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新卒入社1年でキャリアアップを狙った若手SEの転職

成長著しい独立系のベイカレント・コンサルティングへ

ベイカレント・コンサルティングは、経営コンサルおよびプロセスの策定からシステムの開発・保守までを提供する、独立系の新興ITコンサルティングファームだ。その成長は目覚ましい。人材の採用選考でも、スキルよりむしろ素養に裏打ちされた成長力を重視する。
(取材・文/須田忠博 総研スタッフ/高橋マサシ)作成日:08.03.31
ベイカレント・コンサルティング
応募したエンジニア 企業の面接担当者
登 幸一さん(当時24歳)
登 幸一さん
(当時24歳)
南部光良氏
執行役員
南部光良氏
当時の職種
SE
募集職種
システムコンサルタント/PM・PL候補
業務内容
世論調査システムの開発。
仕事内容
オープン・Web系業務アプリ設計・開発、プロジェクトマネジメント、DB設計など。
職務経歴
技術系大学卒。SEとしてソフトハウスに1年弱勤務。電子書籍管理システムや旅費精算システムなど業務用アプリの開発・保守を担当。
応募資格
不問。オープン系OS、オブジェクト指向系言語、RDBMSなどの知識、コンサルタントやPLの素養がある方を歓迎。
志望動機
SEとしての自分のスキルと可能性を試したかった。
募集背景
大手企業や上場企業を顧客とする重要案件の受注が増加しているため。
面接の流れ
人事部長が選考する。
マネジャークラスのシステムコンサルタント、またはリーダークラスの営業担当者が1対1で面接する。所要時間は約1時間。40分程度の筆記試験も行う。
技術部門のマネジャーまたは役員が1対1で面接する。所要時間は約1時間。
3日〜1週間のうちに連絡する。
【通過率:約3割】

【通過率:約3割】

Part1
転職理由
基礎スキルは十分と判断し1年で転職へ
[【Point1】あいさつを交わしたあと、南部氏は新社名の由来を説明した。実際の面接時は社名を変更して間もない時期だった。新しい名刺のデザインについて感想を聞くなどした]
南部:
 今、積極的に転職活動をされているんですか?
登:
 はい。
南部:
 【Point2】なぜ転職をお考えになったのですか?
登:
 【Point3】私が今の会社(ソフトハウス)に新卒で入ったのは、小さな会社で早く実務スキルを伸ばすためでした。大企業よりも開発現場に入るのが早いですし、どんどん仕事を預けられますし、上司や先輩との密着度も高いと考えたわけです。
 実際にそのとおりでした。まだ1年未満ですが、現場で経験した内容は大手・中堅企業に入った1年目のSEと比べものにならないくらいだと思っています。これは私の実感値にすぎませんが、基礎的な経験はもう十分と判断し、大きな企業でより上流の工程を担当しながら、自らの能力を伸ばそうと転職活動を始めました。
南部:
 なるほど。それは私と逆のパターンです。私は大手の外資系コンサルティングファームで力をつけ、その力で小さな会社に入り、有名外資系ファームを抜くくらいに大きくしようと、この会社に転職してきました。
 それで今、移ろうと考えている業態は何ですか? また、既に応募している他社はありますか?
登:
 業態はコンサルティングファームで、御社が最初の企業です。後は、これから考えながら選ぶつもりでいます。
まだ若いが、転職したいという意志は固い
南部:
 【Point4】今の会社への同期入社は何人でしたか?
登:
 私を含めて5人です。
南部:
 ほかの方たちは現在でも会社に残っているんですか?
登:
 いえ、1人が既に転職しました。
南部:
 どちらへ行かれたんですか?
登:
 業務アプリを開発する同業態の会社です。
南部:
 仕事が忙しいとのことですが、かなり忙しい?
登:
 はい。【Point5】徹夜もありますし、土・日出勤が珍しくありません。
南部:
 私も前職では無茶な働き方をした時期がありました。しかし、この会社に移ってからは楽をさせてもらっています。それで、ずばりうかがいますが、【Point6】転職の意志は固いのですか?
登:
 はい。決心しています。
南部:
 時期はいつごろを考えていますか?
登:
 切りのいい4月からと思っています。
Point1
[面接官]私は名刺交換をしてから少し雑談をします。内容はまちまち。応募者の緊張をほぐすためです。また、雑談の中から価値観や志向性がわかりますからね。
Point2
[面接官]面接の冒頭で転職理由をいきなり尋ねることが多いです。双方の信頼関係を測るバロメーターになるからで、率直な答えが返ってきた場合には、安心して次々と質問していけます。逆に胸襟を開いていただけないような場合には、私をもっと信頼してもらうための材料を示さねばと考えるわけです。面接では対等に信頼し合ってするものですから。
[応募者]この質問の答えは準備していましたが、自己紹介などがなくていきなり質問されたのには少々戸惑いました。
Point3
[面接官]この話から、彼のモチベーションの高さがうかがえます。セルフスタータータイプなのでしょう。
[応募者]私のセールスポイントのひとつになると思っていましたし、こういうタイプの人間だから、よく審査してほしいというメッセージになるだろうと予想していました。
Point4
[面接官]この質問は、勤務先の会社規模を把握するためにすぎません。社員数や売上高を聞くこともあります。ときには経営者のバックグラウンドを尋ねたりもします。経歴書には記載されていない情報を得たいからです。
Point5
[応募者]面接当時、私は実務経験が1年未満でしたが、開発現場での経験は十分に積んだと考えていました。そのことを客観的に証明するため、このようにはっきり言いました。
Point6
[面接官]転職の意志が固いことはわかっていたのですが、この質問はあえて聞きました。だから、彼の誠実なひと言の答えに突っ込む必要はなく、聞きっぱなしにしました。クライアントと向き合ったときにも、あいまいな答えや意図的なごまかしをしない人物と判断できるわけです。
Part2
大学時代の活動

小学3年生から現在まで続けているサッカー
南部:
 ところで、大学時代は何かサークルに入っていましたか?
登:
 サッカーをしていました。【Point7】サッカーは小学3年から続けていて、社会人になってからはフットサルです。大学時代の友人たちとチームを組んでいます。その一方で、地元の○○市では社会人リーグに参加しています。
南部:
 そうですか。私も前の会社にいたときは、プロジェクトのメンバーたちとときどきフットサルをしました。
登:
 フットサルは気分転換にいいですね。
Point7
[面接官]このように情熱をもって何かに没頭し、継続できるタイプは、エンジニアとしてもよい仕事ができるもの。成長もします。対象は何でもよくて、熱くなれた経験が大事なんです。
南部:
 そうそう。適度に汗を流せて爽快になれます。小学校のときにサッカーを始めたキッカケは何だったんですか? 『キャプテン翼』の影響とか?
登:
 ええ、それもあります。しかし、いちばんのきっかけは、学校の先生からサッカー教室に参加してみたらと勧められたことでした。
一軒の居酒屋で続けてアルバイト
南部:
 大学時代のアルバイトは何を?
登:
 ずっと居酒屋のキッチンで働きました。厨房で料理をしたり、もちろん皿洗いもです。
南部:
 同じ店で長く?
登:
 ええ、【Point8】1軒の店でずっとです。
南部:
 調理が上手なんですか?
登:
 いやいや、それほどでも。魚を下ろすくらいです。ヒラメの5枚下ろしとか(笑)。
Point8
[面接官]これにも好感をもちました。人間関係に破綻をきたさない。細かな調理作業に注意を払える。SEに必要な素養があるといえるわけです。
[応募者]一長一短があると考えていました。マイナスの見方をすると、学生時代のアルバイトは世の中を広く見るチャンスなのに、未知のところに踏み出す勇気がないとか、好奇心が乏しいとか、そういうとらえ方もできるからです。
Part3
幼少期の過ごし方、将来の希望
Jリーガーをあきらめて理系の道へ
南部:
 【Point9】小学校のころを振り返ると、どんな少年でした? やんちゃ坊主だったとか、優等生タイプだったとか。
登:
 好き勝手の遊び放題でした(笑)。
南部:
 家では「勉強しろ」などとあまりいわれなかった?
登:
 はい。私の両親は放任主義のほうでした。
南部:
 小学校のときでも中学校のときでもいいんですが、そのころになりたかった職業はありましたか?
登:
 やはりサッカー選手になりたかったですね。Jリーガーに憧れていました。
南部:
 それはいつごろまで真剣に考えていましたか?
登:
 中学2年の半ばくらいまででしょうか。全国大会に出られないレベルでは仕方がないとあきらめ、勉強のほうに向き直りました。
南部:
 なるほど。それで理系の大学にまで進んだと。
コーディングって、やっぱり面白い
南部:
 就職活動のときは業界を絞って探したのですか?
登:
 私は高校のときから理数科で、将来はコンピュータ技術者になろうと決めていたんです。ですから就活時はソフトハウスのみを当たりました。
南部:
 プログラマやSE職を選んだのはどうしてですか?
登:
 【Point10】高校時代はソフトを開発する仕事というイメージしかありませんでしたが、大学でC言語を学び、プログラミングの楽しさを知ったことが決め手になりました。
南部:
 コーディングって面白いでしょ? 一発で単体テストに成功すると気持ちがいい。
登:
 ええ、そうですね(笑)。
南部:
 【Point11】凝り出すと、見た目の美しさにこだわったりしますか?
登:
 はい。いかに短く、きれいに並べられるかなどです。
南部:
 テキストパッドは何を使っていますか?
登:
 秀丸です。
南部:
 秀丸も使い込むと結構使えますよね? モノづくりは好きなんですね?
登:
 はい。かなり好きなほうです。
南部:
 次に使ってみたい言語といったら、何ですか?
登:
 今はC#で仕事をしていますが、次はJavaを使ってみたいと思っています。
経験をみっちり積んでITコンサルタントになりたい
南部:
 将来的に、例えば5年後、10年後にはこうなりたいという希望があれば聞かせてください。
登:
 私はプログラマ、SEとして開発現場でみっちり鍛えられたと自負しています。
 【Point12】この経験を生かしたPL、さらにはITコンサルタントになりたいです。開発現場の実態や開発メンバーの気持ちを踏まえて青写真を設計し、それをわかりやすく伝える。その点が大切だと思っています。
南部:
 当社は最上流の戦略立案から設計・開発、リリース、運用保守までワンストップで手掛けています。登さんの考え方はそのとおり重要なことです。
(ここで南部氏は、ベイカレント・コンサルティングの特徴に言及。若くても力があればPLやPMに抜擢し、素養次第で何年か後にはコンサルタントになれると話した)
南部:
 このインダストリーに取り組みたいといった特別な思いは何かありますか?
登:
 現時点ではありません。いろいろな業界に携わる中で興味がひかれる業界に出合い、それを得意分野にできればと考えています。
南部:
 当社では担当業界別の組織体制をとっていません。いろいろな業界を経験できます。それがコンサルタントになったとき、顧客のニーズに応える引き出しになります。
登:
 わかりました。そういうステップを踏んでいきたいです。よろしくお願いします。
Point9
[応募者]小学校時代のことまで聞かれるとは意外でした。新卒時でも、そこまでさかのぼって質問する会社はありませんでしたから。
[面接官]幼少期の過ごし方が大人になってから作用するといったことはよくあるんです。私の偏った見方かもしれませんが、人物判定の材料にしています。
Point10
[面接官]この答えは選考上、極めて好材料です。エンジニアとしての原点を語ってもらった気がしました。若手を選考する場合、私は面接の中で参加プロジェクトの内容や使用技術に触れることは一切ありません。応募書類を見ればわかるからです。むしろ若手には、実務経験よりも素養が重要であり、価値観や学生時代のエピソードを聞いたほうが選考に役立ちます。
Point11
[面接官]こんなふうに話が展開したとき、私は応募者の表情がどのくらい輝き出すかに着目します。コーディングの面白さを心底感じたことがある人なら一発でわかります。
[応募者]このあたりの話はうれしかったです。この面接官は技術をわかっていて、しかも自分と同じように感じるんだと。
Point12
[面接官]この考え方は極めて有効です。登さんは自分自身の実体験から気づいたのでしょう。彼のポリシーとして評価できます。
面接官はココを見た!
●システムコンサルタントにふさわしい人物素養があるか。
●顧客と二人三脚で活動できる姿勢や考え方か。
●向上心をもって何かに情熱を注いだことがあるか。
 若手の選考では、実務経験や習得技術スキルの内容を面接で審査することはほとんどない。重視するのは人物素養。具体的には論理思考力、人物信頼性、コミュニケーションスキルを見る。仕事観の点では、顧客と同一地平に立って問題解決に当たれるかどうかを探る。一方、人物性向は情熱家であることを最もよしとする。どんな対象であってもよいので、継続的に向上心をもって取り組んだ体験が、過去にあったかどうかをチェックする。
登さんはコレで決めた!
「審査される感じではなく、雑談のような面接でした。
若い会社らしく、型にはまった面接ではありませんでした。
面接官の考え方にも共感しました。」
 ここの面接は、上からの目線で審査するというのではなく、おしゃべりをするような感じでした。フランクで話しやすく、どんどん心が開いていくんです。また、南部さんの考え方は私に似ているというか、賛同できるというか、同じベクトルと感じる個所が多々ありました。この共有感は大事にしたいと思いましたし、そのために入社には微塵も迷わなかったんです。
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高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ 高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ
好青年という言葉がぴったりな登さん。若いのにしっかりしているし、自分なりの目標も立てている。そして謙虚。こういう若手エンジニアは先輩からかわいがられて、よく面倒を見てもらえるんですね。すると本人は伸びるし、将来は後輩の面倒もよく見るようになる。何年かして、そんな姿になった登さんに会ってみたいものです。

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