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明日に向かってプログラめ!! vol.2/10 浜田玲子@調理支援ソフトは、大学時代は奇術師だった
私が「スゲェ!」と思ったプログラマの、趣味やハマりごとにフォーカスするこの連載。第2回目はIPA未踏の作品で以前から興味があった浜田さん。ホームページを拝見したら何と「奇術愛好会」と書いてあるではありませんか! 取材のときに手品を披露していただいたのは言うまでもありません。
(取材・文/総研スタッフ 高橋マサシ 撮影/平山諭)作成日:06.11.15
「あっ」と言わせるその瞬間。それが手品の面白さです。
浜田玲子さん
家庭におけるマルチメディア調理支援システム
「家庭におけるマルチメディア調理支援システム」。
レシピ、調理器具の数、料理する人数などを入力すると、
最適化された手順が画像やテキストで表示される
IPAの「未踏」に応募したもの
上の画像はIPAの「未踏」に応募したもの。
こちらは使い勝手に重点をおいた新バージョン
奇術愛好会はこの世のワンダーランド
― 長いこと取材をしていますが、手品が趣味の方に初めてお会いしました。いつからですか?
大学1年からです。友人の勧めで「奇術愛好会」に入りました。部室に行くと部員の人たちが「初めまして、入るの?」などと近づいてきて、棒を消したりする手品を見せ始めたんです。すごいワンダーランドがあるなと思いました(笑)。
― どんな手品をなさるんですか?
最初にいろんな演目をビデオで見せられて、カードマジックがカッコいいので希望したら、「手が小さいから厳しい」と言われました。そんなわけで私は主に「メリケン」という演目をしました。帽子の中から旗なんかを出すものです。
― メリケンはここでは難しそうなので……カードで何か披露していただけますか?
わかりました、ちょっとやってみますね。この中から1枚カードを引いて、絵柄を覚えてください。覚えたら、もう一度元に戻してください。(トランプを両手で後ろに隠して)おまじないを掛けますね……、(前に戻して机の上に広げていく)この裏返ったカードではありませんか?
― うぉ! どんなに練習したらできるんですか?
舞台が1年に3回、学園祭が2回と部のイベントで1回あります。基本的に練習は週に2回でしたけど、舞台の前は毎日で、それでも覚えるのに数カ月はかかりますね。お芝居なら失敗しても「ゴメンなさい」ですむ部分がありますが、手品でネタがわかってしまうと、奇術界全体に迷惑がかかるんです。ですから真剣でした。
― すみません。もう一度さっきの手品をしてもらえますか?
マジシャンには三原則というのがありまして、「ネタを教えてはいけない」「事前に何が起きるかを言ってはいけない」、それと「お願いされても再び見せてはいけない」です(笑)。
裏でガチャガチャ表はスマート……プログラミング!
― ところで、手品が与えたご研究やプログラミングへの影響はありますか?
えっ、手品がですか? うーん、まず舞台度胸はつきましたから、学会の発表ではかなり役に立っています。手品師はたとえ緊張していても、お客さんの前で笑わなくてはいけないんです。リラックスしたふりをして、ニッコリほほまないと、手品を見せた後の拍手はいただけません。学会もひとりで発表する場ですから、似ている部分がありますね。
― なるほど。観客には余裕の表情を見せながら、手や体は忙しく別の仕事をしているわけですね。
はい。手品師がネタに集中すると、お客さんはそこを見て仕掛けに気付いてしまいますから。そう考えると、学会より手品のほうがずっと大変ですね(笑)。
― 表面的なストーリーと裏の動きのストーリーが違うと。
その点はプログラミングと一緒ですね。裏ではガチャガチャと一生懸命に組んで、デバッグして、苦しんで完成させるけど、出来上がるのはスマートなソフトウェア。しかしユーザーはプログラマの苦労など知らず、楽しんで使っています。そうあってほしいですし。
― 少し強引ですけど、エンジニアはマジシャンに似ているとか。
サークルではプロのマジシャンのビデオを見て技やネタを解析したり、自分たちで新しい手品を考えたりもしていました。論理性や我慢強さが必要になるせいか、理系の人が多くいましたよ。
認識技術を応用して「調理支援システム」を開発
― 2003年度の未踏ソフトウェア創造事業(未踏)で採択された、「家庭におけるマルチメディア調理支援システム」
  について聞かせてください。
大学院時代からの研究テーマが、映像処理の索引付けなんです。カッコよくいうと、テキスト、音声、画像からなる「マルチメディア統合処理」です。例えばニュースでイチローが紹介されていれば、テキストも音声も画像もイチローのはずですが、実際には別の選手の映像で、彼に関連したイチローのプレイをアナウンサーが語っている場合もあります。そこで、選手の顔がイチローかどうか、イチローという名前がどれくらい語られているか、あるいはテキストの文脈を解析するなどして認識します。
― でも、浜田さんの研究対象はニュースではなく料理なんですね。
はい。スポーツでは人の顔が大切なタグですが、私の場合はニンジンとか鍋などです(笑)。
― 同じナスでも長い種類や丸い種類がありますし、海外にはバカでかいキュウリがあったりしますよね。
そこで、音声やテキストも使って「推理」していくわけです。素材は数が多いので私はあえて無視して、周辺の調理器具の認識を行いました。例えばガスレンジ台が認識できれば加熱が、まな板なら切断しているらしいとわかります。「肉を焼く」と「野菜を切る」という作業があった場合、肉と野菜の識別はできなくても、焼くのはレンジで切るのはまな板だろうと見当が付きます。
― どう認識しているのですか?
私は色です。まず真ん中には手や素材があるので、どこが背景領域になるかを統計的に調べて、黒いのはガスレンジで白いのはまな板だろうという判断です。背景認識での正解率は8割くらいですね。こうした研究結果をアプリケーションにしたのが、「家庭におけるマルチメディア調理支援システム」なんです。
ユーザーに喜ばれると、「うれしいじゃん!」
― このソフトを使った評判はどうですか?
料理をしたことのない人に同時に2品をつくってもらう実験を何度かしましたが、皆さんきちんと完成させて、「楽しかった」「料理ができて感動した」などの感想をもらいました。食材の様子、火を止めるタイミング、焼き上がった色合いなどはテキストだけではわかりにくいですし、音声での指示も役立っているようです。
― バージョンアップも続けていらっしゃるとか。
未踏に出した最初の作品は、効率を目的にコンピュータが作業を選んでいました。そうした機能や裏での計算が同業者に受けていたんですが、現在は使いやすさを考えて開発しています。また、調理中は手が濡れたり汚れたりしますので、足先で操作できるフットスイッチも研究しています。
― ところで、レシピは何を参考にしたのですか?
実は……NHKの「きょうの料理」です(笑)。ですから、ソフトをこのままオープンにはできないのですが、今は「マルチメディアレシピ」のようなものを考えているんです。例えば、調理学校さんと連携して調理方法やレシピを配信したり、だれもが意見を書き込めるようなWebサイトを設けるなどです。
― 最後に聞いているのですが、将来の夢を教えてください。
人に喜ばれるモノをつくりたいです。大学院時代は研究のための研究だったのですが、ソフトを使ってもらって「お料理ができた!」とか「面白い!」という声を聞くと、「うれしいじゃん」って思うようになりました。特に、IT系の機器に慣れていない人のためのソフトウェアを考えたいです。
取材のときに見せていただいた手品の道具
取材のときに見せていただいた手品の道具。
こんな小物が驚きに化ける
浜田玲子さん 浜田玲子さん(31歳)
1975年生まれ。東京大学工学部卒業後、同大学院工学系研究科の博士課程を修了。大学院からマルチメディアによる統合処理を研究テーマに選ぶ。対象を料理にしたのは、先輩から「分野は大きく分けてニュース、スポーツ映像、そしてほとんどだれもやっていない料理」と聞かされ、「ならば料理」と思ったから。
大学院時代の研究結果をソフトウェアにした作品で2003年度の「未踏」に応募し、天才プログラマに選ばれる。現在は東京大学生産技術研究所の戦略情報融合国際研究センターで特任助手を務める。
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  高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ  
高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ
私は料理をしますが、レパートリーが広がりません。なぜなら、本を読んだり人に教えてもらったりが面倒くさいからです。しかし、このソフトがあればかなりやる気になりそう。大学の研究が身近な便利さにつながるのって、純粋にうれしいですね。もし、取材してほしいプログラマがいれば、下のフォームから送ってください。
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