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BRICs諸国の建設ラッシュ、2012年排ガス規制強化で需要拡大!
最先端の技術で地球環境を守れ!三菱重工業エンジン開発の魅力
三菱重工において売上・収益ともに、原動機、航空・宇宙に次ぐ部門に成長した「汎用機・特車事業本部」。世界中で働く建設機械用などのエンジンを設計するのが相模原本部工場だ。急拡大する需要を受けて、エンジニアの中途採用ニーズが高まっている。
(取材・文/広重隆樹 総研スタッフ/宮みゆき 撮影/栗原克己)作成日:08.11.19

【Part1】世界中の発電機や建機を動かせ!三菱重工相模原。技術者が引き継ぐエンジンへの愛着

グローバル展開を支えるマザーファクトリー

 三菱重工を支える屋台骨の一角、汎用機・特車事業本部(略称:汎特)。小型から中大型のエンジンをはじめ、ターボチャージャー(過給器)、フォークリフトなどの物流機器、そして防衛省向けに供給する特殊車両(戦車など)の4つが主な事業領域だ。

 2003年度の事業規模は3000億円強(連結)だったのが、2007年度は4744億円まで増大。2010年度には5200億円の売上をめざす。その成長要因となっているのが、ターボチャージャー、ディーゼルエンジンなど汎用機製品への国際的需要の高まりだ。

 欧米先進国では、排ガス、CO2規制強化にともなって、搭載用エンジンや乗用車用ターボチャージャーの需要が活発であり、また、BRICsなど新興国でも、電力事情が逼迫しているなかで、発電機の需要が拡大している。もともと、汎特では、製品の輸出割合が6割、海外売上高も2000億円に達するなど世界の市場を相手にした事業が展開されてきた。神奈川県相模原市の本工場をマザーファクトリー、デザインセンターと位置づけ、世界18拠点に生産・販売・サービス拠点を配置した、文字通りグローバル経営が進んでいるのだ。


世界中で急伸する小型エンジン需要

 今回注目するのは、汎特の事業の中で約3割の売上を占めるエンジン部門だ。
 三菱重工は国内有数のエンジンメーカーであり、そのラインナップは数馬力のポータブルエンジンから、パワフルな船舶用エンジンまで、幅広いラインナップをもつ。燃料もディーゼル、ガス、ガソリンに対応し、さらにコージェネレーションシステムなどの発電セットも手がける。

 この中で、相模原にある本工場が主に担当するのが、5〜4000馬力のディーゼルエンジン。フォークリフトのような物流機器、建設機械、発電機、灌漑用ポンプ、農機具などの動力源となるものである。
「エンジンは、ピストン、クランクシャフト、燃料噴射装置、ターボチャージャーなどの構成部品からなる。これらを自前で設計・生産できるのが強み。なかでも、燃焼効率の改善やエンジンの環境規制対応等に大きく貢献するのがターボチャージャーで、これを自社生産できる利点は大きい」  というのは、エンジン技術部の高井淳課長だ。

 高井氏が統括する小型エンジン設計課はここ数年、かつてない多忙に見舞われている。というのも、中国やロシアなどの新興諸国向け需要が急拡大しているからだ。
「これらBRICs諸国では、全般的に発電の需要が伸びている。また、インフラ整備のための建築ラッシュが続いており、建設機械需要も旺盛だ。これらの設備・機械を動かすエンジンは欠かせないものになっている。最近の国際金融不安の影響がたとえあったにしても、その成長力は簡単には止まらない」(高井氏)

 また、2012年に開始される国際的な排ガス規制強化も、エンジンのリプレース需要を生み出している。たとえば汎特では、2007年、130kW未満の小型4サイクル水冷ディーゼルエンジン全機種を米国環境保護庁(EPA)の排ガス規制に適合する環境対応型にモデルチェンジした。米国市場を中心に年間20万台を販売する計画だ。

 こうした需要急拡大を受け、同社では汎特の設備強化を進めている。小型ディーゼルエンジンの生産能力を現状の14万5000台から大幅に増強。その一方で、排ガス4次規制を睨み、そのためのパイロット設備も導入する方針だ。汎特の内製化技術の強化をはかっていく一方で、国内外のサプライヤーとの協業拡大、アフターサービスの拡充などの取組みを推し進める。

エンジン技術部
小型エンジン設計課長
高井 淳氏
1986年新卒入社、特殊エンジン設計課では、戦車や艦艇用エンジンを開発。エンジンの大きさが躯体全体の重量にも影響するため、性能を落とさずいかにコンパクトに設計するかを学ぶ。特殊エンジン設計課長を経て、2007年より現職。

「このエンジンは私が作った」と言い切れる魅力

 当然のことながら、こうした事業拡大を支えるのはエンジニアたちだ。排ガス4次規制に対応した開発を強化するため、設計技術者を中心にエンジニアの中途採用が活発化している。

 高井氏は小型エンジン設計課における仕事の魅力をこう語る。
「同じエンジンでも乗用車用エンジンなど分業化が進む事業に比べると、私たちの部署は小さいかもしれない。でも逆にいえば、設計者自身が、顧客のニーズの把握から、設計、試運転まで全工程に関与できる面白さがある。もちろん、ボルトひとつから専用部品まで、エンジンを構成する部品のすべてを知っておく必要はあり、幅広い知識が求められるが、それだけに、『このエンジンは私が作った』と言い切れる醍醐味がある」

 もう一方で、エンジンの生産では、サプライヤーとの関係は重要。鋳造、鍛造、板金などの専門加工会社や各種パーツのサプライヤーとのつきあいは当然深くなる。
「たとえば木型を作る協力会社に足を運び、型屋さんに直接自分の設計の思いを伝え、その通りの型を作ってもらうということもする。サプライヤーが供給する標準部品では顧客の要求が満たせないとなったら、サプライヤーと共同で新しい部品を開発するなど、協業のなかで新製品を開発する面白さも味わえるはず」

 高井氏が中途採用エンジニアに求めるのは、なによりもエンジンの供給で世界中の産業や市民生活を豊かにするという思い、そして技術者としての「前向きな姿勢だ」。性能はもとより、環境対応、低燃費、騒音・振動対策など、エンジン開発にはさまざまな条件が課せられるが、そうした課題を突破するためには「プラス思考が欠かせない」というのだ。

「機械工学の基礎知識があり、何らかのエンジン開発に携わった人というのがベスト。しかしエンジン開発経験のない人でも、ものづくりにおいてたえず論理的な思考を失わず、筋道立てて考えることのできる資質があれば、それだけでも十分に適応できる」と、高井氏はエンジン技術部が求める人材像を語っている。



【Part2】耐久試験を耐え抜いたエンジンを、撫でてやりたくなる

厳しい排ガス規制をクリアするためのエンジン設計
エンジン技術部
小型エンジン設計課 主任
山田 知秀さん
1997年入社。エンジン技術部特殊エンジン設計課、エンジン技術部発動機設計課、エンジン技術部開発グループ主任などを経て、2008年から現職。エンジンだけでなく、それを搭載した油圧ショベルなどの建設機械も大好き。

 ディーゼルエンジンは、温暖化の原因となるCO2の排出がガソリンエンジンよりも少ない代わりに、大気汚染の原因となる窒素酸化物(NOx)や粒子状物質を排出します。そのため、以前から厳しい排ガス規制が行われていますが、私は今、2012年、2015年の4次規制基準を満たす小型ディーゼルエンジンの設計・開発を担当しています。

 新たな規制をクリアするためには、今まで使っていなかったコンポーネントや制御技術を採用する必要があります。具体的には、EGR(排ガス再循環)装置などがあります。当社の小型ディーゼルエンジンでは3次規制まではそれを使っていなかったのですが、4次規制対応では採用することになりました。そうなると、エンジン性能をチューニングする方法や、信頼性の評価点も変わります。

 また、4次規制では排ガス測定の方法も変わります。それに対応するためにも、これからは産業用エンジンでも、電子制御技術のより一層の高度化が必須です。また燃費や使い勝手の改善も重要な課題です。

 学生時代から、ディーゼルエンジンの熱機関としての優れた性能に惹かれ、それを仕事にしたいと思っていました。ただ、学生時代はCADシステムが専門のソフトウェア系だったので、エンジンは素人。不安はありましたが、まさに今思い通りの部署で仕事ができています。


個々の技術が、人的ネットワークのなかで倍加する

 もちろん、学生時代に想像していた以上の難題がありました。一人ではなかなか解決できない問題もたくさん。しかし、三菱重工にはあらゆる工学分野のトップレベルの専門家が揃っていて、すぐ隣に座っている人に聞けば、問題がたちどころに解決するということがよくあります。

 さらに他部署や協力会社の専門家たちと協力することで、一つひとつ課題をクリアし、製品がどんどんよくなっていくのを実感しています。個々が持っている要素技術を、人と人のネットワークでさらにパワーアップしていく、そういう面白さがありますね。

 三菱重工はたしかに大企業ですが、営業・設計・生産現場の一体感が強く、その中で個人に任される裁量範囲も広い。新卒者でも中途採用者でも、すぐに仕事を任され、自分で判断しながら処理していかなくてはなりません。設計者が最初から最後まで全工程にかかわることが多いので、良くも悪くも、それぞれのエンジニアの「個性」が製品に現れてしまいます。「街中で動いているあの建設機械のエンジンは俺が作ったんだ」と言える面白さがある一方、責任も重いです。

 色々検討して図面を書いたエンジンが組み立てられ、車輌に搭載されて、初めてブルルンと動き出すとき、無上の喜びがあります。厳しい耐久試験から戻ってきたエンジンをみると「おまえ、よく頑張ったな」と撫でてやりたくなる。そういう製品への愛着が、私の仕事のエネルギー源になっています。


【Part3】中途採用エンジニアへの期待──「相模原」に新しい風を吹き込んでほしい

困っている人を見捨てない技術者たちの共同体

 汎特のエンジン部門の設計技術者には、個々の専門技術を発揮するだけでなく、担当の機種については、それにかかわるさまざまな仕事をまとめる役割があります。机にじっと座っているというより、部署内、他部署を飛び回り、相互の調整を行い、全体をとりまとめる仕事。営業、資材、生産、実験など調整の範囲は広く、高いリーダーシップが求められています。

 ただ、中途採用の人にとっては、どこにどういう役割の専門家がいるのかは、最初はすぐに見通せないかもしれません。しかし、これは汎特の技術者に共通する性格だと思いますが、自分の技術にプライドをもつだけでなく、人に聞かれればすぐに助けの手を伸ばしてくれる。困っている人をけっして見捨てない、人としての温かさを感じます。  私自身が転職者で、こちらに移って来た当初、東京ドームの8倍もある広大な敷地のなかで道に迷ってしまったことがありました。すると、すぐに周りの方から「どうした?」と声をかけて頂き、救われたことがあります。

総務部 勤労・安全課
山田 智子さん

エンジン大好きなエンジニア大歓迎

 そういう雰囲気があるので、中途採用のエンジニアも、配属部署のOJTを通して少しずつ仕事に慣れていけば、誰もが自分の能力を発揮できるようになります。基本的にエンジニアを大切にする風土があり、上下左右の風通しはよく、個人が任される裁量範囲も広い。三菱重工のエンジンは世界で高い評価を得ており、そのモノづくりを支えてきた、優れた専門家が社内にたくさん在籍しています。エンジンづくりが大好きな人、これからエンジンに関わってみたいと思う技術者にとっては、こたえられない職場だと思いますね。

 三菱重工全体で3万人の従業員。約700種の製品を作っています。一人ひとりが担当するアイテムの種類が多いため、一人ひとりが担当製品に責任をもって仕事を進めないと、これからの国際競争に打つ勝つ世界品質は保てません。競争、品質、新製品のアイデアといった観点からも、中途採用者に期待するところは大です。

 よくも悪くも、汎特事業本部は独立した一つの世界。事業本部とはいえ、それ自体がひとつの企業のようなものです。仕事の進め方や発想が、もしかしたらその世界の中だけに閉ざされているのではないか、ということを危惧しています。その枠を突破するために、ぜひ中途採用のエンジニアには新しい風を吹き込んでほしいと思います。


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宮みゆき(総研スタッフ)からのメッセージ 宮みゆき(総研スタッフ)からのメッセージ
BRICs諸国の建設ラッシュ、排ガス規制に対する開発強化など、環境を守る日本の技術が世界中で求められていることが実感できた取材でした。地球環境を守っているものの一つが自分の作ったエンジンだなんてかっこいいですよね。伝統技術と最新技術の両方が学べる三菱重工業のエンジン開発の仕事。興味のある方はぜひチャレンジを!

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