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派遣社員時代に培った技術が高い市場価値に! 自動車メーカーに転職して地位を築いたY.Eさん
人気の自動車業界への転職は狭き門とされる。有名大学を出て、著名企業で高度な技術スキルを磨いた者しか入れないのだろうか。Y.Eさんは、技術者派遣を経て大手完成車メーカーに転職した。彼の転機はどこにあったのか見ていこう。
(取材・文/中村伸生 総研スタッフ/山田モーキン)作成日08.01.21
エンジニアの転職市場において、転職希望者にとって最も心強い武器になるものは、学歴でも前職企業のネームバリューでも人柄でもない。何と言っても、身につけているスキルの内容とレベルが問われる。当たり前のことのようだが、市場価値の高いスキルが何よりの武器となるのだ。では、そのスキルを、いつ、どこで身につけたらいいのか……という話になるが、チャンスはどこにあるかわからない。ここに紹介するY.Eさんは、技術者派遣のエンジニアとして某自動車メーカーに勤務していたときに、後に業界内で主流になる生産技術を学ぶことができた。派遣であっても先端技術に触れられる可能性があることを、Y.Eさんの例が証明している。あなたが今取り組んでいる仕事で得られる技術も、近い将来に転職市場で価値が上がるものかもしれない。
Profile 自動車メーカーC社 品質管理部門係長 Y.Eさん(36歳)
夜間の大学卒業後、技術者派遣会社に就職。自動車メーカーA社とカメラメーカーB社への派遣を経て、28歳の時に正社員として自動車メーカーC社に転職。順調にキャリアを重ねる。
転職前(カメラメーカー
生産管理エンジニア・28歳)
転職後(自動車メーカー 品質管理部門係長・36歳)
年収400万円(残業代込み) 給与 年収650万円
約14時間(連日の残業) 勤務時間 約11時間(ピーク時は14時間)
長野県の工場に近接した生産技術部門 職場環境 神奈川県の工場に近接した品質管理部門(かなり都心に近づけた)
派遣という立場のせいか、薄い人間関係。業務管理者と評価者が別で、仕事に意欲がわかない。 職場の
人間関係
直属の部下が1人ついているが、生産技術の現場では数十人を指揮。上からも下からも頼られる存在
組立/生産技術の導入。それに伴うドキュメント作成 仕事の
中身
品質管理(不具合対応)を支援する生産技術導入計画のリーダー
言われたとおりに仕事を進めるだけ 仕事の
進め方
自分で計画を立案し、部下やグループメンバーが実行。マネジメントが主体の業務
今回の注目!
代わりのきく作業員 仕事の役割 品質管理、生産技術向上計画において主導的な立場。いなくなると困るような存在
転職前編 派遣社員として最新の生産技術を学んだが……。
夜間の大学を何とか卒業したものの、時代はバブル崩壊から経済が立ち直れない日々が続き、就職しようにも氷河期真っただ中。電子工学を専攻したので、メーカーの正社員として技術職に就きたかったのだが、諦めざるを得なかった。それで妥協策として技術者派遣の会社に就職。大学時代、昼間にメーカーの試作エンジニアとして働いていたことが評価されたらしく、すぐに自動車メーカーA社に派遣された。

A社ではボディーの生産準備にかかわった。品質向上につながる新しい取り組みとして、量産に入る1年ほど前から生産設備を立ち上げ、ラインを流れる製品に不具合が出なくなるまで製造設備を作り込むという、抜本的な生産品質の追求である。ここで三次元測定器や専用のチェッカーなどの使用方法を習得。精度を上げていくノウハウを磨いた。

これらの業務を通して、最先端の自動車生産技術を学ぶことができた。なぜ、そんな高度な技術を派遣社員に任せたのかといえば、その当時は実験的な要素が強かったからである。A社では、この方法で品質向上に大きな効果が見込めたならば、全社的に取り入れていこうというスタンスだった。ただでさえ派遣社員の存在感は薄い。それが嫌で、この技術を貪欲に取り込もうとした。ただ仕事を流していたのでは、代わりのきくエンジニアとして見られるだけだと考えたからである。

だが、そのころは、この生産技術に関するスキルが、どれほどの市場価値をもっているのか見当もつかなかった。そして体力的にキツい仕事だった。頭で製造上の課題解決案を考えるだけでなく、重量のある加工装置やロボットを移動・設置し、手動で部材や部品を運んでテストする作業の連続には力が必要だったからだ。それに、精度が一定基準内に収まらないと、徹夜してでも対応策を考え、量産予定日までにラインを仕上げなければならない。3年ほどたったころ、このような多忙かつ不規則な業務から逃れようと、派遣先の変更を願い出た。

次に派遣されたB社はカメラメーカー。やはり生産技術担当だった。何十キロもの鉄板をプレスするような自動車と違い、ミリグラム単位の部品を組み立てる工場だ。体力的な負担はかなり減った。

ところが、何となく仕事がつまらない。あれほど大変だと思った自動車の生産技術の仕事が懐かしくなった。小さくて精密なカメラよりも、ダイナミックな製造ラインを組む自動車の生産技術を極めるほうに、あらためて醍醐味を感じたのである。それに、相変わらず仕事は多忙で、夜中まで残業が続いた。これでは前のほうがかなりマシだった……と、思い込むようになってきた。
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転職活動編 自分の市場価値を知って、正社員採用にチャレンジ。
次は派遣先を変えてもらうような、小手先の業務変更をしようとは思わなかった。転職を強く意識したのである。その背景に、自分の価値を知ったことがある。派遣会社の事務方に、自分の対価としてB社が月々いくら支払っているか聞いたところ、驚いたことに、毎月100万円弱も支払っていることが判明したのだ。

ただ、自分の技術・経験の市場価値が高くても、世の多くのメーカーが大量採用している職域ではないこともわかっていた。まして、自動車メーカーまで応募ターゲットを絞れば、募集案件自体がなかなか出てこないことは容易に想像できた。

以上の理由から、長期的な転職活動になることを覚悟した。カメラメーカーに派遣されたまま、地道な会社探しを始めたのである。新聞や転職誌を隅から隅までチェックしたし、人材紹介会社にも登録した。だが、人材紹介会社の担当者からは、経歴にアピールポイントが薄いと言われた。派遣社員ということが足を引っ張っているのかとも思った。だが、自分自身は、どこかに自分の技術の価値をわかってくれる人や企業があるはず、という自信をもっていた。
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こうして半年ほど過ぎたある日、技術系の転職誌に自動車メーカーC社の募集広告が載っているのを発見したのである。生産技術職も募集している。すぐに応募したところ、面接の打診が届いた。1次面接は10分で終わった。駄目かもしれないと思って帰宅したら、すぐに2次面接の打診が届いた。どうやら1次の面接担当者は専門外だったらしく、2次面接では専門部門の管理職をセッティングしたようだ。同じ課題に取り組んできた仲間同士のような会話となり、これまでの職務経歴を中心に話が弾んだ。面談は1時間に及び、途中からは採用を前提とした会話になっていた。予想以上に自分のスキルの価値は高いようだ。後で判明したのだが、面接当時、自動車メーカーはどこも例外なく、かつて自分が取り組んでいた生産技術を取り入れようとしていたそうだ。そして、予想どおり、すぐに内定の通知が届いた。とうとう正社員として自動車業界、それも完成車メーカーに入ることができたのである。
転職後編 培った技術を生かして海外赴任も。 現在では管理職に。
入社後、すぐにA社に派遣されていたときのような生産技術職を任された。量産準備の段階で品質向上に向け、位置決めの定規などの冶具を作ったりしていた。その1年後、東南アジアで新型車の開発・生産計画がスタートすることになり、現地に生産設備を立ち上げるエンジニアとして赴任することになった。限られた時間の中で、日本と同じレベルの生産ラインを構築する大仕事である。

1年半にわたる東南アジアのプロジェクトを首尾よく終えて帰国したら、係長に昇進することになった。技術と功績が認められたのだろう。量産立ち上げの現場ではすでに多くのメンバーを指揮するような立場だったが、正式に部下も配属された。

現在では量産対応に加えて、より高い精度の生産設備の構築が求められる立場となっている。ここでもA社で学んだ生産技術をフルに発揮し、設計図面ぴったりのクルマを量産できるように、製造品質向上のチームリーダーとして奮闘している。例えば、組み込んだ後のことを考えて三次元解析のデータから事前にわざと歪みを加えたり、溶接個所の検討や構造検討をしたりするように、今やC社の主力製品のクオリティ向上を任されているポジションといえるだろう。上司から高い期待がかけられていることがダイレクトに感じられる。
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今では、十何年もC社で働いてキャリアを伸ばしてきたエンジニアと変わらないようなポジションとなった。つい数年前までのことなのだが、立場の弱い派遣社員だったことが、遠い過去のように感じている。
Y.Eさんの転職考察 市場価値の高いスキルを身につけて転職すれば、その後の昇進も確実。
転職して良かった点
・派遣社員から正社員になり、収入が上がるとともに経済的な基盤が確かになった。
・部下のマネジメントなど仕事の幅が広がり、昇進もできた。
・新たなスキルを身につけることもできた。
転職して悪化した点
・気楽な派遣社員から正社員となり、仕事の面で体力的には楽になったが、責任や管理業務が増え、新たなストレスを感じる。
Y.Eさんは派遣先で先端の生産技術にタッチできたことなど、これまでの経緯にラッキーな面が少なくないかもしれない。しかし、エンジニアとしての成長意欲や向上心、学歴や前職が派遣社員というハンデを乗り越えて転職活動に挑む強い意識があったからこそ、数少ないピンポイントの募集に巡り合えたのは言うまでもない。
人気の自動車業界だが、機械や電気だけでなく、ソフトウェア、通信、素材、化学、そして生産技術などさまざまな領域のエンジニアを必要としている。今一度、自分のエンジニアとしての市場価値を冷静に見つめ、もしそこで判断できなかったとしても転職サイトなどで見極める努力を続けてみてはいかがだろうか。視野が開け、思わぬチャンスが目の前に現れるかもしれない。
今回の転職ノウハウ:自分の本当の市場価値を知ることができれば、転職活動に自信をもって臨める。
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