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![]() そんな矢先、社内のシステム関係の部署のポストに空きがあり、異動したのがコンピュータとの初めての出合いとなりました。その後、会社の先輩と大手コンピュータでトップSEだった知り合いが独立してソフト会社を起こすから手伝わないか、と誘われ、1年半で退職しました。コンピュータの世界なら若くてもチャンスがあると感じたし、小さな会社ならすべて自分でやらせてもらえるんじゃないかと思ったのです。 |
![]() ところが、プログラムの仕事を始めると、やはり退屈なことも多いわけです(笑)。コンピュータのテクノロジーは、実は人の倍か3倍努力すれば、数年でキャッチアップできるんだとわかってしまった。どんな技術も、設計手法も、業界知識も、身につけることができるし、オリジナリティがあるものではない。どうしてこの業界はそういったものをスキルなどと言っているんだろう、変な業界だなと思っていました。 ![]() しかも、私は契約コンサルタントですから、常に、いつ契約を打ち切られてもおかしくないという緊張感がありました。こいつは絶対に必要だ、と思ってもらえなければ、あっという間に自分の席を失う。少なくとも人の倍くらいできないと、と思っていました。となると、倍の能力をもつか、倍の時間働くしかない。しかも、周りは自分の倍以上のキャリアをもつ10年選手ばかり。だから、倍の量の仕事を絶えずやろうと思いました。そうすることで数多くのプロジェクトに携わることができたのです。 もっと言うと、皆がやりたがらないようなトラブルといった、ややこしい手間のかかる案件ばかりを積極的に引き受けていました。難しい仕事に挑めるチャンスだ、仕事が無限にあると思っていました。社員だと、そういう仕事をやろうとする人も少ないし、そもそも会社からやらせてもらえない。しかしそれは、成長の機会の喪失も意味するわけです。実は、失敗の確率の高い仕事は、失敗しても攻められることはないんです。得られるものは多いのに、失うものはないんです。幸運でしたね。 |
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![]() でも、あるとき猛烈な疑問に襲われたんです。もし自分が会社を作ったとしたら、自分が提案するシステムを受け入れるだろうかと。たしかに内容はいい。でも自分なら、こんなにお金をかけて作るだろうか、と。実は優秀な同僚の多くが同じことを感じていました。 ![]() 折しも、システム投資のROI(投資収益率)のグローバル調査を行うプロジェクトにかかわりました。するとグローバルでは、いつ元が取れるのかわからないような情報投資は行われていないことが判明しました。コストメリットが出なければ、企業のCIO(情報戦略統括役員)は退任を迫られるほどなのです。しかし、日本のシステム投資では、まったくROIが出ていなかったのです。たしかに、担当者には喜んでいただけた。でも、それは本当にお客様の会社の未来のためなのか。そう気がつくと、だんだん心が虚しくなっていきました。 |
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![]() もう一方は、ひたすらお客様の言うとおりに開発を進めるタイプです。もし、指示が多少間違っていたとしても気にしない。聞いたとおりにサクサク作る。指示どおりで納期も早いので、お客様の信頼も得られます。カットオーバー後、お客様の指示の間違いが判明した場合は、費用をかけて改変する作業が行われます。ひとりの会社員としては、二度もリピートのオーダーのチャンスを得て、自分の会社の収益に貢献したことになりますから、ある意味優秀といえますね。 海外では、前者が優秀なエンジニアとして評価されます。しかし、日本のITサービス会社では、後者が収益に貢献したからと出世していく。しかも、お客様の評価も高い。実際には、お客様には巨額のコストがかかっているのに、です。何かかが間違っていると思いませんか。従来のITサービスでは、お客様とお互いにWin-Winの関係にはなれないのではないか。このビジネスモデルはやはりおかしいと思ったのです。 ![]() 実際、欧米の感覚は高級外車などではなく、国産大衆車なんです。手作りよりも安いからこっちを使う、くらいの感覚です。投資コストが削減できるから使うわけですね。システム投資のROIについてグローバル調査を手掛けたことから、私はこのことに気づいていました。当時、北米には北米のERPベンダーが、ヨーロッパにはヨーロッパのERPベンダーがいました。自国のビジネスを理解したメーカーが作っていたのです。なのに、日本にはない。経済大国として世界第2位のGDPを誇る国なのに、です。 |
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![]() こうなったらもう自分でやるしかないと思いました。とんでもなく大変だけど、日本の会社の価値が損なわれていくのを、指をくわえて見ているのは嫌でした。自分がやっている仕事が社会にどう役に立ったか、やるべきことをやりたかったのです。実際、欧米のパッケージメーカーは、社会に明らかに貢献していると思っていました。これは、挑むに値するチャレンジだろう、そう決意したのです。 ![]() もうひとつは、人事部や経理部などのいわゆるバックオフィスのシステム。これらは、実は業界や企業固有の制度は少なく、汎用化がしやすい領域のため、パッケージを活用することで、システム投資を大幅に引き下げることができます。 私たちは、後者のバックオフィスシステム投資のROIを上げることで、日本企業がより戦略的な領域に投資を集中させ、国際競争力の向上に貢献したいと考えたのです。 |
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![]() 私は、「不可能」を「可能」にするキーワードは、優秀な人材にあると考えていました。また、そういった人材が活躍できる土壌が日本にはないがために、優秀な人材が海外に流出している事態にも気が付いていたのです。実はアメリカの強みは、ベンチャー企業がそうした優秀な人材を得ていることにあります。 では、日本ではどこにいるのか。答えはすぐに出ました。大企業です。コンサルタント時代の顧客の情報システム部門や経営企画部門には、本当に優秀な人がいました。IT経験を問わなければ、優秀な人の母数はさらに増えると考えました。もしかしたら、能力をもてあましている人がいるんじゃないか、そういう人に開発に加わってもらえたら、どんなにいいだろうと思ったのです。 優秀な人材には、整備された道路を素早く走れる人と、山や谷やデコボコ道をなんとか工夫して登り切れる人の2種類がいます。私たちの考えていた優秀な人材は、0から1を作れる人材。つまり後者です。その能力は必ずしも組織が出来上がった大企業で生かせているとは限らない。もっと自分を成長させられる環境を求めている人も多いんじゃないか。もっと自分を磨きたい人がいるんじゃないか。そういう人たちのための場所が必要ではないか、と考えました。 それで、求人広告を使い、彼らに挑戦状をたたきつけることにしたんです。本当は能力をもてあましているんじゃないか。本当にそこにいていいのかと。知識は後からいくらでもキャッチアップできますから、IT経験は問いませんでした。結果的に、驚くほどの応募がありました。彼らの多くは現在、ワークスの中核として活躍しています。 ![]() |
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![]() ![]() 技術が使えることをスキルと勘違いするのは、古い時代の名残にすぎません。これからは、ゼロベースで何かを作れること、本当に難しい問題に挑めることしか、価値として認められない時代になる。そんなことをするチャンスはない、と思っている人もいるかもしれません。でも、それでは残念ながら未来の展望は薄いと思う。誰かにできる仕事は、いずれほかの誰かに取って代わられます。自分にしかできない仕事をしている人、もっといえば難しい挑戦に自らもリスクを取って挑める人だけが、高い価値と報酬を得られる。実際、欧米はすでにそうなっています。 |
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![]() 進むべき正しい方向に進むということです。厳しい環境の中で、競争に勝ち抜くだけの取り組みができた企業だけが生き残れる。これは真実でしょう。実際、システム投資においてROIの観点に立ち、戦略的な投資を行う企業が増えています。会社の未来へのロイヤリティが高いほど、その決断は当然のものになります。実はパッケージ導入には、初期コストだけではなく、メンテナンスコストにも大幅な削減効果があるんです。こういうことにも、多くの人が気づき始めている。ITというものはわかりにくい、という言葉では、もうすませられる時代ではない。変化は急速に進んでいくでしょう。 経済規模からいえば、日本のパッケージビジネスは3兆円くらいの市場があっていい。当社からスピンアウトして、あるいは当社にインスパイアされて、もっともっと新しい会社が今後はたくさん出てくると思う。そうすることが、今はほとんどない国際競争力や、業界としての魅力も高めていくことになると思っています。 モノづくりの基本とは、より多くの人にそのモノがもたらす効果を実感いただくことであるはずです。毎回作って捨てることがモノづくりの本質ではない。ひとつの会社に使ってもらうためのシステムではなく、多くの人に使ってもらえるモノを作ることに意味があります。実際のモノづくりは難しく、苦しい道のりです。でも、そこにこそエンジニアの存在意義はあるのです。 |
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1963年、兵庫県生まれ。建設会社を経て、ソフト会社に入社。その後、大手コンピュータメーカーに出向、システムコンサルタントに。94年、個人事務所を開設。96年、ワークスアプリケーションズ設立。優秀な人材をより多く集めるために問題解決能力発掘プログラム トップコンサル&エンジニア養成コースを設けるなど、ポテンシャル能力の高いIT未経験者を積極採用して話題となる。2001年ジャスダックに上場。日本で初めてVC比率50%以上での上場となった。その後、人事・給与システムのERPパッケージがトップシェアを獲得。会計システムのパッケージも急速にシェアを伸ばしている。 |
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