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3年半の経験をもとにステップアップを図るアプリ開発SEの転職

独自路線のビジネスを創造するサイバーエージェントへ

サイバーエージェントはインターネットを軸にメディア事業と広告代理店事業、投資育成事業の3つを柱とする。ネット広告代理店としては国内売上高トップクラスを誇るが、世間には「Amebaブログ(アメブロ)」と総合動画サービス「Ameba-Vision」で有名だ。今回は、同社のメディア事業用システムの開発を希望する中堅SEの1次面接をリポートする。
(取材・文/須田忠博 総研スタッフ/高橋マサシ)作成日:07.02.05
CyberAgent
応募したエンジニア 企業の面接担当者
佐藤 周作さん
佐藤 周作さん
(当時27歳)
長瀬慶重氏
新規開発局
エンジニアグループ マネージャー
長瀬慶重氏
当時の職種
無職(元アプリケーション開発SE)
募集職種
アプリケーションエンジニア
業務内容
前社退職時はWebアプリ開発のプロジェクトリーダー。
仕事内容
Linux、Apache、Tomcat、Java、MySQL、PHP、Perlを使った自社Webアプリの設計・開発。
職務経歴
ソフトハウスで2年、SI会社で1年半、それぞれ主にメーカーや病院、地方自治体向けなどのWindows系アプリ開発を担当。
応募資格
Java(JSP、Servletなど)、PHP、Perlでの設計・開発経験。MySQLなどのDBと連携したシステムの設計経験。実務経験2年以上。
志望動機
ユーザーの反響が直にわかる、自社サービスのシステム開発を手掛けたい。
募集背景
「21世紀を代表する会社を創る」というビジョンを実現させるため。
面接の流れ
技術部門のマネジャークラス以上が選考する。
技術部門のマネジャーか特定分野の技術を担当するマネジャークラス、そのほかにフォローの面接官が加わり、計2人で面接。所要時間は約30分。
新規開発局局長と人事部門の採用担当者が面接。所要時間は約30分。
技術部門担当役員と人事部門の採用責任者が面接。所要時間は約30分。
3次面接から約1週間以内に通知。
Part1
転職の動機・志望理由
仕事に情熱を傾けるのはカッコ悪いことじゃない
長瀬:
  本日はお越しいただき、ありがとうございます。面接時間は30分を予定し、最後の10分程度は質疑応答に充てますので、佐藤さんからの質問はそのときにお願いします。
佐藤:
  はい、わかりました。
長瀬:
  では早速ですが、 【Point1】今回の佐藤さんの転職のきっかけを教えてください。
佐藤:
3カ月前に退職した○○○(SI会社)では、メーカー向けシステムの開発を担当していました。複数のオフィス機器を統合的に使えるようにするWebアプリケーションです。そういう仕事をする中で、自社製品や自社サービスのためのシステム開発に情熱を傾けたいという思いが募り、転職を決断しました。これまでは地方に住んでいたため、転職活動を始める前に首都圏へ転居しようと先に退職したのです。
御社に応募させていただいたのは、求人企業をリサーチしていて、「Ameba」のロゴの意味の奥深さを知ったからです。ものすごいと思いました。
長瀬:
一般ユーザー向けの製品やサービスを持っている会社で働きたいということですが、その条件ならたくさんの会社があります。【Point2】是が非にも当社でと思う理由は、「Ameba」のロゴ以外に何かありますか?
佐藤:
 【Point3】『渋谷ではたらく社長の告白』という御社の社長の本を読ませていただき、感動しました。特に、会社で仕事に情熱を傾けるのはカッコ悪いことじゃないんだというメッセージには共感しました。
  また、私はいろいろなシステムの開発に携わってきましたが、ユーザーの声がダイレクトに響く、「アメブロ」のようなシステムの開発には魅力を感じます。御社へ応募させていただいたこだわりとしては、この2点が大きいです。
Point1
[面接官]私が面接する場合、出だしはこの質問からと決めています。転職動機がポジティブなのかネガティブなのかを知ることで、応募者の人物的輪郭をつかまえたいからです。また、この質問とすぐ次に問う志望理由の質問は一対の関係です。
[応募者]転職の動機と志望理由は明確にしてありました。出だしで尋ねられたのは意外でしたが、戸惑うことはありませんでした。
Point2
[面接官]この質問に対する答えを聞くときには、応募者の表情や口調に注目します。当社への思いの深さがおのずと現れるのです。もし漠然とした答えしか返ってこないようであれば、より突っ込んで尋ねます。
[応募者]有名企業の選考ですから、志望理由をはっきり答える必要があると思っていました。また、答える内容は、本当の気持ちを素直に話すのがいちばんとも思っていたんです。
Point3
[面接官] 志望理由に当社の社長の名を出す応募者は少なくありません。その際の評価の分かれ目は、ミーハー的なのか企業研究をしてきたのかです。
Part2
キャリアビジョン・技術志向性

チームで何かの新しいサービスを出したい
長瀬:
【Point4】当社へ入社するしないにかかわらず、佐藤さんが現時点で抱いているキャリアビジョンを聞かせてもらえますか? 半年とか1年とかの短期的なものと、5年か5年以上の長期的なものに分けて答えてください。
佐藤:
長期的な目標というか夢は、何かのサービスを自分たちのチームで世の中に出したいということです。【Point5】チームで何かを仕上げたときの達成感が、仕事をするうえでの私のいちばんの喜びだからです。従って、短期的には開発力の高い強固なチームを作ることが目標になると考えています。
長瀬:
そのチームでの佐藤さんの立ち位置はどのようなものと想定していますか?
佐藤:
リーダーや仕切り役でなくともいいのですが、熱い気持ちでまとまる求心力に作用する役目は果たしたいです。
長瀬:
【Point6】当社のキャリアパスには、大きくマネジメント系と技術プロフェッショナル系の2つの軸があります。長期的に考えても、技術プロフェッショナル系の道というイメージなんですね?
佐藤:
はい、そうです。
週末には文献の読書やセミナーへ参加
長瀬:
【Point7】現時点で得意だと自負する技術、あるいは分野は何ですか?
佐藤:
  いろいろな開発言語を扱ってきましたが、オブジェクト指向の言語であれば何でもできる自信があります。 【Point8】また、直近ではLinuxのソースをWindows上で動かすための調査を担当しましたが、フリーソフトについて調べるのは好きなことのひとつです。全般的に新しい分野の技術は得意とするところといえます。
長瀬:
得意な技術や分野を向上させるため、自己啓発的に行っていることはありますか?
佐藤:
週末には仕事の延長線上で文献を読んだりセミナーに行くことが多いです。
長瀬:
会社の業務とは全く関係のない枠組みで、個人の時間や経費を使うことはどう思いますか?
佐藤:
技術系の本を読むのは昔から好きでやっています。
長瀬:
【Point9】最近読んだ本の中で感銘を受けたとか、勉強になったとか、そんな本はありますか?
佐藤:
Ajaxについて書かれた本を読んだのですが、Web2.0の方向性にも触れられていて興味深かったです。
Point4
[面接官]この質問は必ずします。まず長期的なキャリアビジョンを持っているのかどうか。持っていれば、それが志望理由と矛盾しないかどうか。次に、応募者の希望が当社で実現可能なキャリアパスかどうか。当社で無理なビジョンなら採用は見送らざるを得ません。どんなに高い技術力の持ち主であってもです。お互いが不幸な結果になりますから。
Point5
[面接官] この言葉には好感が持てます。協調性やコミュニケーションスキルに自信があるのでしょう。しかし、独りでこつこつと作り上げていくのが好きだという人を当社では否定しません。そういうタイプも十分に候補者です。
Point6
[面接官]応募者が20代後半の場合、技術プロフェッショナル系を希望する人のほうが採用しやすいというのが正直なところ。その確認のために聞きました。
Point7
[面接官] 本人が得意と自認する技術や分野というのは、職務経歴書に現れない場合があります。例えば、業務では使わないけれども、何かの技術を好きで磨き続けているとか。そのために、こういう聞き方で技術志向性を探るのです。
Point8
[応募者] Linuxのソースに関する仕事はとても気持ちが乗ってできたこと。ただ、面接でのアピールポイントになるはずだという思惑も働きました。
[面接官] 確かにLinuxは当社業務において重要です。選考でプラスにはなります。しかし、この程度の調査業務ではそう大きな加点ではありません
Point9
[面接官]文献研究という自己啓発の一端を、具体的に示せるかどうかを見たいのです。すぐに返答できる人は実際にやっているとみなします。
Part3
経験技術の内容・会社選択の基準
Linuxの実務レベルは基本コマンドまで
長瀬:
技術経験の内容を確認させていただきます。【Point10】まず、Linuxはどのくらいのレベルまで実務で使用しましたか?
佐藤:
実務で本格的に使用したのは、既存ソフト統合化システムのプロジェクトにおいてです。ApacheやTomcatなどで環境を構築するための資料を作成しましたから、基本的なコマンドは習得できているはずです。使用期間はそう長くはありませんでしたので、複雑なコマンドは入社後に仕事をしながら覚えていければと思っています。
長瀬:
それでは、DBの設計経験はどうですか?
佐藤:
改修にしか加わったことはありませんが、DB自体は好きです。勉強していきたい技術のひとつです。
長瀬:
DBの論理設計をしたことは全然ない?
佐藤:
ええ、残念ながら。
SQL、Tomcat、Javaの実務には問題なし
長瀬:
アプリケーションを開発するうえでのSQLの知識はどのくらいですか?
佐藤:
【Point11】インデックスが有効かとか、アナライザーを使ったりとか、検証までできるレベルと思っています。
長瀬:
通常のWebアプリ開発におけるSQLベースの知識には問題がない?
佐藤:
そう思います。
長瀬:
パフォーマンスチューニングのために、SQLで自らアプローチした実務経験はありますか?
佐藤:
【Point12】プロジェクトの途中や引き渡し後にパフォーマンスが出ないといった事態が起こると、私がSQLのチューニングを担当することが多かったです。実行計画も担当しました。
長瀬:
【Point13】Webアプリの開発実務でTomcatを使用したことはありますか?
佐藤:
前の会社の最後のプロジェクトでは、実際のポータルサイトをTomcatで構築しました。
長瀬:
Tomcatを使った際のチューニングは?
佐藤:
そのあたりはインフラ屋さんに任せる感じでした。
長瀬:
Javaのフレームワークは何を使ったことがありますか?
佐藤:
VelocityとStrutsです。
長瀬:
【Point14】Javaのほかのフレームワークで、まだ使ったことはないけれども興味があるものは何ですか?
佐藤:
JMSには興味があります。Strutsを使うかJSFにするかで迷ったことがありました。
どんな点を優先して会社を選ぶのか?
長瀬:
現在の転職活動状況を教えてほしいのですが、他社へも応募していますか?
佐藤:
いえ、今のところは御社だけです。
長瀬:
【Point15】仮に複数社から内定をもらえたとしたら、会社は何をポイントにして選びますか?
佐藤:
今回の転職の目的は、自社製品や自社サービスのシステム開発ができる場へ移ることです。システムや会社規模の大小にはとらわれず、システムづくりにより力を入れている会社を選びたいです。
長瀬:
わかりました。私のほうからの質問は以上です。ここからは、冒頭で申し上げたとおり佐藤さんからの質問にお答えしますから、どうぞ何でも聞いてください。
(佐藤さんは、「SEとして働いている最年長社員は何歳か?」「求人情報の仕事内容の説明にはアプリ開発とPG・派遣社員管理の2つが記載されているが、どちらにウエートがあるのか?」などを尋ねた)
Point10
[面接官] 応募職種がアプリケーションエンジニアの場合は、Linuxのコマンドが使え、オペレーションができること。これが最低限の採用基準です。
Point11
[面接官] 職務経歴書の内容とこの答えを合わせて推測すると、当社のWebアプリ開発業務で必要最低限のことはできるだろうと思いました。つまり、即戦力です。
Point12
[面接官] SQLのパフォーマンスチューニングのレベルは、入社後に実際に行ってもらわないとわからないのですが、この経験にはプラスの評価をしました。
Point13
[面接官] この質問に対する答えはかなり重要。Tomcatの実務使用経験は採否の分かれ目のひとつだからです。
Point14
[面接官]

Javaは進化するプログラミング言語です。新しいフレームワークが次々と世に出てくるので、それらに対するアンテナ感度がよい人ほど高く評価します。技術志向が強い証拠ですから。

Point15
[面接官] この質問は応募者を判定するためのものではありません。応募者に入社する気を起こさせるための口説きの材料を集めたいのです。それは2次面接の担当者、つまり私の上司へ申し送ります。さらにいえば、ずば抜けた応募者に関しては、この質問の答えを聞いたらすぐに私自身が口説き始めます。
面接官はココを見た!
●サイバーエージェントに対する熱い思いがあるか。
●技術プロフェッショナル志向が強いか。
●一般ユーザーへのサービスを創造したいと思っているか。
 入社への思いは、「だから、ここで働きたいんだ」という具体的な志望理由を示せるかどうかで判定する。技術面では、応募職種ごとに必要最低限のスキルの有無は必ず審査するが、得意な要素技術や分野を伸ばす姿勢をより明確にチェックする。一方、サービス創造への意欲も不可欠な要素。インターネットビジネスでもあり、一般ユーザー向けサービスの開発にはスピードと柔軟性が求められる。そういう仕事こそ面白い、やりたいと感じているかどうかを見る。
佐藤さんはコレで決めた!
「どの面接官にも話をじっくり聞いてもらえました。
きっと職場の雰囲気もいいに違いないと思えたんです。
職場を見学したら実際に活気があり、エンジニアが大切にされている感じでした」
 サイバーエージェントという会社の雰囲気は、サイト上と社長の本でしか知らない状態で面接を受けたわけですが、どの面接官も私の話をじっくり聞いてくれました。きっと職場の雰囲気もいいに違いないと思えたんです。実際に2次面接の後で職場見学をさせていただいたら、予想どおりに活気がある職場でした。見学を勧めるほど私を認めてくれたうれしさを感じましたし、社内でエンジニアが大切にされている様子もうかがえました。このあたりが最終的な決め手です。
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高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ 高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ
サイバーエージェントさんにはマネジャークラスでも若い方が多いのですが、とてもしっかりしていらっしゃいます。それは技術スキル、実務経験、人物素養などをうまく引き出しているこの面接でもわかること。こうした面接を経ると入社後のミスマッチが少なく、応募者にとっても心強い限りです。今後もそんな企業の面接を紹介していきたいです。

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