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44立方メートルの土砂を押しのける! 地上11mへ作業員を届ける! 働くクルマ伝説★今こそグッとくる心優しき巨人たち
土木建築に、荷物や人の上げ降ろし、輸送など、特殊な“専門領域”で働くクルマたち――。それぞれの用途に特化した面白い形や凝った機構に、マニアでなくてもメカ好きなら思わずグッときてしまう車両を特集する。
(取材・文/川畑英毅 総研スタッフ/根村かやの)作成日:07.11.06
 一つの仕事を貫くために、生まれてきたクルマたち
「働くクルマ」は魅力的だ。なかでも、「特殊な場所」「特殊な用途」に特化した車両は、そのメカニカルな動きを想像してみるだけでも楽しい。「掘り起こす」「持ち上げ、運ぶ」「長く、高く伸びる」など、用途に応じた特殊機能を遺憾なく発揮するための形や大きさは、機能美そのもの。
 Webを検索してみると、自分で撮り集めた「働くクルマ」の写真を集めたファンサイトなどが結構ヒットするのもうなずけるというものである。
 求められる機能実現に熱意を注ぐ開発者の「心意気」も感じられる、そんなクルマの勇姿を堪能してほしい。
 Part1 工事現場が仕事場だ!
 高さ14mの採石場の“王者” 〔油圧ショベル コマツ PC2000〕
〔油圧ショベル コマツ PC2000〕
(上)砕石場などで使われる、自重200t級の大型油圧ショベル。回転する車体上部底面と地面との間隔だけで約2m。ショベルを最大まで持ち上げると、高さ14m
(右)大人10人入っても余りそうな、この大きさ! 自重100t級の大型油圧ショベルに使われるバケット。隣の20t級の“標準的”な大きさのバケットがかわいらしく見えてしまう
〔油圧ショベル コマツ PC2000〕
建築・土木の第一線を担う「プロのマシン」
 油圧で動く力強い腕や、土や石をぐんぐん押しのけるブレード、不整地をものともしない足回り……。“建機マニア”なるジャンル(?)も確立しているくらい、「働くクルマ」のなかでも魅力的な一群が建設機械だ。
 不整地走行に適した無限軌道(クローラ)タイプが多いのも建機の特徴だが、「同じように見えても、ブルドーザは走行することで掘削、油圧ショベルは走行せずに掘削という具合に、役割が違う。ブルドーザは地面をよくグリップするように転輪にサスペンションがありますが、油圧ショベルはサスペンション機構はない。履帯表面の形状も違います」(コマツ 開発本部建機第一開発センタ副所長 森山雅之氏)。
 例えば同じ機種の油圧ショベルでも、ユーザーニーズに従って、安定性や軟弱地での走行性能を高めるために幅広の履帯を装着していたり、あるいはアスファルトを傷めないよう、履帯表面にゴムパッドを付けていたり、特別に長いアームを持っていたり。そんな細かい仕様の違いがあるのも、「プロの仕事」を請け負う機械ならではだ。
 「まちづくり」に大活躍の主力クラス 〔油圧ショベル コマツ PC200〕
〔油圧ショベル コマツ PC200〕 自重19.5t。街なかの道路工事などで普段目にすることが多いのは6t以下のミニショベルだが、大きなビルの基礎工事など、現場が囲われた中で使われるのは、このクラスが主力。間近で見上げると感動モノの巨体も、分類上は「中型」。キャビンは制振・遮音性に優れ、操縦席は装備も快適さも乗用車並み
工場内のPC200 ロールアウト直後、工場内の試運転ヤードで各部の動作確認試験中。手前の車両は、安定性や軟弱地の走行性能向上のための幅広の履帯付き。顧客の細かな注文が多いバケットは、最後に装着される
 44立方メートルの土砂を押しのける巨大な力持ち 〔ブルドーザ コマツ D575A〕
〔ブルドーザ コマツ D575A〕
世界最大級、全長12m、自重130tを超える大型ブルドーザ。エンジン排気量4万6300cc、出力も1000馬力以上のまさに“モンスター・マシン”
生産ライン上の中型ブルドーザ
生産ライン上で、履帯を装着する中型ブルドーザ。履帯を敷いた上に車体を載せ、ブルドーザ自体の起動輪の力で足回りの上に巻き上げていく
Part2 持ち上げるのが仕事なんだ!
 旅客機にすっと寄り添う働き者 〔コンテナリフトローダ 神鋼電機〕
〔コンテナリフトローダ 神鋼電機〕
〔コンテナリフトローダ 神鋼電機〕
機体の貨物室ドアの高さまでデッキを持ち上げ、専用コンテナを搬入・搬出する特殊車両。一見、ただの昇降機のようにも思えるが、エンジンも付いてきちんと自走する立派な「車両」である。もちろん、シャーシは専用設計。デッキが前後に2段あり、それぞれX字のアームで高さを変えることができる。前部デッキは貨物室ドアの高さに合わせて調整、大きな後部デッキを使って、地面すれすれの高さとの間でコンテナを上げ降ろしする。
写真の車両は旅客機の貨物室用だが、貨物専用機用にはメインデッキの高さまで持ち上げるもの、あるいはコンテナに収めない小さい荷物用のベルトコンベヤーを備えたローダもある。
場所・機能に特化して自らの姿を変える
 空港ビルから駐機場を眺めると、ムカデのようにトレーラを何台も連結して貨物を運ぶ輸送車、小さな体で巨大な旅客機を移動させるトーイングトラクタ、パッセンジャステップ(タラップ)やコンテナを貨物室に運び込むリフトローダ、電源車に各種補給車両……。街の中では決して見かけない、奇妙な形の「働くクルマ」たちでいっぱいだ。そんな“異世界”が、「これから遠くに飛んでいくんだな」という雰囲気を盛り上げるのに一役買ってくれる。
 あるいは、工場の中でも、外では見られない変わったクルマがたくさん活躍中。資材や製品を持ち上げ、運ぶフォークリフトなどは名前も形も“おなじみ度”が高い車両だが、サイズや量が並でなくなれば、それを扱う車両もだんだんと形が変わったものになってくる。
 ここでは空港や工場、さらに工事現場も含め、「持ち上げたり降ろしたり」「伸びたり縮んだり」な車両を集めてみた。
 「長〜い荷物」の移動はお任せ 〔サイドフォーク 神鋼電機〕
〔サイドフォーク 神鋼電機〕
見慣れない形の車両だが、工場などで働くフォークリフトの一種
〔サイドフォーク 神鋼電機〕の積み込み図
通常のフォークリフトと違い、フォークは凹型の車体の中央くぼみに横向きに装着。しかも出し入れ可能の凝った機構をもつ。パイプなどの鋼材類を運ぶのが主な仕事で、資材がおいてある場所に車体を横付けし、フォークを使って車体の前後方向に積み込む。長さのある荷物を、横幅を取らずに無理なく運ぶことができるのが、この車両ならではの利点。
 今日も現場で待ってるぜ!
車いす用リフトも標準装備 〔パッセンジャステップ 神鋼電機〕 インフラを支える“屋根の上”の力持ち 〔高所作業車 タダノ AT-110TTE〕
〔パッセンジャステップ 神鋼電機〕
ボーディングブリッジが一般化しても、駐機場所の自由度が高いこの車両は現役。小型のものは市販車のシャーシを利用、大型は専用シャーシをもつ。ちなみにVIP用は顔が見えるようキャノピー(覆い)なし
最大吊上能力550t!日本最大級クレーン車〔オールテレーンクレーン タダノ AR-5500M〕
〔オールテレーンクレーン タダノ AR-5500M〕
オールテレーンとは、舗装道路から不整地まで、あらゆる路面に対応可能なことを示す。長大な車体の重量は何組もの車輪が、作業中の荷重はアウトリガー(外側に張り出している脚)がしっかりと支える
 
〔高所作業車 タダノ AT-110TTE〕
作業員1人あるいは120sまでの荷物を最大地上高11mまで上げることができる。車体は市販の2t車を利用。高所作業車には用途に応じて細かな仕様の差があるが、写真の車両は通信工事用
Part3 働くクルマが大好きだ!
 目指すのは「オペレータの思いが伝わる」動き――コマツ
森山雅之氏
株式会社小松製作所
開発本部
建機第一開発センタ
副所長
森山雅之氏
「厳しい条件で故障しない。素早く、たくさんの仕事をしたい――これは、今も昔も変わらない、建機の条件です。しかし、作業量を上げるために、ひたすら力と動作のスピードを追求するのは、過去の話。
 私が担当している油圧ショベルの場合、現在の設計の第一のポイントは、“いかにオペレータの意のままに、自分の手足の延長のようにスムーズに動くか”にあります。
 油圧ショベルはエンジンで油圧ポンプを作動させ、バルブを経由して、バケット、アーム、ブームのシリンダ、旋回モータ、走行用のモータに油を送ります。作業中は各部が複合して動くのですから、それらが綿密なネットワークとして働いていなければならない。各部の動きをセンシングしながら、適切な電子制御を行うことが鍵になるのです。
 油圧ショベルの基本形状自体は数十年前から変わりませんから、一見ローテクに見えるかもしれませんが、実はハイテク。見た目は同じようでも、中身はまったく別物といえるほど、性能も燃費も段違いに進歩しているんですよ。
 新機種が完成すると、出荷式はもちろんうれしいですが、初期調査のためにお客さんのところに出向いたときに評判がいいとさらにうれしい。一方で、昔手掛けた車種が現役で働いているのを見ると、これまたうれしいですね」
厳しいニーズに対応も“腕の見せどころ”――神鋼電機
谷岡 孝氏
神鋼電機株式会社
電子精機本部
大型搬送システム営業部
担当部長
谷岡 孝氏
「当社は重量物運搬用のトランスポータやFA用の無人車などの産業用車両、空港用地上支援車両など、さまざまな“ほかでは扱わない、変わった車両”を開発しています。
 空港用地上支援車両の開発は1960年代にスタート。今では“飛行機の周りのもの”はひととおり何でも手掛けています。
 特に新型旅客機が登場する際は大変。一度も実物を見たことがないのに、実際に飛んできたときにちゃんと対応できるかどうか。航空機メーカーからは『今までの支援車両の規格で大丈夫』と言ってきたりするんですが、いざ、もらったデータを詳細にチェックしてみると、細かな仕様の差で“そのまま”はムリだったりする。
 また同型機を運用していても、航空会社によって“好み”のようなものもあり、きめ細かな設計の対応が必要になります。
 メーカーとしてはなるべく規格化して同一仕様で作りたいのは確かですが(笑)、厳しいニーズに対応するのも、技術者としての腕の見せどころ。
 一方、サイドフォークのような『工場内で働く車両』はほとんどオーダーメイドに近く、1両1両手作り感覚。まさに職人芸の世界です。
 こうした特殊車両は小さい中にたくさんの機能を収めなければいけない。そのためにいろいろな技術や工夫をもってくる。それが大きな楽しみですね」
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根村かやの(総研スタッフ)からのメッセージ 根村かやの(総研スタッフ)からのメッセージ
その勇姿と働きぶりを紹介する写真やムービーは言うまでもなく、スケールモデルの販売、ペーパークラフトやPCの壁紙のダウンロードなど、Web上には「働くクルマ」関連のコンテンツが多数あり、取材の下調べをしているうちに見入ってしまうこともしばしば。心躍る企画ではありましたが、実際に「クルマたち」が働いている現場へ取材に行けなかったことが、心残りです。

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