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「光学迷彩」稲見教授×アニメ製作プロダクション石川社長ナマ対談 アニメと技術の融合で
ワクワクする未来が実現する
アニメ「攻殻機動隊」からヒントを得て実現した“光学迷彩”。この未来テクノロジーが生まれたきっかけや生み出す秘訣について、光学迷彩開発者の稲見教授と「攻殻機動隊」をプロデュースした石川社長にお話を伺った。
(取材・文/山河宗太 総研スタッフ/山田モーキン)作成日:06.11.08
(C)士郎正宗・Production I.G/講談社・攻殻機動隊製作委員会
 未来テクノロジーを取り入れた斬新なストーリーで世界中のアニメファンを魅了した「攻殻機動隊」を手がけたプロダクション・アイジーの石川社長。一方、それまで「超能力」といわれてきた“透明人間”を、“光学迷彩”という科学技術で実現させた稲見教授。その両者が2006年10月14日、「リクルートエンジニア適職フェア」のイベントにて、「攻殻機動隊」と“光学迷彩”のかかわりについてお話しいただいた。
Profile プロフィール
稲見昌彦(いなみ まさひこ)氏
稲見昌彦(いなみ まさひこ)氏
1972年生まれ。東京大学大学院工学研究科博士課程を修了後、電気通信大学助教授、マサチューセッツ工科大学コンピュータ科学・人工知能研究所客員科学者などを経て、06年4月より電気通信大学知能機械工学科教授。情報世界と現実世界を融合することで人の能力を拡張させるためのインターフェース研究に挑む。米『TIME』誌Coolest Inventionsなども受賞している、いま話題の学者。
石川光久(いしかわみつひさ)氏
石川光久(いしかわみつひさ)氏
1958年生まれ。大学在学中にアルバイトとして竜の子プロダクションに入社。その後、海外に放浪の旅に出るが、帰国後に同社に社員として復帰。86年に同社から独立し、翌年アイジータツノコを設立。93年にプロダクション・アイジーに社名変更。映画「GHOST IN THE SHELL /攻殻機動隊」「イノセンス」、TVアニメ「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX」など、数々の人気作品を生み出す。
(司会進行)リクナビNEXT編集長 黒田真行
その1:「攻殻機動隊」から「光学迷彩」が誕生したキッカケ
“透明人間”を“光学迷彩”と表現した「攻殻機動隊」が、光学迷彩  技術の実現可能性を大きく高めた!
稲見教授:
 “光学迷彩”のもともとの発想は「バーチャルリアリティの映像を実際に手に持ったりすることはできないだろうか」という研究から始まりました。実際には、“再帰性反射材”という素材を使用することで、まるでその部分が透けているかのように見せるというところに行き着きました。
 特撮に似ている部分もあるのですが、特撮の場合は撮影時に青や緑に彩色した部分に、CGなどの映像を入れ込むもの。光学迷彩はそれを肉眼で見るための再帰性投影技術を応用したものなんです。

 このきっかけともいえるのが、アニメ「攻殻機動隊」です。一次資料となっていて、国際会議で発表するようなときにも、参考資料として提示させてもらっています。具体的にどこがきっかけなのかというと、映画「GHOST IN THE SHELL /攻殻機動隊」の冒頭で主人公がビルの屋上から落ちながら消えていく、あのシーンはとても印象的でした。それに加えて攻殻機動隊では、“透明人間”ではなく“光学迷彩”と表現されていたところにもひかれましたね。透明人間と光学迷彩では技術としてまったく違うものになります。透明人間のように、物体を透明にするということは、物理的な物質の組成の操作が必要となり難しいのですが、光学迷彩であれば、現在の技術で実現できる可能性が高まったんです。
「攻殻機動隊」の未来テクノロジーは、今から20年前に既に構想されていた
石川社長:
 実は、「攻殻機動隊」の原作者である士郎正宗氏は、今から20年前の1985年の時点で既に、現代のネット社会を構想していたんです。作品は2030年の近未来を描いていて、アニメのフェイクの世界と科学の世界をつなげようとしてきた結果なんです。そして、作品中の電脳通信やネットワークといった近未来として構想された基礎となる技術が、現在では実現していますよね。光学迷彩にいたっては、2050年には科学技術でもって一般の世の中に広く現実化するのではないかと私たちは話しているんですよ。もちろん、そのときの世界はどうなっているのかなど、背景となる部分についても実際に構想しています。

 電脳通信やネットワークは、現在は携帯電話などのインターフェースを使って、音声のやりとりをしていますよね。でも、そういったインターフェースがなくても、音声などのやりとりができる未来も近いのではないでしょうか。そうなってくれば有線でもそうであるように、防犯のような技術が必要になると考えています。自分の身を守るためのガードする技術も近未来としてはあるのではないかと思っていますね。
“光学迷彩”の重要なポイントは、「自分の体がどこまでか」を認識すること
稲見教授:
 “光学迷彩”のように、見えるはずのものが見えなくなる場合には、自分の体は一体どこまでなのか、それを認識するということが重要になってきますよね。例えば、人間が手に鉛筆を持って作業をするとき、脳はその道具の先端までを手先と同じように認識しているんです。人間が使うインターフェースが広がっていくと、では自分の体は一体どこまでなのかが不鮮明になってしまいます。

 今までであれば、目に見えている「体」というものが「自分」の範囲だったわけです。しかし、それが見えない部分に入っていた場合は、「自分」とそれ以外の部分との境界線を作っていかなくてはなりません。光学迷彩に限らず、攻殻機動隊の描くようなネットワーク社会では、自分の身体というのが決して目に見える範囲だけでは無いわけです。よって新たな身体像を構築することが必要となってくるでしょう。当然、自分の範囲までは外からガードできるようセキュリティをもち、それ以外にまでは広げないという、自己と外界との境目をダイナミックに制御する技術も必要となってきますね。
 “光学迷彩”という点からですと、攻殻機動隊に出てくる“熱光学迷彩”のうち“熱迷彩”ということであれば先に現実化するかもしれません。これについても研究が進められていると思うのですが、表面上の熱を制御することで赤外線カメラにより感知させないような仕組みになるのだと思います。
左がTVアニメ「攻殻機動隊 S.A.C. 2ndGIG」の人間が透明になる1シーン
右が、稲見教授によって透明人間を工学的に実現させた「光学迷彩」のデモシーン
その1:大きなものを実現する。モノづくりへの基本スタンスは、夢をもつこと
未来テクノロジーを実現させるキーワードは「興味・夢」
稲見教授:
私の場合は、最初から大きな何かを実現したかったというわけではないんです。もともとは、自分自身が楽しみたくて、興味のあることや面白そうなことを研究してきました。それで、その研究してきたものを発表してみたら、国際的にも認められて受け入れられるようになっていたという感じなんです。そういう中で、例えば今回のような「攻殻機動隊」から“光学迷彩”を実現したというのも、その映像をみて「アレ実現したいなあ」と思うところから始まるんですね。

 スクリーンの向こうで起こっていることを現実の世界で実現するときに、エンジニアリングが必要となるわけです。特に日本のエンジニアは、言われたものをただ作るという作業になってしまうことが多いようですが、エンジニアには「自分が作ってみたいと思うものを作る」という夢をもち続けてほしいですね。
石川社長:
 アニメを海外との合作ではなく、日本発で作りたいという気持ちがずっとありました。特に、暴力が強いものなど、自分の子どもに見せたくないようなアニメは作りたくないと思いながら、製作してきました。アニメ=フェイクではありますが、単純なフェイクの世界ではないんです。

「攻殻機動隊」の“光学迷彩”も、ただのイメージで作られたわけではなくて、科学に興味のある人がいて、科学を深く調べてきたという人が参加することで、よりリアルな作品を作り上げているんです。モノを作る人っていうのは、とても純粋に取り組んでいるんです。
エンジニアに求められる要素は、自分の夢とそれを達成するための行動を知っていること
稲見教授:
 先ほども触れましたが、これからのエンジニアの方々には夢をもって、夢を実現させてほしいと思っています。ただ、そのためにはまず自分の夢が一体どこまで具体的なものであるのかを知ってほしいですね。また、今もっている夢を別の方向から見ると、違った形で見えることもあります。自分の夢を他者の立場で客観的に見つめ直すことで、実際にどう実現すればいいのかが見えてくると思うんです。
 モノを作るためにはテクニックが必要だと考えがちなんですが、実際に作る段階に入る前に「何を作ればよいのか」を知っている、考えられるのがエンジニアだと思うんです。技術を磨くというのは確かに大事なのですが、それ以上に自分は何を作りたいのか、5年後、10年後、50年後にどんなモノを実現したいのかを考えるのが必要だと思いますね。「自分の実現したい世界を知る」というのが結果的に近道なのではないか、と。

 自分の思い描いた世界を、自分の手や装置を使って実現していくのがエンジニアだと思いますから、エンジニアには、科学技術でもって実現することが面白く、楽しいことだという、モノづくりの本質を忘れずに、楽しみながら技術を磨いていってほしいと願ってます。
石川社長:
「夢は大きく、目標は小さく」っていうのが、ずっと私がもっている言葉なんです。どういうことかというと、目標は小さければ小さいほどよくて、小さい目標をたくさん達成することで、自分の目指す大きな夢が見えてくるものだと考えているからなんです。不思議なもので、そうやって自分や自分の周りの人々を喜ばせようと小さい成功を繰り返しているうちに、チャンスが必ず巡ってくるんですよね。少しずつ大きな夢に近づいていって、だんだんステージも変わってきたんだと思います。
 あきらめずに、未来に対してワクワクするような期待を抱きながら、夢を追求していけることが必要なんだと思います。今現在、自分がその夢に向かって、ドキドキできているのかどうか、そこが重要なんです。自分が想像する未来テクノロジーについて、科学的な解説やコミュニケーションをもって話してくれる、そういう人にはぜひ話を聞きたいと思っています。

 結局、デジタルの技術が発展し行き着く先がどこなのかを考えた場合、アナログに行き着くと思うんです。例えば、機械化で通勤や仕事の時間が少なくなれば、家族と過ごすための時間が増えるような部分ですね。エンジニアの皆さんには、そんな人と人とのふれ合いを感じることができるような技術を作っていってほしいですね。
対談終了後に開催された、未来技術体験フェアの模様。
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山田モーキン(総研スタッフ)からのメッセージ
山田モーキン(総研スタッフ)からのメッセージ
当日は、トークイベント終了後に「透明人間体験フェア」と題して、実際に会場にお越しいただいた皆さんに、光学迷彩技術を体験していただきました。実際に自分の体が透明になってしまう衝撃はかなり大きくて、かなり盛り上がりましたが、私は作業に追われて体験できず……。

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