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モノづくりを極める高周波・モジュール開発プロジェクトが始動 昨年度の倍以上!TDKが近年で最高の135人大募集
業績好調のTDKがエンジニア獲得に本腰を入れた。主力となる電子材料や積層セラミックコンデンサの開発を強化するのはもちろん、高周波回路を組み込んだ無線モジュール製品にも全社的にリソースを投入する。どうしても必要となるのが中途採用のエンジニアだ。
(取材・文/総研スタッフ 高橋マサシ)作成日:07.06.27
Part1 高周波無線をキーワードに人材の重点配置を強化
 搭載部品点数が増加し、さらなる高機能化と小型・薄型化が求められる携帯電話、デジタル家電、あるいは車載機器。こうした製品を陰で支えるのが電子部品や電子デバイスだ。過去最高の収益増を達成したTDKの事業戦略と採用計画を、みずからも転職者である人事教育部長の米山淳二氏が語る。
電子部品・電子デバイスをさらに深耕
 TDKの2007年3月期決算は連結売り上げ8620億円、純利益701億円と前期比の59%増。10期ぶりの過去最高を更新した。主な要因は、高性能化が進む携帯電話やデジタル家電に用いられる高機能電子デバイス。積層セラミックコンデンサ、HDD用磁気ヘッド、インダクターなどに、セットメーカーから引き合いが殺到しているのだ。加えて、インテリジェント化の進む車載部品のニーズ拡大も、同社事業の追い風となっている。
「デジタル機器1台当たりの部品点数が増え、同時に小型化と高機能化が急務となっているのが現状です。また、磁気テープや光ディスクなど記録メディアの販売事業を、4月に米イメーション社に譲渡したこともあり、今後は本業の『電子素材部品・デバイスメーカー』としてさらなる成長を目指したい。そのためにぜひとも欲しいのが中途採用のエンジニアで、今年度の採用計画は135人。前年度実績が60人でしたから倍以上となり、今年は将来に向けた技術系人材の重点確保の年と考えております」

  TDKが採用を強化する分野は主に4つ。電子部品・デバイスの素材となる電子材料の開発と製品化へのプロセス技術、高周波回路を組み込んだモジュール製品の開発、主力製品のひとつである積層セラミックコンデンサの開発、量産のための生産技術だ。
「弊社と同業の電子部品メーカーのほか、セットメーカーや材料メーカーのエンジニアなら、即戦力で働いてもらえると思います。 ただ、経験や対象とする製品がマッチしない方でも、30歳前後までであればポテンシャル採用もあります」
アドミニストレーショングループ 人事教育部長 米山淳二氏
アドミニストレーショングループ
人事教育部長
米山淳二氏
「最重点強化部門のひとつ」の高周波モジュールを攻める人材が欲しい
 上記の4分野でとりわけ熱い期待が高まっているのが高周波モジュールだ。
「はっきりいえば、弊社にも強い分野と弱い分野があります。磁気ヘッドやコンデンサといった強みをさらに高めるのは当然ですが、開拓していない市場にも挑戦していきます。それが弊社の材料技術や加工技術と高周波回路を融合させた、精密かつ小型・薄型モジュール製品の開発です」
  いわゆるSiP(System in Package)モジュール。 パッケージ型ICの上にデバイスを並べるだけでは性能的にもサイズ的にも限界があり、今後は専業メーカーの先端技術と独自性が勝敗を分けると言われる電子部品だ。この中でもモバイルやワイヤレス製品に使われる高周波モジュールの開発に、TDKが本腰を入れるという。
「昨年に40代で経営トップに就任した上釜は、一貫したHDD用ヘッド開発に従事してきた技術屋社長。その彼が『支援は惜しまないので、TDKのあらゆるリソースを注ぎ込んで取り組むべし』と宣言したプロジェクトです。中途採用の新しい血で、この分野の市場を取りにいきたい」

  TDKといえば一昨年に創業70周年を迎えた老舗のハードメーカー。生え抜き社員がほとんどと思いがちだが、社員の3割を中途採用が占める。ソフトフェライトの工業化で起業したベンチャー気質も顕在で、学閥や派閥はなく、社員の性別、年齢なども問われない。企業自体も働くエンジニアも、最も重視されるのはチャレンジ精神だ。
「電子部品はコンシューマ製品でないせいか、地味でしょ(笑)。ですけど、使われる技術は相当に高度で、モノづくりの醍醐味が実感できる分野。弊社は創業から技術で収益を上げてきた会社ですから、技術には自信があります」
TDKの技術者職種・中途採用者数の推移
Part2 無線機能を異種機能と融合させたモジュール開発プロジェクト
 TDKの高周波モジュール開発は大きく3つに分かれる。受動デバイスと能動デバイスを組み合わせたモジュール開発、アンテナとフロントエンド部分の融合、ストレージ(HDD)への無線機能の付加だ。ここでは前二者を中心に、プロジェクトのリーダーである山下喜就氏に語ってもらう。
携帯電話のフロントエンドをSiPモジュールに
「モバイル機器は高周波の電波(アナログ信号)をアンテナで受信し、雑音を落としてほしい周波数信号を抽出し、その後でデジタル信号に変換します。ここまでがフロントエンドと呼ばれる弊社の仕事です。ただ、受信するアンテナをはじめほとんどの部品が受動(パッシブ)デバイスなのに対して、増幅装置であるアンプは半導体による能動(アクティブ)デバイス。後者はこれまで半導体メーカーの専門分野でしたが、両者を一体にしたSiPモジュールを開発するのがわれわれの目的です」
  既存のIC基板に受動デバイスを載せたSiPはこれまでもあったが、TDKでは一歩進めて、半導体メーカーと協業しながら独自のモジュールを開発し、小型化と高機能化を進めるという。サイズでいえば現在の標準的な無線通信モジュールは10mm×10mm×1.4mmだが、最終的にはこの3分の1から5分の1にしたいと、XLプロジェクトのリーダーである山下氏は語る。

「携帯電話の中に入っている部品の数は2002年当時約300個でしたが、現在ではブロックに集積化されて100個ほど。薄型化と多機能化が命題の携帯電話で、『新機能を実現するソフト開発に注力したいから、中のハードウェアは部品メーカーに任せたい』というのがセットメーカーさんの本音なんです。ならば、私たちがやってやろうかと(笑)」
  現在開発中の無線通信モジュールは7mm×7mm×1mmのサイズ(写真)で、来年の夏には製品化される予定だ。無線化されない携帯機器は携帯型音楽プレーヤーをはじめ数多くあるため、今後の用途にはかなりの拡大が見込まれている。
テクノロジーグループ XLプロジェクトリーダー 山下喜就氏
テクノロジーグループ
XLプロジェクトリーダー
山下喜就氏
伝送速度を向上させた無線モジュール付きHDD
 こうしたモジュール開発に求められるエンジニアとはどのような人材だろうか。
「まずセットメーカーの視点をもった人材、筺体内の電子部品の配置なども考えられる機構設計、回路設計の経験者。次に、決められた周波数だけを取り出すキーデバイスであるフィルターを扱ったことのある方。そして、材料メーカーと対話ができるアナログ回路設計者。ひと口に言えば、精密工学と電気回路の両方をわかる方です。しかし、このような人材は少ないので、『こうした開発を一緒にやりたいという自信のある方』なら歓迎しますよ」

 上記とは別のプロジェクトでHDDと無線機能の融合もある。通信の伝送スピードは有線なら数百M/bpsだが無線ではせいぜい100M/bps。つまり、現在の無線機能をHDDに付加しても、信号の出し入れは遅くなり、ストレージ本来の能力を生かしきれないことになる。
「来年には無線タイプのHDDが発売されるでしょうが、音楽のダウンロードに時間がかかるのは嫌でしょう。私たちは3分にしたいと思っています。そのためには、無線を高周波化して帯域幅を取り、情報量を多く流す。雑音の混じらない受信処理もひとつの手段です。このプロジェクトでは、高周波のわかる無線系エンジニアやソフトエンジニアを求めています。プロトコルのわかる人がいいですね」
  このような高周波系プロジェクトの山場は来年になると山下氏は読む。だから今年中にエンジニアにきてほしい。
「ポテンシャルでの採用ならやはり30歳を少し超えたくらいまででしょうが、すぐに現場に入っていける方なら、50歳までなら大丈夫でしょう」
TDKが開発を進める小型・高機能化されたモジュール
携帯のアンテナを1本にできないか……「できません!」
テクノロジーグループ XLプロジェクトリーダー 山下喜就氏
携帯電話のアンテナは1本ではなく、実は高機能化するほど数が増えていく。

「本来のアンテナのほかにBluetooth用、ワイヤレスLAN用、AM/FMラジオ用、電子マネー用のコイル型まで、それぞれのアンテナが必要です。セットメーカーさんからは『1本にできないか』と必ず言われるのですが、例えばAMラジオなら300mや500m、FMラジオがその100分の1の3mや5m、携帯電話は30cmと、波長のケタ数からして違います。ですから悔しいのですが、『できません』と答えています」
Part3 転職したエンジニアが語る高周波回路の難しさと面白さ
 大学院理工学部で電気工学を修了後、無線通信機器メーカーに入社した加藤鉱三氏。主にコードレス電話などの高周波回路設計に携わってきたが、2000年2月にTDKに転職。その動機を、「幅広い高周波回路の設計がしたかった」と振り返る。
設計図どおりに動かないところが高周波の魅力
「ケーブルで接続されていない携帯電話がなぜつながるのか。実は今でも不思議に思います」と語るのは、無線通信機器メーカーから転職して7年になるXLプロジェクトの加藤氏。TDKに入社以来、ワイヤレスLANなど無線製品の開発を手掛けてきた。中心業務はモジュール全体のアーキテクチャ設計と、前社から携わってきた高周波回路の設計。
「極端に言えば、電気回路には2種類あります。紙に書いた回路図をもとに製品を作ったとき、比較的容易に動作するものとそうでないものです。前者が低周波、後者が高周波で、高周波回路はその特性を理解して設計しないと動きません。この難しさが逆に開発の魅力です」
  TDKで長年培われた材料部品を基盤とした、パッシブとアクティブを融合させたモジュール製品。携帯電話やワイヤレスLAN、ETCやカーナビ(GPS)などの車載機器にも用いられる。この製品の多様さが、加藤氏の転職動機のひとつだった。

「限られた製品でなく幅広い開発がしたくて、電子部品メーカーを転職先に選びました。また無線製品はまさに高周波回路が命です。その鍵を握っている高周波部品を開発しているメーカーに所属できれば部品開発から深く携わることができ、その結果、より特性のよい製品を開発できるとも思いました。さらに、TDKでは一貫して設計から生産まで担当でき、『製品としてどうあるべきか、顧客は何を望んでいるか』を念頭に置いた仕事もできます」
  入社半年後には、担当した製品の規格検査でドイツに出張した(させられた?)加藤氏。ヨーロッパでの滞在は数週間に及んだという。
テクノロジーグループXLプロジェクト 主事 加藤鉱三氏
テクノロジーグループ
XLプロジェクト 主事
加藤鉱三氏
奥が深い高周波の世界を、今後も究めていきたい
 Part2の山下氏がリーダーを務めるXLプロジェクトは、3部門が統合されたメンバー80人ほどのチーム。加藤氏は製品全体、特に高周波モジュールを管理する立場にある。
「来ていただきたい方は製品全体の設計経験のある電気屋です。同業他社よりセットメーカーさんに多いと思います。ワイヤレスLANやBluetooth、携帯電話の開発経験者など、無線製品の仕事に携わっているエンジニアがいいですね」
  無線の特徴は、製品ごとに通信規格や技術分野が異なることだそうだ。つまり、組み込まれる製品やモジュールの仕様が異なるだけで、同じ無線でも経験したことのない技術領域に挑戦することができる。
「将来も今の延長線上にいたいですね。無線技術を使った製品の中でモノづくりを続けていたい。私はずっと高周波のアナログ回路に接してきましたが、まだまだ未経験な分野もあります。エンジニアなら、やっぱり新しいことをやりたいじゃないですか」
電子部品の評価と測定を行うXLプロジェクトのメンバー(回路設計エンジニア)
電子部品の測定を行うXLプロジェクトのメンバー(回路設計エンジニア)
TDKのエンジニアにはプラスアルファがある
テクノロジーグループ XLプロジェクト 主事 加藤鉱三氏
加藤氏にはTDKで働いてみて驚いたことがあるという。

「私は前社とTDKの2社しか知りませんが、TDKには頭のよいエンジニアが多いと思いました。技術力が高いという意味もありますが、自分が開発している製品の価値をわかりやすく説明しますし、もちろん勉強熱心です。電子部品のエンジニアですから材料や機能が詳しいのは当たり前でしょうが、プラスアルファがあると感じました。転職して7年がたつ私が、現在そうなっているかどうかはわかりませんけれど(笑)」
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高橋マサシ(総研スタッフ)からメッセージ 高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ
ハードメーカーさんの取材では、できるだけ製品の写真を入れたいと思っています。技術の集大成である「作ったモノ」が見せられるのは、メーカーならではの強みですから。しかしTDKさんの場合は、顧客であるセットメーカーさんの都合があって難しく、おまけに極小部品なので接写しても写らない……。そんな中でいただいたのが上のチップの写真。ゆっくりとご覧ください。

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