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ITコンサルタントを目指す経験4年のSEの転職

顧客の現場重視のコンサルで急伸するウルシステムズへ

ビジネスの成果に直結する戦略的ITコンサルティングサービスと、独自のソフトウェアソリューションの提供で急成長するウルシステムズ。2006年2月にはジャスダック上場も果たした。今回は、そんな同社へ応募した若手SEの最終面接現場をリポートする。
(取材・文/須田忠博 総研スタッフ/高橋マサシ)作成日:06.10.18
ウルシステムズ
応募したエンジニア 企業の面接担当者
清水英祐さん
清水英祐さん
(当時28歳)
漆原 茂氏
代表取締役社長
漆原 茂氏
当時の職種
SE
募集職種
テクノロジコンサルタント(アーキテクト)
業務内容
通信キャリア向け業務支援システムの開発。チームリーダー。
仕事内容
要件定義と業務モデルをもとにアーキテクチャを設計。基幹業務システムを構築する。また、顧客の技術者に対する技術指導など。
職務経歴
大学工学部卒。大手SI会社に4年勤務。主に通信キャリアへのSI業務を担当。業務プロセス改善やワークフローシステム開発も行った。
応募資格
基幹系システムの開発経験、コミュニケーションスキル、何らかの技術に強みがあること。
志望動機
ITコンサルタントとして、本当に顧客の立場でシステム開発に取り組みたい。
募集背景
創業以来、通年採用を継続している。加えて上流コンサルティングの案件が急増している。
面接の流れ
人事部門が選考後、技術部門担当の役員が選考する。
技術部門のマネジャーまたはディレクターが1対1で面接する。所要時間は30〜60分。
書類選考を行った技術部門担当役員が1対1で面接する。所要時間は30〜60分。
社長が1対1で面接する。所要時間は約1時間。
3次面接後2〜3日以内に内定の旨を伝える。その後、社長と人事部長が同席して処遇や期待を説明する。
【通過率:3〜4割】

【通過率:約7割】

【通過率:約8割】
Part1
職務経歴・得意分野
順調に重ねたSI会社でのプロジェクト経験
漆原:
 (あいさつを交わしたあと)【Point1】早速ですが、清水さんの職務経歴を説明してください。
清水:
 私は、新卒入社した○○○(大手SI会社)に来月で丸四年勤めることになります。最初のプロジェクトは人事給与システムの開発でした。Javaでのプログラミング、結合テスト、導入までを担当し、下流工程を学びました。
 次が社内向けの開発標準策定プロジェクトです。これは、エンジニアリングの各フェーズでどんなタスクを行うかの定義付けをし、標準化を図るのが目的です。【Point2】経験のないフェーズのインプットとアウトプットを定義付けする作業もありましたが、私なりの「教科書」をもてた意義がありました。
 3番目が、通信回線の料金見積もりツールの開発でした。Webアプリケーションです。このプロジェクトで初めてサブリーダーになり、協力会社の社員3人を付けてもらって、マネジメントのさわりを勉強できたように思います。

 4番目が業務改善コンサルでした。お客さんは通信キャリアで、タイプの異なる回線商品を組み合わせて提供する際に、部署間の連携が必要でした。そのためのシステムを、業務改善と併せて提言しました。その後、システム開発へと発展したので、私は引き続き要件定義まで担当しました。
 このプロジェクトの経験はとてもためになりました。各担当者のデスクのそばで事細かにヒアリングもし、お客さんが現実に必要としているものを把握してまとめるという作業を体験できたからです。
(このあと、コスト面の理由から立ち消えになった5番目のプロジェクトについて説明する)
デスマーチの経験が転職の動機に
清水:
 そして、6番目が直近のプロジェクトで、電話局内サーバ設置業務支援システムの開発です。これはサーバ設置申し込みワークフローでした。私はチームリーダーとして入り、お客さんと仕様の調整をしながら進捗管理、テスト仕様の策定、障害管理などを行いました。
 この仕事ではリーダー経験も積めましたが、それよりデスマーチの体験が大きかったです。【Point3】われわれが苦労すれど、お客さんから怒号が飛び、仕様はつぎはぎになっていく。このシステムは最終的にお客さんにとって良いものなのか、本当に使われるのかと疑問を抱くほどでした

 最大の原因はRFP(提案依頼書)自体に問題があり、RFPの範囲内でシステムを作る立場の私には、根本的な解決を図る道がなかったのです。【Point4】これがITコンサルへの転身を図る動機となり、転職活動をしています
漆原:
【Point5】そういう経歴を積んできて、自分が最も得意だと思えることは何ですか?
清水:
 技術を深くいくというよりは、人を取りまとめて何かを作るという経験のほうが多かったですから、得意なものを挙げるとすればリーダー業務だと思います。
Point1
[面接官]職務経歴の説明は応募者が予期しているので、最も話しやすいはず。ポイントを押さえてわかりやすく、順序立てて話せるかどうかを見ます。また、話を聞く間は、応募者の目をまっすぐに見るようにします。人柄を反映した癖が現れるからです。
[応募者]急成長するベンチャー企業の社長ならば、人を見る目も鋭いだろう。カッコつけても見破られる。裸の自分を裸の表現で示せばいいと思って3次面接に臨みました。
Point2
[面接官]彼の職歴説明では、経験内容と自分にとっての意義がワンセットになっています。どのプロジェクトの説明でも同じ。実際の面接ではもっと詳しい内容で、彼が既にできることと未経験のことがよく把握できました。
Point3
[面接官]こういう出来事はSI業界の日常茶飯事で、体験していないSEが珍しいくらい。しかし、それを採用選考の場で語れる人はそう多くありません。トラブったプロジェクトについて語れるSEは偉い! それだけ誠実で、力を秘めており、将来性が見込めると私は考えます。
Point4
[面接官]こういう転職動機は「ぴったり」です。弊社は、まさにこうした「業界内の不毛」を解決しようと志して作った会社ですから。
Point5
[面接官]この質問では、応募者が「何屋さん」なのかを知りたいんです。自己認識している専門性ですね。答えを聞いたら、その軸であとの質問を展開させていきます。
[応募者]得意技の自覚は以前からありました。尋ねられたら答える準備ができていたんです。
Part2
苦労したプロジェクト・価値観

経験からの伸びたシーンと伸びた能力の判断
漆原:
 【Point6】システムの内容も立場も異なる仕事をいろいろ体験してきた中で、これは大変だったとか、やったなと思えるプロジェクトはどれですか?
清水:
 そういう意味では2つあります。ひとつは通信キャリアの業務改善コンサルティングです。お客さんは業務上の不都合や不効率を既に知っているんですね。知っていながら解決策を見いだせずにいる。その中へ第三者のわれわれが入って変えていくには、われわれが改善の核になり、核の周りに改善の層を広げていく必要がある。そういうことを実地で理解できたのは感銘深いことでした。
 もうひとつ記憶に残るプロジェクトは、直近のワークフローの設計・開発です。デスマーチの中で、それまでのシステムの作り方を疑問視するきっかけになりました。
漆原:
 【Point7】1つ目の業務改善という仕事は初体験だし、お客さんの期待値も高かったはず。どんなところが大変でしたか?
清水:
 初めてとはいえ、取り組めば徐々に改善の方向性は見えてきます。具体的なものにもなっていきます。しかし、それがだれにでも好ましいとは限りません。人によってメリットとデメリットが異なります。そのあたりを立場の違う人たちに納得してもらったうえで、受け入れてもらうという作業がいちばん大変でした。
漆原:
  2つ目のデスマーチの仕事のほうは、どんな方法を取ればよかったと考えますか?
清水:
 そのプロジェクトに私が入ったのは火消し役としてでした。論理設計の途中くらいからで、私は必死で作業を進めました。その中で気付いたのは、お客さんの信用を当初から得ていないということでした。引き継いだドキュメントの内容にもそれが如実で、誠実な対応に欠けていると思えました。最初に信頼関係を築き上げておけば、あそこまでのデスマーチにはならなかったろうと思います。
漆原:
 プロジェクトを遂行していて、どんなときにうれしさや充足感を感じますか?
清水:
 【Point8】これが完成したら、お客さんは本当に喜ぶだろう、楽になるだろうと思えるシステムを作っているときに最も充足感を覚えますし、システム完成後に、お客さんから「とても楽になった」「便利でいい」といった評価が伝えられてきたときが最もうれしいです。
現場に即した技術スキルの確認
漆原:
 【Point9】技術面について伺います。電話局内サーバ設置業務支援システムのプロジェクトでは、SQLサーバを使ったデータベースの要件定義もしたのですね。開発規模はどれくらいですか?
清水:
 300人月程度です。
漆原:
 データベースのエンティティの数はどのくらいですか?
清水:
 30〜40です。
漆原:
 データベースを設計するとき、どこに最も気をつけましたか?
清水:
 基本的には、データが分散したり冗長化したりしないようにすることです。ただし、実際にSQLでデータを取得する際に、多数のテーブルをジョインしなければならないのは性能的にツラいので、性能と設計との兼ね合いを図りました。
漆原:
 根幹となる論理データはどんなものでしたか? 3つほど挙げてみてください。
清水:
 具体的な名称でいうと、回線リソース調査申し込みテーブル、回線リソース設置申し込みテーブル、開通工事申し込みテーブルです。
Point6
[面接官]記憶に残るプロジェクトを語ってもらうと、その人が伸びたシーンと伸びた能力がわかります。この質問の答えに対して突っ込んで尋ねるのは、乗り越えた苦労が本物かどうかを探るためです。
[応募者]実際の面接の場では質問の狙いを知る由もなく、考える余裕もありませんでした。ですが、帰宅後に思い返してみて、成長の幅が大きかった経験の内容をつかみ取ろうとしたんだろうと推測しました。
Point7
[面接官]まったく初めての仕事をそつなくこなしたなどと答える人は、天才かウソつきです。まして仕事が業務改善ですから、若手にはそう簡単にうまくいくはずがない。泥臭い作業で苦労したはず。彼の答えを聞くと私のイメージどおりで、本当に自力でやったのだと納得しました。
Point8
[応募者]この答えは作戦などでは毛頭なく、私の普段からの本音です。こういう価値観で働ける会社に転職したくて活動していたのですから。
[面接官]この価値観は弊社にぴったりマッチします。彼はステップを踏んで成長してきているし、誠実にものがいえる。そのうえで、この満点の回答ですから、私はうれしくなってしまいました。弊社にとってはダイヤの原石だと判断したんです。
Point9
[面接官]技術スキルについては1次と2次の面接で入念にチェックしますから、3次ではさほど掘り下げて聞きはしません。担当したプロジェクトに即して質問し、何を尋ねても答えが返ってくるようなら大丈夫です。
 
Part3
転職理由・志望動機・適合度
顧客の立場でRFPの策定から入りたい
漆原:
 【Point10】ITコンサルタントを目指して転職したいということですが、動機の部分をもう少し詳しく聞かせてください。それと、なぜ弊社を志望するのかも。
清水:
 SI会社の立場でシステムを作る場合、RFPの枠内に収まるものという前提があります。RFP自体にズレがあったり、必要な機能がもれていても、SI会社は「残念でしたね」というスタンス。さらには、「言った」「言わない」の水掛け論で敵対関係になってしまうことすらあります。
 これでは皆が不幸です。ならば、本当にお客さんの立場に立ってRFPを策定するところから仕事に入っていきたい。そうすることで、皆がハッピーなシステム構築をしていきたい。これが転職の動機です。

 では、なぜ御社なのかです。コンサルティング段階でも誠実にお客さんの立場に立たなければ同じことで、パワーポイントで提案書を作り、あとは知らぬと逃げてしまうコンサルティングファームもあるようです。しかし、御社は最後までお客さんを支え切るスタイルです。私の望む働き方ができると思い、応募させていただきました。
現場重視の泥臭い仕事は望むところ
漆原:
 弊社の具体的な仕事のイメージはできていますか?
清水:
 はい。業務プロセス改善や業務支援システムの開発などが中心と想像しています。お客さんと一緒に課題を考え、解決に至るまでお客さんとともに歩んでいくというイメージです。
漆原:
 【Point11】弊社の仕事上で期待していることは何ですか?
清水:
 お客さんとの信頼関係をしっかり築いて仕事ができること。プロジェクトを通じて人間的にも技術スキル的にも成長していくこと。大きくこの2点を考えています。
漆原:
 【Point12】弊社の仕事は非常に現場重視で、泥臭い面が多々あります。お客さんの経営と現場の板ばさみになりそうになったり、火消し役で投入される案件もあります。やればやるほど難しくなるプロジェクトのほうが多いくらいです。それでも、イメージに合っていますか?
清水:
 きれいな働き方をしたくて御社を望んでいるのではありません。私のイメージと大きな違いはないはずです。
(このあと、漆原氏は5年先と10年先の目標について尋ねてから、清水さんに逆質問を促した。清水さんは、大企業とベンチャー企業の違いについて漆原氏の考え方を尋ねた)
Point10
[面接官]この質問で聞きたいのは応募者の考えるゴールです。近いゴールでも最終的なゴールでもどちらでもいい。それが弊社とマッチするのか、マッチするなら他社と比べてなぜ弊社なのか。このあたりをチェックしたいわけです。
Point11
[面接官]この質問にはどう答えてくれても構いません。念のためにマイナス面を調べたいからです。あまりにも「隣の芝生は青く見える」式で期待を寄せる応募者には警戒します。
Point12
[応募者]これは覚悟を聞かれているのだと思いました。この程度の話で動揺するくらいなら、転職を考えたりはしません。
[面接官]狙いはまったくそのとおりです。覚悟を確かめたくて、グサッと突いてみました。返ってくる言葉と表情を見れば、どれだけの覚悟があるかは想像がつきます。
面接官はココを見た!
●論理的なコミュニケーションスキルがあるか。
●顧客志向に基づくチャレンジ精神があるか。
●オブジェクト指向やデータベース構築などの技術を経験しているか。
 面接の冒頭で時間を指定せずに職務経歴を説明させるのは、論理的な思考力に裏打ちされたコミュニケーションスキルを判定するのが狙い。この視点は面接全体にわたる。顧客志向とチャレンジ精神は極めて重要。ウルシステムズのポリシーにかかわる事柄であるため、転職動機や志望理由、入社後の期待感など、あらゆる観点から探る。技術スキルについては1次、2次面接で詳しくチェックするため、3次面接では事実確認が中心となる。
清水さんはコレで決めた!
「社長から聞いたベンチャー精神のありように共感しました。
また、私の場合は選考が速く、短期間で結果をもらえました。
それほど気に入ってくれたのかとうれしかったですね」
 入社のいちばんの決め手は、面接時に社長から聞いた「ベンチャー企業は自社または業界にとって必要なことなら、リスクをとってでも挑む。それが当社の姿勢だ」という言葉でした。共感できたんです。元気な会社だと思いました。また、選考の速さにも好感をもちました。1次面接から内定までが、わずか1週間。これなら経営上の意思決定も速いだろうし、それほどまでに私を気に入ってくれたのかと心底うれしかったんです。
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高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ
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職務経歴書を読んだだけで、清水さんの成長ぶりがわかりました。順調に技術力をつけながら着実に経験を積んでいる。理想的な若手エンジニアの見本のように思いました。それがなぜ転職なのか。その答えは読んでいただいたとおりです。いっぱしのコンサルタントになった姿を見てみたい。そう思わせる好青年でした。あなたの知りたい転職シーンを教えてください。
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