現場に残って技術者としての専門性を高めるか、マネジメント職に移ってプロジェクトを引っ張るか。30代半ばになった多くのソフトエンジニアが迫られる選択であり、後者を強制されるのが実情だ。しかし、決して平坦な道ではないが、ITアーキテクトという選択肢もある。
(取材・文/総研スタッフ 高橋マサシ) 作成日:06.10.11 |
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プログラマやSEからITアーキテクトを目指すには何をしたらよいのか。大学卒業後にソフトハウスか中堅SI企業に就職した若手SEを想定し、これから何をすべきかをPart1の榊原氏とPart2の羽生田氏に聞いた。一例として参考にしてほしい。
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ITアーキテクトに必要なのはまず「現場でもまれた技術力」。だが、漫然とプロジェクトに参加するだけでは必要とするスキルを習得できない。
「要件定義から統合テストやシステムテストまでフルにかかわり、1年程度のプロジェクトに参加する。これを5、6回経験するのが理想ですが、そうした環境になければ、自分からITアーキテクト的な役割を主張して、少しでも経験を積むことです」(榊原氏) 「小さなソフトハウスのほうが、ITアーキテクト的な動きを求められるものです。入社して数年すれば数人のチームのサブリーダーとなり、顧客とも直接対応する。要求を理解して課題を見つけ、ソリューションへとつなげていく。コンポーネント開発だけを行う業務などでは難しいでしょうが、職業意識をもてば得られる経験値が違ってきます」(羽生田氏) |
プログラミングのスキルを高めること、得意分野の業務知識を深めることも、ITアーキテクトへの近道となりそうだ。
「一般的な手続き型言語をしっかり押さえつつ、HaskellやMLなどの関数型など違うタイプの言語を覚えると、視野が広がり発想が柔軟になると思います。有名なモデルや評価されているソースコードを読むのも勉強になります。何より大切なのは新しい技術への好奇心と、上流から下流までの仕事をやり遂げるという強い意志です」(羽生田氏) 「専門的な業務知識は大きな武器です。例えば、銀行の勘定系に詳しければみどりの窓口のシステム開発に、デリバティブの開発経験は保険の新商品システムにといった、経験の応用が利くからです。われわれはこれを『ソリューションエリア』と呼んでいます」(榊原氏) |
このほかにもするべきことは多い。榊原氏は「ITアーキテクトには説明責任が求められるので前後のトレーサビリティが大事」と語り、その理由についても言及する。
「ある方針や作業が変更になったとき、それは前(これからの作業)に向けてどんな影響を与えるのか、後(これまでの作業)のどんな経緯から生じたのかを探ります。ここで必要となるのがドキュメントなのですが、『なぜ必要か』を考えず『言われたからつくっている』という若い人が多い。それでは伸びませんし、逆にこうした経験の蓄積がモデリングにもつながります」 羽生田氏は「直接的な指導を受けるチャンスは開拓できる」という。 「できるITアーキテクトになりたいのなら、本を読むだけでは無理でしょう。先輩のITアーキテクトから直接コーチングを受けるのが効果的。身近にいない場合はそうしたコミュニティやアーキテクチャについての勉強会に出る方法もあります」 純粋に技術志向で、より大きなプロジェクトで腕を振るいたいエンジニアなら、ITアーキテクトという選択を真剣に考えてはどうだろうか。 |
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