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厳選★転職の穴場業界 第26回 バイオサイエンス アジア最大!多彩な技術が集結した国際バイオEXPO
世界的に注目を浴びるバイオエタノール、医療に革命をもたらす抗体医薬、健康ブームで注目されるサプリメント……バイオは今や、ラボの中での実験科学ではなく、幅広い業界で製品開発に応用される実用テクノロジーとなりつつある。21世紀のキーテクノロジーと目されるバイオR&Dの世界は、幅広い分野の人材を求めている。
(取材・文/伊藤憲二 総研スタッフ/高橋マサシ)作成日:07.07.12
業界動向:基礎研究から製品開発への移行で急拡大するバイオ市場
 バイオと言えば、医薬品や食品など、限られた業界のラボでひっそりと研究されている技術というイメージが強い。が、アメリカをはじめ世界各国では、既存のバイオ産業の枠を超えたバイオ研究ブームが巻き起こっている。
 バイオに力を入れている主な業界は、前出の2業界のほか、エネルギー、化学、製紙、自動車、環境、電機、IT等々。市場規模も2006年には前年比13%増の5121億円(富士経済研究所調べ)と拡大傾向が続く。ブームの理由のひとつが、ゲノムやタンパク質解析といった基礎研究が進んで、応用分野である製品開発への移行が進んでいること。これまでにない新領域の成長もあり、今後は参入企業がますます増えるものと思われる。
注目イベント:東京ビッグサイトを熱気で埋め尽くした国際バイオEXPO
 アジア最大のバイオテクノロジーの見本市、国際バイオEXPOが今年も東京ビッグサイトで開かれた。開催は6月20日〜22日の3日間、参加企業・団体はおよそ600。ゲノム、タンパク質解析装置、生体培養・観察プラント、試薬、ラボラトリー設計、バイオ材料、サプリメントなど、多彩な技術が披露された。
■ニコン
  細胞培養観察装置「BioStation CT」
■日本バイオ・ラッド ラボラトリーズ
  タンパク質解析装置「Experion」
ニコン 細胞培養観察装置「BioStation CT」 日本バイオ・ラッド ラボラトリーズ タンパク質解析装置「Experion」
 顕微鏡世界大手のニコンは、細胞の培養装置と顕微鏡を一体化させた、独自の細胞培養観察装置を出展した。培養装置と顕微鏡の組み合わせは一見簡単そうに見えるが、実は工夫と特許の塊だ。「培養に必要な湿度90%以上の中で、観察装置を結露させずに動かすのは難しかった」(バイオサイエンス統括部・魚住孝之氏)。また、観察するたびに同じ細胞を顕微鏡の視野に入れるための、独自技術も盛り込まれているという。  ひとつの試料を解析するのに半日はかかっていたタンパク質解析をわずか30分、しかも全自動で終わらせることができるという最新鋭の解析装置だ。従来は研究者が分析するサンプルをゲル化して染色するといった作業を延々と行う必要があったが、Experionでは微量のサンプルを小さなチップに垂らすだけという進化ぶり。バイオ・ラッドはDNA導入から細胞培養、タンパク質発現・精製と、バイオ研究の入り口から出口までをサポートしている。
バイオはもはや特別な技術ではない

 国際バイオEXPOは文字どおり、バイオテクノロジー全般の技術が集まる国際エキシビション。バイオというと医薬品開発が連想されるが、このEXPOでは創薬はあくまでバイオの一部でしかない。会場ではバイオ研究を進めるための設備、例えばゲノムやタンパク質などの解析装置、微生物などを繁殖させる培養装置、顕微鏡などのハードウェア、分子構造・機能予測シミュレーションソフトやデータベースなどのソフトウェア、バイオ研究や医薬品の創薬などに使う各種試薬など、多様な技術がお目見えした。
 バイオは今や、電気・電子、化学、機械、ITなど、さまざまな分野のテクノロジーの複合体となっているのだ。

 生物を細胞レベルに分解したり細胞自体を破砕する特殊機器、ホモジナイザーなどを出展した装置メーカー、マイクロテック・ニチオンの岩戸尚武氏は、「バイオ研究の急増に伴って、バイオ関連機材の需要は確実に増える。また、装置メーカーが新技術を提案することで、さらに新しい研究が可能になったりすることもある」と、バイオ研究と装置開発はお互いに需要を触発し合いながら成長していく分野だと語る。
 今回のバイオEXPOで特徴的だったのは、バイオ研究のためのトータルソリューションの提案が多かったこと。従来はDNA塩基配列解析装置、顕微鏡など、機器単体の高性能ぶりが注目を浴びることが多かったが、今回はゲノム解析→タンパク質解析→クロマトグラフィーによるバイオ試料の分離精製……といった、バイオ研究全体の流れを考慮したさまざまな研究支援システムの展示が随所に見られた。
 こうしたソリューションの提案が増加したことも、バイオ研究がもはや一部のラボのものではなく、さまざまな企業がチャレンジする普及技術へと転化していることを実感させる。
■日立プラントテクノロジー
 日立再生医療トータルエンジニアリング
■ニチロ
 シャケ由来のサプリメント群
日立プラントテクノロジー 日立再生医療トータルエンジニアリング ニチロ シャケ由来のサプリメント群
 解析装置やラボ・オートメーションと少し毛色の違う技術展示を行っていたのが日立プラントテクノロジー。日立再生医療トータルエンジニアリングは、温度・湿度管理、1当たり雑菌1個以下というクリーンルーム設計、研究施設の稼働モニタリングシステムなど、バイオ研究施設のトータル設計コンセプトだ。「今後は医療・バイオ研究分野では医学と工学が統合された医工学が盛んになる。その先鞭をつけていきたい」(バイオメディカルエンジニアリングセンター長・高橋稔博士)。  「シャケのすべてを有効利用する」というコンセプトのもと、核磁気共鳴解析装置などを使って成分分析を徹底的に行い、発見した新しい有効成分群を発表。例えば、高血圧患者向けの降圧剤として使用されるペプチド。シャケから抽出されるサーモンペプチドはほかのものと分子構造が異なり、成分が損なわれやすい経口投与においても効率よく吸収されるという。「まだまだ人間にとって未知の成分が、身の回りの食品にもたくさんあるんですね」(中央研究所長・江成宏之氏)。
バイオ研究向け機材は多様な技術の複合体

 具体的な展示に話を移そう。展示に力が入っていた分野としては、まずバイオ研究の自動化、省力化のための機材。何百という試験管にバイオ試料をピコリットル単位で正確に注ぎ分け、それらを解析プロセスへと自動的に搬送する装置をはじめ、研究所のファクトリーオートメーションを実現する、極めて提案性の高い商品が多かった。
 細菌や微生物などの培養・観察システムを開発したニコンの魚住孝之氏は、「バイオ研究向けの機材は、さまざまな技術の複合体。技術の組み合わせのパターンを工夫することで、これからも新しい商品を生み出す余地はいくらでもあると思う」と、バイオ関連機器の発展性の高さについて語る。
 要素技術の分野でも高性能さを競う商品が多数展示されていた。オリンパス、ツァイス、キーエンスなどの顕微鏡、アプライド・バイオシステムズ社や日本バイオ・ラッド社などの最新鋭のバイオ研究用解析機器群、高度な分析を行うのに欠かせない分光装置では日本分光やサンインスツルメント……と、独自技術をもつ企業が多数名を連ねる。

 研究開発用機材ばかりでなく、バイオ技術による最終製品を出展する企業も多数。政府系研究機関であるNEDOから民間会社として分離独立した日本アルコール産業は、自動車用燃料として世界的に脚光を浴びているバイオエタノールを利用した商品を展示。台湾のバイオ企業FEBICOはヒアルロン酸、破砕クロレラなど、女性に人気のサプリメントのデモを実施。また、水産加工業のニチロは、シャケから抽出した新しい分子構造のサプリメント成分を紹介していた。
 1990年にアメリカで打ち出された、ヒトゲノム解析プロジェクトを契機に火がついたバイオブームは、基礎研究だけでなく商品開発への応用が大々的に始まるなど、新たな段階に差しかかっている。国際バイオEXPOは、そのブームの勢いを目の当たりにすることができる展示会だった。
穴場求人:高いスキルが求められるが転職ターゲットも確実に拡大中
「バイオなんて、自分にとっては縁の薄い世界」と思っているエンジニアは多いが、実際にはさにあらず。バイオ研究用機材、ラボ&ファクトリーオートメーション、バイオ製品など、研究から製品開発のさまざまなレイヤーで、多様なスキルが求められている。必ずしも分子生物学の専門家である必要はないのだ。人材需要も増加傾向を示しており、リクナビNEXTでは「バイオ」をキーワードに検索すれば、求人情報を多数ゲットすることができる。

 求められるスキルはかなり多彩だ。解析機器開発で特にニーズが高いのはバイオ情報を読み取るセンサー類および周辺の設計経験で、バイオセンサー未経験でもOKという場合が多い。また、コピー機や投影装置における光源を含むオプティカル部分、デジタルカメラのイメージセンサーや画像エンジンなど、光関連の経験も大いに役立つ。分光装置関連のスキルを有する人材はジャストマッチである。

 ラボ&ファクトリーオートメーションでは、他分野のFA、ロボット関連のメカトロニクス制御や機構設計全般の経験が求められている。分野は違っても自動化のプロセスは同じだからだ。また、極小の細胞を直接扱う機器の開発では、MEMSや超微細加工のスキルを生かすことができる。
 バイオ系製品は一転して、ケミカル系のエンジニアにスポットが当たる。バイオプラスチックでは高分子化学、バイオエタノールでは醸造の知識があると転職しやすい。前者は化学メーカー、後者は酒造・食品メーカーのエンジニアが対象になるため、一般に考えられているより間口は広い。
 また、解析装置やラボの実験装置で得られたデータを分析したり、データベース化するためのソフトエンジニアの需要があることにも触れておきたい。シミュレーションソフトのアルゴリズム設計、データベース設計などの経験は転職に有利だ。
 バイオ系のイベントは大小さまざまに開催されている。一度足を運ぶと見方が変わること請け合いだ。
バイオ業界のエンジニアニーズ
・ 要素技術の統合色が強く、多くの分野のエンジニアにチャンス
・ センサー周りはコア技術。イメージング、メカ系の引き合いも多い
・ 伸びが期待されるバイオ製品開発ではケミカル系エンジニアのニーズ大
・ 分析結果のDB作成や解析ソフト開発ではSEやDB技術者にもチャンス
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高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ 高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ
今回の取材で面白かったのはニチロ。何でも社長の「シャケの内臓を捨てるのはもったいない。何かに使えないか」というひと言で研究を始めたら、心臓や浮き袋などから多くの有効成分が発見されたとか。今後はアジやサンマやイワシやブリの研究も進むかも。いえ、これは本当の話らしいですよ。

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