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大人気ERP、モバイルサービスはなぜ?何?を追求して生まれた 思考を形にする幸せ☆企画開発エンジニアを狙え
仕様書どおりに作るのではなく、企画から参加した開発がしたい。こう思うエンジニアは少なくないだろう。しかし、企画の仕事って何だろうか。エンジニアにできるのだろうか。受託や請け負いの仕事ではない、自社の製品やサービスを生み出す「企画開発エンジニア」の実際をリポートする。
(取材・文/総研スタッフ 高橋マサシ)作成日:07.11.21
CASE1 モバイルサービス 目指すのはすべての流れを知るゼネラリスト
「企画とは何か」を実例で紹介しよう。まずは携帯電話のコンテンツサービスだ。大きな転換点となったNTTドコモのiモード発表から、わずか4カ月後に画期的なサービスを提供したエンジニアに語ってもらう。
iモードから始まったモバイルコンテンツの企画
 1999年2月にスタートしたNTTドコモのiモード。当初はテキスト情報が主だった携帯コンテンツサービスに、初めて「エンタメ画像」を持ち込んだのが「いつでもキャラっぱ!」だ。「ハローキティ」など4種類のキャラを待ち受け画面に使うというアイデアは大ヒットし、翌2000年3月にはユーザー数100万人を突破した。この仕掛け人は、研究所からバンダイ本社に戻った黒木氏と先輩社員の2人だった。
「当時はショートメッセンジャーができたくらいの時代で、キャラクターの使用許諾のためにライセンサーに行っても、内容をなかなか理解していただけませんでした。iモードを知らない方もいましたから」
 この先駆性は着メロ、3D化、Java対応アプリと携帯電話の進化と同期して広がっていく。そして2003年2月には、au端末向けのアプリ「TeamFactory」をKDDIと共同開発する。2005年にはアバター機能が加わった、グループ内コミュニケーションツールだ(現在のサービス名は「au one アバター」)。

「大きく分けて弊社には、自社のキャラクターを使うB to C型と、携帯事業者さんなどと協業で行うB to B to C型のサービスがあって、現在、私は後者を担当しています。ですので、企画のきっかけは携帯事業者さんなどの場合も私たちの場合もありますが、まず行うのはマーケティングで、何にいちばん重きを置くか、ターゲットと提供価値を明確にしてから詳細な企画に入ります」
 サービスの内容が決まると仕様を策定し、詳細設計から開発工程に移る。同社ではコーディングは外部に委託するが、サービスやシステムの仕様、ネットワークの構築・管理やサーバーのハウジングなどは自社で行う。全工程を通して最も大切なのは、「誰に対してどんな価値を提供するか」がぶれないことだと黒木氏は語る。
黒木伸和氏
バンダイネットワークス株式会社
ソリューション事業部
サービス開発チーム
マネージャー
黒木伸和氏(34歳)

大学機械工学科卒業後、1996年にバンダイ入社。研究部門に3年勤務した後に、1999年からiモードを利用したモバイルコンテンツの企画開発を担当。2000年のバンダイネットワークス分社化に伴い入社。
「目の前の仕事が目的になってしまう人が多くいます。エンジニアなら開発自体やシステムの安全性を必要以上に重視してしまうのです。当然大切なのですが、『そこまでしなくても』というレベルで、オーバースペックになっていることなどもよくあります。私のメンバーは11人ですが、彼らにもよく『それは何のためにしているの?』と尋ねます。答えが曖昧なら本来の目的を逸している証拠。もちろん、自分自身にも常に問いかけていますよ(笑)」
採用するのは「企画の余地が残っているSE」
 サービスの企画・開発者とは、企画、開発、プロモーション、サービス運営、その後の顧客管理や利用分析までを知る、ゼネラリストであるべきだと黒木氏は言う。アプリ開発やインフラ保守といった専門性はプラスになるが、すべての流れと各作業を理解する総合能力が必要という意味だ。ただ、エンジニアであるメリットは大きいという。
「私は中途採用の面接官も担当していますが、『技術を知らない企画出身者』よりも『企画未経験のSE』を多く採用しています。携帯事業者さんなどに現実的なシステムを提案できる知識、開発標準化の意識、タスクを管理する姿勢などがあるからです。より正確に言えば、『企画を考える余地の残っているSE』を採りますね」

 採用の決め手はアプリ開発、負荷分散、テーブル設計などの専門知識、次にスケジュールや課題の管理意識、最後が上述の「余地」だという。エンジニアにとって専門分野以外の勉強は苦労するだろうが、機械工学出身の黒木氏は入社後にプログラミングやネットワークを勉強している。また、企画のネタ探しも怠らない。
「NGNやIPv6などの先端技術もそうですし、CEATECなどの展示会にもよく行きます。それと、ちまたではやっていること。例えば、ターザニア(森林型アドベンチャーパーク)なんて、今後の企画に使えないかと思っているんですよ」
携帯ツール「au one アバター」
au one アバター
(C)KDDI
(C)BANDAI NETWORKS
バンダイネットワークスの企画が開発に至るまで
CASE2 ERPパッケージ 新しいアイデアを生む「これでいいのか」
国内大手企業の人事・給与ERPパッケージソフトでシェアトップを誇る「COMPANY」。新ラインアップの会計シリーズ開発に当初から参加したのは、入社2年目の転職エンジニアだった。入社4年目の現在は、ゼネラルマネジャーとして約30人のチームを束ね、プロダクトの全責任を担っている。
「夢の機能」を現実レベルに落として実装する
 大学で応用化学を学んで大手繊維会社に入社。化学系エンジニアの王道のような経歴だが、入社後の配属はシステム開発部門。最初はパソコン操作もおぼつかなかったが、やってみたら面白い。それが高じて「きちんと勉強したい」とシステム開発会社に転職。当初の目的を果たすが、ここで塩畑氏は気づいてしまう。
「やりたいのは請負の仕事ではなく、企画段階から担う開発だったんです。前職は、はっきり言うと物足りなかった(笑)」
 2003年にワークスアプリケーションズに入社した塩畑氏は、当初はパッケージのサブシステム開発に従事。翌年、同社が第二の柱として開発を進めていた会計シリーズ「COMPANY Financial Management」の開発陣に抜擢される。その後、新製品「COMPANY Business Management」の立ち上げに参加、製品の企画開発を担当する。

 「COMPANY」シリーズの最大の特長は、個別ユーザーごとのカスタマイズをせず、無償バージョンアップで機能を永久的に追加していくこと。つまり、顧客が必要とする機能を網羅して実装し、稼動後も業務トレンドや法改正、新たな要望を新機能として追加するのだ。
 「こんな機能があったら、お客様の業務効率が上がるのではないか、こういうやり方のほうが求められているのではないか……と、最初に理想の姿を考えます」
 例えば、業務管理システムでは自動仕訳機能は一般的だが、入力したデータが自動的に帳簿や決算書類にまで反映されると、より便利になる……といった具合だ。塩畑氏は「最初は『単なる理想』で構わない」と言う。
「それをカタログとわれわれが呼ぶ書面にまとめて、皆で議論し、現実レベルに落とし込んでいきます」と塩畑氏。この企画にかける期間は、製品出荷に至るまでの全工程のうち、約3割を占めるという。
塩畑智弘氏
株式会社ワークスアプリケーションズ
製品企画開発本部
COMPANY会計シリーズ開発グループ
ゼネラルマネジャー
塩畑智弘氏(31歳)

大学応用化学科卒業後、大手繊維会社に入社し、自社用カラー管理システムの開発を担当。約2年後にシステム開発会社に転職し、業務系アプリケーションの設計・開発を担当。約3年後、2003年にワークスアプリケーションズに入社。
自分の「なぜ」を簡単にはあきらめない
 エンジニアが企画を行う場合、その強みは「理想を現実に落とし込むステップを知っていること」、弱みは「ステップに縛られて現実に走ってしまうこと」だと塩畑氏は語る。弱点の克服法は、彼の企画立案のための行動にヒントがありそうだ。
 まずはマーケットの徹底的なリサーチ。ソフトウェアは研究開発が重要といっても、実際に顧客に使ってもらえなければ、いい機能はつくり出せない。そのため、ヒアリングひとつ取っても、仮説設定が必要となる。例えば、単純に「何か必要なものはありますか?」と聞くだけでは求める回答は得られない。「こうすれば業務がより効率的に回りそうですね」といった問い掛けにより、真のニーズを得られるのだ。

ERPシステム「COMPANY」
 もうひとつは、「なぜなぜ思考」だ。
「これは弊社の行動指針である『Works Way』にあるのですが、『こんなことができないか』『これでいいのか』と思ったら、『今まで無理だったから無理』とは考えない。先輩や上司の言うことが絶対とは限りませんから。そこで意見がぶつかったら、徹底的に議論します。それぞれが考え抜いているわけですから、簡単にはあきらめられません。今の私があるのも、これを続けてきたからなんです」
 塩畑氏は現在、約30人のメンバーをまとめるゼネラルマネジャー。各自がアイデア出しから実際の開発までを担う環境で、チームをまとめ上げている。
「自分自身の企画立案に加え、メンバーの企画をレビューしたり、お客様先で機能のご説明をしたりと、仕事の幅がどんどん広がっています」
COMPANYの新機能が開発に至るまで
HOW TO 技術出身の商品企画者が教える「社内で企画担当になる方法」
 技術職として入社したもののマーケティング部門に異動となり、そこでヒット製品を企画した元エンジニア。『エンジニアに告ぐ逆襲せよ!―なぜ、あなたの企画は通らないのか?』を著した彼が、社内で企画開発に参加する方法を教える。
Step1 上司の仕事を丸ごと引き受けよ
 いきなり企画を任されるエンジニアはまずいない。そこで、請け負い型か自社開発型かの業態は問わず、第一歩として社内の企画会議に呼ばれる方法を考えたい。稲嶺氏は「PRせよ」と語る。周囲にアイデアを話す、企画会議に参加したい旨を告げるなどだ。しかし、そのための仕込みもいる。
「近道は上司の仕事を丸ごと受けることです。断片的な作業ではなく、上司は部下に自分の仕事を丸投げしたいと思っています。そのニーズを満たせば企画の情報も集まりますし、『使えるやつだ』と思われれば、仕事を一層早く手離すために会議にも呼ばれます。ゴマをすらずとも、『私がやります』だけでいいんです。エンジニアは目の前の開発業務が好きだったり忙しかったりする人が多いので、簡単に目立てます」
 大きなプロジェクトだと関連部署への根回しも必要だろうが、小さい案件なら「決裁権のある上を落とす」ことが大切。会議に現場の技術職が参加するケースは多くないので、こうした主張は好意的に受け取られる場合も多いという。
Step2 顧客と営業を使って企画を立てよ
 自分の夢を現実に落としていくのが企画なら、その要件は顧客のニーズを満たすことだ。そうすれば会社が喜んでハンコを押して、三者全員がハッピーになれる。とすれば、まずは顧客の要望を聞くことが先決だ。
「コンシューマー製品は難しいのですが、特定の顧客なら会って話ができるのはエンジニアのメリットです。相手が技術者なら専門的な知識が生かせますし、そうでなくても課題の解決方法をアドバイスできます。顧客が喜んで『お宅のはよく動くね』などと言われればうれしくなって再び行く気にもなりますし、不満な点ではニーズを拾うことができます。具体性をもたせて本音を聞くことが大切です」

 ただ、面識のない顧客に出向くことは心情的にも難しい。その場合は営業から問題点を聞き、営業経由で解決策を伝えてもいい。営業をセンサーに使うわけだ。繰り返した後に「俺も行くよ」となれば、営業は喜んで客先に連れて行くだろう。
「無理せずに一歩ずつ進めていけばよいのです。こうしてニーズが見えてきたら、自分の考えを紙に書き出しましょう。まずは量を出して質へと絞っていく。いきなりホームランは打てませんから」
稲嶺成吾氏
稲嶺成吾氏

筑波大学大学院修士課程修了後、大手電機メーカーに入社。主に非接触型ICカードの開発に携わる。本人いわく「ソフトもハードも向いていない」と実感。3年後に商品企画部門に異動となり、1年半後に米国の営業子会社に転勤。帰国後に部長職となるが、2003年に計測器メーカーに転職。これまで17種類の商品企画に携わり、最大で50億円のヒットを飛ばす。
エンジニアに告ぐ 逆襲せよ!
Step3 納得してお金が出せるプレゼンをせよ
 企画を立てたら会議でのプレゼンになる。重要なのは、「投資のしがいがあることを理論的に説明すること」と稲嶺氏は言う。利益のリターンが具体的に見込める、先端技術が蓄積される、新しい事業分野に参入できるなどだ。
「秘策としては『社長のエゴを満たす』もありますよ(笑)。やりたがっていることを察知して、それに沿った企画を出すのです。いずれにせよ、目標や目的をはっきりさせて、問題を小さく分けて考え、開発開始までの工程を順序立てて引き寄せていきます。そうすれば企画の実現性も見えてきます」

 エンジニアの陥りがちな落とし穴が目的と手段の混同だという。山登りを目的にピッケルを買ったが、山が険しいのでピッケルで穴を掘ってしまった、ピッケルが気に入ってその開発を始めてしまった、などだ。
「普通のエンジニアなら、企画書を書くよりCADの操作を覚えるほうがはるかにモチベーションは高いはず。つまり、本当に企画がやりたいなら情熱があり、何かにせきたてられている人でしょう。そんな人が本気を出せば、いつかは企画が通ると思います」
通りやすい企画:顧客の声と企画への情熱 通りにくい企画:機能アップとコストダウン
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高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ 高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ
3人は同じことを言っていたと思います。「エンジニアも十分に企画が立てられる」と「ただし、手段を目的と勘違いする」。私は企画を考えることが仕事でもありますが、かなり耳の痛い言葉です。これからは、「何のためにやってるの?」と自分に問いかけるようにします。

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