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35歳・未経験でITエンジニアデビュー!使えない……という視線に負けず希望職を得たG.Hさん
35歳限界説もささやかれるITエンジニア。それを真っ向から否定するような転身を遂げたエンジニアがいる。35歳でIT業界に足を踏み入れ、今はサーバー管理職で活躍するG.Hさんがその人。成功の秘訣は何だったのだろうか……
(取材・文/中村伸生 総研スタッフ/山田モーキン)作成日:07.06.18
第二新卒に代表される若い応募者でもなければ、業務経験や関連スキルがないと転職を成功させることは難しい。どんな産業・職種でもそうだろうが、とりわけ30代以降のIT業界での転職には技術スキルが求められる。
今回この企画で紹介するG.Hさんは現在、コンテンツプロバイダーでサーバー管理のエンジニアをしているが、彼がIT業界に最初に転職したのは、なんと35歳のときだった。それ以前は広告関係の営業職。それどころか、20代はプロのミュージシャンを目指していたことから音楽活動を優先し、フリーターとして過ごしていた。つまり、社会人としてのキャリア自体が薄いのである。
そんなG.Hさんが、どのようにしてIT業界に入り、どのようにしてステップアップしていったのか、そこにはどんな思いや考えがあったのか、年齢についての意識はどうだったのだろうか……その一つひとつを見ていこう。
既にエンジニアとしてのキャリアを歩んでいる読者の多いTech総研だが、いま一度、熱い意欲に触れることで、何らかの刺激を感じ取ってもらえれば幸いである。
Profile Webコンテンツ企業 サーバー管理エンジニア G.Hさん(40歳)
20代はプロのミュージシャンを目指してフリーターを続ける。30代前半は広告関係の営業。35歳のときに友人の紹介でIT 業界に転職、間に1社を経て現在はサーバー管理のエンジニア。
転職前
(派遣PG・39歳)
転職後
(サーバー管理・40歳)
年収約320万円 給与 年収約400万円
8時間
(リーダークラスになると毎日4〜5時間の残業となり、残業手当はつかない)
勤務時間 7時間〜10時間
(残業手当が1分単位でつく)
客先での開発であるうえに、開発スキルもなく、ひ孫請けという立場から、肩身の狭い思い 職場環境 自社内で行う自社業務の仕事なので、他社の人間を意識せず気楽な雰囲気
技術スキルがまったくないことから、戦力として認めてもらえず、対人関係は息苦しかった。心療内科に通院 職場の
人間関係
5〜6人のチームで協力し合いながら仕事が進み、和気あいあいとした雰囲気。わからないことがあっても、誰かが教えてくれる
金融系の業務アプリケーション開発の一員なのだが、仕事がほとんどない状態 仕事の中身 自社のコンテンツを配信するサーバーの管理者。トラフィックの 監視やコンテンツの更新、障害発生時の対応などが主なミッション。データセンターのサーバーはリモート監視
今回の注目!
ろくなOJTもなく、適宜の指示もなく、したがって簡単な作業さえできない。現場で肩身の狭い思いをする日々 仕事の
進め方
チームで業務割を決めるが、後は自分なりに進められるので、空いた時間は仕事に関連する勉強ができる
役割を与えられず。見いだせず。使えない素人 仕事の役割 チームでルーティンなサーバー監視業務を、得意分野を元に公平に役割分担しながら、障害発生時やコンテンツのアップ時には全員で対処
転職前編 公募で入社した会社は劣悪な環境
もう、夢を追うのはやめよう。そう思ったのは30歳になる手前のころだった。高校を出て10年余り、プロのミュージシャンになることを目標に曲作りやバンド活動を頑張ってきた。だが、そう簡単にプロデビューはできない。音楽活動の合間に続けてきた飲食店のアルバイトだけでは、収入もたかがしれている。それで知人の会社で働かせてもらうことになった。広告関係の営業職だった。

社会人デビューしたのはよかったが、仕事は充実したものではなかった。このままでは音楽を捨てた意味もない。何か新しい夢が必要だと思うようになっていった。仕事を通して得られる夢が。では、いったい自分は何をしたいのだろう。何を目指すべきだろう。そう考える日々が続き、出した答えがコンピュータのソフト開発エンジニアだった。もともと機械いじりが好き。作曲もPCを使ってしていた。モノづくりが性に合っているのである。それに努力してスキルさえ身につけば年齢の不利を覆してキャリアアップできると思った。

問題は年齢である。もう、35歳。最初から高度なエンジニア職にはつけないのは言うまでもない。首尾よくどこかに採用してもらえたとしても、しばらくは勉強と下積みの毎日だろう。自分より若いエンジニアの指導を受けることになるのも間違いない。
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そうした諸々の覚悟を胸に、ITの世界に飛び込むことを決意した。そうしてまた、友人の紹介をたどって入社したのが、ユーザーサポートの代行会社。某POSレジメーカーの代行で、POSを使用している小売店からの問い合わせに答える仕事だ。障害対応やROMの採取などを行い、リモートでログインしてSQLで確認するなど、保守・運用業務でもある。少し教えてもらえば、誰でもできる仕事かもしれない。だからこそ、技術スキルがゼロの自分でも採用してもらえたのだろう。
まあ、いきなりソフトウェアの開発職などは無理な話なので、最初のステップとしては十分な仕事だと思った。オラクルというデータベースもここで知ったし、障害対応からソフトウェアのデバッグとは何かも学んだ。そして、仕事に慣れるにしたがって、ネットワークに関する勉強時間を増やしていった。35歳の遅咲きスタートは、スキル獲得をフルスピードで進まなければならないと考えたからだ。

3年ほどがたち、そろそろステップアップしなければならないという気持ちが膨らんできた。開発エンジニアはまだまだ先であるが、今の会社にいては道の先がない。何かとお世話になった会社だ。丁重に転職意向を伝えると快く送り出してくれた。
さて、38歳になったが、少しは知識もついた。これで公募にもチャレンジできると思った。今までは知人の紹介、つまり信用だけが転職の際のアピールポイントだったのが、少しは売り込めるスキルも身についたと考えたのである。

さっそく転職サイトをのぞいてみる。あるある。年齢の条件で絞られても、まだまだ採用してくれそうな会社が残っていた。そして、その中の一社にアプローチした。経験より意欲を重視し、開発の最前線で教育してもらえるというのが魅力的だった。そして意外なほどあっさりと入社が決まった。ところが、この転職で大きな落とし穴にはまった。入社後、劣悪な勤務環境であることが判明したのである。
転職活動編 前の転職の失敗を繰り返さないことを心掛けた
新参者だから年下の先輩の言うことも聞くし、言われたことは何でもする覚悟はあった。多少の努力は喜んで受け入れるつもりだった。しかし、予想もしなかった状況が続いたのである。 入社後、いきなり客先に配属された。導入研修も何もあったものではない。それでは現場で開発の基礎か何かを教えてもらえるだろうと思ったが、それも甘かった。自社の先輩・同僚などいない。周囲はさまざまな会社から送り込まれたエンジニアばかり。仕事を取りまとめるのは別の会社の人間。後で気づいたのだが、自分の会社の仕事を回してくれた会社の、さらに上の、そのまた上の会社の人だった。これでは、目もかけてもらえない。ほかのエンジニアも私を使えない人間と見て、いっそう無視するようになった。どうしていいかわからない。なのに、コミュニケーション力がないと言われたりした。そこにいても何の役にも立たない自分も情けなかった。体調がどんどん悪くなる。それ以上にストレスで息苦しい。とうとう心療内科に通院することにまでなった。

3カ月ほどたち、最初の公募での転職は失敗であると気づいた。自分に都合のよい広告の内容をうのみにし、面接で何も確認しなかったのが、そもそもの失敗の原因だと分析した。クライアントがいて、元請けがいて、下請け、孫請けと続く業界構造のことも知らなかった。二次請けでも技術があって評判のよい会社もあるだろう。孫請けでも社員教育をキチンとしている会社もあるらしい。でも、それを面接でチェックしなければならなかったのだ。
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こうした反省をもとに、仕切り直すことにした。それでまた求人サイトにアクセスする日々が始まった。前回と比べてかなり細部まで確認する仕事探しとなった。複数のサイトからたくさんの会社を比較検討した。そうしてピックアップした会社が3つあったのだが、最初の会社であるコンテンツ配信会社の面接ですぐに内定が出た。求人広告に書かれていた仕事内容とその魅力。社風、教育体制、待遇、労務に対する考えや姿勢、それらが本当か、裏はないか、面接ではいろいろな角度から質問したが、この会社はうそをついていないようだった。
転職後編 ようやくITエンジニアとして歩めるポジションを得た
前回の反省を踏まえて得た転職先での仕事は、サーバー管理のエンジニア。システム構築の世界の最下層であくせくすることを避けたのである。もっと技術を磨いて、上の層に行けばよいという考えだ。
コンテンツのアップデートや障害対応時以外は、トラフィック監視などルーティンな業務ばかり。しかも時間に余裕があるときはサーバー管理に関連する技術の勉強ができる環境だ。自社のオフィスで自社のチームメンバーたちとの仕事だから、必要以上に緊張する必要もない。最初のころは、OJTで一つひとつ業務に必要な知識や手順の説明があった。おかげで通常業務にスムーズに入ることができた。

以上の内容は、面接でキチンと確認しておいたこと。教育や勤務環境については、確約を取っていたといっても言い過ぎではない。もう、二度とあんな失敗はしたくなかったのだ。もう40歳手前である。失敗を繰り返す時間的な余裕はない。その意味では、今回の転職は大成功だった。ところが望外なことに、何でも話し合える仲間がたくさんできた。収入が増えたのもうれしい誤算だった。
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今、毎日の余裕があるので、帰宅後はJavaプログラミングの勉強を続けている。仕事でサーバーやネットワークを学び、オフの時間に開発技術を学んでいるのだ。年齢を考えると若手の倍以上の努力が必要なのである。

もうしばらくしたら、いよいよ開発エンジニアになるべく再度の転職をすることになるだろう。この数カ月で、ようやく同年齢のエンジニアたちの後ろ姿がうっすらと見えるようになった、そう感じている今日このごろである。
G.Hさんの転職考察 後発組は、業界の常識を知っておくことと、自分に不利にならないようなしたたかさが必要
転職して良かった点
・日々の業務を通じてスキルを磨けるポジションに就けた。
・ストレスをほとんど感じない職場なので、オフタイムも勉強に専念できる。
・IT業界に仕事仲間ができた。
・収入が思った以上にアップした。
転職して悪化した点
・特になし
G.Hさんが最初の公募での転職に失敗したのは、業界の内部についての知識が足りなかったからである。面接での事実確認など、転職活動のノウハウも不足していた。それを克服して、再度のチャレンジを成功させたのは、この業界に入るときに不退転の決意があったからだろう。例の失敗以外は、着実なステップアップを続けている。日々の努力・勉強を怠らないこと。そしてひとつの仕事を習得して安定期に入ると、すぐにステップアップしようとする向上心と戦略的な考えが、彼を成功に導いたのだと言える。
今回の転職ノウハウ
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