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社長のプレゼン【エンジニア出世論】アクセンチュア程社長もプログラミングから仕事が始まった/アクセンチュア株式会社 代表取締役社長 程 近智 氏
ソフト、ハードの技術が融合するボーダーレス時代。こんな時代に多くのエンジニアを抱える人気企業の社長になる人物って、どんな人? 第1回は、アクセンチュアの日本法人社長、程近智氏にこれまでのキャリアを振り返ってもらい、自身の仕事論、エンジニアへの期待を聞いた。
(取材・文/上阪徹 総研スタッフ/宮みゆき 撮影/栗原克己)作成日:07.07.03
アクセンチュア株式会社 代表取締役社長程 近智 氏
ぜひ、外国のエンジニアと“他流試合”をしてみてほしい!
Q:程さんは、1982年にスタンフォード大学工学部を卒業されています。当時、アメリカの大学に進まれるケースはまだ少なかったのではないかと思います。どうして海外に、また、どうして理系に進まれたのか、お聞かせください。
 グローバルな考え方を子供に持たせようという両親の教育方針で、私はずっとインターナショナルスクールに通っていました。ちょうど叔父家族がサンフランシスコにいたこともあって、アメリカの大学に進んだらどうか、となりました。私が進んだ大学は1、2年は一般教養で、3年から文理選択をすればよかったので、入学してから考えました。

 叔父がエンジニアでしたし、せっかくシリコンバレーに来たんだから技術系に進んだほうがいいだろうという単純な理由でした(笑)。理系のバックグラウンドがあったほうが、いろんな場面で役立つかもしれないという思いもありました。ただ当時からマネジメントに関心があったので、テクノロジーを究める道は考えていませんでした。専攻は管理工学。広く浅くいろいろな工学分野の基礎と工場経営やレイアウト、生産計画などを学びました。大学院は考えず、就職してからビジネススクールに行こうと思っていました。
Q:なぜ、コンサルティング業界を選ばれたんですか?
 私がアメリカで学んでいた1980年前後は、日本の自動車産業やエレクトロニクス産業が世界を席巻し始めたころ。日本脅威論がささやかれ、一部の街では日本の製品がハンマーでたたき壊されたりして、「日本に追いつかれるんじゃないか、もっと競争力を高めなければいけない」というムードがアメリカ中に広がっていました。この事実には正直、驚きました。日本って、すごいじゃないかと。

 もちろん、アメリカと比べて非効率なところもたくさんある。でも、明らかに強みもあった。大学では、多くの留学生はアメリカで就職することを希望していましたが、僕は逆でした。むしろ、日本に興味があった。なぜ日本がこんなに強いのか、知りたかったのです。ところが日本では、海外大学の新卒を受け入れてくれる会社は当時なかなかありませんでした。受け入れている業界のひとつが、コンサルティング業界でした。

 僕が入社した頃は、まだ会計事務所のコンサルティング部門で陣容も50人ほど。正直、この選択で本当に大丈夫か、という思いもありましたが、2年間は大学院に行ったつもりで勉強して自分のキャリアを確認する期間にしていいと言われたこと、また人とコンピュータの両方が好きなら来なさいと言われたことがとても印象的で、最終的な決め手になりました。
Q:入社されて以降は、とんとん拍子に、という感じですか。
 いえいえ、結構苦労しましたよ。最初はプログラミングから仕事は始まりました。日本では会社の知名度も高くなかったですから、仕事も限定されていました。僕はちょっとおっちょこちょいなところもあって、とても優秀なプログラマとはいえなかったかもしれません(笑)。ミスもよくしていました。

 今も覚えているのは、あるプロジェクトで、マスターデータをすべて消してしまったこと。翌日からお客様を含めたプロジェクトメンバー全員で合宿に行こうとしていた金曜日の夜の出来事でした。ショックでした。でも、新人がちょっと触ったくらいでデータが消えちゃうシステム自体が、そもそもおかしいと当時は思っていました。結局お客様の課長と二人で週末居残り、復旧に当たりました!
Q:20代、30代はどんな意識で仕事をされていましたか。
 入社2年目にチームのサブリーダーを任されたんですが、お客さまとの打ち合わせのとき、同僚がふーっとタバコをくゆらせて10分ほど一服していたら、担当の方に言われたんです。そのタバコは高いよね、と。私たちは時間単位で報酬をいただいています。その10分間も費用は発生しているわけです。以来、仕事に対する緊張感はそれまで以上に高まりました。お客さまに対価をいただいて成果を出す。そういうビジネスであることを、改めて認識したんです。後にシステムエンジニアとして、あるいはコンサルタントとして、お客さまへの提案のスケールがどんどん大きくなっていきましたが、いつもその原点を忘れないように心がけていました。自分の日々のすべての行動が付加価値を生むのだ、と。
Q:仕事キャリアについては、どんなふうにお考えでしたか。
 今もそうなんですが、こんなことやってみたい、あんなことやってみたい、というのが、いつもたくさんあるんですよね。プログラマ時代は、システムエンジニアになって、システムの設計をしたいと思うようになりました。プログラマというのは、ある種、もって生まれた素質があって、自分はどうやら天才ではないということにも気づき始めて(笑)。そしてシステムエンジニアになると、だんだんビジネスそのものに興味が向かうようになりました。

 当初から、私は3年ごとにキャリアを見直すことにしていました。3年たつと、自分で3つをチェックします。所属する仕事場に貢献できているか。社内でやりたいことがあるか。社外に出たら市場価値はあるか。この3つのポイントを意識しながら、次の3年間を考えていきました。プログラマになって、システムエンジニアになって、アメリカのビジネススクールに行って、戦略コンサルティングに携わって、とキャリアが広がっていったのは、3年ごとのステップアップを常に考えていたからだと思っています。
Q:いずれは社長に、というお考えはおもちでしたか。
 特に目標として据えていたわけではないですし、なろうと思っていたわけでもない。なりたいですか、と聞かれたら、多くの人は「興味がある」、と答えるでしょうが、能力がないのに社長になったら会社はすぐダメになるだろうと思っていました(笑)。その前に、着実にいろんなステップを、上のレベルを踏まないといけないだろうと。3年ごとのステップアップでもそうでしたが、少しラクになってきたな、と思ったら、もっと負荷をかけようといつもしていました。どこまで負荷をかけると限界に達するか、やってみないとわからないですから。ただ、キャリアには正解はありません。このキャリアで本当にいいのか、と不安になって悩んだこともありました。
Q:では、どうして社長になれたとお考えですか。
 3年ごとに自分なりに決めた目標を、確実にものにしていったことがひとつ。もうひとつは、大きな流れを自分なりに読んでいったことかもしれません。製造業から金融へ、ITから戦略へ、リエンジニアリング、eコマース、ベンチャー、デジタル・コンバージェンスなど、私はいつも人より2年くらい早く、こっちに行きたい、と言っていたんですが、時代のキーワード、社内のキーワードがほとんどそのとおりになっていったんです。自分がやりたいことをいつもたくさんもっていたこと、それから社内外の勉強会など、たくさんのネットワークを通じてたくさんの情報を持っていました。以前は、アメリカで成功したビジネスや技術が、何年後かに日本にやってきていた。海外での情報をいち早く入手していたことによる先見性も生かせたのかもしれません。
Q:数多くのエンジニアとお仕事をご一緒されて来られたと思います。優秀なエンジニアの共通点はありますか。
 基礎的な技術や知識はもちろんですが、得意分野、得意領域、得意な仕事パターンをもっていることですね。そして加えて、チームで動く仕事が多いわけですから、チームワークを醸成する力をもっていることです。厳しいだけじゃないマネジメントができるか。できる、できないがはっきり言えるか。そういうビジネス的なマインドが重要。最もいけないのは、期待値を思い切り上げておいて、裏切ってしまうこと。これは信頼を失います。
Q:グローバル企業で長く仕事をされています。日本の技術者の強みと弱みをどんなふうにご覧になられていますか。
 日本人エンジニアの技術に対するこだわりや、技術の質の高さは、世界でも間違いなく非常に高いものがあります。システムづくりの場合、野球でいえば、外野の間に落ちるフライや三遊間のゴロを誰がフォローするかが非常に重要ですが、日本人はこの点でもお互いの連携が非常に優れている。勤勉さ、まじめさも、他国に抜きん出ていると言っていい。ただし、課題も抱えています。一つはコスト意識が足りないことです。質へのこだわりは重要ですが、すべてを巧みの世界の職人技で行うわけにはいきません。また、チームで一斉に同質のプロジェクトを走らせるためにも、仕組み化や標準化は避けて通れない。システム開発の科学的な工業化は、他国に比べて遅れていると言わざるを得ません。この点では、相当な危機感を持って取り組む必要があると思います。
Q:今、課題をひとついただきましたが、人材を迎える業界として、IT業界の課題、業界として取り組むべきことがあるとすれば、どんな点だと思いますか。
 組織として柔軟性を持たないといけない、ということではないでしょうか。実際、ITエンジニアでも、求めるワークスタイルはさまざまです。1日6時間働きたい人もいれば、とにかくスキルを高めたいという人もいる。労働という軸ひとつとってみても、海外をうまく活用して効率よくシステム開発を押し進めていくということも含めて、やれることはたくさんあると思います。また、技術力を磨くという点でも、スキルアップのために大学に行く、海外に行くなど、組織が柔軟に受け入れられれば、もっと面白い業界になっていくと思いますね。
Q:ITエンジニア、コンサルタントにとって魅力的な職場であるために、御社ではどんな取り組みをしていらっしゃいますか?
 これは全世界で行っていることですが、全社員に共通の意識調査を実施しているのです。給与について、上司について、会社のビジョンについて、など。でも、毎年、社員が最も大事にしている質問は何かというと、「面白い仕事、やりたい仕事に就いていますか」というものなんです。マネジャーには相当なプレッシャーですが(笑)。でも、もしこの質問で芳しい答えが返ってこない部門の長はもちろん行動を変えねばなりません。100%の満足は難しいですが、マネジャーは皆、社員の仕事の満足度を意識して仕事をしています。仕事への意向は一人ひとり違う。それを踏まえ、社員ができるだけ満足できる仕事のポートフォリオを組むことが、マネジャーの重要な役割のひとつです。
Q:これからの社会は、ITエンジニア、コンサルタントにどんな期待をしているのでしょうか。
 ITというと、いわゆるエンタープライズのシステムづくりをイメージする人も多いかもしれませんが、実は今のITはどんどん製品の中に入り込んでいます。自動車のような製品にもITは欠かせないものになっていますし、半導体の性能もアプリケーションが大きく左右する。内視鏡のような医療機器も同様です。製品の付加価値を高めるためのIT活用が急速な勢いで進んでいます。これを私たちは、エンタープライズと組み込みの融合と呼んでいますが、この融合によってITの複雑性は増すことになるわけです。

 そうなれば、ITの重要性も高まるということ。実際、日本を代表する製造業が、IT企業やネットワーク企業を次々に買収したりしています。企業のITでも、単純にパッケージを入れて、という世界ではもはやなくなりつつあります。実はみなさんが思っている以上に、今の社会では、ITの重要性、新たな必要性は高まっているのです。
Q:最後に、いいキャリアづくりのために、ITエンジニアにアドバイスをお願いします。
 日本はとてもいい国ですが、キャリアを考えるときには、私は一度、視野を世界に広げてみてほしいと思っています。自分がやろうとしていることが、世界ではどんな位置付けになっているか、日本でその技術を担って世界で通用するか、そういうことを考えてみてほしい。実際、世界に出て行くIT企業も出始めています。製造業と比べると、あっという間に出て行けるのがIT企業の特色。面白い展開が可能になるかもしれないということです。

 また、視野を広げると日本の強みも見えてきます。エンタープライズソフトウェアパッケージではなかなか厳しい状況ですが、携帯電話、自動車、半導体、医療機器などでは、日本のITは世界の最先端を走っている。そういう事実も見えてくる。機会があれば、ぜひ外国人エンジニアと“他流試合”をしてみてほしいですね。彼らは日本語ができないから大丈夫、日本には来られない、なんて思っていたら危ない。いつ、高性能の自動翻訳機ができるか、わかりませんからね。いずれにしても、優秀な外国人エンジニアと仕事をすると、大いに刺激になります。これは、ぜひお勧めしたいです。
アクセンチュア株式会社 代表取締役社長 程 近智氏(ほど・ちかとも) アクセンチュア株式会社 代表取締役社長 程 近智氏(ほど・ちかとも)
1960年、神奈川県生まれ。82年、スタンフォード大学工学部卒業後、アクセンチュアに入社。91年、コロンビア大学経営大学院でMBAを取得。95年、パートナー就任。その後、eコマース推進コアチームリーダー、ビジネス・ローンチ・センター長を経て、2000年に戦略グループ統括パートナー。01年に通信・ハイテク本部通信業統括パートナーを兼務。03年に通信・ハイテク本部統括本部長。05年9月に代表取締役。06年4月に代表取締役社長に就任した。現在も通信・ハイテク本部統括本部長を兼務する。趣味は温泉旅行、史跡巡り、ゴルフ。
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宮みゆき(総研スタッフ)からのメッセージ 宮みゆき(総研スタッフ)からのメッセージ
程社長はとても穏やかにお話をされる方で、取材中も私たちの目を見ながら丁寧に語ってくださいました。エンジニアのワークスタイルは多様であるべきというお話も、程社長ご自身が休職してアメリカの大学院に留学した経験があるだけに、共感できました。忙しさだけに翻弄されることなく自分を磨く努力をし、それができる環境は大事ですよね。次回の社長のプレゼンもお楽しみに!

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