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広島で自然と心のゆとりを獲得、福岡で技術とドライブを満喫 I・Uターン転職で自分を取り戻したエンジニア
生活の場を地方へと移すIターン転職、生まれた故郷へ戻るUターン転職。一度は考えても、環境の変化や技術の先端性が不安要素となり、なかなか選択肢に入らないのが実情ではないだろうか。ならば、こうした転職を実践したエンジニアに話を聞こう。個人の事情は異なっても大きなヒントがあるはずだ。
(取材・文/総研スタッフ 高橋マサシ 撮影/竹本宗文・森田公司)作成日:07.07.18
広島人情編 人を助けられない忙しさより、故郷の自然の中で働きたい
技術知識の伴わない管理業務と100時間を超える残業に限界
 桃井さんは広島県広島市の生まれ。山口県の高等専門学校に進んでプログラミングと電子回路設計を学んだ後、大手輸送機部品メーカーに入社した。場所は神奈川県横浜市だったが、当初は好きな仕事ができればよいと、勤務地へのこだわりはなかったという。主な業務は管制センターなど交通関連システムの構築。SE希望だった桃井さんに不満はないはずだが、実務は望んだものと違っていた。

「プログラミングから入れると思っていましたが、実際の仕事は協力会社のマネジメント。お客さんと話して仕様書をつくり、外注さんに発注したら、仕上がってきたものをテストして納品するというサイクルです。知識不足から自分でトラブルに対応できず、協力会社さんと対等に開発の話もできない。プログラミングをきちんと覚えずに設計をしているのが不安でたまりませんでした」
株式会社広島情報シンフォニー ソフトウエアビジネス事業部 ITイノベーションシステム部 桃井健志さん(29歳)
会社の近くにある広島ビッグウェーブにて
 こうした状態が3年ほど続いて転職を考えるようになるが、決断までには2年が必要だったという。社内の同僚とは仲がよかったし、多くいた後輩たちの面倒を見てあげたいという気持ちも強かったからだ。しかし、もうひとつの転職動機が徐々に大きくなってきた。それは、「コンスタント」に続いていたという月100〜150時間程度の残業だ。

「加えて1年の3分の1は地方出張でした。仕事が忙しいと心に余裕がなくなって、困っている同僚やお客さんを助けられない。そのための技術も身についていない。DBやネットワーク系のスキルも弱い。心のゆとりと技術の遅れを取り戻すのなら20代のうちだと考えました」
 浮かんできたのが生まれ故郷である広島県への転職。帰ると落ち着くし、海に山にと自然が豊富。25歳で転職活動を始めた桃井さんは、転職サイトを使ったり適職フェアに参加するなどして、広島の企業情報を集めていった。
好きな水泳と自然を満喫し、今後は「技術の強み」を求める
 転職先選びに関して桃井さんがこだわったのは企業規模ではない。エンドユーザーとの距離が近いという理由で、大手より中堅企業を希望したほどだ。条件としたのは「プログラミングや周辺技術の習得」と「ゆとりのある生活」に加えて「転勤のないこと」だった。
「ずっと広島で生活したかったのです。『都会が本社の広島支社』まで含めると選択肢は広がりましたが、別の支社への転勤もあり得るので地元企業に絞りました。最終的に候補は4〜5社になり、第一志望である広島情報シンフォニーに決まりました」

 同社を選んだのは上記の条件に加えて、医療系や福祉系のソフト開発を続けているから。大手企業が発注するシステム開発のほかに福祉系のソフトも独自開発しており、障害者も積極的に採用している。「技術は人のためのもの」という桃井さんのポリシーにぴったりだった。
広島と言えば……お好み焼き! 平和公園横の小道にも緑が多い
市内の中心にある広島城
 転職して3年、現在の桃井さんは大手完成車メーカーに常駐し、基幹系システムの開発に携わっている。全くの素人だったJavaも先輩の指導を受けながら覚え、技術的な成長も実感できる毎日だ。オフの時間は、クルマで1時間ほど走れば広がる自然の中に身を置き、近くのスイミングプールで泳ぐこともある。彼は高専時代には水泳部のキャプテンであり、広島は区にひとつはスポーツセンターがあるという施設が充実した土地柄なのだ。

「Uターン転職した満足度は80点くらい。環境には満足していますが、技術力をもっと高めたいですね。この3年で多くの言語や開発プロジェクトを経験して、確かに実務の幅は広がりました。ただ、逆にいえば、まだ自分の強みが身についていないように思うのです。これからはひとつでも多く、自分の強みを増やしていきたいです」
私も同じく転職エンジニア。I・Uターン転職者は即戦力です
 桃井さんの上司でありエンジニア採用にも携わる松田氏は、「I・Uターン転職者は即戦力」と語る。
「広島と東京のエンジニアではかなり力の差があると思います。技術力も高いし、お客さんとの折衝も任せられる。すぐに現場で働いてもらえる方がとても多いですね。弊社でこの3年に採用したSEのうち、3割程度が東京など都市部からの転職者です。仕事は増えていますので、実務経験が3年以上あるオープン系SEなら大歓迎です」
 実は松田氏もIターン転職者。出身は和歌山だが、東京から奥さんの実家である広島に転職して10年目になる。
「ワークライフバランスを考えれば地方がいいと思います。システムもお客さんとじっくりつくり上げることができますし。広島には街中にグリーンゾーンが多いので、お客さんなどを訪ねるときには自転車を用意して、川沿いの小道を走ることもあります。気持ちがいいんですよ」
ソフトウエアビジネス事業部 システム開発 統括部長 松田龍介氏
桃井さんからのアドバイス 大事な転職だから現地へ出向いて直接話を聞く
桃井健志さん
 私は転職活動を始めて6カ月後に会社を辞め、広島に移って再度活動をスタートさせました。現地の会社に足を運んで、じかに話を聞いたうえで判断したかったからです。横浜と広島を何度も往復するのは時間もコストも大変ですし、何より大切な転職で後悔はしたくありませんでした。それが転職成功の決め手となり、3カ月後に現在の会社に入社しました。
 失敗したかなと思うのは、8〜9割方転職を決めてから活動するまでに半年かかったことです。こうした不安定な状態だと仕事が中途半端になり、周囲にも迷惑がかかります。決断までの期日を決めるべきだと思いました。
福岡こだわり編 ゆったりとした時間の中で、自分で会社を伸ばしていく
友人と起業した会社が頓挫して「リセット」を決意
 黒岩さんは愛知県名古屋市生まれだが、家族の転勤に伴い生後3カ月から中学までを九州各県で過ごす。中学3年から大学までは熊本県に在住。大学理学部時代にゲームソフト会社のアルバイトとしてプログラマブル音源による効果音などの開発に携わり、そのまま正社員へ。4年ほど続けた後、22歳で東京のゲームソフト会社に転職した。
「20歳のときに出張で初めて東京に行きました。秋葉原の電気街を見て『こりゃすごいな』と思ったんです。新しい技術に触れたいという思いが強くなり、思い切って東京に出ました」

 この後、28歳までに3度転職をして、さまざまなゲームソフトの企画から開発までを経験した。4社目の会社が不振となり転職を余儀なくされたが、2000年当時のゲーム業界は不況であり、システム開発会社に活路を求めた。
「PDAのOS周りの設定、ファームウェアのカスタマイズ、業務アプリの
株式会社ハウインターナショナル 研究開発部 マネージャー 黒岩啓治さん(35歳)
開発など、ほぼすべてが初体験。ゲーム開発はCかアセンブラでしたが、そこではJavaを使っていたので独学で覚えました。また、DBには戸惑いましたね。ゲームソフトってDBを使いませんでしたから」
愛車と一緒に会社近くの川沿いで
 その後、2004年からフリーエンジニアとなり、「これが最後」との決心で友人たちと会社を設立。しかし、2006年に経営が頓挫してしまう。ショックを受けた黒岩さんは「人生をリセットしたい」と思い、勤務地を選ばずに転職先を探した。そんな彼の目に飛び込んできたのが、転職サイトで見つけた「ハウインターナショナル」だった。
「福岡にこんな会社があるのかと思いました。私は子供のころに九州を点々としていましたが、実は福岡県には住んだことがなかったんです。しかし、場所は関係ありませんでした」
 応募の後に東京でCTOの面接を受け、福岡で社長面接、2006年12月に入社した。
ドライブはこれからが本番、飯塚市から技術を発信する
 多くの会社でゲームやシステムの開発に携わってきた黒岩さんのスキルには、幅も奥行きもある。本人もそれなりの自信はあったというが、入社後の同僚たちに驚かされる。
「技術の深さが違う。例えばJavaでも手法やフレームワークの知識が豊富で、おまけに皆が研究熱心。東京の技術特化型ベンチャーから依頼がくるほど技術力が高い会社で、モバイル系アプリ開発のプラットフォームまで自社開発しているんですよ」

 東京から福岡に来たはずの黒岩さんだが、入社後すぐに上記ベンチャーに4カ月常駐となって東京へUターン。今年の4月から飯塚市の本社に勤務し、上記のプラットフォーム「GrainPlatform™」の開発や、携帯サイトの「落ちモノ」(ダウンロード)系開発に従事している。
全国各地から社員が集まる社員総会は1カ月に一度開催 福岡と言えば……博多ラーメン!
1996年完成のキャナルシティ博多は新名所
 そんな黒岩さんの趣味はクルマ。免許を取ったのは30歳過ぎと遅めだが、だからこそ愛着はひとしお。愛車のセリカGT-Fourは免許取得前からの憧れで、飯塚まで運転してきたほどだ。通勤の1時間も彼にとっては峠を楽しむドライブになっている。
「こっちに来たはずが3カ月は東京でしたから、クルマはこれから存分に楽しみます。通勤で使う冷水峠(飯塚市と筑紫野市にまたがる峠道)は道が狭いから、余計に面白いかな(笑)。仕事では、『飯塚市をアジアのシリコンバレーにする』という正田社長に共鳴しています。発展途中の会社ですから、私の経験を役立てる余地も大きい。今は自分のやるべきことをやるだけです」
「地方で食っていく」社会モデルを一緒につくりましょう
 社長の正田氏は飯塚市にある九州工業大学の出身。「学生時代に飲み食いさせてもらった」地元に恩返しがしたいと、1999年に起業した。
「弊社には『入社を機に人生を再出発したい』という人が多いんですよ(笑)。約半分がI・Uターン転職でほとんどが東京からです。都会でもまれているエンジニアは強いですが、どこかを病んでいるんですね。そんな心や体をリフレッシュして、地域や社会に必要とされていると感じてもらえると、想像以上の力を発揮してくれます」
 モバイルコンテンツと企業の基幹系システム開発を柱とする同社では、合弁事業でB to Cのサービスを始める予定もある。しかし、正田氏は「やりたいことの1%もできていない」と語る。
「ミニ東京を目指すのではなく、独自の技術で地方を活性化させたい。そんな社会モデルをつくりたいと思う人に、ぜひ来ていただきたいですね」
代表取締役社長 正田英樹氏
黒岩さんからのアドバイス 「これだけは譲れない」という条件で会社を探す
黒岩啓治さん
 無難に仕事をしたいなら都市部のほうがよいと思います。仕事は定量的にあるし、システムもしっかりしているし、給与だって地方より高い。逆に言えばI・Uターンをする人は、これらと引き換えになる何かを求めて転職するのでしょう。そうであれば、「これだけは譲れない」というポリシーをもって会社を探してはどうでしょうか。
 私の場合はベンチャー企業の高い技術力でしたが、なじみのある九州という土地柄も影響しているのかもしれません。ドライブもできますしね(笑)。私は35歳で転職をしましたから、60歳まで働くとしてあと25年あります。納得できる会社選びをしたいと思いました。
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高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ 高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ
広島と福岡に行ってきました。いつもはここで取材の話を書くのですが、今回はご当地の名物を。お好み焼きは広島出身の友人のおススメの店、博多ラーメンは通りすがりの店に入りました。どちらもおいしくて写真を撮るのを忘れてしまいそうでした。魚介類では広島ではこいわし、博多ではあげまき貝を食べ、本当に撮影を忘れてしまいました。失礼!

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