミキサーが欲しくなったが、市販品はとても高額で買えなかった。自作にあたり、部品選定、回路図作成、ユニバーサル基板へのハンダ付け、動作確認と一通りの工程を踏んだが、部品の入手がいちばん苦労した。ケースを用意せず、基板Assy状態での完成としたため、見栄えが非常に悪くなったが、使用感はそれなりにGOOD！(実用上問題なく、一応合格点)。

周囲はこのAUDIOミキサー自体に関心がなかったため、特に無反応……。

（40歳　男性　既婚　高専電気工学科卒　回路・システム設計）

廊下装飾用の照明をいつも点灯させているのは無駄だし、しかしそうなると全く点灯させる機会がないので、セキュリティ用照明のように人に反応するようにしようと思った。屋外用センサーライトを購入し、分解して赤外線センサースイッチ部分を取り出し、インテリア照明に移植。見かけにみっともないこともなく、人が通ることへの反応も文句なく、満足です。

家内は慣れていて特に何も言いませんが、苦情がないということは喜んでいるということです。

（44歳　男性　既婚　芸術学部デザイン科卒　社内情報システム、MIS）

使っているビデオデッキが壊れた。修理しようにも古い機種で部品がない可能性があったことから、全く違うパーツを代用として組み合わせて動くように改造した。当然、ピッタリ当てはまる部品はないため、全く違う分野の似たような形状のものを購入し、加工して部品に組み込めるようにした。動かしている間は異音がするが、録画、再生とも問題ないので、よくできたと思っている。

周りの人に話したら、「よくそんなものを部品にして直したね」と驚かれた。

（44歳　男性　既婚　高校普通科卒　システム開発（Web・オープン系））

子供部屋を楽しくしたかったので、LEDと抵抗を買ってきてスピーカーの出力に接続し、天井に星空をともさせた。出来栄えは最高！

子供たちは大喜びです。

（43歳　男性　既婚　機械工学科卒　機械・機構設計、金型設計）

アマチュア無線の資格をもっているので、知識と技術の向上のために電子工作がしたくなった。雑誌を購入して回路図を検討、ユニバーサル基板を使って検討し組み立てるのだが、最初は雑誌に書かれている回路の意味がまったく分らず、コンデンサーを破裂させたりトランジスターを飛ばしたりした。さらにお小遣いも逼迫させた。もともと器用ではないので見た目はよくないが、欲しかった性能を満たしたのがうれしく、また次を作りたくなって、ほとんど毎日何かしらやっていた。

ハンダのにおいが不評でしたが、工作をしていること自体は、特に何も言われなかった。

（38歳　男性　既婚　理学部化学科卒　システム開発（Web・オープン系））

それまで使っていた太陽電池の製品が壊れてしまい、捨てるのももったいないので何か利用できないかと考えていたところ、簡単にできるサーキュレーターを思いついた。あまってしまった太陽電池をかき集め、安物のDC電源ファンにつなぐというシンプルなつくり。部品を買わずにジャンク品のみで造ったので、仕様が限られてしまったせいか、思ったよりも風力は弱かった。

家族に「エコな道具」と言われました。

（41歳　男性　既婚　機械工学科卒　制御設計）

当初は購入しようといろいろなお店に行ったが、電源供給がシガレットライター接続がほとんどで、ヒューズボックスからの電源供給や、市販スイッチによる形式のものがなかったので自作。市販LEDライト部品や、配線、市販スイッチをそれぞれ接続しただけ。最初はまずまずだったが、車内の配線がむき出しだったため、切断や接触不良などがたびたび発生し、今では出ている配線が見苦しいとのことでやめている。

夜間に、後部座席の子供の様子をうかがうことができる点では好評だったが、「なくても問題なし」という残念な結果になった。

（44歳　男性　既婚　高校普通科卒　システム開発（汎用機系））

量産品では使用されない高級パーツを使用したアンプを製作して、その音を聞いてみたかった。MJ誌などの本を参考にして部品を集め、完成したら1ヵ月ほどエージング。あとはパーツを付け替えて好みの音に。ともかく製作する時間を確保するのが一番大変でした。外観などはメーカー品のまねはできませんが、音は高級機かそれ以上、かかった部品代の約10倍はする価格のメーカー品にも負けない音に満足しております。

知人から製作依頼を受けるようになった。また、メーカー製オーディオの修理も依頼されます。

（37歳　男性　既婚　電子工学科卒　サービスエンジニア）

使用している掃除機の吸引力が落ちてきたので、モーターの高出力化、吸入経路の変更吸気路の分配フィルタの製作を行い、性能をパワーアップさせた。改造の結果、激しすぎるほどの吸引力が実現したが、ゴミがつまりすぎ。今後はもう少し小さめのモーターに変更しようと考えています。

特に誰にも見せていません。

（34歳　男性　独身　素材化学科卒　研究、特許、テクニカルマーケティングほか）

特殊用途で使用するため、市販品で適合するものがなく（あっても価格が高かった）、必要な部品を集めて作ったほうが安く最適化できると判断し、3D-CADを使用するためのコンピュータを製作しました。ゲームレベルでは厳しいので、グラフィックボードは業務レベルのものにして、サウンドボードを付けず、メモリを増設。後日冷却ファンも増設しました。グラフィックボードの発熱がすごくて、3D-CAD上でアセンブリパーツを増やしたり、シミュレーションを実行すると落ちやすくなっていたので冷却ファンを増設して事をしのいだが、放熱機能がいまひとつで、夏場になるとやはり遅くなる。

自分の席の周りだけ暑いと評判になった。

（42歳　男性　独身　機械製図科卒　機械・機構設計、金型設計）

オリジナリティがあり、いつでも自分の部屋に侵入者があった場合、携帯に連絡できるシステムがほしかった。以前に車を盗まれてからセキュリティシステムを勉強し、リモコンイモビライザーや、無線のトーン記号接続、電話回線などから連動させることにより、いつでも監視下におけると思い、実践してみた。警報は、発覚した時点で鳴らせるシステムを作るだけなので、簡単です！しかし、スイッチを入れ忘れて作動しなかったことがあり、そのための遠隔方法に現在挑戦中。

「凝りすぎ」や「商売にしたら」とも言われました。でも、外販の場合は見栄えも凝らないといけないから面倒ですよね。

（42歳　男性　独身　機械科卒　制御設計）

　これまで数々の自作エピソードをご紹介してきたが、その大半は、ただ完成品のパーツを組み合わせただけではなく、別のパーツを改造して間に合わせたり、新しい機能をもつ装置を追加したりと、試行錯誤を続けて完成に至っている。ときにはうまく起動せず、四苦八苦したこともあるだろう。だが、それでも完成させようとするモチベーションの根源はどこにあるのか。

　アンケートでは、エンジニアに対して自作家電の面白さも聞いてみた。すると、ここでもエンジニアらしさあふれる、「“組み立てている瞬間”がいちばん楽しい」という回答が第一位に。仕事ではなくても、やはりエンジニアは“モノづくり”に積極的にチャレンジし、その過程を楽しむ人が多いようである。
　もちろん、家電の自作や改造は、故障に対する自己責任が発生し、ときには危険も伴うもの。ご紹介したエンジニアたちは、真空管やLEDの工作キットから始めて、徐々に仕組みを学んでいった人も多い。もしこのレポートを読んで工作に興味をもったなら、まずは手軽に始められて、かつ失敗の少ない工作キットがオススメだ。

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タニー只野(総研スタッフ)からのメッセージ

以前に、センサー付き照明器具を作ったことがあります（組み合わせただけですが……）。できた当初は大喜びでしたが、現在は省エネのためスイッチを切ったまま放置されています。振り返ってみると、完成図をイメージしながらパーツを探しているときが、いちばん楽しい時間でした。パーツショップをウロウロして、面白いものや使えそうなものを発見している瞬間が、自分は好きなのかもしれません。