|
|
|
リピート率8割という数字に表れる広告効果の高さ 広告・宣伝は企業の製品、サービスの人気度や売り上げを左右する重要なコミュニケーションである。近年、広告の世界で高い伸びを示しているのがインターネット広告だ。雑誌や新聞などの紙媒体の広告を減らしてインターネット広告にシフトするケースも増えてきており、広告業界の売り上げに占める割合も年々高まっている。インターネット広告で重要視されるのは、いかにターゲットユーザーに的確に広告を配信するかということだ。企業は広告効果を高めるため、自社の製品やサービスのターゲットとなるユーザーが多そうなサイトのリサーチを行うなど、さまざまな工夫を凝らしている。 そのインターネット広告分野で、広告効果の高さゆえに注目を集めていのがシリウステクノロジーズの位置連動型モバイル広告システム「AdLocal」である。 「AdLocalは、広告主の近くにいるユーザーに広告を配信するというシステムです。今日の携帯電話にはGPS情報、基地局情報、地図緯度経度情報など、さまざまな位置情報が発信されています。その位置情報を有効利用すれば、広告主の近くにいるユーザーの携帯サイトに、的確に広告を表示できるのではないかというのが着想の発端でした」 AdLocalのサービス開発に携わる、ユビキタスプラットフォーム事業部の安藤連氏は、開発のきっかけについてこのように語る。 インターネット広告といえば通常、不特定多数のユーザーに同じ内容の広告が表示される。車や家電などの製品広告やネットショップの宣伝など「全国区」の広告であればそれでもいいだろうが、レストランや店舗型のショップといった地域限定型では、例えば北海道のユーザーに福岡のレストランの広告が配信されてもほとんど意味がないように、広告効果は半減してしまう。AdLocalは携帯電話サイトに文字広告を配信するアドサーバー(広告サーバー)の仕組みに、「距離の概念」を持ち込んだのである。 「実際にAdLocalをリリースし、サービスを開始してみたところ、予想以上に高い評価をいただきました。クライアントのリピート率が8割以上という数字も、広告効果の高さを裏付けていると自負しています。店舗系の広告のほか、地域にマッチしたアルバイト求人なども広告効果が高く、採用コストが下がったという声が寄せられています」(安藤氏) 現在、AdLocalが文字広告を配信しているモバイルサイトは、若者に人気の高いゲームSNS「モバゲータウン」、カカクコムのレストラン検索サイト「食べログ」など30以上に及んでいる。 広告主の基点(住所)の近くにいるユーザーに広告を配信するシステムは、一見簡単なようにも思えるが、技術的には決してやさしいものではない。基本原理は取得された携帯電話の位置情報をもとに、データベースから広告データを検索し、モバイルサイトにAPIとしてXML形式で送信するというもの。表示はサイト側でタグを解析することで行う。 |
高速化や新機能追加など、システムは現在も進化中 |
「開発過程では、さまざまな困難がありました。システムは基本的にJavaプラットホームで、EJB準拠のJBossアプリケーションサーバーなのですが、第1世代のV1は配信に数十秒もかかってしまうなどレスポンスがあまりにも悪く、結局リリースすらできませんでした。そこで第2世代のV2ではEJB2準拠に進化させつつ、データベースのディレクトリを細分化してリクエストに対するレスポンスの速度を高めるなど、データ読み出しのアルゴリズムを改善しました」 AdLocalの開発エンジニア、堀川洋二氏はシステム改良の経緯をこう振り返る。 「実はそれで終わりではありませんでした。V2ではXDocletの設定や、『何もやっていないJavaクラスがたくさん残ってしまう』という問題等に苦労しつつも、20mm秒へと大幅な高速化を達成しました。しかし、V2で採用したEJB2ではサービスを追加するたびにプログラムの改変に手間がかかってしまうため、肥大化したクラスを生成しない高効率なEJB3準拠の第3世代、V3を作りました。これによって機能付加が簡単にできるようになり、ようやくAdLocalのビジネスがスムーズに回るようになりました」(堀川氏) インターネット広告配信は、配信を可能にする技術開発と、どのような配信をすればよりよいサービスが展開できるのかというサービス開発が、表裏一体になったビジネスモデルである。V3になった今日、「新サービスのための機能付加の案件は、位置情報以外のユーザー属性を考慮した配信をはじめ、100件以上ある」(安藤氏)という。単に高性能なデータベースや配信システムをつくるだけでなく、そうした新サービスのための改良を容易に行えるようにすることも、大切なことなのだ。 シリウステクノロジーズでは、基本システムが完成した今もソフト開発部門に7人を置いている。要件定義や仕様書の策定からコーディング、デバッグまで、すべての工程を内製で行っているという。 「携帯サイトへの広告配信システムの設計は、機器のリソースが限られた携帯端末でもスムーズに表示されること、携帯キャリア単位での変更、また将来的なビジネス展開への対応のしやすさなど、多くの点に配慮しながら行う必要があります。システムエンジニアとしては、技術開発とビジネスセンスの両方をいっぺんに磨くことができるという点で、本当にやりがいが感じられる仕事だと思います」(堀川氏) インターネット広告の市場は、今後も高い成長性を保つと予想されている。その市場でイニシアチブを握るためのカギとなるのは、やはり技術力なのだ。 |
|
インターネット広告配信の市場は年々拡大傾向にあり、エンジニアの人材ニーズもそれに伴って増加している。広告配信システムを手がけているのは大手ASPからベンチャー企業までさまざまだが、企業規模が大きければ技術力に優れているというわけではない。つまり、ベンチャー企業に入社しても大いに活躍できるのがこの業界の特徴だ。 リクナビNEXTでは「ネット広告」をキーワードに検索すると、営業やWebクリエイターなどに交じって技術開発職の求人情報を見いだすことができる。また、ネット広告配信プラットホームの開発を手がけている、ソフトハウスのHPで求人情報を直接探すのも手だ。 転職に際しては、データベース、Webアプリなどインターネット関連の知識や経験が要求される。だが、先端技術開発というよりはサービス開発の性格が強いため、基本的な知識を持ち合わせていれば面接まで望めるケースも少なくない。DBエンジニア、SE、プログラマなど、ソフト開発経験者全般にチャンスがあるといっていいだろう。 データベースまわりではJava、SQL、MySQLなどの基礎知識があり、ER図を作成できればOKだろう。ピーク時には1秒間に数百件のリクエストがあるネット広告配信では、パフォーマンス向上のカギを握るスループット引き上げにニーズが強い。DBアーキテクチャの設計経験があればさらに有利だ。 アプリケーション開発では、携帯電話かPCいずれかのWebアプリ開発経験があれば大丈夫である場合が多い。今後は携帯端末向けの配信技術のニーズが特に高まるとみられているが、PCとモバイルの違いはフロントエンドの部分に集中しており、バックエンドの部分はさほど変わらない。 当然、モバイルのほうがCPUやメモリなどハードウェアの性能の制約が大きく、複数の通信キャリアに対応させる必要もあるなど、設計には工夫が求められる。ただ、基本的なスキルや経験は両者間で流用可能だ。 Webアプリ以外でも、業務系パッケージソフトやゲームなどのソフトウェア、コンシューマ向けテスティング、デバッグなどのスキルなどの経験をもっていれば、転職は十分可能だろう。要件定義や仕様書作成などの経験があればなお有利だ。このようにソフト系エンジニアであれば転職しやすい、非常にすそ野の広い有望業界なのだ。 |
|
|
||||
このレポートの連載バックナンバー
厳選★転職の穴場業界
転職するならこれから成長する業界へ。その中核となる企業に取材し、ブレイク必至の業界動向とエンジニアニーズを探ります。
このレポートを読んだあなたにオススメします
地方の老舗店と提携、JR九州とコラボ、モバゲーでゲーム……
日本を元気に!“位置ゲー”のコロプラが止まらない
携帯電話のGPS機能を使った位置情報ゲーム、「位置ゲー」で断トツ人気なのが「コロニーな生活☆PLUS」だ。コロニーの育成にハマる…
Hadoopを始めとする高度な分析技術、独自の広告効果測定技術etc.
サイバーエージェントが拓くネット広告の高度分析技術
サイバーエージェントのインターネット広告代理事業。現在、個別ユーザーの関心に応じた広告を表示する高度な分析技術をはじめ、インタ…
昨年末から組込み開発経験者をターゲットに求人ニーズが拡大中
今が好機!スマートフォン開発エンジニア採用最前線
アップル社「iPhone」の人気に加え、今年に入ってからはAndroid端末のスマートフォンがNTTドコモ、KDDI、ソフトバン…
大学卒業を待たずに応募した学生エンジニアの即戦力転職
ネットの「楽しい」を創造し続けるウノウへ
映画ファンにはおなじみの新作映画情報サイト「映画生活」、写真や動画を核にしたSNS「フォト蔵」を運営するウノウ。一味違ったネット…
技術力+コミュニケーション能力で仕事の幅を広げたい若手SEの転職
SNS「GREE」で独自路線を突き進むグリーへ
SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)の「GREE」は2004年2月にサービスを開始。国内の同種サービスでは草分けに当たり…
やる気、長所、労働条件…人事にウケる逆質問例を教えます!
質問を求められたときこそアピールタイム!面接逆質問集
面接時に必ずといっていいほど出てくる「最後に質問があればどうぞ」というひと言。これは疑問に思っていることを聞けるだけで…
あなたのメッセージがTech総研に載るかも