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社長の時給より高い待遇、応募者に合わせて新規案件立ち上げ・・・ 知られざるエンジニア採用の舞台裏 実録 求人魂!
業種・職種間でばらつきはあるものの、相変わらずエンジニア売り手市場が続いている中で、企業側は「あの手この手」でエンジニア獲得に必死だ。そこで採用活動の具体的な取り組みを紹介したい。
(総研スタッフ/山田モーキン)作成日:08.07.31
はじめに 景気減速傾向の中でも、依然高いエンジニア採用ニーズ
2008年に入って世界経済は、アメリカのサブプライムローン問題に端を発した金融不安や、原油・穀物価格等の高騰などによって景気減速の影響が顕著になりつつある。
エンジニアの転職市場にも少なからず採用を手控える動きもでてきているが、組み込み・制御系や金融系などでは依然として、高い採用ニーズが継続している。企業側としては一人でも多く優秀なエンジニアを採用したいわけだが、企業規模や業種・職種によって採用までの道のりがかなり険しいのが、現実だ。
そこで各社、さまざまな手段や応募者側にとって魅力的な待遇・体制等知恵を絞りながら採用活動を積極的に展開している。応募するエンジニア側からは普段、見ることのないその“知られざる採用活動の舞台裏”について今回、以下に紹介する2社の事例を通してみていきたい。
事例1 見切り発車で秋葉原に事務所を新設、社長より高い時給…… 株式会社コトハコ
ECサイト専用の検索・レコメンドエンジンを自社開発し、ASPで提供しているコトハコ。まだ設立4年目、社員5人の小さなITベンチャー企業であるが世界最大のECサイトに対抗すべく現在、積極的な事業展開を図っている。
そこで即戦力となれるエンジニアを求めて同社が展開している採用活動を探ってみると、そこには不退転の決意で望む社長の、エンジニア採用への並々ならぬ強い思いがあった。
“見切り発車”で秋葉原に事務所を新設してしまったわけ
「経営コンサルタントの人に怒られましたよ」
と笑いながら話す、コトハコの代表取締役・山内氏。
今年4月、今後の事業展開やそれに伴うエンジニア増員の受け皿として、本社のある茨城県つくば市から離れた、東京・秋葉原に事務所を新設した。
といっても、4月時点ではまだ採用活動を展開中であるにもかかわらず、半ば“見切り発車”で事務所を新設してしまったことが、上記の発言につながるわけだ。
通常、採用が決まってから事務所を借りるのが常識にもかかわらずなぜ、山内氏はそのような行為をとったのか?
「それまでも採用活動は行っていたのですが、正直なところ、なかなかこちらの希望に合う方に出会う機会に恵まれませんでした。そこで今後の方策をあれこれ考える中で、多くのエンジニアの方にとって便利な場所にある秋葉原に拠点を置くことで、少しでも応募しやすい環境を事前に用意しておきたかったのが本音です」と打ち明ける。

しかしながら都心の秋葉原に事務所を借り、なおかつ3カ月以上も勤務すべきエンジニアが不在の状況の中で採用活動を展開していくことは会社にとって、経済的リスクは決して少なくないはずだ。
「正直、事務所の契約・月々の賃貸料やその他備品購入、そして採用活動に伴う費用も含めればベンチャー企業である当社にとって決して安くはありませんし、私自身、“背水の陣”で臨んでいます(笑)。しかしそこは先行投資、と割り切っていますし、これがきっかけで当社に関心をもってもらえるエンジニアが少しでも増えてくれれば、それでいいと思っています」
社長よりも高い時給、自分にとってベストな環境が作れる場を提供する
事務所新設の件からも察しがつくとおり、山内氏をはじめ同社はエンジニアを尊重し、なおかつ最大限活躍できる職場環境や風土を大切にしている。
それを象徴するひとつの例が、“社長より高い時給”。「この業界は“新3K”と呼ばれるほど、長時間労働が常習化していますが、本来、エンジニアは余計な仕事を増やさずに、効率重視で業務をこなせる人が報われるべきだと思っているんです。だから仕事の進め方や評価・待遇に関して現場エンジニアの意向などを配慮し、同業種の大企業にも決して引けをとらない報酬を出していると自負しています。ここだけの話、時間給にしたら今こうして一人、秋葉原の事務所を切り盛りしつつ雑用から社長業までこなしている私より、つくばの本社で自社サービスの開発をしているエンジニアのほうが多いんですよ(笑)」。

山内学氏
株式会社コトハコ 代表取締役
山内学氏
ここが秋葉原にある新事務所。新しく入るエンジニアを迎えるため、空席のデスクはいつも、山内社長自らの手できれいにして、待ち望んでいる。
また、現在募集中のエンジニアにとって、秋葉原オフィスが新たな魅力につながる。今回、「コンサルタント」として自社サービス(ECエンジン)のシステム開発からリリースまでを担当する一方、新事務所の「事業責任者」というポジションも任されることになる。仕事の進め方から新事務所の組織体制・職場環境まで「自分にとって最もベストな事業環境」を一から築き上げることができるチャンスでもあるのだ。

「これがもし、ひとりで事業を立ち上げようとしたら非常に大変です。しかし当社の資産、そして当社が絶対の自信をもって開発したECエンジンサービスを“フル活用”して思う存分、活躍していただけたら、厳しい予算で先行投資した私の行為が報われます(笑)」

※取材後、晴れて待望のエンジニア2人の入社が決まった。
事例2 応募者にベストマッチな案件を、企業自ら見つけ出しアサイン キャッスルコンピューター株式会社
人と人、人ともの、ものとものを有機的に結びつけることをキーワードに、人工衛星やインフラネットなどのネットワークシステムから、半導体製造装置・計測機器などの組み込み制御系のシステム開発を幅広く展開しているキャッスルコンピューター。
設立25年、社員50人の同社が実施している採用面接、そして採用に取り組む姿勢は通常のスタイルとは異なるようだ。
応募者とのマッチングを最重視した面接スタイル
採用面接を担当している同社事業部長の小口氏は、いつも面接に臨む際「面接が楽しみでしょうがない!」と断言する。
「当社は設立して25年、急速な事業拡大を追わず『信頼・創造・感謝』をコンセプトに、土台を固めて地道に事業を展開してきました。決して華やかな企業ではないのですが、だからこそ当社に関心をもって応募していただけるエンジニアに対して、常にありがたいという思いが強いんです。『今度はどんなエンジニアの方なのかな?』という純粋な興味が高まって、ついつい面接が楽しみになってしまうんです」

特に同社が採用を強化している組み込み系職種は“超売り手市場”で、エンジニアを採用しにくい。そこで同社が採用面接に対する基本スタンスとして特徴に挙げられるのが、「募集したポジションに応募者が合っているか?」ではなく、「応募者のスキル・キャリアを最大限生かせる案件はないか?」という点。
「35歳以上だと……」「○○の開発経験がないから……」といったように一般的には、年齢やキャリアなどの応募条件を満たしていなければ書類選考の段階で落としてしまうケースも多いが、キャッスルコンピューターでは可能な限り、面接で「その人ならではの能力をヒアリングし、マッチングさせること」を重視している。

「面接では、人事・営業・技術、各部門が必ず同席して、あらゆる視点から応募者の特徴やメリットを見つけ出します。そこで応募者のスキルやキャリアに魅力を感じて『採用したい。でも今うちにはその方にマッチした案件がない』という場合、当社がクライアント先に『こういうエンジニアが当社にはいます。この方の能力を生かせる案件はないですか?』と逆に提案することで、その方にマッチした案件をアサインすることに全力を挙げます」(小口氏)

現状の中でとらえて判断するのではなく、魅力ある応募者の可能性をどう生かすか?というポジティブな観点で、採用活動を実施している。
その中で昨年、採用されたのがシステム開発部に所属する井出氏だ。
53歳エンジニアが「やりたいことができて活躍できる案件」を新たにアサイン
井出氏は卒業後の数年、計測器メーカーでハードウェアの設計に携わった後、20年近くSE・PMとしてソフトウェアのシステム開発にかかわってきた。
そして昨年、「この歳(当時52歳)になって、昔携わったハードウェア設計に携わることで、もう一度“原点回帰”したい」との思いから転職を決意、たまたま目にしたキャッスルコンピューターの面接に出向いたそうだ。

「この歳で、しかも希望するハードウェア設計に関しては、20年のブランクがある中で本当に転職できるのか、かなり不安がありました」と井出氏が語るように、ほかにもさまざまな企業に応募するも、書類選考の段階で落とされていた。そうした不安の中で迎えた面接、30年以上の自身のキャリアを1時間近く話す中で、小口氏や社長も含め親身になって聞いてくれたことに「人を人として扱ってくれる」と実感したそうだ。

小口慶子氏
キャッスルコンピューター株式会社
取締役社長付公共IT事業部 事業部長
小口慶子氏
井出紀夫氏
システム開発部
井出紀夫氏
和気あいあいと話をする両氏。「エンジニアを大事にする」温かい社風が、ちょっとした会話の中でもにじみ出ている
また採用側に立つ小口氏は当時を振り返り「最初に職務経歴書を拝見したときは、当社が抱える案件とずれている部分があったんです。でも実際にお会いして社長も含め『この人は当社の雰囲気に合っている』と直感して採用を決めました。それに井出さんのエンジニアとしての豊富な経験は、必ずほかの新たな案件で生かせると判断したのも、採用理由のひとつです」と語る。

その後、クライアント先に井出さんを紹介・提案をした結果、某電機メーカーの汎用系制御システム開発プロジェクトのメンバーとしてアサインすることができた。ちなみに常駐先のクライアントからは「ハード・ソフト双方の知識があり、しかもこちらの意図を瞬時に理解し迅速に対応できる井出氏の能力を高く評価している」との声が同社に届いている。

「クライアントからの高い信頼を得ているキャッスルコンピューターで採用されたからこそ、今自分がやりたい仕事ができると思うしモチベーションも高い。この経験からやりたいと思うこと、そして思い続けることで道は開けるんだと今、実感しています」(井出氏)
おわりに あなたを必要としている企業は必ずある
2社の紹介を通して、エンジニア採用に対する並々ならぬ企業側の思いが伝わっただろうか?
もしかしたら人によっては、「エンジニアを採用してやる」といった“上から目線”で採用している企業がいまだに多いと思っているエンジニアもいるかもしれない。しかし特にベンチャーや中小企業の多くは、真剣に「応募してくれるエンジニア」のことを第一に考えながら、今も全国各地でまだ見ぬ同志を探し続けている。
今回、「自分を本当に必要としてくれる企業があるかも……」ともし思ったなら一度、試しに探してみてはどうだろう。
もしかしたら、そこから新たなキャリアがスタートするかもしれない。
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山田モーキン(総研スタッフ)からのメッセージ 山田モーキン(総研スタッフ)からのメッセージ
今回の取材にご協力いただいた2社の皆さん、懇切丁寧に対応してくださってとても心地のよい取材ができました。場は違えどエンジニアの面接でもきっと、同じような雰囲気なんだろうなと思います。ほかにもまだまだ、2社のような「エンジニア思いの企業」は日本全国にたくさんあるはず。そんな知られざる企業を今後も、機会があればどんどん紹介していきたいと思います。

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