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厳選★転職の穴場業界 第18回 モータースポーツ F1、WRC、WGP――頂点を目指し過熱するレースマシン開発
世界を舞台に繰り広げられるレース活動。F1やWRCなどのトップカテゴリーからローカルレースまで、勝てるマシンづくりを命題とするレースエンジニアの闘いも、ヒートアップするばかりだ。常に進化を求められるレースマシンの開発現場はどのようなものなのか。
(取材・文/伊藤憲二 総研スタッフ/高橋マサシ)作成日:06.11.08
業界動向:アジアや中東など新興市場でも高まるモータースポーツ熱
 四輪のF1やWRC、二輪のWGPなどのビッグイベントに代表されるモータースポーツ。欧米など自動車がカルチャーとなっている地域では、トップカテゴリーから速度の低いエントリークラスまで、多くのレースが安定した人気を集めている。
 若者の自動車離れが進んでいるといわれている日本でも、F1はもとより、世界最速の「ハコ車」レースであるSuper GTやフォーミュラニッポンなどの観客動員は悪くない。加えて近年、アジア、中東、南米など自動車の新興市場においても、モータースポーツ熱が高まっている。

 自動車メーカーにとって、レースで好成績を挙げることは自社のイメージアップに直結するため、その開発にはおしなべて熱心だ。モータースポーツ部門をもたない自動車メーカーのほうが少数派である。
 しかし、膨大な数にのぼる世界のレースを自社だけで手がけるのは不可能。レース車両やモータースポーツ用部品の開発会社が多数存在し、レースをサポートしている。 エンジニアの募集も多く、「闘う技術者」を目指したい人にとってはまさに穴場といえる。
注目企業:ル・マン24hからマーチカップまで多彩に活動するNISMO
 ル・マン24時間耐久レースやSuper GT、WRCなどからマーチカップなどのワンメイクレースまで、多様なレースの車両製作や部品供給を手がける日産系モータースポーツ会社、ニスモ。レースだけに視野を限定させず、自動車文化を盛り上げることを使命としている。
■ザナヴィ ニスモZ ■ニッサンR390 GT1
ザナヴィ ニスモZ ニッサンR390 GT1
日産のスポーツカー、フェアレディZをベースとするレーシングカー。Super GTシリーズの「GT500」カテゴリー向けで最高出力は約500ps。写真は2005年シーズンの車両。今季はさらにモディファイを受けて戦闘力を増しており、レクサスSC430、NSXと激しいポイント争いを展開している。エンジン、ボディー、空力といった基本部分から、タイヤ交換のしやすさといった細かい部分に至るまで、ニスモのノウハウが投入されている。 ル・マン24時間耐久レースの制覇を目指し、イギリスのレースカー開発会社TWRの協力を得て開発されたレースマシン。ナンバーをつけて公道を走行することも可能とされたが、実際には市販されず、ル・マンにターゲットを絞ったモデルだった。3.5、V8ツインターボは1000psの潜在能力をもっていたが、レギュレーションの関係でレースカーは600psに制限されていた。1997年にデビューし98年のル・マンで3位入賞を果たした。
作ったものが即評価を受ける、厳しくも楽しいレース車両開発

 1960年代からの日産のモータースポーツ活動を継承し、84年に設立された日産系モータースポーツ会社、ニスモ。これまで手がけてきたレースは多岐にわたる。80年代に人気が高まった「グループA」でのスカイラインの活躍、アメリカにおける超高速レース「IMSA」でモンスターと称されたニッサンGTP-ZXターボの3連覇、ル・マン24時間耐久レースでも98年に日本人ドライバー3人がドライブするR390が3位をゲットするなど、モータースポーツファンの記憶に残るリザルトを数多く挙げてきた。

「毎年、数多くのモータースポーツに参加していますが、今年は特にSuper GTのGT500クラスがトヨタ、日産、ホンダの三つどもえの激闘になっていて、エンジニアとして『闘っている』ことを改めて実感しましたね」
 こう語るのは車両開発部マネージャーの鈴木豊氏。入社直後に、グループCレーシングカー「ニッサンR91CP」のサスペンションまわりの開発をいきなり担当。その後、市販車ベースの国際レースであるスーパーツーリングカーレース向け「スカイラインGT-R」「プリメーラ」、ワンメイクレース車両「ザウルス」などを担当。97年にはル・マン24時間耐久レースへの参戦プロジェクトに加わり、提携先であったイギリスのレース車両会社TWRに3年間出向いていた。90年代から今日に至るまで、日産モータースポーツの表舞台を駆け巡ってきた人物だ。
「レース車両開発は厳しさと楽しさが同居している世界。仕事のサイクルはきわめて速く、今日引いた図面が明日にはモノになって、明後日には評価されるという具合です。しかもごまかしは利かない。レース車両は限界状況下でバトルするため、合理的でない部分があると、それは必ずツケとなって跳ね返ってくる。うまくいかないときは本当に苦しみますが、自分の設計が当を得ていい走りができたときの快感もまた格別です」

クルマを1台丸ごと開発!? 自動車メーカーと異なるキャリアアップ

 レース車両設計というと特殊な開発というイメージがあるが、実際には市販車の開発と同様、自動車工学に基づいた設計を行う。激しい加減速やコーナリングといった過酷な環境に常にさらされるぶん、市販車以上に基本への忠実さが求められるのだという。
「基本に忠実というと工夫がないように聞こえますが、実はここがレース車両設計の面白いところです。基本、すなわち車のもっとも理想的なあり方はどのようなものなのかということへの正解をもっている人は、実はだれもいない。レース車両開発者の仕事は、何が理想的なのかという真実を追求することでもあるんです。テーマはクルマづくり全体から、部品をどのような形状にすればいいのか、またどのような加工を許容するのかといった細部に至るまで、あらゆるところにあります」

 ニスモでは市販車改造クラスから、シャーシやエンジンをすべてフルオリジナルでつくるプロトタイプカーなど、さまざまなレース車両を開発する。社員数は約240人と、自動車メーカーに比べると小規模だが、クルマづくりの技術やノウハウの蓄積は、大手メーカーにも負けずとも劣らない。
「大メーカーだと開発体制が細分化されているため、なかなか自動車をトータルに経験することができません。それが弊社では、規模が小さいだけに幅広い経験が積めます。極端な話、本当に望むのであれば、ボディーのエンジニアが明日からエンジン開発を手がけることだってできるんです。クルマ1台を丸ごとつくることも夢ではありません」

 ニスモをはじめ、モータースポーツ会社では高度な技術開発が要求されるが、鈴木氏は多様な分野のエンジニアが活躍する余地があるという。
「クルマは機械、電気、材料、物理など、いろいろな要素が合わさってできているものです。弊社にも中途採用の人材は多数いますが、自動車未経験だったエンジニアも結構います。どんな分野でも、本当に基礎をしっかり身につけている人は、自動車にきても応用が利く。好きでなければできない仕事ですが、やってみたいと思っている人はどんどんチャレンジするだけの価値があると思います」
 モータースポーツ界で活動することによって、クルマの素晴らしさや競技の面白さをユーザーに伝えていくことが目標だと、鈴木氏は語る。闘うエンジニア集団であるモータースポーツ会社の活力は本当に魅力的だ。
ニッサンR91CP
ニッサンR91CP
ニッサンR91CP
1991年発表の100%日産自製のグループCマシン。3.5、V8ツインターボ、最高出力約800ps、最高速度約400km/h。国内JSPCで年間タイトルを獲ったほか、92年のデイトナ24時間耐久レースで優勝
鈴木豊氏
ニッサンモータースポーツインターナショナル株式会社
車両開発部マネージャー

鈴木豊氏
大学工学部で精密機械を学び、90年ニスモに入社。グループCやプロトタイプカー、ル・マン24hマシンなどのフルオリジナル車両からグループA、海外のツーリングカーレース向けの市販車改造マシンなどを幅広く手がけた。現在は車両開発を統括する立場にある。
穴場求人:求められるスキルは自動車メーカーと同様に幅広い
 モータースポーツ業界は一般にニッチマーケットに分類されるが、F1やWGP(二輪車の世界選手権)など、多くのレースで自動車メーカーやレースチームが開発に数十億、数百億といった資金を投じていることからもわかるように、その市場規模は決して小さくない。
 モータースポーツのエンジニアリング部門の市場規模を示す明確なデータはないが、自動車メーカーやメディア、スポンサーの資金力を背景に、多くの開発会社が存立し、エンジニアの求人も活発に行われている。
 リクナビNEXTで求人情報を検索する場合、「モータースポーツ」「競技用自動車」「レース」などをキーワードにするとヒットする。また、レースを手がけているのは完成車メーカー、部品メーカー、タイヤメーカー、メーカー系モータースポーツ会社、独立系モータースポーツ会社など多岐にわたっているため、業種から自動車業界を選択して探すのも手だ。

  エンジニアに求められるスキルは、市販車の世界とほとんど同じ。また、レース用車両や部品だけでなく、自動車業界が未経験という人材も十分に応募者となり得る。ハードウェアでは半導体や回路設計など電装系関連、LANや無線などの通信関連、タービンや機構設計などメカトロニクス関連などは特に転職に有利だ。
  ソフトウェアでは制御用プログラム開発やデバッグの経験、流体や動態などの物理シミュレーション、構造解析などのノウハウはレース車両開発に即応用可能だ。
 レース車両開発は常に創意工夫が求められ、職種によってはレーシングチームの一員として世界を転戦する必要もあるなど、決して楽な世界ではない。しかし、レースにハマって一生の仕事とするエンジニアが少なくないなど、好きと仕事が一致しやすい世界でもある。少しでも関心があるなら、一度は業界研究をする価値はある。
モータースポーツ業界のエンジニアニーズ
・ 自動車業界の未経験者にも広く門戸が開かれている
・ ハードウェアは回路、無線から機構、機械などの経験を生かせる
・ 制御プログラム、シミュレーション、構造解析のニーズも多い
・ 分野を問わず、基本をきわめたエンジニアが伸びる傾向をもつ
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 高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ 
高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ
取材後に工場内を見せていただきました。ニッサンR91CPのエンジン部分の写真はそのときのものですが、そこではレースのタイヤ交換の訓練が行われていました。見た目よりはるかに重いタイヤを車両から引き抜き、脇へ寄せ、新しいタイヤをはめ込んでネジを締める。その動作を素早く黙々と行う若い社員たち。女性が見たら絶対にほれる「男の姿」です!

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