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派遣クリエーターから憧れのゲームメーカーへ 収入よりも“名誉”にこだわって満足を手に入れたM・Oさん
派遣と正社員での転職、果たしてどちらが満足のいく仕事に確実に出合えるのか。ゲーム業界を派遣で渡り歩き、今はアルバイトとして正社員登用を目指すM・Oさんのケースを紹介。景気回復が軌道に乗り、再びエンジニアの採用ニーズが上昇中の2007年、ここに「マル秘転職活動記season.2」がスタート!
(取材・文/中村伸生 総研スタッフ/山田モーキン)作成日07.01.22
最初にM・Oさんの前職までの経歴を紹介し、派遣としてゲーム業界で働く魅力と働いてみてわかった注意点を浮き彫りにする。基礎的なスキルがあれば、目指す業界への就業が早いとされる派遣というスタイル。その便利な人材サービスに落とし穴はあるのか? また、その落とし穴に落ちずにすむ方法は? 彼の足跡を通して、派遣登録をして有意義に働くためのヒントを探してみた。
後半は、派遣という形態ではなく、アルバイトで入社というスタイルで再スタートを切ったM・Oさんの現在の様子を紹介する。勤務環境はどう変わったか。職場の人間関係や将来への展望、仕事の中身はどうだろうか。なぜ派遣よりかなり収入が下がるアルバイトを選んだのか、その理由をまとめて公開する。
Profile 著名ゲームメーカー プログラマ M・Oさん(31歳)
ゲームメーカーを母体とするゲーム開発エンジニアの養成スクールを卒業後、ゲーム開発会社1社を経て、ゲームクリエーター専門の派遣会社に登録。派遣クリエーターとしてゲーム業界を渡り歩く。
転職前(派遣・28歳) 転職後(アルバイト・31歳)
待機時0円〜派遣時最大30万円(月額)。
派遣待機中のアルバイトでは40万円をオーバーすることも。
給与 20万円(月額)。今後、上昇の可能性あり。
待機時は勤務時間ゼロの場合も。派遣時で8時間〜17時間。 勤務時間 10時間〜14時間。
派遣なので千差万別。派遣待機中のアルバイトの中には、業種的に人に言えない内容のことも。 職場環境 社名が堂々と言える誇らしさがある。また、自分のデスクがあるという安心感は大きい。
1年以内の短期就労なので、濃い人間関係は築けなかった。 職場の
人間関係
プロジェクトメンバーとして、周囲と密なコミュニケーションを取る毎日。
今回の注目!
スクリプター職(ゲーム内で企画に従ってセリフを調整する業務)を中心に派遣。 仕事の中身 ゲーム開発でプログラミングを担当。ゆくゆくはプランナー的な職種へと希望が膨らんだ。
任される、というよりも、企画書・設計書どおりに進める業務。 仕事の
進め方
開発プラン・スケジュールに戦力として組み込まれ、主要な担当を任される。
人の取り替えが簡単なポジション。 仕事の役割 現在はアルバイトだが、重要な仕事を任されていて、正社員登用も夢ではない。
スクリプター業務に伴うPC知識
CAD PHP Java
獲得した
スキル
ゲーム開発
転職前編 メジャーな作品にかかわることがあっても、開発が終われば契約解除
 子供のころからゲームが好きで、いつしかゲームクリエーターになりたいと考えるようになった。大手ゲームソフトメーカーが主催する、ゲームクリエーター養成スクールに2年間通ったのも、いつかゲームの企画をする立場になりたかったからである。実際にスクールではゲーム開発の技術、特にプログラミングを学んだ。そのスクールで優秀な成績を修めると、親会社のメーカーに採用してもらえたのだが、評価が若干足りない。結局、小さなゲーム開発会社に就職した。ところが、この会社は下請けのさらに下請けで、まともにゲーム企画に参加できるチャンスは皆無に等しい。そんなとき、ゲーム関連業界に強い派遣会社があることを知った。

その派遣会社への登録は簡単だった。もちろん登録は無料。すぐに派遣先を紹介したいという連絡があった。紹介先の会社名を聞いてびっくりした。なんと広く知られた大手A社である。喜んだのは言うまでもない。業界経験の薄い自分でも有名メーカーに行ける……人材派遣というサービスのすごさを感じた。

A社では数十億という予算をかけた超大作RPGの開発チームに加わった。担当したのはスクリプター。登場人物のセリフを設計書に従って適切に入れていく業務だ。ゲーム好きであれば特別なスキルがいらない職種であるが、超大作にかかわれたことで満足していた。
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 ところが、このゲームは第二弾、第三弾と続く予定だったのだが、対応ハードウェアなどの問題で、プロジェクト自体が打ち切りになってしまったのである。計画が立ち消えになった以上、派遣社員は契約が延長されない。わずか4カ月で無職同然となってしまった。これでは人脈どころか友人もできない。でも、また派遣会社がどこか紹介してくれるだろうと考え、そのときは不安や不満はまったく思わなかった。

しかし、結果的に1年間もの空白期間が空いてしまったのである。ゲーム業界全体が停滞期ということだったのだろう。こうなると派遣はつらい。その間、PCの知識を生かしBBSの管理のアルバイトをしていたが、実はゲーム会社への派遣以上の収入を得ることができた。

待ったかいがあって、またもや有名メーカーに派遣されることになった。今度も指定された役割はスクリプター。足元の危うさにおびえながら働いていると、またしても派遣先の都合により2カ月で契約解除になってしまい、仕方なくチャットの管理人のアルバイトを始める。次の紹介まで8カ月もかかった。

ようやく待ったゲーム会社の紹介だったが、今回は中堅どころ。またもやスクリプター。でも職種まで選んでいられない。とりあえずゲーム業界に戻ったが、いつになったらキャリアアップできるんだろうと懐疑的になっていたから、チーム内でも浮いてしまった。そしてまたもや3カ月でプロジェクトが終わり、契約解除になってしまった。
転職活動編 転職意欲増大。新しい技術にも同時にチャレンジ
 このままではゲームプランナーどころか、ゲームクリエーターさえ名乗れない人生を送ってしまうことになると思うと、いても立ってもいられなくなった。派遣という人材サービスに甘えすぎていたようだ。努力しなくても、どんどん派遣先を紹介してくれると考えていたせいか、スキルを磨くことも忘れていたのだ。派遣というシステムのせいではない。自分にはスクリプターのキャリアしか築けなかった。メジャーなタイトルにかかわれることに有頂天になり、開発職として売り込んだり努力したりすることをしなかったからである。
私と同じ派遣であっても、努力することで著名作品にかかわり、中核メンバーとして活躍しているエンジニアも数多くいると聞く。

今度こそ、誰かに「どうでしょう」と指定されるのではなく、自分が納得できる仕事内容を選びたい。だから自由応募にこだわった。さまざまなアルバイトをして食いつなぎながら、いずれ生かせるかもしれないからとCADの資格を取り、PHPやJavaの勉強をしてゲームの開発技術を磨くことだけは怠らなかった。当時のアルバイトはゲーム業界とはまったく関係ないものがほとんどだったが、中には高給ながら人に恥ずかしくて言えないようなサイトの管理人なんかもあり、早く人に誇れるようなゲームメーカーで働きたいと、心底思った。
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 徐々に応募活動を開始。幾つかのメーカーを受けたが、よくよく聞くとパチンコの液晶画面の表示ソフトの開発だったり、面接に行ってみると出会い系サイトの開発だったりした。ここで妥協はしたくない。焦りはあったが、履歴書をどんどんブラッシュアップし、面接慣れしていくうちに、手応えを感じるようになった。

そんなある日、某転職サイトにゲーム開発大手B社のアルバイト募集が載っているのを見つけた。
転職後編 満足のいく仕事と将来への展望を手に入れた
 このB社こそ、自分が高校生時代にはまったCというゲームのメーカーである。何としてでも行きたいと思った。アルバイトだが、純粋な開発エンジニア職。しかも正社員登用の可能性があると書いてある。そしていちばん自分の願いにかなっていたのは、長期的な雇用だったということである。
今までのさまざまな思いをプラスのパワーに変え、意気込んで面接に臨んだせいだろうか、十数人の応募者の中から自分が選ばれた。

B社に入社し、2年が過ぎた。最初こそテストプレイの要員だったが、意欲が認められ、次第にヒットゲームの開発の重要な場面を任されるようになった。契約を打ち切られたくないという思いから、少しでも開発に貢献できるように努力した。

次第に、ゲーム開発の中核にいる実感があるから、簡単に解雇されることはないという感覚をもてるようになった。自分のデスクというものも初めてもった。落ち着いて働けるというのはこういうことだと思った。だから開発にも身が入るし、周囲との連携も気を使うことになり、結果として何でも話せる仲間ができる。以前までの孤独ともいえる状況からすると夢のようだ。収入はアルバイト時代の人に言えないような仕事からすればかなり下がったが、今の段階では不満がない。
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 それに友人たちに堂々と社名を名乗ることができ、東京ゲームショーには一般入場の前日に行われるビジネスデーに入れるパスがもらえる。著名メーカーのクリエーターしか手に入れられない、一種のステータスである。
また、社内の同僚たちからは、前例から類推してそろそろ社員としての正式契約が近いのではないかと何度か言われた。アルバイトで成果を残し、社員に登用された先輩が、実際に何人かいるのである。

そして転職前と比べて最も大きな違いは、「エンディングのスタッフロールに自分の名前が載ること」。転職前の下請け時代は、会社名すら内密にされることがほとんどだったのが、今の会社では開発を担当した全作品に私の名前が出る。だから友人にもすぐにわかってもらえるし、社外の仕事関係者に対しての信用度も上がったので、それがとてもうれしかった。
つまり私が転職して本当に欲しかったのは、お金よりも名誉、だったのだ。

ようやく、キャリアプランを具体的に構想できるポジションに立つことができた。それもこれも、派遣時の反省を踏まえ、スキルアップの努力を怠らず、自分で可能性を開こうと努力したからだろう。ゲーム開発を志した以上、自分がつくりたいゲームをつくれる……しかも、その中心メンバーとして活躍できるポジションにいることが、何よりも大切だと身に染みて感じている。
M・Oさんの転職考察 転職前後で最も変化したことは、腰を落ち着けて目標に向かって歩んでいるという実感
転職して良かった点
・ 正社員登用への可能性が開けた。
・ 仕事も開発の中枢で、ゲームプランナーを目指すキャリアプランも現実的になった。
・ 自分のデスク、働く仲間、所属会社のステータスが得られた。
・ ゲームのエンディングスタッフロール画面に、自分の名前が載ること。
転職して悪化した点
・収入が前職のピーク時よりも大幅に下がった。
 ゲーム業界を志向するクリエーターやエンジニアは、どこかに少なからずオタクの資質があるのだろう。自分の趣味性を仕事にしたいという傾向が強く、若いうちはその世界で活躍できるなら収入や勤務環境も妥協できるようだ。それゆえ就業へのハードルが低い派遣の利用は有効である。ただ、一歩一歩確実にキャリアアップしていくなら、たとえアルバイトでも長期的に開発にかかわれる勤務状況が望ましい。派遣なら長期契約が前提の紹介を選ぶといいだろう。また、勤務形態にかかわらず、開発の中核を任される仕事でなければ将来にわたる満足感は得られないかもしれない。
今回の転職ノウハウ
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