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開発主体でキャリアを積みたいと決意した中堅SEの再出発

顧客満足と技術へのこだわりを両立する日本ユニシスへ

日本ユニシスはシステム構築力、多業種へのサービス実績、顧客満足度において定評がある。経験者採用は活発で、新卒採用者数とほぼ同数の実績だ。今回レポートする応募者は28歳のSEで、近年の経験者採用で最も若いという。審査のポイントに注目してほしい。
(取材・文/須田忠博 総研スタッフ/高橋マサシ)作成日:06.09.20
日本ユニシス
応募したエンジニア 企業の面接担当者
小林裕幸さん
小林裕幸さん
(当時28歳)
田中 忍氏
官公庁サービス本部長
田中 忍氏
当時の職種
SE
募集職種
業務系SE
業務内容
一般企業を対象としたシステム営業の技術支援。並行して開発の臨時リーダーも担当。
仕事内容
顧客の課題解決と価値創造のためのシステム戦略に則ったシステムの開発・導入。
職務経歴
システム開発会社で業務パッケージのプリセールス、活用コンサル、障害対応を2年半。SIベンダーに転職して技術支援を1年半。
応募資格
オープン系システムの開発経験3年以上。特定の業務・業界に精通していればさらに望ましい。
志望動機
SIプライムベンダーのシステム構築現場で、確固たるポジションで仕事をしたい。
募集背景
ビジネスが拡大しているため。社内に新風を引き入れたいため。
面接の流れ
最初に人事部門で選考し、次に技術部門の室長・部長クラスが選考する。
技術部門の室長・部長クラス1〜2人が45分程度、人事部門の採用担当者1人が20〜30分、別々に面接する。併せて10分程度の筆記試験も行う。
技術部門の本部長クラス1〜2人が面接する。所要時間は30〜40分。
2次面接から1週間以内を目安に通知する。
【通過率:約4割】

【通過率:8〜9割】

Part1
職務経歴
※小林さんが面接を受けた当時、田中氏は部長職にあり1次面接を受け持った。現在、田中氏は2次面接を担当している。
3分の自己表現は時系列でバランスよく
田中:
 本日はご来社いただき、ありがとうございます。【Point1】まず、3分程度のお時間を差し上げますので、転職理由などを含めて自己紹介をしてください。
小林:
 大学の文系学部を卒業後、○○○というシステム開発会社に入社し、ある業務パッケージシステムを専門に販売する部署に配属されました。その部署で2年半、パッケージのプリセールス、活用コンサルティング、障害対応など一連の業務を包括的に担当しました。ところが、その部署が分社されて他社へ売却されることになったため、それを機に開発専門になろうと2004年4月、×××(SI企業)に転職しました。

 ×××では開発を希望しましたが、社内事情により数カ月間という約束でシステム営業に配属されました。その後、開発部隊にトラブルが発生したときに急きょ呼び出され、問題解決のリーダーを任されました。希望どおりに開発へ移れたと思いましたが、その仕事が終わったら営業に戻されました。以後はその繰り返しで、営業兼開発という変則的な勤務が常態化してしまいました。
 こうした現状が自分のキャリアにマイナスではないかと考えており、システム構築現場の確固たるポジションで働けるSI企業で開発がしたいと、再び転職活動を行っているところです。
Point1
[面接官]私は大体、こんなふうにして面接をスタートさせます。3分間で自分自身をどう表現するかを見てみたい。その中で特に着目するのはコミュニケーション能力、人物上の印象、転職理由の合理性といった点です。
[応募者]「3分間で」や「簡単に」と指定されて自己紹介を求められる面接の出だしは、他社でも体験していて、慌てはしませんでした。こういうときに私が心掛けたのは「網羅性」です。職務経歴と過去の転職理由、今回の転職理由などを時系列でバランスよく、すべて話すようにしました。
Part2
資格・経験プロジェクト・技術力

取得資格は少なくても業務内容には自信
田中:
 【Point2】小林さんは取得資格が少ないですね。何か理由がありますか?
小林:
 本当はもっと取りたかったのですが、お金と時間がなかったというのが正直なところです。前職では障害対応業務の割合が多く、その面で資格が重視されることはありませんでした。いくつも資格をもつ者が近くにいましたが、私のほうが技術レベルは上という自負もありました。

 一方、現職で正式に所属している部署は営業ですが、技術系の資格はないよりあったほうがいいのは事実です。しかし、私は営業のミッションに集中するあまり、技術系の資格取得に目を向けずにきました。直近である開発プロジェクトを預かり、プロジェクトの運営に非常に自信がついたこともあって、資格を取らないまま転職活動を行うに至っています。
プロジェクトリーダーとしての業務経験
田中:
 小林さんの職務経歴書を見ますと、オープン系システムのいろいろなプロジェクトに参加しています。【Point3】役割や工程がわかるようにして、経験内容を少し詳しく説明してください。
小林:
 前職では2つのパターンがあります。ひとつは、基本的に自分ひとりで作ってしまうものです。主にインフラを設計、開発、評価してリリースまで。自分でもよい経験になったと思っています。もうひとつは障害対応です。開発中のシステムやカットオーバーしたシステムについて、障害を分析して対策を施す。ほとんどが自社製品のバグではなく、設計までさかのぼって原因を追求する必要がありました。
 転職後の現職における開発は、100%トラブル発生後の対応です。問題が起こった開発プロジェクトを収拾するためのプロジェクトリーダーの交代要員で、火消し役です(笑)。
田中:
 障害対応の話が多いですが、自分で一から担当したプロジェクトはどのくらいの規模で、どんな役割でしたか?
小林:
 【Point4】リーダーだったプロジェクトの中で最も大きかったのは、1年半掛けて構築した通信事業者の営業支援システムです。トータルで8000万円の規模でした。サブチームのリーダーとして加わったプロジェクトでは、生命保険会社の基幹システム開発が最大です。
田中:
 全体で何人月くらいの規模で、何人くらいのチームでしたか?
小林:
 全体はよくわかりませんが、フロアには常時200人くらいが詰めていました。サブチームの人数は8人でした。
田中:
 期間と工程はどのくらいでしたか?
小林:
 期間は最初に4カ月、間が空いて4カ月でした。工程は実現可能性の調査から入り、設計が落ち着いたところで離れました。それが前半で、後半は単体テストです。
OracleとJavaに見る要素技術
田中:
 【Point5】DBにはOracleを使っていますね。どんな適用の仕方をしましたか?
小林:
 【Point6】Oracle 8から使ってきましたが、Oracle 9iが出た当初には、その評価を兼ねてWebシステムを作ろうという自分なりの明確な方針で臨みました。「不幸な事故」というバグに引っ掛かったりもしましたが、うまく回避してカットオーバーできました。
田中:
 どんな事故が起こり、どんな回避策を講じたのですか?
小林:
 文字化けです。OracleとJavaで読みコードのマッピングが若干違っていましたから、バイト単位で文字列の置き換えをするというクラスを作り、どんな表示にもかますようにしました。「不幸な事故」については、Oracleのホームページに対策が載っていました。
田中:
 Javaで何か工夫した経験は?
小林:
 Javaをマスターしたいという個人的な思いもあり、Webシステム開発に取り組みました。ですが、言語が変わったからといって方法論を変えるべきではないと考え、設定は外から操作できるようにするなど、従来の方法論を踏襲しました。
Point2
[面接官]SEの資格は技術力の最低保証書のようなものです。ただ、資格取得を奨励する会社とそうではない会社があるので、資格の少ない応募者は質疑応答でより注意して技術力を判定します。その前段としての質問です。答える内容によって、その後の質問が多少変わる場合もあります。
[応募者]転職をするうえで各種の資格を取っておかなかったのはうかつでした。しかし、大切なのは資格よりも実力です。私の実力を理解してもらえれば、選考で不利になるとは思いませんでした。
Point3
[面接官]この質問の意図はPMスキルの確認にあります。20代後半ならば、小規模プロジェクトのリーダーや大規模プロジェクトのサブリーダーが務まらないと採用は難しい。工程に関しては、上流から下流まですべてを経験していてほしいわけです。ちなみに、もうひとつのチェック項目として特定分野の業務知識があります。小林さんの場合はそういうものがないと職務経歴書でわかっていましたから、一切質問しませんでした。
Point4
[面接官]この規模のシステム開発でプロジェクトリーダー、次の大規模システム開発のサブチームで8人のリーダーを経験している。20代後半のPM経験としては極めて妥当なものといえます。スキルのレベルをさらに突っ込んで判定する場合には、リーダーとして工夫した点や苦労した点などを尋ねます。
Point5
[面接官]小林さんは開発途中でトラブルが起こったプロジェクトへの、火消し役のリーダー的な立場です。技術力のレベルは割合高いと推測可能ですが、念のために要素技術についても確認しました。20代後半のSEの技術力を評価する基準は、知識レベルなのか、ある程度の応用を利かせられるレベルなのか。そこが分かれ目になります。
Point6
[面接官]この答えを聞く限り、Oracleで大規模なDBを構築するのは無理としても、一定規模のものなら大丈夫だろうと感じました。
Part3
志望理由・キャリアの方向性

独立系のプライムベンダーに転職したい
田中:
 【Point7】今回の転職理由は冒頭で伺いました。営業と開発を行ったり来たりさせられているということでしたね。開発部門へ正式に社内異動する手はないのですか?
小林:
 それが難しいのです。開発部門の部長からはいつでもウエルカムだといわれていますが、私の上司が手放してくれません。
田中:
 それは上司に希望を話したということ?
小林:
 はい、そうです。「ダメ」の一点張りでした。3カ月ほど前に上司が変わったので、チャンスとばかりに話をしたら、営業部門の核だからほかへ回すわけにはいかないと強くいわれてしまいました。
田中:
 なるほど。では、どうして当社を選んだのですか?
小林:
 【Point8】SIのプライムベンダーだからです。プライムベンダーでないと経験できない仕事があると思いますし、独立系が私には合っているとも思っています。御社はソフトウェア技術志向のSIベンダーですから、たぶん私に合っているのではないかと。それに、会社が自宅から近いですし(笑)。
呼ばれればどの分野でも全力を尽くす
田中:
 【Point9】入社後に希望する仕事内容、今後のキャリアの方向性についてはどんな考え方をしていますか?
小林:
 当面はシステム構築現場にしっかり腰を据えて、いろいろなプロジェクトに積極的に取り組みたいです。しかし、技術だけを追いかける人間にはなりたくありません。PMはキャリアパスの選択肢のひとつと考えていますし、ほかの選択肢もあるだろうと思います。
 ただし、職務経歴書のとおりに得意な業務知識はありませんから、システム対象分野に希望を出せる立場ではありません。どんな分野でも、私にやれるところならばやります。お呼びが掛かったところでどんな役にもなりきり、全力を出せる自信があります。
田中:
 私からの質問は以上です。【Point10】今度は小林さんのほうから質問してください。どんなことでも構いませんよ。
小林:
 御社で転職者が苦労するとしたら、どんな点で苦労がありますか?
田中:
 転職者には同期入社の社員がいないので、困ったとき、悩んだときに、社内に相談する相手がいません。相談相手をつくるには人により早い遅いの差はありますが、いずれにせよ期間がかかります。まずは上司、あるいは周りの人と、早く相談できるよう心がけることが大切だと思います。
Point7
[面接官]転職を望む原因となっている事柄を、現職のままで改善する手立てはないのか。改善策があるなら、実際に働き掛けたのかどうかは気になるところです。
Point8
[面接官]こういう話を聞いていると、小林さんがいかに話し好きかがわかります。技術には凝り性なのに外向的な性格。人物像は「ネアカのオタク」と判断しました。
Point9
[面接官]この質問の意図は、応募者本人と会社との、将来におけるマッチング度を探るところにあります。現時点では合っていても、中長期的にはアンマッチでは困るからです。自らのキャリアの方向性を意識しているかどうかを調べる狙いもあります。
Point10
[面接官]採用選考面接はお見合いと同じだと私は考えています。すり合わせが最も大事。応募者にはどんどん質問してほしい。理解不十分なままでの入社はお互いに不幸な結果を招きかねないからです。
面接官はココを見た!
●ソフト技術に対する前向きな取り組み姿勢があるか。
●対人関係の構築能力があるか。
●プロジェクトの組織編成の中で、年齢相応の役割を果たせるか。
 技術力はオープン系の経験を、上流から下流までチェックする。そのレベルは年齢や経験に即した判定となるが、それ以上に重要となるのが技術に対する姿勢だ。向上心や成長意欲、柔軟性を見る。次に、SIベンダーという立場上、対人関係の構築能力を重視する。要望を聞き取り、調整するコミュニケーション能力がポイント。3番目に、年齢相応のプロジェクト管理能力を備えているかどうかを探る。なお、特定分野の業務知識は必須条件ではない。
小林さんはコレで決めた!
「プライムベンダーでなければ望めないPMになるためにも、
今ここで入社する意味は大きいと思いました。
また、『優しい会社』と前から感じていましたが、そのとおりの面接官でした」
 まず、応募職種はPMでないのに、面接官はその素養や経験を気にしていると感じました。PM職を前提にしている印象。プライムベンダーでなければ望めないPMは私の将来のキャリアパスのひとつと思っていましたから、この会社へ転職する意味は大きいと考えました。次に、私は前職で日本ユニシスと取引があり、雰囲気を知っていました。とても優しい会社。面接官たちも同じイメージでギャップがなく、これも入社の決め手になりました。
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  高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ  
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小林さんは本当に話し好きで、人からかわいがられるタイプだと思います。うまく言えませんが、言外に自分の価値をわからせるタイプの人ではないでしょうか。取材当日も面接官に、「おい、ヒゲくらいそってこいよ」と苦笑されていましたよ。今後もいろいろなエンジニアの面接現場を取り上げていきます。
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