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松下電工から生まれ、ダイエットや筋力アップ、運動不足解消にも効果があると話題となった大ヒット商品、乗馬フィットネス機器「ジョーバ」。だが、最初はなかなか販売が伸びなかったという。今回登場するのは、初代のマシンから設計に従事してきた開発者だ。
(取材・文/上阪徹 総研スタッフ/宮みゆき 撮影/栗原克己)作成日:08.07.22
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1970年、大阪府生まれ、同志社大学大学院工学研究科機械工学専攻修了。95年、松下電工入社。マッサージ機「アーバン」シリーズの開発者として機構設計に携わる。99年、乗馬フィットネス機器「ジョーバ」開発チームへ異動。2000年に発売された初代「ジョーバ」から最新の5代目モデルまで機構設計の担当者として商品開発に携わった。
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マッサージ機の設計経験を買われて、新しい商品の開発チームに加わったのが1999年12月。これが「ジョーバ」のプロジェクトだった。後に話題の大ヒット商品となるが、2000年に発売された初代モデルはなかなか販売が伸びなかった。そんな厳しい時代を経て、大ヒットとなった斬新なデザインとなめらかな動きを実現した3代目、「8の字動作」によって筋力アップやシェイプアップ効果がアップした4代目、さらには現行の5代目まで、すべての製品の機構設計を担当してきた。 |
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販売が急伸した2003年の3代目モデルが一つ目の転機だったとすれば、2つ目の転機は、2005年5月の4代目の発売だったと思っています。この4代目で「ジョーバ」は、それまでのさらに3倍、4倍の販売量を実現するようになるんです。その要因のひとつになったのが、シートの「8の字動作」でした。 それまでの「ジョーバ」は、シートがVの字の動きをしていました。もっと筋力を使う方法はないか、ウエストの引き締めや、運動不足解消につながる技術はないか、ということで作ったのが、「8の字動作」です。横8の字にシートが回転する。さらに、シートが前傾してウエストや腹筋をもっと使う、後傾して背筋をもっと使う、といったことも可能になりました。商品機能として大きな転換になりましたし、これをアピールポイントとして打ち出すことができた。 8の字動作は、構造的な難しさはありましたが、それは設計の腕の見せ所。これからも、いろんな機能を実現させていきたいと考えています。研究所から、さらに僕たちもアイディアを出しながら、新しいものを取り入れていきたい。商品仕様的にはすでにいろいろなアイディアがあるんですが、言えない部分もたくさんありまして。ただ、僕らが今、考えているのは、一家に一台「ジョーバ」を置いていただくこと。もちろんはるかに遠い世界かもしれませんが、そこまで行く魅力的な商品に作り上げていきたいですね。 携帯電話だって、20年前には一人一台なんて誰も想像しなかった。「ジョーバ」がなくてはならないものになり、一家に一台ある。そんな未来も大いにありえると思っているんです。 |
「まずは、やってみろや」という風土がある。それは入社から13年で痛感していることだという。チャレンジすることに対して、誰も止めないし文句も言わない。黙ってじっとしているよりも、何か言って行動しているほうが認められる。そういう空気がある。どんどん提案して、どんどん動いていい会社だ、と。 後に大ヒット商品となる「ジョーバ」だが、当初は3年もの長期にわたって苦戦していた時期があった。だが、それで簡単に引き下がる会社ではなかった。ここでおそらく、さまざまなチャレンジが、さまざまな部門で行われていたに違いない。そして、それがやがて一気に、大きく花開き、革新的なヒット商品は定番商品へと育っていくのである。 そもそも経営レベルで、相当なチャレンジだったのではないだろうか。もともと原点となった馬ロボットは2000万円の業務用商品だったのだ。これを家庭用の商品にする。100分の1以下の価格の商品に仕立て上げようというのだ。ありえない、と反発の声が社内にはあったはずだ。だが、トップはチャレンジを決断したのである。 松下幸之助翁が「言い出しべえ株式会社」という言葉を残していると北条氏が教えてくれた。言い出した人間が、コトが成就するまで、あきらめずにやり抜く会社、の意味だという。松下電工は、このスピリッツが本当に残っている会社だと思う、と。 そしてもうひとつ、北条氏の話で印象的だったのは、一緒に仕事をする人を尊重するという姿勢だ。社内で、あるいは社外で。商品は一人で、一社でできるわけではない。そんな姿勢で、社内の各部門や社外との交渉に臨む。お互いがプラスになる地点を探る。こうした姿勢が、妥協しない商品づくりを可能にしたのではないか。それにしても、関西弁で冗談も次々に飛び出してくる楽しい取材だった。撮影時には、同僚から冷やかしの声が次々に飛んでいた。そんなところからも、社内のいい雰囲気が伝わってきた。 |
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