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1997年には、各部を洗練、軽量化したP3が完成〔写真8〕する。しかし一方で、開発チームは一つの壁に当たっていた。確かに、なめらかに人間の動きを再現できるロボットはできた。では、「ロボットに何をさせたいのか、どんなロボットが作りたいのか」――。 「当時、われわれの間で『松竹梅構想』というのがあったんです。ロボットの大きさを松竹梅にランク付け。松は大人サイズで、人のできる仕事を何でも代行できる。竹は身長120p前後の小学生サイズ。梅はもっと小さい玩具サイズです。 振り返って『われわれが作りたかったもの』は何かと言えば、人の身近なところでお手伝いをしてくれる存在。けれど、人は異質なものには恐れを抱く。身近なロボットとして、大人サイズは大きすぎる。一方で、100p以下では生活の中で必要な場所に手が届かない。『よし、小学生サイズでいこう』と――そこにたどり着くまで、開発から離れて約1年半、議論を繰り返していました」 そんな議論が、2000年のASIMO〔写真9〕登場に結びつく。ロボットは重く、ゴツいというイメージを覆し、サイズだけでなくデザインも子供らしいかわいらしさを実現。もちろん、そのサイズに収めるための要素開発に加え、よりスムーズな歩行を行うための予測運動制御など、新たに盛り込まれた技術は多い。ASIMOは11月の発表直後、年末の紅白歌合戦にも出場、SMAPとの競演も果たした。 もちろん、今でこそさまざまなパフォーマンスを軽々とこなすASIMOも、当時はまだ「生まれたばかり」。十数人のチームがF1ばりのサポート体制を組み、開発ツールも持ち込んで、この大舞台に挑戦したのだった。 「当然、動かすと不具合が出る。徹夜で対処して、次の練習を迎える。3日間、ほとんど眠っていません。そして30日の最終リハーサルになるのですが、ここで、床の柔らかさに気付いて愕然です。本番では60人のダンサーが一緒に踊る。当然、床が揺れる。『こんなとこ、ASIMOは歩けないよ』と言っても、今さら変更は利かない。 なんとかお願いして、出るときはダンサーの列で隠し、その後はサポート役が横に付く。それ以外のダンサーはなるべく遠くで踊ってもらう……それでも、まさに一発勝負。本当に手に汗握りました。しかし結果は見事に成功。あの日のことは忘れられません」 |
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本田技研工業株式会社 株式会社本田技術研究所 |
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