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出願数、内容、他社からの引用頻度…特許情報でわかる真の技術力 転職するなら特許に注目! キラリと光る会社の選び方
エンジニアが転職する際に重視する項目のひとつがその会社の技術力。その情報はマスコミの情報や業界のうわさ、人を通じて手に入れることができる。だが、そんな主観的な情報だけではなく、客観的な情報もやはり得たい。本特集では特許から企業の技術力を測る方法を伝授する。
(総研スタッフ/関洋子)作成日:08.04.15
Part1 特許はこんな見方ができる
 エンジニアであれば誰でも技術力のある会社で働きたいと思うもの。でも自分が携わりたい技術分野において、そこが本当に実力がある会社かどうかを判断するのは意外に難しい。そこで今回、Tech総研が提案したいのは判断の指標として特許情報を活用する方法である。特許はある技術に関してこれまでにはない卓越した成果が見いだされたときに、それを守るために生み出すものである。つまり技術力と特許力はほぼイコールの存在だと言い換えることができるからだ。

技術力は特許の量と質で判断できる

 ではどうやって特許を活用するのか。特許を書いたことのある読者なら「なるほど、特許保有件数を調べるのか」とピンときた人もいるだろう。確かに特許保有件数が多ければ、それだけ技術資産があるという証明のひとつになる。
 だが「数だけではなく、質も見なければ本当に技術力のある会社かどうかの判断はできないと思います」。こう指摘するのは、知的財産マネジメントや特許データの活用コンサルティングを手掛けているSBIインテクストラ コンサルタント・弁理士の後藤陽子氏である。
 同社では特許の量だけではなく質を見るための指標となる「PCI(Patent Competency Index)」を提供している。PCIとは公開されている特許情報を基に、その特許がもつ「権利としての強さ・広さ」「外部からの注目度」「自社の注力度」などの質的傾向を定量化したもの。そのいくつかある切り口の中でも、技術力の強さを最も端的に表すと考えられるのが「外からの注目度」だろう。被引用数や、その特許がどれだけ他社(他人)に閲覧されたかを表す閲覧請求回数などから求められるからだ。「被引用数」とは、ある特許がどれだけ他社の特許に引用されているかを表し、この数が多いほど基本的な特許である可能性が高い。これを分析したのが図1である。

 図1 サイテーション分析(引用関係)例
「顧客ニーズ・市場規模などの情報と併せて、特許情報を見ていくことで、自社のウリを見極め他社との差別化戦略を考えたり、また今後の技術開発をどう進めていくか検討されたりする企業の経営者や事業部門の責任者の方もいらっしゃいます。特許情報を積極的に活用していこうとしている企業が増えてきているんですよ」と後藤氏も語るように、現在では企業経営者も、権利としてだけではなく情報としての活用価値に注目している特許情報。これを見ることで、意外な注目企業が見えてくる。次に紹介するクレステックはその代表例だ。「同社がもつ電子顕微鏡の焦点調整に関する技術の特許は、他社に比べ圧倒的に質が高いんです」(後藤氏)
 ではSBIインテクストラの調査から技術力が高いと注目を集めたクレステックとはどんな会社なのか、見ていこう。
Part2 注目の企業:クレステック
高精度位置決め、動的焦点補正制御などの重要特許で32nm以降の超微細加工を可能に
電子ビームをコア技術に

 クレステックは電子ビーム(EB)技術を核に、電子線描画装置やマスタリング装置などの研究・開発、製造販売を手掛けているベンチャー企業。リソグラフィへのEB適用に特化した理由について、代表取締役の大井英之氏は次のように語る。
「現在、半導体の世界で32nmが限界だといわれているのは、レーザーを用いているからなんです。光は波長の2分の1が加工の限界です。例えばF2エキシマレーザーの波長は157nmなので、加工限界は80nm。それを液浸という技術を用いて32nmまで加工の可能性を高めているわけです」
 一方、EBは理論上では5nm以下の加工も可能だという。「この数値を見ればわかるとおり、EBには波長による加工限界がないということです。これからのナノレベルの超微細加工はEBが主役になるはずなんです」
大井英之氏
株式会社クレステック
代表取締役社長
大井英之氏
 しかもEBはリソグラフィに求められる超微細性だけではなく、高速性、制御性のよさも有している。「人類が手に入れた中で最高の道具だ」と大井社長は語る。
 そんなEBを使ったナノリソグラフィ技術だが、なぜクレステックが世界を牽引するだけの力をつけてこられたのか。
「EBのよさを生かした開発を行ってきたため」と大井社長。EBの難しさはその制御性のよさにある。大井社長いわく「制御性がよいということは、デリケートだということ。振動やノイズの影響を受けやすいんです。例えば工場の前の道路に自動車が通っただけでも、描画がずれてしまう」と言う。超微細加工において、微妙なずれは致命的だ。「これまでレーザー加工装置をつくってきた会社は、EBにもそこで培ったアナロジを適用してしまいがち。だが、当社はEBの技術としての筋のよさを信じ、そのよさをより引き出すことを前提として開発を行っている。開発のアプローチがまったく違います」と大井社長。筋がいい技術にも限らず、開発のアプローチを間違え撤退した企業もあるという。
 その成果が高分解電子線描画装置「XYZ CABL-9000Cシリーズ」や電子ビームマスタリング装置「Xθ型CEBR-3000」であり、また32nm以下の量産加工を目指して現在研究開発中の「面電子一括露光装置」というわけだ。

カスタマオリエンテッドな開発姿勢

 クレステックの強みは、EBに特化し、その特性を熟知した開発を続けているだけではない。研究・開発型企業には珍しく、「カスタマオリエンテッドを常に心がけています」(大井社長)ということだ。
「エンジニアはつい、自分のやりたいことだけを追求してしまいがちです。だけどそれでは市場とマッチングが取れない。ユーザーと密着することが大事なんです」

次世代HDD、次世代DVD向けの電子ビームマスタリング装置「Xθ型CEBR-3000」
次世代HDD、次世代DVD向けの電子ビームマスタリング装置「Xθ型CEBR-3000」
 クレステックの面白いところは、開発者であっても製品の納入まで立ち会うことを実践している。「実際にユーザーと接し、議論することでニーズをとらえることができるのはもちろん、演繹と帰納を往復する発想が身につくんです。最先端の分野で世界に先駆けて技術を開発していったり、筋のよい技術を見つけたりするためには、非常に重要なんです」と大井社長は言う。
 実は同社の特許の中には、ユーザーである大手メーカーとの共同出願も多い。それは大井社長の「カスタマオリエンテッドな開発姿勢」によるものだったのだ。

世界に伍して勝っていく意識

 また社員全体が「世界に伍して勝っていこうという高い意識がある」こともクレステックの強みとなっている。これは大井社長が掲げる「全世界の先端産業に製品とサービスを提供する」という経営理念が浸透しているからだろう。
 ナノリソグラフィ分野で世界をリードしているとはいえ、課題も多い。「欧州ではコンソーシアムを組み、10カ国の政府がバックアップしてEBを採用したパラレルビームマスクレス描画装置の開発に取り組んでいるのです」
 一方、日本が次世代リソグラフィ技術の候補として推進しているのは、「EUV(Extreme Ultra Violet:極端紫外光)リソグラフィです」と大井社長。そのほかにもナノインプリント技術という選択肢もある。しかし大井社長は「これらの技術は、住み分けて発展していくと思います。今年の12月までに面電子一括露光装置で20nmの解像度を実現する予定」と意気込む。
 面一括露光装置の開発は、まさにこれからが山場。人材もまだまだ不足しているという。
「基本的な素養があり、新しいことにチャレンジしたいという気持ちのある人、EBという技術を使い、ユーザーの役に立つ製品を開発したいという人にぜひ、私たちの仲間になってほしいですね」(大井社長)
クレステックの世界に誇る差別化技術:大電流・微小ビーム径 電子線鏡筒(EOC)
クレステックから学ぶ高い技術力を生む秘訣
Part3 「特許」を会社選びのひとつの視点として活用しよう
 クレステックはひとつの事例でしかないが、特許の分析で技術力があると判断された会社は、やはり高い技術力を有していることは間違いなさそうだ。では読者が特許を活用して技術力の高い会社を探したいと考えた場合はどうすればよいのか。
「特許庁のホームページに掲載されている、特許制度利用上位企業の出願・審査関連情報、日本における分野別公開数統計表・分野別上位出願人などを活用するといいでしょう。また、一部の企業では知的財産報告書やアニュアルレポートで特許に関する情報を公開しています」と後藤氏。これらを活用すると、企業の出願状況の情報が収集できるというわけだ。
例えばA社に転職を考えているなら、その技術戦略を知りたいですよね。その場合はA社の特許出願件数を見るわけです。特許出願件数が多い技術分野は、A社が注力している分野と判断できます」(後藤氏)
 だが注意しなければならないのは、特許が少ないからといって、技術力のない会社だと判断すること。
特許出願をすると、一定期間経過後にその内容が公開されます。また、特許の権利期間は原則20年間であり、権利期間が終了した後は誰でもその技術を自由に使うことができるようになります。従って、企業の中には、重要な技術を長い期間自社で独占使用するべく、特許出願を行わずに、技術をブラックボックス化し、社内でノウハウとして秘密管理する企業もいます。つまり、自社の技術を守るために、意図的に特許出願を行わないという選択肢もあるのです」(後藤氏)
 経営層の知財に対する意識が高まりつつあるこれからは、特許は注目しておいて損することはないはず。モノづくり企業への転職を考えている人はぜひ、技術力を判定する手段のひとつとして特許分析をしてみてほしい。その一歩として、特許を出したことのある人は、自身の特許が自社にとってどんな位置づけを担っているのか調べてみてはいかがだろう。

◆SBIインテクストラ株式会社
・事業概要
知的財産情報活用にかかわるコンサルティング、システムソリューション、技術分析
レポートなどの提供
・会社概要
〒106-6017 東京都港区六本木1-6-1 泉ガーデンタワー17階
TEL:03-6229-0780
URL:http://www.intechstra.com/
☆技術力の高い会社探しに役立つWebサイト
特許庁ホームページ「特許行政年次報告書〈統計・資料編〉」
http://www.jpo.go.jp/cgi/link.cgi?url=/shiryou/toukei/nenpou_toukei_list.htm
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関洋子(総研スタッフ)からのメッセージ 関洋子(総研スタッフ)からのメッセージ
近年、モノづくり企業においては、IR情報に特許の出願状況などを書いているようです。特許情報は、技術開発への投資を積極的に行っている、株主へのアピールにもなるからだそうです。本文にも書いたとおり、特許は件数ではなくその特許がいかに同業他社にインパクトを与えられるかどうか。興味のある企業が取得している特許を、そういう目で見てみたら面白い発見があるかもしれませんね。

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