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明日に向かってプログラめ!!PARTU vol.6/10 木屋善夫@ドラゴンスレイヤーは、バイクや無線に熱くなる
WiiもPS3もXboxもなかった20年以上前、PC-8801やFM-7で動いていたPCゲームに、当時のパソコン少年たちは夢中になっていました。「ドラスレ」「ザナドゥ」「ソーサリアン」……これらを開発した伝説のプログラマは、取締役になった今でも、現役でプログラムを楽しんでいました。
(取材・文/総研スタッフ 高橋マサシ 撮影/関本陽介)作成日:08.02.22
プログラミングとは、趣味である
木屋善夫さん
「ソーサリアン」のドラゴンモードから対キングドラゴン戦 (画像提供:森瀬繚氏[クロノスケープ])
「ソーサリアン」のドラゴンモードから対キングドラゴン戦
(画像提供:森瀬繚氏[クロノスケープ])
クレアンスメアードで開発した「大逆鱗U」
クレアンスメアードで開発した「大逆鱗U」
ドラスレ、ザナドゥ、ソーサリアン……俺の言うとおりに!
木屋さんといえば、ドラゴンスレイヤー(ドラスレ)シリーズの開発者として有名で、初代のドラスレからザナドゥ、ロマンシア、ソーサリアン、英雄伝説、風の伝説ザナドゥなど、ゲームソフトの大ヒットを連発されました。
 もう20年ほど前の話ですが、今でも熱烈なファンが多いんですよね。当時は開発プログラマであり、プロデューサーでもあったわけですか?
何でもですね。シナリオは若手に書かせていたのですが、どうしても出来が粗削りですから、私がセリフも含めて全部書き直していました。また、テストの段階で気に入らないところがあると機能を見直したりね。音楽などの専門的な部分以外はすべてかかわっていたかな。
 私はもともとゲーム好きなので、自分で遊びたいゲームをつくっていたんです。メンバーには、「とにかく俺の言うとおりにやれ!」みたいな感じで(笑)。
かなり自由な開発体制ですね(笑)。開発期間はどのくらいだったのですか?
だいたいチームが3〜4人で、制作期間は6カ月ほど、その後で移植作業がありました。対応機種はPC-8801、FM-7、X1、PC-9801などで、複数のモデルをもつ機種もありましたから、移植には手間が掛かったんです。それでも1年1タイトルのペースで新作を出していました。
木屋善夫さん
先日、木屋さんに取材にうかがうことを友人に話したら、「ザナドゥは子供のころスゲえやったなあ……」とノスタルジーに浸っていました。出荷本数は40万以上といわれ、現在でもこの記録を超える国産PCゲームソフトはありません。
ザナドゥ(1985年発売)は、記録媒体がカセットテープからフロッピーディスク(FD)に変わった時期でした。FDだとランダムアクセスなので大きな容量を使えるんですね。何せ当時はCPUがZ80で8ビット4MHz、メモリが64KBの時代ですから(笑)。
 ですから、ゲームのスペックを出したら「そんなのあり得ない!」と言われました。こちらとしてはそんな反響を見込んでのコピーだったのですが。
木屋さんは日本ファルコム時代にドラスレシリーズを、日本アプリケーションで大逆鱗シリーズを出しておられますが、特に思い入れのある作品といったら何ですか?
難しいですね……プログラマとして気合が入ったのは「ソーサリアン」(1987年発売)かな。ザナドゥまでは、ゲームにルールを作って遊んでもらっていましたが、ソーサリアンでは物語性を入れてRPGとしてシナリオを考えました。そのプロトタイプが「ロマンシア」で、「ソーサリアン」へと発展させたわけです。
プログラマと企画の関係をどう思いますか?
プログラミングで大切なことは、やりたいこととできることのバランスだと思うんです。例えば、どんなに面白くても速度が遅いゲームではユーザーは楽しめません。その点プログラマなら、「ここの余白を削れば速度が上がる」とか「余ったリソースを使えば別の機能が作れる」などがわかります。人の書いたプログラムを見て、「ここにこだわるなら削って速度を上げればいいのに」などと思うこともありますからね。
 ですので、限られた実用範囲の中でスゴイことを企画・実現するには、プログラミングの知識が欠かせないと思います。
 企画者として思うことは、常にゲーム初心者の目線でいることです。ゲームをつくり込んでいくと、どうしてもマニアの感覚に同化していきます。しかし、ベテランユーザーへの配慮がすぎると、初心者の敷居が上がって新しいユーザーが増えず、総ユーザー数は徐々に減っていく。根っからの構えたゲーマーではなく、「ゲームでもやってみるか」といった初心者ユーザー層が増加している昨今では、ゲームの入り口をより広めるべきだと思います。
プログラムから言語開発者の思想が見えてくる
どのようにしてプログラミングを始めたのですか?
20歳くらいのときに、何となくヒマで、パピコンと呼ばれていたPC-6001を買ったんです。当時はPCでできることなど限られていましたから、ゲームでもつくるかと。しかし、現在のように書店でマニュアル本が売られているわけではなく、インターネットも当然ありません。PC本体に付属していた教則本を読みながら、まずは手探りでBASICを覚えていきました。
 一方で私はパソコンショップの常連でして、その店がアップルコンピュータ(現・アップル)の代理店をしていた日本ファルコムでした。あるとき、店長(創業者の加藤氏)につくっているゲームがあると言ったら、「売ってやるよ」と。それで1本つくるたびにモニターをもらったり、プリンタをもらったり(笑)。
物々交換ですか。何だか牧歌的ですね(笑)。そして日本ファルコムに入社されたと。
ええ。そのころはドラスレをつくっていて、入社後に発売されました。仕事をもっていて、あくまで趣味でしたから、開発には半年弱くらいかかりましたね。
木屋善夫さん えっ。ドラスレは木屋さんが趣味でつくったものだったのですか? しかも、半年足らずで完成させた? そう聞くと根っからのプログラマに思えますが、当時は自動車整備の仕事をされていたんですよね。
自動車整備の専門学校を出たので、最初は検査主任みたいなことをやっていて、自動車検査員の資格を取ってからは、車検の最終チェックなどの仕事をしていました。私が社会に出た当時は、パソコンで就ける職業があるとは思えない時代だったんです。趣味でゲーム開発を続けるうちに面白くなり、徐々に仕事にできるかなと思い始めました。
そうして数々のゲームのプロデュースと開発をされたわけですが、今のお仕事はゲーム事業というよりポイントのシステムやサービスの構築が中心で、役職も取締役CTOですね。具体的にはプロマネを指示するとか? 木屋善夫さん
いえ、プログラマですよ。正確に言えばPL。自分でガリガリ書いてます(笑)。ひとつの仕事が終わると「もうやめよう」と思うのですが、いつの間にかまたやっている。私にとってプログラミングは、仕事ではなく趣味なんです。こんなに面白い作業はないですから。
自由にゲーム開発ができた環境と異なり、今のお仕事は受注開発が多いようですね。何かと制約が多いと思いますが?
お客さんは希望はあっても作り方を知らないですし、仕様の制約はあってもプログラミングはこちらにお任せです。私が仕様まで含めて担当しているので、プログラムの都合で仕様を変更する場合もあります。
 仕事もさまざまで、ポイント制のモバイルサイトを構築したり、パソコンの中で泳ぐキャラクターをつくったり、デジタルコンテンツに指紋をもたせるという著作権保護技術に、東大や東北大の先生方と取り組んだこともあります。
 私たちは技術から理論に入るけど、大学の先生は理論ありきの技術なんですね。真逆な見方が勉強になりましたし、おまけにプログラムがきれいだと褒めてもらいました(笑)。
木屋さんにとってのプログラミングの魅力を教えてください。
言語をつくった人の意図がおぼろげに見えてくるところですね。例えば、C言語にはCコンパイラがありオプティマイザーがある。何げなくプログラムをコンパイルしてアセンブラのコードを出すと、ある箇所を組み替えるだけで効率が上がったり早くなったりする。こうした仕組みは、言語の開発者が最適化のためのオプティマイザーに何らかの意図を込めたためだと思うんですね。
 あるいはPHPは粗削りな言語ですが、多くの支持も受けている。開発された当初の意図ではある構造がつくられたものの、歴史の流れを見てくると別の考えが入り、段階を経て、最終的に現在の形になったわけです。こうした使い方の特徴やクセから、開発者の考え方が「ああ、なるほどねえ」とわかってくる。確認したわけじゃないから違っているかもしれないけれど、そこはとっても面白いなあ。
好きな趣味を始めると2年間は夢中になる
プログラミング以外の趣味もたくさんおもちのようですね。バイクとか。
今でもCB750(上の写真左)で通勤していますが、昔から乗っているので趣味というより日常ですね。日本ファルコムにいたときは社長から「クルマを買ってやるからバイクに乗るな」と言われて、5年ほど降りていたのですが、その後で限定解除免許を取って大型バイクに乗り始めました。
 運転免許試験場では、交通機動隊の方たちと一緒に練習できるんです。私も府中によく行きましてね。何人かと一緒にコースを走るのですが、上級者ほど前に出てかっとんでいる。ほら、機動隊のバイクは白バイだから、車体の横にエンジンガードが付いているでしょう。彼らは車体を倒せないので、うまい人だと白バイの前に出られるわけです(笑)。
先ほどの話ですが、本当にクルマを買ってもらったんですか?
最初はカローラで、ソアラを何台か乗り換えて、最後はエスティマだったと思います。
スゲっ! アマチュア無線もご趣味で、ご自分で鉄塔を建てたとか?
30歳くらいから始めたのですが、「努力でどこまで電波を飛ばせるか」には特別な醍醐味がありますね(上の写真中)。そのために自宅の庭に高さ20mの鉄塔を建てたのですが(上の写真右)、ここ(青梅近辺)から北海道まで届きました。ただし、かなりお金が掛かった(笑)。
 キャンピングカーでのオートキャンプに凝った時期もありますし、オンラインゲームにハマったときもあります。特に「フリフオンライン」は2年くらい夢中になっていて、情報サイトも立ち上げていたほどなんです。そうそう、2年間。私は何にでも夢中になってのめり込むのですが、2年くらいで飽きてしまうんです(笑)。
木屋善夫さん
  今は何に夢中なんですか?
それがない時期でして、本ばかり読んでいます。今は佐伯泰英さんが好きで、「居眠り磐音」シリーズなど彼の本ばかりですね。もともと時代小説は好きで、「英雄伝説」をつくっていたころは吉川英治、「風の伝説」のときは司馬遼太郎でした。だから、ゲームのセリフが時代劇っぽくなっている(笑)。
多くの読者が期待していると思うのですが、ゲーム開発はもうしないのですか?
事情があって中断しています。うん、またやりたいなあ。
木屋善夫さん 木屋善夫さん(47歳)
1960年生まれ。自動車系専門学校卒業後、自動車整備会社に入社。自動車整備士として働く傍ら趣味でプログラミングを始め、当時アップルコンピュータの販売代理店だった日本ファルコムに自作ゲームソフトを持ち込む。これをきっかけに同社に入社し、商品化された「ドラゴンスレイヤー」が大ヒット。
同ソフトはその後シリーズ化され、木屋氏の指揮の下で「ザナドゥ」「ロマンシア」「ソーサリアン」などが誕生、PCゲーム黎明期の一時代を築く。1993年に日本アプリケーション(現・クレアンスメアード)に入社。現在は取締役CTO兼開発統括本部長。
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高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ 高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ
スマートでハンサム、そしてとてもフレンドリーな木屋さん。実は愛車のCB750と一緒に撮影する予定でしたが、大雪のため中止に。そのためヘルメットを手にした撮影になったのですが、それでも絵になるのはスゴイ。もう一度ゲーム開発の現場に戻ってほしいと思うのは、私だけではないはずです。

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