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納期ギリギリの仕事、お客の言いなり…自分も昔は現場だったのに 今はもう通わない心と心…部下から上司へ7通の手紙
上司も昔は熱いハートをもつエンジニアだったはず。それが今では、納期に間に合わない仕事ばかりをさせ、言うことはコロコロ変わり、お客の無理難題に何でもハイハイと……なぜなんだ? もう心は通わないのか? そんな部下たちの心の叫びを7通の手紙に託し、200人の上司エンジニアに届けました。
(取材・文/総研スタッフ 高橋マサシ イラスト/室木おすし)作成日:07.08.01
部下の質問 平社員エンジニア100人に調査!上司の“ここがわからない”
部下から上司へ送った7通の手紙
「あなたは上司に対してどんな疑問や不満をもっていますか?」。ソフト系とハード系のほぼすべての職種のエンジニア合計100人(20歳〜30歳)に、こんな疑問を投げかけてみた。幅広く意見をもらうために「仕事について」「人間関係について」「評価について」などと項目を分けて尋ね、回答はすべてフリーアンサー(選択肢でない)でもらった。その全体から最も回答の多かったのが、上の7通の手紙だ。
 回答の中には「特になし」「満足している」などもあったが、逆に上記に含まれないものには、「あいさつしても顔も上げない」「人の好き嫌いが激しい」「うちの社内設備ではできないのにどう検討しろというのか」「昔の武勇伝を語りすぎ」「上とは飲みに行くが部下とは行ったことがない」など、実に多方面からの意見が寄せられた。
 そして、これらの疑問への率直な回答を、200人の「上司」にアンケート調査した。
上司の返事 主任・係長・課長クラスの上司200人が「俺だってツライよ」
 上記の「部下からの7通の手紙」に対して、30歳〜45歳の上司200人に回答してもらった。役職は「主任・係長(下記では係長と表示)クラス」と「課長クラス」で、「実際に部下から質問されたと思って」返事を書いてもらった。最後の7通目を除いてフリーアンサー形式でお願いしたため、各回答の項目分け(各グラフ参照)はTech総研編集部が行った。
1 なぜ納期ギリギリで、残業するとわかっている仕事をさせるのですか?
もちろん仕事は前倒しではやるんやけど、すぐに優先順位高い仕事がどんどんくるから、ケツ決まるところからやるからこうなるんですよ。後回しの仕事のクセでこうなっているのではないですよ。(回路設計:36歳:係長)
納期ギリギリの仕事も請け負えるということは、それだけお客様に頼られている証拠。厳しい条件の仕事もキッチリ仕上げてくれると期待されているのです。(制御系SE:34歳:課長)

仕事がなくてボーナスが出ない状況とどちらがいいですか? 残業だとわかっていても、自分のスキルアップだと思って頑張ってほしい。(運用・監視・保守:42歳:係長)

・仕事を選んでいる状況ではない。(オープン系SE:30歳:係長)

・それでもやる価値があるからだよ。(生産技術:33歳:係長)

グラフ1
・そういう会社だ!! 嫌ならやめろ!(機械・機構設計:31歳:係長)

・君なら最短納期でやってくれると信じている。(ミドルウェア開発:34歳:係長)

・納期ギリギリなので、どうしても必要な仕事です。よろしくお願いします。(汎用機系SE:44歳:課長)

安定した受注がない状況で、努力でカバーできるのであれば、受注する機会があれば仕事を取る。
(制御設計:36歳:係長)

これも会社のためなんだ、わかってくれ!
 グラフにある「そういう仕事なので仕方がない」は少し厳しい言い方かもしれない。この中には、「いっぱいいっぱいの状態だから」「残業も含めて単価が決まっている」「必然性があるから」「ほかに回せないから」などが含まれ、そっけない言葉の中にも中間管理職の苦渋が見て取れるからだ。
 一方で目立つのは利益や収益に対する強い意識で、「お客様」「次の仕事」「売り上げ」「企業の存続」などの言葉が並んだ。また、「君ならできる」「皆で頑張ろう!」といった励ましのフレーズも少なくない。その総意は「やむを得ないんだ」(社内SE:44歳:課長)なのだろう。
2 なぜ突発的な仕事が入ってくるのですか?
今までの実績をお客様に買われて、突発的な仕事でもこなせると信用されているからだよ。(オープン系SE:32歳:係長)
会社は生き物なんだ。数カ月前の予定どおりに進むことは珍しいことだ。ルーチンワークではなく、こういった仕事をどうやって効率的に行えるか、そこに技術者の質が見えてくるんだよ。
(回路設計:43歳:係長)

システムは常に安定稼働するものではない。また、業務も平均的に発生するものではない。(汎用機系SE:40歳:課長)

障害対応は予想が難しい。君たちがこの仕事を選んだ以上、少なからず突発的な業務は仕方がないものと覚悟してほしい。
(ネットワーク:43歳:課長)

グラフ2
仕事には必ず相手があります。突発の業務は問題もありますが、相手の立場も考慮しましょう。
(ミドルウェア開発:36歳:係長)

仕事の整理整頓ができていないことも大きな理由のひとつだと思うが、われわれの担当がほかから頼られていることも事実だと思う。(運用・監視・保守:42歳:係長)

・私も同感である。組織的に改善していく。(制御設計:41歳:係長)

・未来が予測できたらそれは神。(半導体設計:40歳:課長)

俺たちの仕事って、そんなものじゃないのか?
 上司の回答から聞こえてくるのは、「好んで突発的な仕事を入れているわけではない」という声。しかも、「自社システムの開発じゃないのだからしようがないでしょ?」(制御系SE:36歳:係長)という一方で、「仕様変更や現状の設計(設定)では運用不可能なことが判明」(社内SE:32歳:課長)との回答もあるから、職種に限らずエンジニア全般の問題のようだ。
「仕事ってそんなもんだよ」(オープン系SE:36歳:係長)など、会社や社会の宿命であるという意見も多かったが、こうした人たちがほかの部署や業種の実態をどこまで知っているかは不明なので、「突発的な変更」は技術職特有の傾向かもしれない。
3 なぜ言うことがコロコロと変わるのですか?
何が矛盾しているのかハッキリと言いなさい!(汎用機系SE:44歳:課長)
・いや、そんなことはないだろ。
(制御系SE:34歳:係長)

・状況がコロコロ変わるから。
(オープン系SE:43歳:係長)

状況は毎日変化するからです。考えてないのとは全く違います。(回路設計:36歳:係長)

ごめんな。俺も上司に同じことを言ったが、
トップが意見を変えたのでどうしようもないらしい。
(ミドルウェア開発:31歳:係長)

グラフ3
・本音で文句ばかり言っていては仕事にならないから。(ネットワーク:35歳:係長)

・俺もまだまだ修業中の身なんだよ。設計は奥深いんだ!(機械設計:31歳:係長)

状況の変化に応じて業務指示が変わってしまうこともあります。目先の業務指示がコロコロ変わってやりにくいかもしれませんが、業務は「会社の目的を達成するための手段」と割り切って対応してほしいと考えています。
(制御系SE:34歳:係長)

おい、いつ「コロコロと」変えたっていうんだ
「状況や顧客の要望が変わるのだから仕方ない」という率直な回答が多く、「その変化に従って最善の努力をしている」などのコメントが続く。少なくとも上司にとって、「コロコロ(質問の書き方が悪かったのかもしれない)と変える」とは、非常に失礼な聞き方のようだ。
 そのため、「俺は意見を変えていない」という怒りを含んだ回答が多く、それ以外にも「根本は変えていない。ただし、業務では臨機応変に対応しなければならないシーンも多い」(ミドルウェア開発:36歳:係長)などの、「考え方自体は変えていない」と主張する人が目立った。日常生活でもポリシーのない人間と思われることを歓迎する人は少ない。間違っても口にしないように。
4 なぜいつもお客の言いなりなのですか?
言いなりのように見えるか? それなら自分で打ち合わせをしてみなさい。どれだけお客様にも妥協をしてもらっているかがわかるはずです。(ミドルウェア開発:31歳:係長)
例えば、君がどこかの会社に仕事を依頼する場合、急にこうしたいとかああしたいだとかって考えが出たときに、それに対応してくれない会社に仕事を頼みたいと思うかな?
(オープン系SE:32歳:係長)

そんなことはない! 必要なことはきちんと言っている。
(オープン系SE:37歳:係長)

不当な要求には反論しています。しかし、目先の不利も先々の有利になるという長期的な視点に立って、お客様のワガママも聞くことが必要です。これは、どんな商売であっても変わりません。(制御系SE:34歳:課長)

グラフ4
・Give and Takeで貸しを作ることは重要。(汎用機系SE:41歳:課長)

・お客様の望むものを作るのがわれわれのミッションじゃないですか。(運用・監視・保守:42歳:係長)

お客様がいなければ会社は成り立たない、自分たちの自己満足で成り立つ会社はつぶれるからだ。
(機械・機構設計:32歳:係長)

お金はもらっても心までは売らないぜ
 否定する回答が最も多かった質問。「言いなりになっていない」と書いた82人中、44人の上司がコメントも添えている。「当社に正当性があれば押し通す」「会社のアピールになる」「お客のためになるアドバイスをするのがプロだ」「一定レベル以上であれば意をくむ」「後工程に迷惑をかけないため」などで、最終的には顧客や自社のためになるという自負が感じられた。
 一方では、「顧客第一主義」「お客様は神様」などの回答が同数の82人を占めた。しかし、その全員が本気でそう思っているかどうかは、彼らのみぞ知る。
5 評価の基準がわかりません。どう評価しているのですか。
絶対評価ができるわけがないのは、子供でもわかる理屈。相対評価なら、仕事を見てりゃ十分にできる。(制御設計:43歳:係長)
ソースや試験工程、バグ数などの作業結果や、お客様からの評判を元に評価をしているんだよ。(オープン系SE:32歳:係長)

実績重視。ビジネスである以上、実績を重要な評価基準に置くのは当然。(社内SE:33歳:課長)

アピールしてくれ! 報告する場はいくらでもある。週報、期末レビュー、評価面談、どこでもいいから。ただし、根拠・証拠となる内容も用意してくれ。(回路設計:43歳:係長)

ひとりで仕事をしているわけではないだろう? 君と一緒に作業をしている人から様子をヒアリングしているのだ。
(オープン系SE:34歳:係長)

グラフ5
・最もよくできている者に比べてどれくらいかだ。(オープン系SE:36歳:係長)

・まず所属部署の成績。あとは仕事を依頼したときのレスポンス。(制御系SE:34歳:係長)

・お客様からのアンケート回答、営業の意見。(運用・監視・保守:38歳:係長)

・そもそも会社に基準がなく、オレも同感。(オープン系SE:32歳:係長)

学生のころ、平素点ってあっただろ? それだよ。俺も感情に左右される人間だからな。ウマが合う合わないも評価のうちだ。(ネットワーク:40歳:係長)

人の評価は難しい、技術の評価はもっと難しい
 回答を1行で書く人が多かった。そのため、例えば「仕事の内容とアウトプットから」を、「日ごろの勤務態度と仕事の結果・成果」の項目に入れるなどした。その意味でグラフに正確性は欠けるかもしれないが、それでも見て取れるのは、上司によって基準が大きく異なることだ。
 気になったのは、「社内(同僚や他部署)や顧客からの評価」という回答の多さ。評価の集め方や聞き方、信憑性の判断にも興味がわく。また、「数字に表れない技術力をどのように評価しているか」という質問もしたが、納得できるような回答は極めて少なく、グラフも作成できなかった。技術力の評価がどれだけ難しいかわかる。
6 スキルを磨く時間がないのですが、部下のスキルアップはどう考えていますか?
時間は自分で作るものです。通勤電車の中でメールする暇があったらスキルを磨いてください。(FAE:39歳:係長)
忙しいときは現場で覚えて、時間があるときに研修に行ってもらう。(オープン系SE:35歳:課長)

・私は自宅でやってきた。(オープン系SE:35歳:係長)

・深夜、休日を充てるしかない。(制御系SE:32歳:係長)

OJTが効果的であり、その中で最大限吸収してほしい。
(汎用機系SE:41歳:課長)

なぜお前のスキルアップを俺が考えなきゃいけないんだ!
休みの日や帰ってからでも自己勉強しろ! 甘えるな!
(機械・機構設計:31歳:係長)

グラフ6
日々の業務以外でのスキルアップにまでなかなか及ばないのは事実。できる限り考慮するが、何かあれば要望を出してほしい。(機械・機構設計:39歳:係長)

・機会は与えているつもり。本人のやる気との関係もあるので、一概に判断できない。(制御設計:41歳:係長)

・それは僕も同じです。(品質管理・評価:32歳:係長)

悪いとは思うが、時間は自分で作るものだ
 上司の総意は、「スキルアップは、基本的に仕事中か時間外に頼む」だろう。なぜなら、彼らがそうしてスキルを磨いてきたからだ。研修を勧めたり要望を求めたりする回答もあったが、部内の皆が多忙な中で、個人にその時間を用意するのは現実的ではない。「時間を作ってやれないのは悪いと思うが、時間は自分で作るものだ」が本音ではないだろうか。
 ただ、「求めるだけでなく方法を探せ」という上司の意見にも一理あるだろう。部下の要望がわからなければ、手の打ちようがないからだ。ダメモトで進言する価値はあるのかもしれない。
7 本音では部下のことをどう考えていますか?
アンケートだからわかる上司のホンネ 6割が部下を何らかを重視しているが、1割はほかの仕事より比重が低い。
グラフ7
ハード系職種の上司は部下に厳しい?
 この質問にはフリーアンサーではなく選択肢で答えてもらった。「仕事の中で部下を重視している」という回答がほぼ60%。この数値が高いか低いかは読者の判断に任せるが、職種別ではソフト系によりその傾向が強く(特にネットワーク、社内SE、オープン系SE)、ハード系は逆の傾向が出た(特に生産技術、機械設計、品質管理)。より職人気質の強いメーカーなどの現場では、部下に厳しく接しているのかもしれない。
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高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ 高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ
このアンケートは「実際に部下から質問されたと思って」答えてもらったせいか、語調にも「だよ」「です」「だ!」などの個人差が現れました。上司も悩みを抱えるひとりの人間、部下もいずれは上司になる立場、お互いの気持ちを推し量ることは難しいのでしょうか。

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