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報告書の作成、情報の整理…エンジニアの4割が24時間仕事中? ああ、家でも仕事だ…「持ち帰り業務」の哀しき実態
エンジニアは仕事が忙しい。残業しても終わらない。だから自宅に持ち帰る。三段論法のようですが、メチャクチャおかしくないですか? しかも、「持ち帰る」ために何らかの苦労をしているとすれば矛盾の極致。そんな実情を知りたくてアンケート調査を始めたところ、ちょっと哀しいエンジニアの実態が……。
(取材・文/総研スタッフ 高橋マサシ イラスト/室木おすし)作成日:08.07.30
Part1 エンジニアの4割が書類作成や下準備を自宅で行う
 ソフト系エンジニアとハード系エンジニア、各150人に尋ねた300人のアンケート調査(22〜45歳の男性)によると、ここ1年で自宅に仕事を持ち帰ったことのある人は4割弱だった。その内容の多くは「書類の作成」や「情報の整理」で、「実務作業」という答えも。自宅が仕事場と化している!
Q. ここ一年の間に仕事を自宅に持ち帰ったことはありますか? Q. その回数はどのくらいですか?
自宅業務はハード系職種に多く、半分以上が40代
 仕事を持ち帰っているのはどんな人か? 職種で分けると回答者111人中、ソフト系が51人でハード系が60人と後者が多く、持ち帰る回数が多くなるほどハード系の割合が増えていった。大きな差はないが、ハード系職種のほうが多少キツイ印象だ。また、「持ち帰っていないがその分を休日出勤」の41人中ではソフト系23人、ハード系18人で、ソフト系のほうが若干多かった。ただ、個々の職種での差は見えなかった。

 都道府県別での差はほとんどなかった。回答者の多い大都市圏で調べてみると、東京都54人中20人(37%)、神奈川県43人中19人(44%)、大阪府29人中10人(34%)、愛知県25人中9人(36%)と、平均値の37%とほぼ変わらない。持ち帰る回数が多い人ほど大都市圏の居住者が増えるが、もともとの回答者が多いので特徴的とも言えない。県単位の母数が少ないので単純に比較できないが、「持ち帰り業務」は全国的な傾向のようだ。
 顕著な差が出たのが年代。20代が33%、30代が29%、40代が53%となっており、40代では半数以上が「持ち帰り」。しかも、持ち帰る回数が多いことが特徴で、この年代(40〜45歳)に仕事が集中している様子が見える。
Q. 持ち帰る仕事はどのようなものですか?(最大3つまで)
自宅業務で多いのは書類の作成と仕事の下準備
 では、自宅業務の中身とは? 最大3つまでの選択形式で「会議・打ち合わせのための報告書や提案書の作成」が66%、「仕事の準備のための情報や書類の整理」が54%と圧倒的に多く、4人に1人は「設計やプログラミングなど主業務の実務」と答えている。技術用語をネットで調べるなどの軽い内容ではなく、本格的な業務である。
 また、アンケートでは「最も多い仕事の内容」も尋ねた。代表的なものを以下に紹介するが、持ち帰りの理由とその業務内容に共感する読者も多いはず。
エンジニアが仕事を持ち帰っている理由とその中身
開発業務と管理業務を兼務しており、併せて顧客対応の頻度が高く出張が多い。そのため、翌日締め切りなどの報告書や出張の準備など、自宅での業務時間は必須である。
(研究・特許:45歳:1週間に4〜5回以上)
日々、客先とのメールのやり取りや、社内の部下のフォローに追われて、気が付けば終電間際になることが多く、自分が担当する設計業務の実務(図面作成等)を会社で行う時間がない。
(回路・システム設計:40歳:1カ月に2回)
顧客に常駐しているため、社内で資料を作成する時間があまりとれず、提案資料などは自宅で作成する場合が多い。
(コンサルタント:40歳:1カ月に4回)
分析結果から具体的な方策(結果が悪い場合は改善用の対策)を検討し、先方の状況に合った対策を考えて報告書に盛り込まなければいけないため、集中して文章を作成する。
(品質管理・製品評価:37歳:1カ月に4回)
進捗報告のための資料を週一で作成する必要がある。業務時間中はできないので、持ち帰って作業するようにしている。
(Web・オープン系SE:30歳:1週間に2〜3回)
メールが1日100通程度あり、月曜日の朝一番の作業負荷を下げるため、土・日・祝日でもメールを確認し、対応している。
(Web・オープン系SE:36歳: 1カ月に1回)
Part2 USBメモリやノートPCでデータを持ち出しって、OK?
 自宅でできるエンジニアの仕事となると、PCを使った作業が中心だろう。データも持ち帰る必要が出てくるが、どこの企業でも情報漏えいには敏感で、社外へのデータ持ち出しを禁じているところも多い。エンジニアたちはどうしているのか?
Q. いちばん多いデータ移動の方法は何ですか?
記録媒体を使ったデータ持ち出しが7割、紙だけも1割
 自宅へのデータ移動の方法を尋ねると、5割弱の人が「USBメモリやハードディスク」という記録媒体を挙げた。「PCや端末」も似たようなものと考えれば、両者を併せて記録媒体を使う人は7割にも上る。メールやネットを使えば安心というわけではないが、こうした「モノ」は紛失や置き忘れもありうる。だから、「持ち帰るのは紙ベースで、デジタルデータは一度もない」と答えた人が約1割もいるのだろう。データを持ち帰るエンジニアはセキュリティをどうしているのか。

 アンケートでは別項目で、「自宅で仕事をするために苦労していること」をフリーアンサーで尋ねている。すると、「紙ベース」の回答者を除いたエンジニアの68%が、データセキュリティに関することを挙げた。中には「データ持ち出しは禁止ではない」「上司に了解を取っている」などの回答もあったが、やはり危機意識をもつ人が圧倒的に多く、具体的な「対策」を書いてくれた。以下に紹介するが、どれも涙ぐましい努力ばかり。
 持ち帰り業務とは、残業代が出ないうえにその労働時間は評価されず、本人だってやりたくない仕事のはずだ。それなのに、別の部分で苦労や無理な努力をするのは、空しい矛盾ではないだろうか。
データを持ち帰るときのセキュリティ対策
肌身離さずUSBメモリを持って帰る。
(研究・特許:43歳)
ノートPCの紛失を避けるため飲み会には持っていかない。
(Web・オープン系SE:32歳)
紛失時にデータが漏えいしないよう指紋認証つきのUSBメモリを使う。
(生産技術・プロセス開発:34歳)
会社PCからのセキュアな回線を使って自宅からリモートアクセス。かつPC自体にはデータを残さないようにしているため、特に苦労していない。
(パッケージソフト:29歳)
ノートパソコンで持って帰るが、自宅ではインターネットに絶対に接続しない。
(社内SE:33歳)
メールのあて先を間違えて他人に送付してしまっても閲覧できないように、パスワード認証が必要なzipファイルを使用し、内容が想像できないようなファイル名をつけている。
(生産技術、プロセス開発:40歳)
デジタルデバイスでの社外持ち出しが禁じられているので紙資料などになるのだが、いかに目立たないように持ち出すのかで苦労する。重量も重くなり大変。そして、紙資料を家で再びPC用に作成・構成し直すのが二度手間になり厄介。
(研究・特許:40歳)
Part3 持ち帰る人vs持ち帰らない人の差は気持ちとスキル!?
 自宅に仕事を持ち帰っている理由を尋ねた。「残業しても終わらないから」が普通だろうと考えていたら、4人に1人は「自宅だと仕事がはかどるから」。また、仕事を持ち帰っている人といない人に対して「いちばんの要因」を尋ねたところ、大きな差が出たのは「気持ちの強さ」だった。
Q. 仕事を持ち帰るいちばんの理由は何ですか?
ちょっと特異な「自宅だと仕事がはかどる」人たち
 仕事を持ち帰っている理由とは何か。「残業しても終わらない」が4割に満たず、「残業すれば終わるけど……」と答えた人が47%と半数近くいた。中でも、全体の4人に1人は「自宅だと仕事がはかどるから」として、積極的(?)に仕事を持ち帰っている。
 このグループの74%がソフト系職種。大掛かりな設備が不要で個人ベースで作業ができるIT系は、持ち帰りの意識が気軽に働くのかもしれない。ほかの特徴は、40代も多く全般的に年齢が高かったことと、Part2で説明したデータセキュリティをしっかり行っている人がそろっていたこと。よくも悪くも、自宅業務が生活の一部になっているような印象だ。
自宅に仕事を持ち帰っている人といない人との差
気持ちの強さとスキルの高さで持ち帰り仕事を撲滅!
 自宅に仕事を持ち帰っている人と持ち帰っていない人との差とは何か。ここで「仕事を持ち帰っていない人」とは、「その分の休日出勤」をしておらず、純粋に「平日の会社だけで仕事をする人」に限定する。勤め先も違えば職種も立場も異なるので、単純比較は難しいだろうが、同じ質問から両者の意識差が際立った。
 持ち帰っている人は、その要因はほとんど「会社」や「組織」によるものだと考えている。そして、「その他」として「自主的に持ち帰っている」の旨を書いた人が13人いた。つまり、個人の力では動かせない、致し方ないことであるという認識があるようだ。

 一方の持ち帰っていない人は、会社の影響力を挙げるものの、「自分の気持ちの強さ」次第と考えているようだ。そしてこう答えた人たちの34%が、もうひとつの要因に「自分のスキルの高さ」を挙げている。ずいぶん自信家だが、職種はバラバラで年齢も25〜45歳と幅広く、共通点が見つからない。と思ったら、気持ちが強くてスキルも高いと自己申告するエンジニアは、「持ち帰り仕事をなくす改善策」でいいことを書いているのだ。
 この質問はすべての人に聞いたのだが、「人を増やす」「残業する」「業務量を減らす」「早起き」など根本的な解決法とは思えないコメントも多かった。そんな中、彼らの提案はどれも「なるほど」と思わせるものなので、最後にいくつかを掲載したい。いずれにせよ、自宅で仕事をするのはやめましょうよ。お互いに。
自宅での仕事をなくすための「改善策」(アンケートより)
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高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ 高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ
私も「本人の気持ち次第」という考え方に賛成です。私の周囲にも、絶対に家には持ち込まない派と、用事があればその分を家でやる派に分かれていますし。ただ、定時で終わるのが本来の姿で、特例として残業があるわけでしょう。それを超えた分がプライベートな空間に押し寄せるって、どう考えても尋常ではないですよね。自戒を込めてこの記事を作りました。

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