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エンジニア給与“知っ得”WAVE! Vol.79
超大手はやっぱり高年収か?メーカー技術者の給与実態
製造業に勤めるエンジニアたちは今どのぐらいの年収を得て、どんな満足度で仕事をしているのか。超大手と中小では、給与はどのくらい違うのか。Tech総研は3092人のモノづくり系エンジニアを対象に、総合的なアンケート調査を行った。
(取材・文/広重隆樹 総研スタッフ/宮みゆき イラスト/kucci(クッチー) 撮影/加納拓也) 作成日:08.04.04
年収400万円台と500万円台がほぼ半数を占める
 今回の調査対象者の属性は以下のとおり。職種は、回路・システム設計(16.7%)、制御設計(10.8%)、機械・機構設計、金型設計(18.3%)、生産技術・プロセス開発(18.3%)、その他(35.9%)となっている。年齢は30〜34歳が30.7%と最も多く、ついで35〜39歳(27.4%)、25〜29歳(19.9%)、40〜44歳(18.9%)。居住地は全国におよぶが、関東地方が半数弱を占め、中部地方、近畿地方がそれぞれ2割弱。全体の55%が既婚者だ。

 今回はエンジニア給与の企業間格差を見るという狙いもあり、勤務先企業については、独自の分類を行った。それによれば、グローバルに展開する国内「超大手企業」14社に勤務する人が10.7%、上記超大手の関連会社、子会社、系列会社など「大手グループ企業」が11.4%、その他の大手企業で従業員数1万人以上が10.6%、1万人未満の準大手が15.1%、1000人以下の中堅・中小企業が41.3%、技術ベンチャー3.4%、さらに外資系が2.3%、派遣・受託で働いている人が5.2%という結果になった。大きく分ければ、従業員1000人以上の大企業とそれ以下の中堅・中小企業がほぼ半々という格好になる。

 役職については、「役職なし」との回答が55.2%を占めた。役職ありの人で最も多いのが「主任・係長クラス」34.1%である。学歴は大学(理系)卒が最も多く41.0%、修士以上も文理合わせると23.7%を占める。短大・各種専門学校・高専卒の合計は16.3%、高校卒は12.7%である。

 こうしたプロフィールをもつ3092人のエンジニアだが、全体の年収額分布をとらえると次のようになる。回答の多い順に並べると、最多が400万円台(401万円以上〜500万円以下、以下同様)の23.4%、ほぼ並ぶようにして500万円台(21.8%)がくる。以下、300万円台(15.8%)、600万円台(13.8%)、700万円台(8.9%)、300万円以下(6.4%)、800万円台(5.1%)となった。
超大手はやはり高年収。中堅・中小の不満があらわに
 年収額は企業規模、年齢による構造的な差がある。ここでは企業分類による年収格差を見るためにクロス集計を行った。回答のなかで年収が最も多いゾーンは、超大手企業勤務者では「800万〜1000万円」(18%)であるのに対して、大手グループ企業、その他の大手、外資では「600万〜800万円帯」に下降している。これが中堅・中小や派遣・受託になると最多ゾーンは「400万〜600万円帯」へとさらに低くなる。

 超大手とそのグループ企業の間にも歴然とした格差はあるようだ。超大手では「1200万〜1500万円未満」「1500万〜2000万円未満」「2000万円以上」といった“高年収層”がそれぞれ、12%、9%、8%いるのに対して、大手グループ企業では7%、4%、1%と減っている。反対に「600万〜800万円未満」「400万〜600万円未満」というより低い層の割合が、超大手に比べると増えている。

 いわゆる親会社──子会社間の給与格差。たとえ子会社のほうが、収益率が高い場合でも、基本給ベースは同等もしくは低く抑えられるようだ。ボーナスや一時金についても親会社を超えるような額は、労働組合といえどもなかなか提示できないという現状があるのだろう。子供は親を超えられないという、日本の企業社会の宿命ともいえる構造格差である。超大手とそのグループ企業との間の格差以上に、深刻なのは大手企業と中堅・中小企業の差であろう。

 一定の年齢帯内で比較してみるとその差はより歴然だ。30〜34歳帯では年収1200万〜1500万円未満の人のうち43%は超大手企業勤務者と、圧倒的に超大手優位。グループ企業や他の大手企業は18%にすぎない。ところが、中堅・中小、技術ベンチャー、派遣・受託ではこの年収に達する人は皆無。企業規模の差がほぼストレートに年収格差に結びついていると考えてよいだろう。
DATA1 1000万円以上の割合がこんなに違う!エンジニア30代前半の給与分布
DATA1 1000万円以上の割合がこんなに違う!エンジニア30代前半の給与分布
 年収額に対する給与満足度はどうだろうか。ここでも、企業規模の格差が出ており、企業規模が大きくなるほど満足度が高いことが明確になった。すなわち、現在の年収と仕事内容を比べたとき「見合っている」とする人の割合が、超大手企業では34%に達するのに対して、大手グループ、その他大手、準大手、外資では20%台、中堅・中小、技術ベンチャー企業では20%を割り込んでいるのだ。
DATA2 半数以上が給与は仕事内容に比べて安いと感じている
DATA2 半数以上が給与は仕事内容に比べて安いと感じている
 全体的には「仕事内容に比べて100万円程度安い」と考える人の割合が高く、超大手でも44%に達する。外資だけは34%と低くなるが、中堅・中小、技術ベンチャーでは50%以上になる。「50万円程度安い」と考える人も含めると、中堅・中小では実に80%、ベンチャーでは83%が現在の給与への不満が強いことがわかる。
最多年収ゾーンが高いのはどの業種か
 産業分野ごとの賃金構造の違いや、景況による影響は、年収の差ごとに最多年収ゾーンを調べてみた。すべての産業で最多ゾーンは「400万〜600万円未満」か「600万〜800万円未満」のいずれかに集となって現れているだろうか。その徴候を探るべく、産業分野(業種16分類)中している。
DATA3 産業分野でもこんなに違う!エンジニア給与の実態
DATA3 産業分野でもこんなに違う!エンジニア給与の実態
 その内最多ゾーンが「600万〜800万円未満」であるのは、「通信機器・設備」「半導体・電子部品」「家電・AV機器」「有機化学」「制御計測・検査機器・医療機器」「原動機・輸送機械」の6業種だった。統計上の数理からいうと、最多ゾーンだけですべてを語ることはできないものの、これら6業種はこの数年、好調をキープしている業界だけに、なんらかの関連性は見てとれよう。

 最多年収ゾーンを同じ年齢帯でみてみよう。業界間・企業間の年収格差が現れ始める30〜34歳帯では、最多年収ゾーンが「600万〜800万円未満」または「800万〜1000万円未満」と比較的上位にあるのは、「制御計測・検査機器・医療機器」「通信機器・設備」「半導体・電子部品」「コンピュータ・周辺機器」「家電・AV機器」「原動機・輸送機械」「有機化学」の7業種だった。それ以外の「重電機器・電気設備」「産業機械・工作/加工機械」「無機化学」などは最多ゾーンが下にずれている。

 近年は業種または職種を超えた転職もしやすくなっているが、もしも年収の多寡を転職理由の重要なものとしてあげるのであれば、これらの調査が一種の目安、いわば「年収相場表」として使えるのではないだろうか。
約3割が現在、転職活動中
 今回の調査では、エンジニアの転職意向についても聞いている。3092人のうちこれまで転職したことのある人は、44.7%に上っている。うち半数以上がこの5年以内に転職している。現在、転職活動をしている人も全体の27.7%を占めた。具体的な転職活動こそしていないものの、「今すぐに転職したい」人が5.2%、「将来は転職しようと考えている」人が28.5%あり、意識レベルでは、転職を意識しているエンジニアが多いことがうかがえる。

 今後転職するとすれば、「そのときもエンジニアを希望するか」という問いには91.6%がYESと答えている。転職希望先では超大手(46%)、大手グループ(46%)、その他大手(48%)、準大手(45%)の人気が高く、外資(21%)、中堅・中小(34%)、技術ベンチャー(23%)の人気は相対的には低い。明らかに転職では大手志向の流れがはっきりしている。
DATA4 もし今後転職するとしたら、どのような企業を希望する?
DATA4 もし今後転職するとしたら、どのような企業を希望する?
 とはいえ、企業規模だけをみると「1000人〜5000人未満」の企業に人気が集中しており、「5万人以上」の超大手は希望者が14%と意外と敬遠されている。ここには「超大手を望んでもそうたやすく転職できるものではない」などの遠慮や、あるいは「何万人もの社員がいる会社では、自分の個性をどれだけ生かせるか不安だ」というような慎重さが働いているのかもしれない。

 しかし、昨今の、自動車、エレクトロニクス、化学などの好調業種における超大手企業の大規模採用の事例などを参考にすれば、「超大手は無理」という遠慮は払拭するかもしれない。学生時代は就職氷河期で門戸を閉ざしていた企業も、今は大勢の転職者を迎えるようになった。こうした“リベンジ転職”や、いわゆる下請け構造の下流にいた人が、上流の位置にある企業に転職を果たす“上流転職”の例は確実に増えている。
スキルと並んで給与も転職では重要
 転職先を探す際に、いちばん重要だと感じる項目は「スキル(技術力向上、技術の幅を広げる)」が56.7%と最も多いが、給与や年収が気にならないわけではない。「転職しようと思って求人情報を見るときに、以下の項目をどの程度重要視するか」という質問で、高いポイントを得ているのは、「仕事で扱う技術」(「必要」という回答が76.2%)「仕事で求められる経験・スキル」(同76.1%)についで、「モデル賃金」(70.7%)だからだ。

 また、「転職するならどんな企業で働いてみたいか」という問いにも、「技術志向が高い企業」「自分の今の技術を生かせる企業」「自分の技術力や仕事を正当に評価してくれる企業」と並んで、「給与が同業他社よりも高い企業」が高位にランクされている。

 この、同業他社よりも高い給与をめざす志向は、現在の職種がなんであれ、一定の高い割合を占めているが、現在の勤務先が外資系である人に際だってそれが強い傾向が見て取れる。ほかの勤務先グループのこの項目に対する回答率が40%台であるのに対して、外資系勤務の人は64%と明らかにハイレベルの数値を示しているからだ。

あえて結論づければ、外資系転職では、国内系企業に比べて、給与志向性がより高いということができる。 最後に、転職に興味をもってはいるものの、「現在、具体的に転職活動をしていない人」(全体の72.4%)にその理由を尋ねてみた。多い順に挙げると「年齢が高すぎる」「転職失敗が怖い」「スキルが足りない」「転職活動をする時間がない」「会社の良し悪しが見極められない」などとなる。
DATA5 現在転職活動に踏み切れない理由は?
DATA5 現在転職活動に踏み切れない理由は?
 今の仕事、今の会社に対して、特に給与面で高い不満を抱えるエンジニアたち。それを解決するための手段として転職(とりわけ大手への転職)をひとつの方法として意識はしているようだ。年収格差が企業規模や資本の親子関係によって構造的に規定されているとすれば、年収を確実にアップするためにはその壁を自力で飛び越えるしかない、という考え方も強くなっていると思われる。

 それを踏みとどまらせているのは、やはり「失敗が怖い」といった不安だ。しかし、こうした不安は心理的な思いこみの要素が強いものだけに、実際に転職活動を始め、さまざまなデータを集めるなかで、次第に解消されていくはずだ。
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宮みゆき(総研スタッフ)からのメッセージ 宮みゆき(総研スタッフ)からのメッセージ
モノづくり系エンジニアに絞った大型調査を行ったのは久しぶりですが、以前に比べて転職への抵抗感がなくなってきたように感じます。製品におけるソフトとハードの融合やグローバル展開など、企業も変化していく中、求められる人材像もかなり変化しています。活躍ステージを探る上で、給与相場も大事な情報源。役立てていただけるとうれしいです。

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