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半導体分野での専門性確立を目指した派遣エンジニアの転職

最先端システムLSI開発に邁進する東芝情報システムへ

東芝情報システムは組込みシステムソリューション、SIソリューションを事業の柱とし、特に前者事業は、システムLSI設計開発から、アプリケーションソフトウェア開発、プラットフォーム開発までを幅広く提供している。そんな同社のLSI設計エンジニアの採用選考をリポートする。
(取材・文/須田忠博 総研スタッフ/高橋マサシ)作成日:07.12.21
東芝情報システム株式会社
応募したエンジニア 企業の面接担当者
今井隆彰さん(当時34歳)
今井隆彰さん
(当時34歳)
山本 晋氏
第一LSIソリューション事業部
第四LSI設計センター
センター長
山本 晋氏
当時の職種
LSI設計エンジニア(派遣社員)
募集職種
LSI設計エンジニア
業務内容
応募時は派遣待機の自主研修中だった。
仕事内容
システムLSIやASICのロジック設計、回路設計、レイアウト設計、テスト評価など。
職務経歴
工業大学電気電子工学科卒業後、エンジニア派遣会社に10年強。派遣先3社でLSIのレイアウト設計や試作品評価、プロセス見直しなどを担当。
応募資格
各種LSIのロジック設計、回路設計・レイアウト設計、画像・通信システム技術などの経験者歓迎。
志望動機
LSI設計関連業務の中で自分の専門領域を見いだし、確立したい。
募集背景
LSI事業を拡大させるための人員増強。
面接の流れ
副事業部長が複数のセンター長と相談しながら選考する。
副事業部長、センター長が最大5人で面接する。スキル審査が中心。所要時間は約1時間。
雇用条件を事前に提示したうえで、副事業部長、配属予定センターのセンター長、人事担当グループ長の計3人が面接する。所要時間は約1時間。
2次面接後、通常1週間程度で通知する。
【通過率:約5割】

【通過率:約8割】

Part1
職務経歴、転職動機、志望理由
派遣で10年働いた引き出しの多さが武器
山本:
  それでは、選考面接を始めさせていただきます。【Point1】最初に、持参の資料を見ながらで結構ですから、職務経歴を中心に自己紹介をお願いします。
今井:
  はい。今井隆彰と申します。私は1997年に××工業大学電気電子工学科を卒業し、○○○(エンジニア派遣会社)に入社。以来10年強、勤務しています。
  最初の派遣先は△△△で、担当業務はゲートアレイ開発用ツールライブラリの作成です。より詳しく申し上げますと、新規ゲートアレイの回路部品となるTEGを開発し、HSPICEを用いたDCシミュレーションをするとともに、TEG評価のための冶具を作成しました。そのうえでシミュレーションと実測評価に問題がないものについてはライブラリ化も行いました。これらの業務を4年担当後、△△△の社内で別の部署へ移り、ファウンドリーに関する一連の業務を担当しました。それが約1年間です。

  そのあと半導体不況があり、派遣先が◇◇◇に変わりました。そこではAV製品向け液晶パネルのデモ装置の設計と評価を行いました。期間は1年強と短いのですが、それは半導体関連業務に戻ることができたからです。
  半導体に戻って派遣された先は□□□です。先々月までの約4年間、勤務していました。担当業務はモバイル向けカスタムメモリ(PSRAM)開発の製品技術でした。具体的には175〜130nmメモリのプロセス見直し、トランジスタおよびデバイスパラメータのチューニング、TEGのDC評価、歩留まり向上のための評価・解析です。以上が私の職務経歴の概要となります。
Point1
[面接官]応募者の話し方、身ぶり手ぶり、目の動きなどに注目して、社会人としてきちんと働いてきたか、正直に語っているかを探ると同時に、入社後に一緒に仕事をするシーンを想像します。また、技術用語にも着目します。われわれが現場で使っているような使い方をすれば、「わかっていそうだ」と安心できるのです。
[応募者]こうした自己プレゼンは定番ですから当然予想していましたし、他社の面接でも経験ずみでした。しかし、それでも緊張したことを覚えています。
山本:
わかりました。そういう職務で10年働き、エンジニアとして、ご自身にはどんな特徴があると思っていますか?
今井:
 【Point2】派遣社員という立場上、経験年数の割に技術スキルも知識も浅いと思います。しかし、半導体に関して幅広くカバーできる、引き出しの数が多いと思っています。
また、どこの派遣先でもプロパー社員に負けないようにとスキルアップに励み、積極的に取り組んできたと自負しています。タイプ的にはグループ業務に適しているとも思っています。
正社員として半導体関連業務の軸を作りたい
山本:
今井さんは現在の会社に10年以上勤めて、今回が初めての転職。【Point3】なぜ転職したいのですか?
今井:
 【Point4】理由は大きく2つあります。ひとつには、半導体関連業務の中に1本、専門の軸を作りたいからです。派遣という形態ではどうしても「広く浅く」になってしまいます。技術ノウハウの核には触れさせてもらえないなど、仕事として面白みが少なくなってきましたし、エンジニアとして将来を不安に思う気持ちが強まりました。
もうひとつの理由としては、派遣先が安定的に確保されないからです。私は今、希望するような仕事での派遣先がないため、派遣待機の扱いになっています。少ないながらも基本給は出ていますが、生活は楽ではありません。かといって、半導体以外の分野で仕事をする気にはなれません。そのくらい強い気持ちでいます。
山本:
1番目の理由である専門の軸が当社にあると思えるのは、どうしてですか?
今井:
直近の派遣先だった□□□では、御社のLSI設計エンジニアの何人かの方と一緒に仕事をする機会があり、いろいろと話をうかがいました。御社はシステムLSIの開発・設計において幅広く事業をされており、私が専門性を高められる領域を必ず見つけられると確信しました。
半導体の開発業務がハードであることは重々承知しています。だからこそ、私を採用して決して後悔はさせません。ミッションを与えられれば、精一杯取り組みます。
Point2
[応募者]このことは私にとって長所であり、将来的には弱点になると認識していました。この認識が転職活動の出発点です。従って、転職の動機よりも先にこの話ができたのは、説明の順番としてうまくいったと思いました。
[面接官]派遣社員だからと選考で不利になることはありません。欲しいのは半導体開発に関する基礎素養と技術ポテンシャルです。当社が取り組んでいる開発は最先端のものですから、100%ミートした経験者はたぶんいないと思っています。
Point3
[面接官]転職動機と志望理由はワンセットでとらえます。そこに「納得のいくストーリー」がない人は、いくら優秀でも長続きしません。他社に目移りしたりするんです。また、無職期間がある応募者には計画性を疑います。半導体開発という業務では計画性が極めて重要だからです。
Point4
[応募者]この転職動機は2〜3年前から頭にあったもので、絶対に伝えねばと思っていました。私には最大のテーマですから。
 
Part2
技術力
(空)
(空)
専門用語の使い方でわかる技術レベル
(空)
山本:
 技術経験についてうかがいます。設計ツールですが、先ほどHSPICEを使ったという話が出ました。それでは、【Point5】OPUSはどのくらいの習熟度ですか?自信はありますか?
(空)
今井:
 深く会得しているかというと、そうではありませんが、TEGレベルなら十二分に使いこなせます。TEGは多数作ってきました。製品そのもののレイアウトを設計した経験は2〜3度、それもごく部分的にすぎません。
(空)
Point5
[面接官]この質問は、いうまでもなくLSIレイアウト設計スキルのレベルを探るのが目的です。OPUSを実務でどのくらい使用したのかを知りたい。
山本:
「パーパス」という言葉を聞いてピンときますか?
(空)
今井:
 【Point6】「パーパス」ですか? いいえ、特に何も……。
(空)
山本:
直近の派遣先ではメモリのプロセス見直しも担当したという話でしたが、設計そのものではなくて基礎開発的な仕事への興味もあるんですか?
(空)
今井:
LSIのプロセス分野も希望のひとつです。もし、そういう場を与えていただけるのであれば、ぜひとも取り組んでみたいです。その派遣先ではプロセスに関してほとんど何もわからずに担当し始めたのですが、4年間でかなり鍛えられたと思っています。【Point7】プロセスインテグレーションにはとても関心があります。
(空)
(空)
自費の通信教育でプロセスについて勉強
(空)
山本:
もし当社に入ったとしたら、どんな業務を希望しますか?
(空)
今井:
即戦力という意味では設計を希望します。経験が最も多いですから。しかし、プロセス寄りでとなれば、さらに勉強しながら取り組んでいきたいです。
(空)
山本:
 【Point8】今、専門スキルのアップを目指して転職しようとしているわけですが、自主的にはどんな勉強をしていますか?
(空)
今井:
設計に関しては会社に研修用のCD-ROMがあるので、それを使って勉強しています。プロセスについては、自費で通信教育を受けています。
(空)
Point6
[応募者]このとき、「自分の技術レベルでは無理なのか」と思い、がっくりきました。
[面接官]このひと言を聞いただけで、今井さんのレイアウト設計スキルのレベルが判断できました。小規模なレイアウトならできるが、それ以上ではない。しかし、必要最低限の素養は満たしている。本人の自己認識どおりに「広く浅く」の技術力だという判断です。
 
Point7
[面接官]この用語の使い方には現場臭さが感じられ、ひと通りのことはわかっているようだと思いました。使うべきところで使っているのがいいんです。当社でもプロセス確認用TEGのレイアウト設計をし、実際に加工したものとシミュレーション結果との擦り合わせを行って、プロセスインテグレーションにつなげるといった任務を果たしています。そういう点からも、今井さんを採用したいという気持ちが高まりました。
Point8
[面接官]技術上の向上心をチェックするための質問です。今井さんの場合は「広く浅く」から脱却して専門性を高めたいという転職ですから、もし自主的な勉強をしていないとしたら、転職の動機に疑問符がつくことになります。
Part3
チャレンジ精神、チームマネジメント
年齢ではなく経験値の高い人が目上
山本:
 今井さんを採用した場合、配属を予定しているのは若い社員が多い職場です。そうすると、年下が先輩になる。【Point9】年下から教えてもらうことに抵抗はありませんか?
今井:
 組織の中では、経験値の高い人が目上だと思っています。また、わからないことはどんどん質問するのが私のスタンスです。年齢は気になりません。
山本:
 今井さんにはレイアウト設計を中心としたプロセスに絡む業務を想定していますが、万が一、別の仕事になっても構いませんか?
今井:
 可能な限り半導体に近い仕事で、これまでに学んできたことが生かせるのであれば構いません。新しいことにチャレンジするという意味で頑張りたいです。
山本:
 【Point10】地方へ転勤することになっても大丈夫ですか?
今井:
 はい、大丈夫です。これまでに3回転勤しました。
Point9
[面接官]若い社員たちが頑張ってくれているよい雰囲気の職場に、波風を立てたくない。こうした気持ちがこの質問の背景に働いています。
Point10
[面接官]実際には地方転勤など想定していません。本当に当社で頑張る覚悟なのかどうかを知りたくて、念押ししてみました。
派遣社員たちのマネジメントを経験
山本:
 【Point11】入社した場合、最初は新人ですが、年齢を考慮すると、1〜2年のうちにチームリーダーになってもらいます。チームマネジメントには抵抗を感じませんか?
今井:
それは心配ご無用です。派遣先では、同じ派遣元の派遣社員たちのまとめ役と代表者を務めています。下の立場を考えながら、うまく人間関係を築いています。
(ここで山本氏は、今井さんを採用した場合の当面の仕事内容を具体的に説明した。それに対して今井さんは、「やりがいがあります」と答えた)
山本:
ところで、自宅にPCはありますか?
今井:
はい、2台もっています。
山本:
 【Point12】何に使っていますか?
今井:
主にインターネット、電子メール、テレビ、ホームページ作成、子供のビデオ編集といったところです。いわゆるマルチメディアの使い方ですね。
Point11
[面接官]応募者によっては「私は技術にどっぷり浸かるために転職するんだ」という考えの方もいて、チームマネジメントを極端に嫌がるケースがあります。そのため、この質問は必ずします。
Point12
[面接官]この質問は、PC操作が根っから好きかどうかを知るのがねらいです。LSI設計の現場は年中、キーボードの前ですから。
面接官はココを見た!
●これからも伸びていくポテンシャルがあるか。
●さまざまなヒューマンスキルを身につけているか。
●転職動機から将来の希望に至るまで一貫するストーリーがあるか。
 まず、新たな課題に対して自ら勉強して対応できる、技術的なポテンシャルを重視する。それは、理系的思考とLSI開発・設計の基礎力を前提に審査する。次に、チームで業務を行うためにヒューマンスキルが不可欠となるため、コミュニケーションスキル、協調性、チームマネジメント力の3点を必ずチェックする。人物面では、仕事に関する本人なりのストーリーを見る。ストーリーに合理性があれば、入社後に長期にわたって伸びやすいと判断する。
今井さんはコレで決めた!
「他社の内定を辞退してこの会社に決めたのは、
何といっても希望する仕事に就けるとわかったからです。
上司になる面接官とも相性がよさそうに思えました」
 面接を受けたとき、実は他社の内定をもらっていました。そちらを辞退してこの会社に決めたのは、希望する仕事に就けるとわかったからです。最先端メモリのためのTEG開発が当初の業務になると面接中に知らされ、ぜひ採用されたいと気がはやりました。しかし、1次面接で落ちたと思ったんです。ところが、2次に呼ばれてすぐに内定。うれしかったですね。上司になる面接官の山本さんとも相性がよさそうに思え、不安材料は何もありませんでした。
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高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ 高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ
派遣社員として働くエンジニアの悩みのひとつは、核となる技術に触れる機会が少ないこと。もちろん「助っ人」が前提の職務形態ですから、この不満を口にするのは筋違いかもしれません。ただ、本当に不満なら正社員を目指してください。今井さんは今、「仕事が本当に楽しい」と語っていましたよ。

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