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システム開発最前線から運用マネジャー職へ 将来性と年齢に見合ったポジションを選択したA.Yさん
モノづくりの高揚感や、カットオーバー後の達成感……新規開発プロジェクトは、多くのシステムエンジニアが目指す主戦場だ。しかし、開発職だけがゴールだろうか。開発職を経て運用職へ戻ることを選択したA.Yさんの例を紹介する。
(取材・文/中村伸生 総研スタッフ/山田モーキン)作成日07.02.19
情報システムの世界を目指したからには、最先端の技術を投入する開発プロジェクトに参画したいと、多くのエンジニアが思うもの。ところがA.Yさんは開発の最前線から、転職を利用してかつて経験したシステム運用の仕事へと自らの意思で舞い戻った。そこに、どのような経緯と意識の変遷があったのか追ってみよう。
また、A.Yさんが転職に際して取った手段は、かつての人脈をたどるというものだった。公募ではない求職活動を展開した彼ならではの考え方と方法は、普遍性の高い手段ではないが、参考にすべき点が少なくない。
いずれのポイントも、転職によって理想に近い環境を手に入れようと考えているエンジニアにとって、一考に値するものだろう。
Profile 大手SI企業 運用マネジャー A.Yさん(33歳)
高校の普通科を卒業後、技術者派遣A社を通して某大手情報出版会社のシステム運用の職に就く。その後、開発職と正社員を目指して転職。31歳のときに、再び転職を行い現在に至る
転職前(開発職・31歳) 転職後(運用マネジャー・33歳)
手取りで年収450万円 給与 年収700万円
8〜14時間(開発時期による) 勤務時間 10〜12時間
孫請けという立場ゆえ、仕様書どおりの設計とプログラミング。言われたとおりに仕事を進めるだけ。 職場環境 オフィス用品の通販最大手のシステムの安定稼働を担っている、責任者の緊張感がある。
下請けの感覚が強く、濃い人間関係は築けなかった。 職場の
人間関係
リーダーとしてメンバー一人ひとりの力を引き出すため、濃密なコミュニケーションを取っている。
今回の注目!
大手自動車会社の、社内勤怠管理システムや人事シミュレーションシステムの開発。 仕事の中身 オフィス用品の通販最大手がクライアント。基幹システムの運用グループのマネジャー。
企画書・設計書どおりにプログラミングを進める日々。 仕事の
進め方
運用にかかわるあらゆる意見や提案が期待される。クライアントの担当者はもちろん、開発責任者やクライアント社内のユーザーとかかわることも多い。メンバーの教育・配置・監督・評価、そのほか予算管理も担う。
取り替えが簡単なひとりのPG。 仕事の役割 15人の運用チームを率いるマネジャー職。
転職前編 開発職を続けることに疑問。前職のほうが向いていた?
紹介されて入社したのは、関東近郊の情報システム会社B社。職種は念願の開発職。ハードウェア販売が主要事業の会社で、システム開発の実績はそう多くない。実際にアサインされたプロジェクトもPMに大手SI企業のエンジニアが入っていて、上流工程に携われるチャンスは期待できない。スキルアップの道も険しい。

それでも最初のころはこれでエンジニアとしてのキャリアが開けたと考えていた。それ以前は、小規模な派遣会社A社に登録していた派遣エンジニア。派遣先は大手情報出版会社のホストコンピュータが設置されたマシンルーム。そこでシステム監視やテープ交換などの運用業務に携わっていた。このままでは将来の展望が開けない。キャリアアップも収入アップもできない。そんな悩みを抱える私にとって、技術力が問われる開発職はあこがれのキャリアだったのだ。

当時の運用だけのスキルでは容易に転職できないことはわかっていた。公募などにチャレンジしても全滅だろう。そこで普段から周囲に、開発職として転職したいという希望を触れ回った。自分の働きぶりを見ている人なら、潜在能力を評価してくれるかもしれない。思ったとおり、この話を聞きつけたプロジェクトの元請けであるSI企業C社の社員の紹介で、B社に正社員として潜り込むことができたのである。

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そうして入社したB社が思惑外れだったのは前述のとおり。都内からB社のある北関東にわざわざ引っ越し、大手自動車メーカーの勤怠管理システムや、人事シミュレーションシステムの開発に従事したのであるが、ここでも結局は孫請け。開発プロジェクト自体は実験的な要素もあるチャレンジングなものではあったが、設計書のとおりにプログラミングすればよいという立場では醍醐味も薄い。いつしか、こんなはずではなかったと思うようになっていた。
転職活動編 再び人脈をたどる転職活動。運用マネジャーにフォーカス。
B社に入社して2年ほどたち、再び転職を意識するようになった。今回も公募による活動は難しかった。まず、都内に面接に通うだけでも大変である。それに、若いエンジニアたちが自分よりもスキルが高い場面を何度も目の当たりにしていたから、自分が売れる技術力を持っていないことを重々承知していたのである。一応、転職サイトに登録し、情報収集にも使ったが、目ぼしい成果はやはりなかった。

では、どうするか。2つの考えが浮上した。まずは当時の31歳という年齢を考えると、そろそろマネジメントをする立場に就きたいところだ。いつまでも人の指示だけで動くような立場にいたくない。しかし開発職としては経験もスキルも足りない。思い至ったのは派遣社員時の運用職だった。派遣で運用をしていた最後のほうでは、自分の意見が求められたり、後輩の育成も行ったりしていた。また、自社システムにお金をかけるクライアントだったこともあり、さまざまな運用技術に触れることができた。当時の経験とスキルは今も通用するだろう。こうしたことから、運用職でチームリーダー、マネジャーになるキャリアプランを描こうと考えた。
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もうひとつは、やはり自分の働きぶりを見てくれていたかつての元請けSI企業C社の人脈を頼るという転職スタイルの選択だ。C社は大手だけに、どこか適切な転職先を紹介してくれるかもしれないという望みを託したのである。こんなこともあろうかと思い、C社の何人かに季節ごとのあいさつや近況報告のハガキを欠かしてはいなかったのも幸いした。

そうして運用職としての転職の意思を明確に打ち出したアプローチをしたところ、C社のかつてのプロジェクトの上司から、「だったらウチにこないか」との声がかかった。自分が1300人もの規模の大手C社に入れるかもしれない……思ってもみない展開である。
転職後編 運用マネジャー職への昇進。劇的な収入アップ。
その後すぐに正式に入社試験を受けさせてもらい、内定をもらった。後で聞いたら、高卒社員を採るのはイレギュラーだったが、誘ってくれた上司の強いプッシュがあったということだ。本当に世話になった。だからこそ、彼に迷惑をかけられない。配属された運用職の仕事に真剣に打ち込んだ。

そのかいがあってかどうか、ほどなく15人の運用チームのマネジャーに抜擢された。思い描いていたとおりになった。マネジャーという立場ゆえ、メンバーの指導、配置、予算管理から、クライアントや開発会社との折衝や運用プランニングの提出まで、業務内容は一気にやりがいの大きなものになった。期待されていることもひしひし感じる。また、重要なポジションゆえ、収入もかなり上昇した。前職の450万円から一挙に250万円アップの700万円。30代前半にしてはかなりの高収入といえるだろう。ようやく、自分が納得できるポジションを手に入れたと感じている。
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A・Yさんの転職考察 転職前後で最も変化したことは、周囲が認める自分の存在意義。
転職して良かった点
・ 運用マネジャーという責任と将来性のあるポジションに就けた。
・ 自分を必要としてくれる人が多く、仕事自体にやりがいが大きい。
・ 年収が250万円も上がった。
転職して悪化した点
・まったく感じていない。
開発職こそがシステムエンジニアの花形……と、多くの人が考えるだろうが、A.Yさんは自分らしいキャリアとして運用職を選択した。この戦略が間違いではなかったことを、マネジャー職への昇進や手ごたえのある日々、増大した収入が明確に表している。また、彼が取った人脈に頼ってコネによる転職活動は、誰にも通用する一般性の高いものとは言えないかもしれないが、公募と並行して行うのなら効果的かもしれない。転職の成功パターンは転職者の数だけあり、どこかに必ず参考になるポイントがあることを、あらためて教えてくれたA.Yさんだった。
今回の転職ノウハウ
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