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明日に向かってプログラめ!! vol.10/10 武井信也@MARS FLAGは、「演奏」にこだわるオーディオファンだ
日本発の検索エンジンを知っていますか? 政府主導で開発予定の日の丸検索エンジンではなく、検索結果が画像で表示される「MARS FLAG」のことです。このエンジンも面白いけれど、もっとユニークなのは開発者の武井信也さん。とても多趣味な方なのですが、その一部をご紹介しましょう。
(取材・文/総研スタッフ 高橋マサシ 撮影/関本陽介)作成日:07.07.23
マイケーブルで演奏会。 強い個性はプログラミングも一緒
武井信也さん
MARS FLAGのトップ画面
MARS FLAGのトップ画面
サイト内検索エンジンMARS FINDERを導入したキヤノンのWebサイト
サイト内検索エンジンMARS FINDERを導入した
キヤノンのWebサイト
オーケストラを分析するオーディオファンたち
オーディオでレコードやCDを演奏するのが趣味とお聞きしました。「聴く」のではなく「演奏」するのだと。
「演奏する」と言ったのは有名なオーディオ評論家なので実は借り物の言葉ですが、考え方として面白いので使わせてもらっています。もちろん、耳で聴いてはいるのですが、「聴く」というのは少し受け身の姿勢ですよね。私たちオーディオファンは「このCDはどのようなシチュエーションで録音されたのか」を考えて、それに合わせて機器の調整を行ったり、時にはケーブルを選んだりして、音を調整していきます。
 大げさに言うと、工業的に量産されたパッケージメディアとはいえ、CDやレコードは「音楽家の魂のこもった作品」ですから、半端な気持ちで再生するのは失礼だと思う気持ちもあります。
どういう曲を演奏されるのですか?
こだわりは特にありませんが、結果的にジャズとクラシックが多くなります。それなりのオーディオ装置で演奏しますから、録音した音質が悪いと正直どうしても入り込めません。また、録音の質まで含めてアーティストやエンジニアの仕事だと思っているので、そういった点も評価することがあります。
評価といいますと?
極端な話ですが私たちのようなオーディオファンは、一部のオーケストラの指揮者から嫌われているなんて話を聞いたことがあります。彼らからしてみれば「せっかく多彩な音を調和させてお客さんに届けているのに、なぜそれを分解するのか」というわけです。
 きちんとした知識と経験でセッティングされたハイエンド・オーディオでは演奏会場の奥行きまでわかりますし、時に私たちは演奏者の精神状態すら聞き取ろうとします。「音の分離、分解、解析」もハイファイな趣味の一部です。そして、「第二バイオリンの弦が切れた」「あのヴィオラはうまくなった」「ピアノの左手の動きが悪い」などと言うのですから、まあ嫌われるのも無理はないかもしれませんが(笑)。ただ、素晴らしい演奏は掛け値なしに感動します。この感動を味わうと、「オーディオをやっていてよかった!」と心底思うわけです。
ケーブルや機器にも個性あり
オーディオファンは性格がいいのか悪いのかわかりませんね(笑)。ところで、どう演奏するのですか?
私はそういうのは苦手なのですが、よくあるのは仲間同士での演奏です。自分のケーブルとCDを持って、土・日に仲間の家に行き、相手の機材で演奏し合うんです。他人の台所で料理を作るようなものですから、それは緊張します。
 音楽は非常に感覚的な趣味ですから、当然音の好き好きは本当に十人十色で、例えば私は明晰で解像度の高い音が好きですが、すべての音が混じり合っているような「溶ける音」が好きな人もいます。すると、彼のCDプレーヤーもケーブルもアンプもそんなテイストですから、彼の音を聴くと「おいおい溶けてるよ〜」なんて感じてしまう。私は持参したCDとケーブルで彼のオーディオで演奏するわけですが、やっぱりケーブルとセッティングを少しいじるだけで相当私色に染まる。そのあたりは個性が出て面白いところです。
ところで、先ほどからの話で「ケーブル」が重要アイテムのようですが。
自己否定になりますが(笑)、ケーブルでの音質の変化はわずかな部分にすぎませんから、本質的にここにこだわるのはオーディオファンとしても、本末転倒なんですよね。そのお金でソフトを買ったほうがいいですから。でも、音が違うんです。しょうがないじゃないですか(笑)。同じ金額を払うのであれば、好きな音調のものがいいですよね。とかいいつつ、7N(99.99999%以上の金属純度)、9Nだのと、素材の純度に異様にこだわる方もいらっしゃいますが……。
 9Nケーブルは特別な例でも、道具にはその人の個性が出ます。例えばあの銀色のターンテーブル(写真)はちょっと珍しくて、上蓋を開けてCDをセットするタイプなんです。私はレコードのようにCDを見たまま演奏するのが好きなので使っていますが、これは音質だけでなく「所作」の好みもあります。
ペタ級データの中からCG画像を探せないか
プログラミングはいつごろから始めたのですか?
気が付いたときで5歳くらいだと思います。自転車で1時間かけてデパートの電気屋さんに行って、店頭のマイコンで立ちプログラミングをしたりしていました。結果をテープで保存して、また行って続きを書く感じですね。
学生時代もプログラマとしてソフト開発に携わっていたとお聞きしましたが、「絵が見える検索エンジン」はどのように着想したのですか?
学生時代に、自分でパソコン通信のホスト局を作って運営していたんです。その目的のひとつがデジタルデータを大量に集めて整理することでした。データはPDS、フリーソフトと呼ばれたアマチュアのプログラムやMIDIデータ、何よりいちばん多かったのがCG画像で、それらを2ギガのテープストリーマーに入れて、途方もない量を集めていました。
 世の中的には2DD、2HD全盛時代で、HDDを持っている人さえ珍しい時代でしたから、本気度がうかがえますよね(笑)。とにかく膨大な数ですからデータを探す機能が必要になるわけで、しかも画像が見えなくてはいけない。そのような着想で検索とデータ整理については、あれこれやっていました。
開発はご自身でされたのですか?
そうですね。もちろん会社組織になってからは社員と共同で開発を進めています。幸い、私も社員もほとんどの言語がわかりますので、社員にはよほどおかしなものでない限りは、好きな実装を使うことを許可しています。
 具体的にはデータを集めるクローラーは分散処理とネットワーク処理、テキスト処理が必要なので開発効率が高いC++、トランザクションとかミドルウェア的な部分にはJava、CGIには使いこなせる開発者が多いPHPやPerlなどと分けています。コアな部分は省電力で高速処理ができるアセンブラでしたが、社内で使えるのは私だけなので今はCも併用しています。ほかにもC#、VB、Delphi、Ruby、JavaScriptなども好きですが、やはり最も好きなのはアセンブラですね。
作りたいのはチャンスを与える検索エンジン
そうして誕生したMARS FLAGは、どんなユーザーを対象にしているのですか?
もちろんすべての人ですが、特に子供やお年寄りなどのパソコン初心者を考えていました。検索された画面を見て、その後は「つなケン」(似た感じのサイトを検索する独自の機能)で範囲を広げられるので、抽象的なキーワードの入力とマウスの操作ですむんです。ただ、結果がビジュアル表示されると思わぬ発見があるので、ネットのヘビーユーザーにも愛用されているようです。
プログラミングの面白さを教えてください。
理由なく面白いです。例えば街を歩いていて「これ作りたい」とひらめきます。次は言語を決めて試作します。まずはこの段階で、動いた瞬間が得も言われぬ快感ですね。私はオーディオのほかに写真や絵もやるのですが、それらとは異質な喜びがあります。それだけ、プログラミングが好きなんでしょうね。
 それからはスクラップ・アンド・ビルドです。作ったプログラムは大体年に一度見直しているのですが、当然、会社の仲間に見せてもいます。皆が「いいね」と言えば加える機能を考えたり、共同開発のために言語を変えたりして、チーム開発にもっていきます。私はマネジメントや経営も好きなので、こうした作品が市場で評価されたときも最高です。だから社長も務めています。
MARS FLAGは第4回Webクリエーション・アウォードで「Web人賞」を受賞
MARS FLAGは第4回Webクリエーション・アウォードで「Web人賞」を受賞
今後の目標や夢があれば教えてください。
世界中の検索をビジュアル化したい。広くいえば、検索をしていると思わせないで、必要な人に必要な情報を届けたい。そうなれば、情報格差が埋まって、より多くの人に何らかのチャンスが生まれると思うんです。そんなチャンスをサポートしていきたいですね
武井信也さん 武井信也さん(35歳)
1971年生まれ。千葉工業大電気工学科中退。東京モーターショーなどを手掛けるイベント制作会社に3年半ほど勤務し、1998年に有限会社ビーボイドを設立。大手ハードメーカーの特殊なドライバ開発などを事業の柱とし、1年内の2カ月で収益を上げ、それ以外の期間を検索エンジンの開発に充てる。2004年8月に同社を改組して株式会社マーズフラッグを設立し、代表取締役社長に就任。2006年5月に検索エンジン「MARS FLAG」をリリース。サイト内検索エンジンである「MARS FINDER」はキヤノン、本田技研工業、三菱電機のWebサイトに導入されている。
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高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ 高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ
いやはや、すごい人がいたものです。書く余裕がありませんでしたが、学生時代からオープンソースやネットワークコミュニティの活動を主催していたり、大学時代は月200万円のパソコン通信費を払うためにテレビ番組で使うゲームを開発したりと、その履歴には驚くばかりです。オーディオは彼のほんの一部にすぎないのです……。

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明日に向かってプログラめ!!

編集部が注目したプログラマの趣味やハマりごとにフォーカス。彼らの人間性とその魅力を通して、プログラマライフをクローズアップします。

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