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今の目で見れば恐竜並みに巨大で重く、しかも容量の少ないQ-3のような「古典機」でも、改めて考えれば、登場したのはたった20年前。どれだけこの世界で、急速に小型・高性能化が進んだかがわかる。 1956年に登場した最初のHDD、IBMの「RAMAC」は24インチの巨大なディスク50枚で容量はたった5MB。その後、コンピュータ自体のダウンサイジングが進み、HDDにとっても“主戦場”はPC用へとシフトしたが〔写真7、写真8〕、それらPC用も、現在は数百GBが当たり前。現行の「Deskstar 7K1000」(2007年)〔写真9〕では、記憶容量はついに1TB(3.5インチでディスク枚数は5枚、7200rpm)にも達している。この50年あまりで、単純計算で容量の増大は20万倍だ。 装置の大きさが格段に小さくなっていることを考えると、記録密度はさらに天文学的な性能向上で、5000万倍以上という。現在ではディスク上、1平方インチあたり約250Gbit(ギガビット)もの記録が可能になっている。 ちなみに、メガバイトあたりの価格でいえば、RAMACの場合は1万ドル(装置全体で5万ドル)。それに比べて現行のPC用HDDは50セント以下になる。 現在、PC用のHDDは、デスクトップ型では3.5インチクラス、ノート型では2.5インチクラスが主流。ただし、これはあくまで装置としてのサイズで、3.5インチクラスであっても、内部のディスクには2.5インチが用いられていることもある。 小型化には、ディスクの記録密度向上ももちろんだが、そのほかの装置・部品の超高精密度化も不可欠だ。 記録を読み取るヘッドは、垂直方向では、静止時はディスク面と接する高さにあるが、ディスクが回転すると表面の空気の流れによってごくわずかに浮き上がる仕組みになっている。その間隔は約10nmで、タバコの煙の粒子以下。これはヘッドの大きさやディスクの回転速度から考えると、「ジャンボジェット機を、滑走路上1o未満の高さで高速飛行させる」のと同じくらいの精度が必要になるのだという。 水平方向でも、許容される誤差は10〜20nm。追従性をよくするため、ヘッドを支えるアクチュエータは小型軽量。しかも横方向に空気や振動でずれないよう、十分な強度をもっている必要もある。これをVCM(ボイスコイルモータ)と呼ばれるモータで動かす。 装置が小型になったぶん、持ち運びできる機器に組み込まれること、あるいはHDD自体をカセット化して持ち運ぶことも増えたが、HDDは、精密な装置であるだけにもともと衝撃には弱い。特に、ヘッド部分のディスク面への接触による破損は、HDDにとって大きな弱点といえた。 しかし、旧来はヘッド部分の停止時の「定位置」(シッピングゾーン)はディスク内側にあるのが普通だった〔写真10左〕が、その後、「ヘッドロード/アンロード機構」が編み出され、現在では一般化している〔写真10右〕。これは、ディスクが停止している状態では、ヘッドが円板の外側に退避(アンロード)、ディスクが安定回転を始めるとヘッドはディスク上に移動 (ロード)、データの読み出しや書き込みを行うという仕組みである。これによって、HDDの耐衝撃性は大きく向上した。 |
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株式会社日立グローバルストレージテクノロジーズ | |
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