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中国、北米…建設計画が急増中!原子力発電プラントに勝機あり
新工場完成!荏原製作所が原子力発電事業で技術者募集
100年に一度とまでいわれる不況期に入った日本だが、今後が有望視される業界も少なくない。そのひとつが中国や北米を中心に建設予定が目白押しの原子力発電プラントだ。その主要部分である各種ポンプを製造する荏原製作所では、富津新工場でのエンジニア需要が本格化している。
(取材・文/総研スタッフ 高橋マサシ 撮影/関本陽介、平山論)作成日:09.01.13
Part.1:原子力発電用カスタムポンプで原子力ルネサンスに参入
 老朽化した原子力発電所の更新需要と併せて、2030年までに世界で200基が建設されるともいわれる原子力発電所。しかし、この20年ほどは新規建設の停滞期にあったため、プラントや各種部品を製造できる企業は限られている。ここで頭角を現しているのが、国策として原子力発電事業を進めてきた日本の主要メーカーだ。
2030年までに200基という原子力発電所の建設計画
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 荏原製作所には上下水道処理施設や産業用水処理施設などの環境事業カンパニー、真空ポンプや各種めっき装置などの精密・電子事業カンパニーがあるが、全社売上高の約6割を稼ぐのが、各種ポンプやタービンを製造する風水力機械カンパニーだ。そのうちの約3割、全社の約20%弱を売り上げるのがカスタムポンプ事業である。

「近年までは主に中東向けのオイル&ガス事業が中心でしたが、世界的な原子力発電所建設が続く現在は、原子力発電プラント用のカスタム(特注)ポンプを中心に積極的な海外展開を進めています。昨年は中国で10プラントの入札に参加し、海陽原子力発電所の製缶立型循環水ポンプをはじめ2つの受注を獲得しました。中国では2020年までに30カ所以上の原子力発電所を建設する計画があり、世界的な『原子力ルネサンス』の先駆けとなっています」

 原子力発電を推進するもうひとつの大国がアメリカだ。原発事故などを理由に新規建設を長年凍結してきたが、高まるエネルギー需要に加えて経済性、環境対策、化石燃料の減少などから大きく舵を切り替え、現在では30基近くの建設を予定している。

 ロシア、インド、南アフリカ、ヨーロッパ、アジア各国でも計画が増加し、2020年までに200基が建設されるといわれるが、問題は安全で質の高い発電所を作れる企業が少ないこと。その中で注目されているのが国策として原子力発電を推進してきた日本のメーカーだ。荏原製作所もポンプの製造メーカーで世界トップ5社に入る技術力を誇る。

前田東一氏
前田東一氏
風水力機械カンパニー
執行役員
カスタムポンプ事業統括副統括
兼 羽田工場長
来年稼働予定の富津新工場で設計製造ラインを立ち上げ
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製缶立型循環水ポンプ
中国海陽の原子力発電所に導入される製缶立型循環水ポンプ

 荏原製作所が原子力事業に注力する象徴が、来年4月の稼働を目指す千葉県の富津新工場だ。ほかの生産ラインとともに原子力発電用ポンプ専門のラインを新設し、設計、調達、生産技術、品質保証、検査までを一括して行う。北米の原子力市場への新規参入に対しては、アメリカの原子力発電所に納入する機器の製品認証制度である、「ASME-Nスタンプ」の申請を準備中である(Part2参照)。
 ただ、今後10年、20年の成長が見込める原子力事業を支える十分なエンジニアがいないため、リーダー候補を中心に各技術職を募集している。

「原子力発電用ポンプは部品ひとつまで素材や製造工場の履歴が求められ、非常に高い品質と安全性が必須となる特殊な分野です。ですので、全く同じ業務内容でなくても構いません。機械設計の経験者で原子力発電プラントを知る人であれば大歓迎で、ポンプの設計については私たちが教えます。あるいは火力発電プラント、産業機械、建設機械などの重電、重工業系の方であれば十分候補になります。何よりモノづくりが好きな方に来ていただきたいですね」

 採用されたエンジニアは富津新工場でのスタートメンバーとなり、それまでは羽田工場で各種業務に携わることになる。同工場には寮や通勤専用バスが整備される予定だ(Part3参照)。

ポンプを設計してほしいのは「技術者魂」のある人
IT主導でビジネスを変革するインフラ設計・構築
富津新工場全景
2010年4月の稼働を目指す千葉県富津市の富津新工場全景

 前田工場長は同社入社後に高圧ポンプを設計して以来、ほぼ一貫してポンプ設計を担当してきた生粋のエンジニア。そんな同氏にポンプ設計の醍醐味を聞くと、「ユーザーが思い入れをもってくれること」と返ってきた。
「ポンプは縁の下の力持ち。地味ですが必要な機械であり、さまざまな用途に使われるインフラの機械設備です。そのためにお客さんは、『自分の機械』として大事に大切に扱ってくれます。また、技術者として自分ひとりで隅から隅まで扱えるのが魅力であり、その分だけ責任は重い。構造は比較的シンプルでも非常に奥の深い装置です」

 原子力発電所建設が世界各国で進む中、現在そして将来に向けたエンジニア不足は容易に想像がつく。一方でこの大型エネルギープラントには失敗の許されない高い品質と安全性が求められる。そんな人材を一言で表すと……前田工場長は「今でも使われている言葉かわかりませんが」と前置きしながら次のように語った。
「『技術者魂』をもっている人がいい。そんな人ならぜひ弊社に来てください」

Part.2:将来の夢は「世界で通用する原子力エンジニア」になることです
 原子力発電用ポンプの仕事とは実際にはどのようなものか。ポンプの設計に6年、品質管理に6年の経験をもつ小野氏は、現在では富津新工場の稼働に向けたASME-Nスタンプ認定取得のチームリーダーを務める。ここでは小野氏の業務内容を軸にエンジニアの仕事を見ていこう。
原子力発電プラントの中核ポンプを設計
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小野 哲氏
小野 哲氏(36歳)
風水力機械カンパニー
カスタムポンプ事業統括
羽田工場
品質保証室 品質管理グループ
主任

 大学院で機械システム工学を学んで修士課程を修了した小野氏は、新卒で荏原製作所に入社。ECCS(非常用炉心冷却設備)ポンプの設計に携わる。沸騰水型原子炉の出力制御は、原子炉冷却材再循環ポンプの流量調整と制御棒により行われるが、冷却材の喪失時には制御棒を全挿入し非常停止させても、高温で炉心が破損してしまう可能性も考えられる。このときに緊急稼働して炉心を冷却し、破損を防止するのがECCSポンプである(図参照)。

「ECCSポンプは平時には運転されませんが、緊急時にはいかなるときでも運転できなければなりません。例えば、大地震が発生している最中でも冷却材が喪失すれば起動されなければなりませんし、それゆえに『絶対に運転する』という高い信頼性と機能を有することが要求され、その設計条件は非常にシビアです。ECCSポンプの製作は、設計から製造、性能・機能運転を行い出荷されるまでに2〜3年を要する、大きなプロジェクトでした」

異動を希望して国内外の品質管理業務を経験

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 ポンプ設計を6年経験した後、小野氏は希望して品質管理部門に異動する。主な仕事は、顧客の仕様をポンプの製造に反映させて実施する品質管理業務と、素材や部品を調達する海外メーカーに対する品質保証業務だ。

「設計在任時は原子力発電プラントのほか、海外のオイル&ガスプラント向けポンプも担当していました。お客様であるプラントメーカーさんとは、仕様決めなどに関してディスカッションや提案を行います。設計者としてポンプの技術的な話はできますが、製品品質を担保する製造要領や検査試験方法は知識が乏しいと感じました。一から勉強したいと思って現在の部署に異動したのです」

 ポンプの主要部品は、より高い製品品質を目指して、材料規格の要求事項に加えて「荏原仕様」で製作している。これは、国内で調達する材料のみならず、主に中国や韓国を中心とした素材あるいは製缶の海外メーカーに対しても要求され、「荏原流」の製造要領、検査仕様の指導を行う。特に、非原子力発電プラントでは海外調達比率が高いという。
 また、小野氏は現在、前述の原子炉再循環ポンプのポンプ回転体・カバーの取り替え工事のための部品製作を担当。原子炉圧力容器内の炉水を取り扱う非常に高い品質が求められるポンプであり、ECCSポンプの設計や海外案件の検査仕様の経験が役に立っているという。

富津新工場アメリカ参入のカギを握るチームリーダーに
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小野 哲氏

 アメリカの原子力発電所に納入するためには、製造工場がASME-Nスタンプというライセンスを取得しなければならない。現在はこの認定申請を準備中で、各部署の若手を中心に19人ほどのライセンス取得チームが結成された。チームリーダーに抜擢されたのが品質管理を6年経験した小野氏だ。

「今は専任で活動していますが、驚くほど厳しい規格です。それぞれの業務を行うために必要なスキル、スキルに達するための研修プログラム、その講義で使う教材などから、あらゆる場合を想定した責任者の確定など日本とはずいぶん異なります。審査が通らないとアメリカに参入できないので責任は非常に重いのですが、ハードルの高いライセンスであるからこそモチベーションも高いですね」

 そんな小野氏は荏原製作所を、「経験が浅くても大きな仕事を任せてくれる会社」と語る。横のつながりが広くて結集力が強く、仲間には気軽に相談できる。そのため、自分の意見を主張できるエンジニアに来てほしいそうだ。

「自分の扱ったものが工場で具現化されていくモノづくりは、最高に楽しいですよ。私は設計と品管を覚えて、今後は生産技術を本格的に勉強したいと思っているんです。また、ASMEの仕事を通して特別な知識が蓄積されていくはず。私の夢は、世界で通用する原子力発電エンジニアになることなんです」

原子力発電の簡易図(BWR型)
Part.3:来年稼働予定の富津新工場で中核メンバーを募集中
 原子力発電用ポンプで求められるのはどのようなエンジニアか。前田工場長にも語っていただいたが、限定された事業分野なので人材の母数が少なく、異業種出身者も広くその対象となっている。転換期にある荏原製作所で、新工場を背負う人材になれるチャンスだ。
原子力系でなくても機械設計経験があれば十分候補に
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「原子力発電所の建設はその多くが計画段階ですが、ニーズは顕在化し始めています。今後の10〜20年で数兆円の受注額を見込む原子力発電プラントメーカーもあり、われわれにも『協力は惜しまないので生産体制を準備してほしい』と声を掛けていただいています。部署の異動などで原子力関連事業にエンジニアを集中させてはいますが、人材は足りていません」

 人材を欠く理由は相次ぐ建設計画だけではない、原子力発電を進めてきた日本でもネガティブなイメージから新規建設が減少し、関連メーカーは徐々に原子力関連部署を解散して別の事業に人材を振り分けるようになった。そのため、現役の原子力系エンジニアが少なく、その技術が伝承されていないという事態が起こっているのだ。荏原製作所も同様で、いちばん少ないのは40歳前後の人員だという。

「例えば、以前は原子力関連のエンジニアだったが今は別の部署でマネジャーになっている方。もう一度原子力という分野にチャレンジしたいけれど異動が望めないというなら、ぜひ弊社に注目してほしいです。採用の中心は40歳前後のリーダー層とその候補ですし、原子力事業は品質に厳しく特有の考え方がありますから、即戦力になります」

 ただ、こうした経験者のみを対象としているのでない。基礎となるのは機械設計の経験で、プラントや産業機械など重電、重工業系の製品経験が望ましいが、自動車メーカーなどのエンジニアも含まれるという。職種は設計、調達、生産技術、品質保証、検査など製造ラインにかかわるほぼすべてで、各分野のスペシャリストと同時に、原子力発電用ポンプの全体像を把握できる人材に育てるという。その役目を担うのは40〜50代のマネジャー職で、彼らから技術を学び、将来の中核メンバーになってほしいという。

黒澤 信氏
黒澤 信氏
風水力機械カンパニー
企画管理統括部
人事室 人事管理グループ長
世界を舞台に原子力関連の技術を覚え、発揮するチャンス
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黒澤 信氏

 荏原製作所の求めるエンジニア像は、チームワークでのモノづくりができる人。優秀な図面が書ける設計者が必ずしも優秀なエンジニアではないという。
「設計者には視野が狭くなりがちな人もいますが、調整力があって着実な成果を出せる人が優秀なエンジニアだと考えます。セクショナリズムにとらわれず、関連する部門に配慮しながら仕事ができ、少しずつでも構わないので何らかの成果を出せる人です」

 転職エンジニアの活躍の場となるのが、来年4月稼働予定の千葉県の富津新工場だ。社員約200人、協力会社やパートナーを含めると400〜500人の所帯となり、ほとんどが技術職。羽田(天空橋)、横浜、川崎から同地まで通勤バスを運行し、工場近辺には独身寮や単身寮を建てる計画だ。同工場は同社のマザー工場となり、付加価値の高い各種カスタムポンプを製造するとともに、技術開発センターとしても機能する。

「弊社は創業が大正元年という100年企業ですが、今が転換期にあると思っています。風水力機械カンパニーのプレジデントも若手マネジャーと接する機会を早朝に設け、仕事内容を聞いたり相談に乗ったりしています。また、カンパニー全体で教育委員会を立ち上げる予定で、各事業で共通化できる技術を洗い出して共有化するなどのプログラムを開発中です。このような弊社で、成長著しい海外向けの原子力発電事業を一緒にやってみませんか?」

荏原製作所 http://www.ebara.co.jp/
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高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ 高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ
 小野さんは羽田工場の中で撮影したのですが、バカでかい装置や製品が並ぶ歴史ある工場って、なぜあんなに魅力的なんでしょうね。カメラマンと一緒に、無意識に「ウォー」って叫んでいました。まだまだ日本には底力があると思うのは、私の思い入れが強すぎるせいでしょうか。絶対に違うと思いますけど。

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