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厳選★転職の穴場業界 第38回 鉄道技術 鉄ちゃんでなくてもやっぱり鉄道が好き!
19世紀に誕生した伝統的交通テクノロジー、鉄道が今、あらためて注目されている。経済成長の著しい新興国の鉄道需要が急増、また先進国でも、有効な炭酸ガス排出量削減技術として見直されている。そして、鉄道といえばやっぱり鉄道博物館でしょ。
(取材・文/伊藤憲二 撮影/関本陽介 総研スタッフ/高橋マサシ)作成日:08.07.10
鉄道の過去・現在・未来を体感できる「鉄道博物館」
鉄道博物館
鉄道博物館
鉄道博物館
 2007年10月に東京の万世橋から現在のさいたま市に移転開業した。重要文化財に指定されている歴史的車両をはじめ、多くの鉄道車両に接することができる。電動車両のモーターや制御器、ディーゼルカーの巨大なピストン、鉄道運行技術の基本である閉塞進行のシステムなどの技術展示も多彩で、プロのエンジニアも満足できる内容だ。膨大な鉄道関連の資料も所蔵されており、鉄道研究の拠点ともなっている。
 1872年に鉄道の営業が開始されてから足かけ3世紀、日本は押しも押されもせぬ鉄道技術大国となった。その鉄道技術の過去、現在、未来を丸ごと体感できるのが、埼玉県の鉄道博物館だ。1階のヒストリーゾーンには蒸気機関車、こだま型特急電車、初期の新幹線車両など「懐かしの名車」がずらりと並ぶ。1950年代から乗り心地を高める空気ばねや減速エネルギーで発電する回生ブレーキが採用されるなど、鉄道が日本の先端技術の象徴であり続けてきた様子がひと目でわかる。今日の鉄道運行技術を体感できるミニ列車運転コーナーや、燃料電池鉄道などの未来技術展示は、鉄道関連の技術開発ニーズの高さを感じさせる。鉄道開発を目指すエンジニア必見のミュージアムである(内容は取材時の企画展を含む)。
高速化から環境対応まで、高まる鉄道技術開発のニーズ
日、独、仏で止まらない高速鉄道開発競争

 2007年、フランス国鉄は開業前の新幹線TGVの新線において最高速度チャレンジを実施。それまでの速度記録515.3km/hを574.8km/hへと更新し、世界2位であった日本の新幹線(443km/h)を大きく引き離した。TGVの現在の営業速度は320km/hだが、ドイツが新幹線ICEの速度を330km/hに引き上げるのに対抗し、360km/hの営業運転のための次世代新幹線AGVの試験を実施中だ。
 専用線や専用車両を使った超高速鉄道という概念の発祥国は、1964年に新幹線を実用化した日本である。その日本陣営の中で現在、最も速いのはJR西日本の最高速度300km/hだが、JRグループ各社は東日本の360km/hをはじめ、より高い最高速度を目指して技術開発を行っている。またJR東海は、レール式ではない磁気浮上式リニアモーターカーの営業運転を目指している。
 三大鉄道先進国と言われる日本、ドイツ、フランスが鉄道の高速化技術の開発にしのぎを削る大きな理由のひとつは、新興国に対する技術優位性のアピールだ。台湾高速鉄道(日本の技術供与)や韓国のKTX(フランスの技術供与)、中国(日本、ドイツ、フランスの技術供与)など、21世紀に入ってから高速鉄道の開通が相次いだ。
 今後さらに新興国の多くが新しい高速鉄道の建設計画、拡張計画を立案しており、市場規模は数十兆円にも及ぶと考えられている。速度性能の高さは、その市場に向けて技術力の高さをアピールする最大のベンチマークスペックなのである。

 実際、鉄道の高速化を実現するためには、高い技術力が要求される。高速列車は大出力化でただ速ければいいというわけではない。環境性能、安全性、快適性など、現代の鉄道に要求される条件をクリアしたうえでの速度性能でなければ競争力が望めず、意味がないからだ。
 現行の新幹線では最新モデルとなるJR東海のN700系は、高速運行を実現するために、曲線区間で車体の傾きを最適に保つアクティブサスペンションが与えられている。環境性能では、先頭車両のボンネット形状や車両の連節部分の空力処理の徹底、パワー半導体のユニークな実装方法など多くの工夫によって、消費電力が旧型車両に対して1割以上削減された。
 列車は減速する際、モーターを発電機として使用することで抵抗を発生させてスピードを落とす。日本の新幹線は機関車が客車を引っ張るのではなく、各車両にモーターを配置する分散電源方式であるため、列車の運動エネルギーを効率よく回生でき、環境性能面ではもともと有利だった。欧州の新幹線も今後は分散電源方式への移行が予想されており、環境性能競争も激化しそうだ。
ハイブリッドの「NEトレイン」とリニアの「HSST」

 高速鉄道は鉄道の先端技術開発競争のトレンドがわかりやすい分野だが、技術の需要は高速化に限った話ではなく、普通の電車からローカル線用のディーゼルカー、路面電車、さらには新都市交通システムまで及ぶ。要素技術も走る側である車両、車両が通る路線、車両を安全に走らせる運行システム……と多岐にわたる。今日の技術トレンドの中から面白い例をいくつか挙げてみよう。
 JR東日本の先端鉄道システム開発センターは、燃料電池ハイブリッド車両「NEトレイン」の開発を行っている。水素を使って発電する燃料電池を搭載し、その電気エネルギーを使って走るというものだ。
 列車を走らせるうえでもっともエネルギー効率が高いのは電気だが、電車を走らせるためには架線などの給電設備が必要で、コストがかかる。NEトレインはローカル線などでも、そうした電化を行うことなしに電気エネルギーで走行可能なのだ。同センターは架線を廃止し、都市景観を高めるという利用法の提案を行っている。
 鉄道車両には昔からハイブリッド技術が使われてきた。その代表的なものは電気式ディーゼルカーで、ディーゼルエンジンで発電機を回し、その電気エネルギーを利用して走るというもので、NEトレインを開発するうえで利用可能な技術も少なくない。
 また、ネックとなりそうな燃料電池についても自動車より車体が大きく、搭載余力があることから、燃料電池もコンパクトな固体高分子型以外にも、つくりやすいリン酸型や固体酸化物型などさまざまな選択肢がありそうだ。

 新都市交通システムに適したテクノロジーとして世間の耳目を集めたのは、愛・地球博のアクセス線「リニモ」に採用されたことで注目を浴びたリニアモーターカーの一種、「HSST」だ。元来は日本航空が成田へのアクセス鉄道技術として研究していたもので、後に名古屋鉄道と愛知県が加わって発足した中部エイチ・エス・エス・ティ開発が実用化した。
 JR東海の中央新幹線の超伝導リニアなどに比べると、リニアモーターカーとしては簡便な部類に属するが、エネルギー効率は車輪式鉄道に比べて高く、環境性能は良好。が、最大の特徴は都市交通システムとしては異例とも言える性能の高さだ。
 リニモの場合、最大加速度は4km/h/秒。すなわち全開加速を行うと、時速40kmまで達するのにわずか10秒しかかからない。これは鉄道としては相当な加速性能である。また、レール式鉄道では曲がるのが困難なほどのカーブを通過することも可能で、建築物の間をぬって走るような都市部の新線建設にもうってつけだ。
 HSSTはまだ発展途中の技術ではあるが、基本的には回転モーターと同様の要素技術であり、今後のさらなる発展が期待されている。

技術開発の余地が大きい「鉄道」という分野

 鉄道技術の中で近年再評価の動きが高まっているのは、LRT(Light Rail Transit)であろう。LRTとは、平たく言えば路面電車のことだ。市街地では道路に軌道を敷いて車と混走する路面電車は、車社会が進展していった時代は交通の邪魔者扱いされ、多くの路線が廃止された。だが近年、地球温暖化防止の観点からCO2削減技術の必要性が叫ばれるようになると、CO2削減効果の高さが見直され、LRTとして世界で復活を遂げつつあるのだ。
 LRTは小さな鉄道というだけで、特別な技術は必要ないようにも見られがちだが、実際はそうではない。LRTにはLRTなりの難しさがあり、そのひとつが騒音。古い路面電車は「ゴロゴロゴロ」とマンホールをコンクリート上で転がすような騒音を立てながら走っていたものだが、騒音規制が厳しくなった今日では、そういう特性は許容されない。そこで考え出されたのがゴムホイール。車輪とレールの接触面にドーナツ状の硬質ゴムをはめ込んだものなどいくつかの方式があり、騒音軽減や乗り心地の改善にはかなりの効果がある。

 もっとも、この方式は耐久性や安全性の面で課題を抱えているのも事実。ゴムがホイールから外れたり、摩耗を抑えたりするためには、鉄道車両という重量物をゴムパッドで支えるときの変形具合など、より高度なシミュレーションを行う必要があるのだ。
 また、バリアフリー化や路面電車としての乗降性向上などの観点から、LRTは限界まで低床化するのが通例になっているが、そのためにはモーターやVVVFインバーターなどを極力コンパクトに作る必要がある。限られた寸法の中に必要な機構をすべて収めるという点は、自動車とやや似たところがあるとも言える。
 これらの例は鉄道開発のほんの一部。いずれの分野の鉄道にも言えることは、モーターやパワーコントロールシステムをはじめ動力部分の効率向上、車体の軽量化、転がり抵抗の削減といった各部の改善による環境性能や動力性能の向上が必要なこと。また、新エネルギーの積極利用、超過密ダイヤや複数路線の相互乗り入れを効率よく管制する運行システムの構築、車両および軌道のコスト削減、リサイクル性の確立など、技術開発の余地は依然として大きいということだ。車内アミューズメントなどのソフトの部分も大いに注目されそうだ。
 重工業分野の中ではエンドユーザーに非常に身近な存在である鉄道を巡る技術の進歩から、目が離せそうにない。
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ミニ運転列車
ミニ運転列車
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旧国鉄のかつての主力車両
旧国鉄のかつての主力車両
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鉄道開発への道 重工・重電系を中心に人材ニーズの幅は拡大傾向
 鉄道車両の開発と言えば、かつては旧国鉄や私鉄各社を中心に、限られた協力会社がプロジェクトに参画して行うという、非常にクローズドな開発体制であった。今日も全体の傾向が大きく変わったわけではないが、鉄道工学に関する技術のグローバル化が進んだこと、新技術の必要性に伴う技術分野の拡大、重工・重電系企業の中途採用の増加などにより、中途採用市場における人材ニーズは拡大傾向にある。
  リクナビNEXTでは「鉄道」「鉄道車両」「新幹線」など、鉄道に関するキーワードを設定することで求人情報をゲットできる。また、重工・重電各社、車体メーカーなどを社名で直接検索するのも手だ。

 求められるスキルは鉄道の種類によってさまざまだ。動力部分で人材ニーズが高いのは圧倒的に電気関連で、大型モーター(リニア含む)、インバーター、DC/DCコンバーターなど、強電関係のスキルは鉄道以外の分野であってもプラス材料。軽量化や空力性能向上など車体については、自動車メーカーやトラックの車体架装メーカーなど、構造計算に慣れた人材が求められる。
 また、理学系人材のニーズもある。特に超高速で何tもあるような車輪が高速回転したときにレールや車輪にどのような現象が起きるかといった動態シミュレーションなどの物理系スキルは、鉄道工学の進歩に直結するだけにラボへの転職も視野に入る。

 ソフトウェアエンジニアも鉄道関連開発に携われる余地は大きい。最も重要なのは列車の自動停止装置(ATS)やCTC(列車集中制御装置)のアップデートプログラム開発。列車をなるべくダイヤどおりに動かし、いったんダイヤが乱れても最適なダイヤ回復の手立てを提示するようなアルゴリズムづくりは、業務系ソフトの中でも相当に面白みの強い分野だろう。
 また、各車両間の動力の連携を取ったり、空調システムなど車内サービスを一括して運転席あるいは車掌室で行えるような車両間通信システム、あるいは車両と運行システム間の通信システムの高度化も重要で、通信インフラの人材は転職に有利なはずだ。
 鉄道の開発に携わるなんて、鉄ちゃんなどのオタクでなくても、エンジニアなら夢中になるはずでしょ。
鉄道業界のエンジニアニーズ
・ 鉄道車両開発のオープン化に伴い転職のチャンスが増大中
・ 重工・重電分野の中核技術系エンジニアは電気系での転職に有利
・ 鉄道の動態シミュレーションなどを行う物理系エンジニアのニーズも
・ 運行ソフト開発ではSE、車両通信では通信インフラ系人材にもチャンスが
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高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ 高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ
私の周りには鉄道マニアがいっぱい、いっぱいいて、実はそうした集まりにも入っており、月に1回「会合」があります。彼らは、乗る系、撮る系、見る系、ゲージ系、旅系、時刻表系、踏み切り系、駅弁系、妄想系……などと非常に細分化されているのですが、鉄分が極端に不足している私は、どこにも属することができません。いつも思います。このままでいいのか、と。

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