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上流工程の継続的な担当を目指した常駐SEのチャレンジ

マーケティング×ITで躍進するインターロジックスへ

電通グループに属するインターロジックスは、マーケティング領域におけるあらゆるITソリューションを手掛ける。大手・有名企業を顧客に、事実上のプライムベンダーとして大型案件を請ける同社SEの選考面接では、何がポイントになるのか。
(取材・文/須田忠博 総研スタッフ/高橋マサシ)作成日:08.09.01
インターロジックス
応募したエンジニア 企業の面接担当者
奈良義彦さん(当時30歳)
奈良義彦さん
(当時30歳)
吉田 敬氏
第4ディレクター室 室長
吉田 敬氏
当時の職種
アプリケーションSE
募集職種
SE
業務内容
転職情報Webサイトの各種リニューアルおよびメンテナンスなど。
仕事内容
Webサイトの再構築、CRMシステム、営業支援システムなどのシステム企画から構築・運用まで。
職務経歴
大学経営情報学部卒。ソフト開発会社に7年勤務。客先常駐型で各種業務システムの開発、メール配信システムの構築などを担当。
応募資格
Web系またはオープン系のシステム設計・プログラミング経験が3年以上、DB・ネットワークなどインフラの基本知識。
志望動機
Webサービスのコンサルティングや企画から携われる仕事を長く続けたい。
募集背景
マーケティング課題解決の施策としてシステム構築案件が増加しているため。
面接の流れ
人事担当者が選考し、次に該当部署の部長クラスが選考する。
人事担当者1人と部長クラス1〜3人で面接する。所要時間は約1時間。論文形式の筆記試験も行う。
常勤役員が1対1で面接する。所要時間は約1時間。
社長が1対1で面接する。所要時間は約1時間。
1週間前後で通知する。
【通過率:約4割】
【通過率:約5割】
【通過率:約8割】
Part1
職務経歴、技術経験
常駐SEとして勤務し客先企業で高い評価
吉田:
 それでは面接を始めます。【Point1】最初に職務経歴を3分程度で、アピールしたい点を中心に説明してください。
奈良:
 私は大学新卒で○○○(準大手ソフト開発会社)に入社し、丸7年になります。
 【Point2】○○○は主に2次請け開発や客先常駐での開発・運用保守を事業としています。最初の4年間は、新規開発プロジェクトや既存システムの改修プロジェクトを担当しました。内容はお手元の職務経歴書に記載したとおりです。
 直近の3年間はプロジェクト単位の仕事ではなく、お客様の元にひとりで常駐し、お客様の希望を形にする仕事に就いています。そのため、顧客企業やエンドユーザーの声を直接聞けるメリットがある半面、会社との接点は少ないです。

 これまでの仕事で最も自信がついたのは、現在担当中の転職情報Webサイトのシステム運用・開発業務です。常駐者は私ひとりですが、開発を行う場合には約5〜10人のチームを裏側に配置して、私がコントロールしています。サイトコンセプトの設計から日常的なコンテンツのアップロードまでお手伝いをし、リニューアルや機能追加の案件が走り出した場合は、要件定義から設計、開発管理、リリースまでもっていきます。
 【Point3】また、システム予算管理も担当し、昨年度と今年度の年間開発計画まで策定しました。ASPの導入に当たっては、スピーディかつ安価に機能を実現できたということで、客先の事業企画担当者から高い評価をいただきました。
ポイントはゼロベースからの要件定義
吉田:
 それでは、技術経験について少し伺います。これまでWeb系の開発経験が多いようですが、得意な言語はJavaですか?
奈良:
 はい、そうです。
吉田:
 システムインフラの設計経験は?
奈良:
 実際に使われるものを構築したことはありません。テスト環境を作れるレベルです。
吉田:
 弊社では、RFP作成支援や要件定義など上流から入るため、アプリだけではなくインフラ提案も含まれるのが普通です。お客様と会話できる基本知識はもっていますか?
奈良:
 そのレベルならまったく問題ありません。インフラのスペシャリストと話が通じる知識はあります。
吉田:
 【Point4】ゼロベースで要件定義をした経験はありますか?
奈良:
 現在担当しているWebサイトのリニューアルや機能追加の開発では、まったくのゼロベースで要件定義を行っています。客先の事業企画担当者はシステムについて詳しくないので、サイト内検索を追加したいなどの大雑把な希望を聞いたところから、コストを含む提案、要件定義、実装までの一連の作業を担当しています。
吉田:
 SI企業側での要件定義と、ユーザー企業内での社内SE的な要件定義とでは、何か違いを感じますか?
奈良:
 詳細な提案書は作らなくともよいという点が違います。【Point5】ただ半面、ステークホルダーが社内に多くいるので、全員に説明して承諾を得る必要があります。私は事業企画担当者と一緒に説明に回っています。
Point1
[面接官]弊社のチームリーダークラスでは、顧客折衝が大切な仕事になります。簡潔にまとめて話せるスキルは絶対条件。身だしなみや表情まで含めて、好感のもてるコミュニケーションスキルが備わっているかをチェックします。
[応募者]初めての転職活動でしたから、面接について事前に勉強し、ある程度の準備はしていました。しかし、本番になるとやはり難しい。想定外の質問がきたりするとなおさらでした。
Point2
[面接官]こういうコンパクトな説明の仕方には好感がもてます。職務経歴書をだらだら読み上げるようなプレゼンは好ましくありません。最近、電通がセールスリードとなるプロジェクトが増えてきました。そういった案件では電通の営業の方と同行して提案することになるため、クライアントは電通と仕事をしているという意識の方が強い。プレゼンスキルは電通からも求められます。
Point3
[面接官]これは大きなアピールポイントになります。選考上、高い評点を付けました。
Point4
[面接官]職務経歴書に要件定義とあっても、よく聞けば基本設計レベルの仕様を元請けのSEに指示されて作成した程度という場合もあるんです。それで「ゼロベースで」と明確にして尋ねました。
Point5
[面接官]この経験は二重丸です。弊社の案件は上流から参画するケースがほとんどのため、クライアントの営業部門、マーケティング部門、社内情報システム部門などのステークホルダーとの調整スキルは必要不可欠です。
[応募者]この経験は評価されるだろうと思っていました。世のSEがそうそうは経験していないからです。
Part2
リーダー経験、成功・失敗体験
チームリーダーとして汗をかいた経験
吉田:
 以前の携帯キャリア向け開発プロジェクトでは、いきなりリーダーに抜擢されたようですね。【Point6】6人チームのリーダーとして実際、どんなマネジメントを行いましたか?
奈良:
 元請け会社との仕様確認、担当の割り振り、工数管理、スケジュール管理、品質管理といったところです。
吉田:
 コスト管理は?
奈良:
 その仕事ではまだ行っていませんでした。私の上に弊社のPMがいました。
吉田:
 【Point7】チームリーダーとして特に気をつけた点はありましたか?
奈良:
 新人に近いメンバーの進捗に留意しました。ベテランにサポートをお願いするなどして、週単位で作業量の調整を行ったのです。また、私自身は窓口業務に徹し、何かが起こったらその対応に走るという体制にしました。
吉田:
 メンバーのモチベーション維持に苦労しませんでしたか?
奈良:
 そのプロジェクトには火消しで入りましたから、全員のモチベーションが低かったんです。私自身も元請け会社とメンバーの間で板ばさみ状態。不満をため込まないように「飲みニュケーション」でカバーしました(笑)。
独りよがりで成功に酔うタイプはNG
吉田:
 【Point8】これまでで最も成功した仕事は何ですか? 成功したと思う理由も教えてください。
奈良:
 それは、直近で担当した転職情報Webサイトのリニューアル案件です。機能ごとに開発ベンダーが3社あり、デザイン制作会社も加わるので、合計4社を動かしてやり遂げたことがいちばん大きな成功体験だったと思います。管理の煩雑さを克服しながら、計画どおりの日程でよいものができたことに、達成感がありました。
吉田:
 コスト面では?
奈良:
 若干オーバーしましたが、年間予算を任されていますから、オーバー分は年間全体で吸収できました。
吉田:
 【Point9】では逆に、失敗体験を挙げるとしたらどんなものがありますか?
奈良:
 失敗ではないのですが、ある研究所向けのシステム開発で苦い思い出があります。非常にマニアックで、作るのが難しく、しかも役に立ちそうもない案件で、チーム全員の士気が下がっていました。
 元請け会社の担当者は的外れなミーティングを続けるばかりで、私はやる気をなくし、上司から叱咤されました。結局、研究者から直接話を聞くべきだと私が提案したことで、やっと作業が動き始めたんです。もっと早く提案すれば私自身も腐らずにすんだはずですし、プロジェクトも進んだと思います。それが反省点になりました。
Point6
[面接官]プロジェクト管理というのは幅広いものです。リーダー経験があるといっても、管理した内容を聞かないと、どの程度のマネジメントスキルをもっているのか計れません。
Point7
[面接官]この質問の意図は「裏取り」にあります。具体的な工夫点から本当にリーダーを務めたと確認できますし、その内容によって得意なマネジメントのタイプも推測できます。
Point8
[面接官]この回答で着目するのは成功した理由のほうです。納期とコストとビジネス価値の3要素をどこまで意識しているかを見てみたい。エンジニアに多い「独りよがりの自己満足」では仕事と呼べません。
Point9
[面接官]失敗体験を聞くのは、失敗から学ぶ姿勢があるかどうかをチェックするためです。
Part3
転職理由、志望動機、入社後の希望
企画から入るSEの仕事を今後も続けたい
吉田:
 ところで今回、【Point10】転職しようと考えているのはどうしてですか? また、弊社を志望する動機も聞かせてください。
奈良:
 ここ3年担当している転職情報Webサイトは一般向けのものですから、いつでも外から見ることができます。自分が提案して実現した機能も一目瞭然です。この点に私は大きなやりがいを感じています。ところが、この仕事を長く続けられる保証はありません。
 例えば、別の顧客企業の基幹システムの作り込み部隊に、いつ異動させられるかわかりません。私は一般ユーザー向けのWebサービスの企画から携われるSEの仕事を、ずっと続けていきたいのです。それが転職を決意した理由です。

 御社には、電通グループとして仕事をされている点に魅力を感じます。「クライアント企業に直接、企画を提案する」「一般消費者向けのマーケティングサイトが多い」などの特徴を聞きました。私の希望にぴったりだと思い、応募させていただきました。
吉田:
 現在応募している他社さんは弊社と同じような業態ですか?
奈良:
 マーケティングを第1の事業領域にしている会社はありません。応募しているのはWebポータルサイト運営会社やクリエイティブ制作会社のシステム部門です。
吉田:
 【Point11】ユーザー企業の社内SEになる気はないのですか?
奈良:
 社内SEならば必ず企画にかかわれますが、仕事の幅が限定されてしまいます。事業会社に行くとしたら、ポータルサイト運営会社までと考えています。
重視するのは現実に立脚したキャリアビジョン
吉田:
 【Point12】もし弊社に入ったとしたら、どんな仕事をしたいですか?
奈良:
 技術経験を生かしつつ、お客様が本当にしたいことを実現するための、いろいろなアイデアを提案していければと思っています。その際、マーケティングの知識はアイデアを成功させるうえでも、お客様に提案を納得してもらううえでも有力な武器になると思います。役立つマーケティングの知識をどんどん吸収していけることに期待感があります。
吉田:
 弊社は「マーケティング×IT」に特化しています。奈良さんの期待に沿えるはずです。それでは最後の質問です。【Point13】3年後とか5年後にはこうなりたいというキャリアプランはもっていますか?
奈良:
 今はとにかく、マーケティングよりのIT企画の仕事に就くことしか考えていません。1年後にはマーケティングの知識を十分に身につけ、自信をもって企画を提案できるWebコンサルタントのような道を歩み出していたいと思っています。
 将来的にはビジネス全体を見渡して、多くの案件を同時並行で回していけるマネジャーを目指したいです。
(このあと、吉田氏は入社可能時期を聞き、奈良さんのほうからの質問を促した)
Point10
[面接官]転職理由からは、まず社会常識の有無を見ます。ネガティブな退職の理由を平気で話すエンジニアは珍しくありません。次に、スキルアップやキャリアアップ、充実感の追求などから将来を考えているかどうか。モチベーションの低い人をメンバーに加えたくないからです。
 志望動機からは、応募者の志向性と弊社業務とのマッチング度を測ります。上流工程志向とリーダー志向が強い人ほどマッチング度は高いと判断します。
[応募者]転職理由と志望動機の答えは準備していました。本音をストレートに話すと決めていたんです。
Point11
[面接官]システム開発を例えて言うと、ユーザー企業側は主役、弊社のような請け負い側は黒子です。自己実現のベースが微妙に違う。その点を確かめたくてこの質問をしました。
Point12
[面接官]この質問の狙いは、志望動機よりも突っ込んで志向性を確かめるところにあります。
Point13
[面接官]ここでチェックしたいのは2点。ひとつは現実に立脚したキャリアプランを描いているか、もうひとつはマネジメント志向があるか。後者はマストではありませんが、あればベターです。
[応募者]この質問は転職の面接では定番なんですね。応募した会社のすべての面接で尋ねられました。私は、どの会社でもほぼ同じ答え方をしました。
面接官はココを見た!
●要件定義から設計、実装まで、どの程度の経験を積んでいるか。
●クライアントに好感がもたれるコミュニケーションスキルを備えているか。
●チームメンバーに加えられる人物か。
 まず、技術経験の内容を審査する。要件定義からリリースまで一連の作業を本当に経験しているのかどうか。その深さはどのくらいか。リーダークラスの場合はプロジェクト管理の経験内容も詳しく見る。次に、簡潔明瞭に話せるコミュニケーションスキルを重視する。従って、会話の内容だけでなく、身だしなみや表情、身ぶり手ぶりまでをチェックする。人物素養の面では、チームに溶け込めることを重視する。モチベーションや積極性、自己管理能力を考慮する。
奈良さんはコレで決めた!
「この会社のビジネスモデルには将来性があります。
そのビジネスを担える人材として評価されたことが決め手でした。
年俸も、前職を上回る金額を提示されたんです」
 私はこの会社を第1志望にしていました。「マーケティング×IT」というビジネスモデルには将来性があると思えたからです。そんな仕事を一緒に行う仲間として認められたのですから、ぜひ入社したいと思いました。年俸も前職を上回る額でしたし、面接で会った役員にも信頼できるものを感じました。ただ、マーケティングは初心者でしたのでこの点だけが不安でしたが、入社後の勉強でカバーでき、問題はありませんでした。
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高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ 高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ
今回の転職者の奈良さん、実は以前にTech総研でシステム周りを担当していた仲間なんです。転職して1年ほどが過ぎ、仕事の具合はどうかなと連絡をしてみたらご覧のとおり。今ではプロマネへと成長した奈良さん、いや、ならっち、編集部の全員で応援しているよ!

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