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エンジニア給与WAVE! Vol.65 バブル時代が懐かしい?エンジニア福利厚生の実情
バブル崩壊以降、企業の福利厚生策は大きく転換。社員の個を重視し、より生産性に結びつく実効のある福利厚生へと転換してきた。さらに近年は健康・家族といった関心に応えるメニューも増えている。エンジニアにとっての福利厚生は何が最適かを500人のアンケートから考えてみた
(取材・文/広重隆樹 総研スタッフ/宮みゆき イラスト/kucci(クッチー) 撮影/加納拓也)作成日:07.03.06
バブル時代の福利厚生が懐かしい?
 企業への忠誠心と働きがいを支えたのは、給与や地位よりも、案外、福利厚生の充実だったかもしれない。かつては自前の保養施設で大宴会というのが、福利厚生の象徴だった。さかのぼれば、バブル時代は就職戦線も今とはかなり違っていた。とりわけ新卒採用活動の騒々しさは今の比ではない。企業訪問での交通費支給は当たり前、夜は飲ませてもらったうえに、手みやげをもたされたという学生もいる。他社面接を阻止するための身柄拘束旅行なんてものもあった。

 優秀な人材を確保するために、企業が宣伝したのが福利厚生。休日数の多寡はどこも大差がないので、差別化アイテムはおのずから社員寮や保養施設の贅沢さになった。中小企業に多かったのが、「社員旅行がハワイ!」というのも福利厚生の一環として語られたような記憶がある。

 読者の会社の40歳前後の社員たちにも、いまだその頃の記憶が忘れられない人もいるのではなかろうか。さて、昭和バブルの崩壊(1991年)からはや16年。今日本企業の福利厚生はどうなっているのだろう。
「持たざる福利厚生」が広がる
 バブル崩壊以降、日本企業が向かったのは福利厚生の削減または「持たざる福利厚生」という考え方だった。社員寮や保養施設を自前で抱えるほどの余裕はなく、他の遊休施設と一緒に手放した企業も多い。現在は、「社員寮」とは名ばかりで、実質は民間アパートを会社が借り上げる、あるいは一部家賃を負担するというケースのほうが多いだろう。保養施設も健康保険組合などがかろうじて維持する施設を複数の企業が共同で利用するという仕組みのほうが一般的だと思われる。

 福利厚生制度は維持するものの、住宅などのハードウェアではなく、資格試験補助などのソフトウェアを重視するようになったのも、バブル崩壊以降の流れだ。仕事の生産性により直接的に結びつく方向に福利厚生のメニューを改めた企業も多い。
「カフェテリアプラン」などがその例だ。カフェテリアプランとは、従業員が一定額のポイントを使って福利厚生メニューを選択できる制度で、メニューには資格試験受験料、書籍購入、通信教育受講料補助などの自己啓発、人間ドック費用、保険外治療などの健康・医療支援が並ぶ。ベビーカーやチャイルドシートなど育児用品購入費の一部を補助するという企業もある。

 バブル崩壊以降、縮減が進んだ企業の福利厚生だが、景気回復に伴う人材採用の困難という状況の下で、再び見直しが進む傾向があるようだ。日本経団連が今年1月にまとめた2005年度の福利厚生費調査によれば、企業が負担した従業員一人あたりの福利厚生費は、月平均10万3722円。前年度比1.3%増で過去最高を更新したという。ちなみにバブル絶頂期の1990年でも7万4482円。日本企業の福利厚生費は、意外にもこの30年というもの一貫して増え続けているのである。

 ただし、この10万円強という数字には、社会保険料など企業の拠出分である「法定福利費」も含まれている。法定福利費は福利厚生費全体の7割を占める。雇用保険、労災保険、厚生年金保険などの料率が上昇しているため、それが全体を押し上げた結果のようだ。

 住宅手当や保養施設、資格試験補助など企業が任意で行う福祉政策の費用「法定外福利費」は2万8286円で、前年度比0.1%とほぼ横ばいだ。90年が2万5882円だから、それに比べても8.5%の伸びに留まる。ただ、近年は健康・医療や介護・育児などのライフサポートの伸びが目立っているという。

 日本企業の労働者の働きすぎを戒め、仕事と生活のバランス(ワーク・ライフ・バランス)を取るという考え方が生まれてきた。少子高齢化時代に、従業員の仕事と子育ての両立をサポートすることも、企業にとっての新たな課題になっている。またメタボリックシンドロームなど生活習慣病の改善に企業の健康保険政策が果たす役割も期待されている。これからの福利厚生は、こうした課題を実現する手段として用いられていくのかもしれない。

 それでも「持たざる福利厚生」という考え方自体は、現在も一貫している。その結果、福利厚生代行(アウトソーシング)という新しいビジネスも生まれてきた。福利厚生代行は、代行会社が受託企業の従業員にホテルなど宿泊施設の利用や各種講座などの福利厚生メニューを提供するもの。企業負担(受託料)は従業員一人あたり600〜800円程度が相場だといわれる。景気回復で、従業員の士気向上にある程度の出費は必要と考える企業が増えてきたため、受託料は上昇する傾向だ。
住宅手当は平均約2万3000円
 ざっくりとバブル崩壊以降の日本企業の福利厚生の流れをみてきた。その実態、とりわけエンジニアにとっての実態に触れるべく試みたのが、今回のアンケート調査だ。年齢は25〜44歳のソフトウェア系、ハードウェア系のエンジニアを対象にしている。有効サンプル数は500件だ。

 今回の調査では福利厚生を、手当、休暇、残業代などより広い視点でとらえている。まず福利厚生を「手当」という給与的側面から知るために「会社で支給されている諸手当」を尋ねた。実施されている手当給付で最も多いのが住宅手当(42%)だった。しかし「手当はない」とする回答も35%に上る。住宅手当の支給額平均は 2万2849円だった。これは先に挙げた経団連の2005年度調査の1万3962円(全産業平均)を大きく上回る数字だ。

 食事手当を支給されているエンジニアも16%いる。社員食堂の食券を購入する形や、深夜に及ぶ交代勤務などの場合に一律に支給される手当が含まれるものと思われる。金額は、6230円。これも経団連調査でいうところの給食補助(2196円)を大きく上回っている。

 ちなみに同じエンジニアでも、IT・通信系と電気・電子・機械などのメーカー系エンジニアとでは手当の額がどう違うかも興味のあるところ。食事手当はほぼ変わらないが、住宅手当や資格手当には大きな差がついた。特に資格手当ではIT・通信系が6万8092円であるのに対して、メーカー系が3万5441円と2倍近い開きがある。これは国家資格、ベンダー資格を含めIT・ソフト系の資格のほうが、ラインナップが充実しており、企業もまた率先して資格取得をサポートしていることの表れといえよう。
DATA 1 現在の勤務先で支給されている諸手当は?(※複数回答)
DATA 1 現在の勤務先で支給されている諸手当は?
DATA 2 現在の勤務先で支給されている諸手当は?
IT・通信系 メーカー系
(電気・電子・機械系)
支給金額平均
資格手当
68,092円 35,441円 54,183円
住宅手当
26,608円 17,575円 22,849円
食事手当
4,964円 4,493円 6,230円
役職手当
34,796円 29,500円 32,295円
休日が少なく残業が多ければ、せっかくの制度も形無し
  キャリア支援制度は、福利厚生というよりは人事政策の一環としての色彩が強いが、こうした制度が整っているかどうかは、給与以外のベネフィットとして働く側にとっては大きな関心を寄せるところである。

 社内の教育研修カリキュラムや社外の技術セミナーへの参加などを通して、専門職を要請したり、社内資格として認定する仕組みも、キャリア支援制度の一つと考えられる。最近、システム・プロバイダなどIT業界では、ITスペシャリストなどの専門職については、業界標準に準拠した職種認定制度を設け、目標とする職種に向けた段階的な能力開発が可能になっていることを、採用時のPRポイントにしているところも増えてきた。

 また広い目でみれば、社内公募制度や早期退職優遇制度、転職先開拓支援制度などもキャリア支援制度の一つということができる。直接の福利厚生ではないものの、従業員の能力開発に熱心な企業であるかどうかは、会社の“住み心地”の良さにかかわってくる重要なポイントだ。

 キャリア支援制度の有無についてアンケート回答では、55%が「なし」と答えている。IT・通信系は「あり」「なし」が半数ずつ。メーカー系では「なし」が55%。いかに保養所などの福利厚生施設やスポーツジムの入会金に補助がついていたとしても、それらに通えるだけの休日、時間がなければ意味がない。こうした福利厚生を側面から支えるものの一つが、有給休暇の消化率だろう。

 「昨年1年間で有給休暇を何日使用することができたか」との設問には、「1日〜5日」が22%、「6日〜10日」が33%で、それだけで過半数を占めてしまうという結果になった。労基法の定めでは、会社が認めなければならない年次有給休暇の日数は、最低条件で年間10日。「1〜5日」しか取れないというのは、昨今の開発の短期化、人手不足など、さまざまな理由が考えられる。
DATA3 現在の勤務先でキャリア支援の制度があるか?
DATA3 現在の勤務先でキャリア支援の制度があるか?
DATA4 昨年1年間で有給休暇を何日使用したか?
DATA4 昨年1年間で有給休暇を何日使用したか?
「トイレがウォシュレットになってうれしい」
 今回のアンケートでは、「労働環境、福利厚生などの待遇変化・他社に自慢できる特徴的なものがあれば、併せて教えて」という質問も行った。目を惹いた回答をアットランダムに抜粋してみる。
「福利厚生の費用削減で、保養所がなくなり、会員制の宿泊施設になった」「残業手当がフル支給だったのが、みなし労働制に変わった」「福利厚生がアウトソーシングされて使いづらくなった」「フリーバカンス制度がなくなった」「住宅手当が年5000円ずつ下がっている」「誕生日休暇制度が誕生日前後を合わせて3日から2日に変更された」など、労働環境や福利厚生の悪化を憂える声が比較的多い。

 その一方で、ライフサポートやヘルスサポート面での福利厚生の改善を挙げる声も多かった。例えば、「育児休業制度が社内規定で明文化された。他社に比べると遅れているが、これまで産休・育休を取得した人がいなかった会社としては、画期的。福利厚生では、会社近くの鍼・マッサージのお店が半額になる制度がある。残りの半額を会社が負担している」「精神科医が定期的に診察にきて精神面のフォローをする。ポイント年齢でガン検診の費用負担。レジャーホテルの法人契約が増えた」「メンタルヘルスについて、講習会や勉強会が開かれるようになった。相談室、相談用の電話も常設されている」などだ。なかには「トイレがウォシュレットになった」という報告も。これって、たぶんうれしいことなのだろう。

 今日本の企業は、総枠としてはハード面での福利厚生を削減しつつも、従業員にとっての会社の魅力でもある福利厚生を全面的にカットすることができないでいる。「なんとか工夫して残すので、その枠内で最大限活用してほしい」というのが本音のところだろう。
「福利厚生は一般企業並みだが、食堂が150円で利用できる。しかし、スーツ代が支給されるなど時代遅れな手当も多い」「顧客の会社などの景気が上向きのせいかシステムのバージョンアップなど増えたので、労働環境は良い。福利厚生はないが、リフレッシュ休暇などを増やしている」などと、そうした企業の苦労をなんとか理解しようという姿勢は見られる。

 最後に、今回のアンケートで特に目立ったユニーク福利厚生制度をご紹介。
「社員とその家族を含めた4人以上が集まって何らかの文化的な活動(スポーツや懇親会など)をした場合、そのメンバー全員が写っている写真を労働組合執行部に提出することで一人当たり1000円の活動補助金を得ることができます」(運用・監視・テクニカルサポート・37歳・男性)。
 これって、なんだかほのぼのとして、いい会社ではないですか。
DATA5 現在の勤務先での福利厚生に満足してる?
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宮みゆき(総研スタッフ)からのメッセージ 宮みゆき(総研スタッフ)からのメッセージ
最近、エンジニアの採用市場が活性化してきた影響でエンジニアの待遇面、職場環境を改善していく動きが活発だという話を聞きます。今回の調査では、まだ個人の実感値は高くないようですが、キャリア支援や、オフィス環境などエンジニアが仕事しやすい職場環境に近づいていくといいですね。皆さんの職場では、最近何か変化ありましたか?

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