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大手SI企業、Web系ベンチャー、大手系列メーカーがこぞって狙う 未経験OKってホント?第二新卒「リセット転職」の特権 イメージ
求人市場で人気急上昇中の第二新卒世代。入社3年以内、年齢25〜26歳くらいまでの若手社員を意味し、技術職においても売り手市場が始まっている。「未経験でも可」と求人を出す企業も多いが、実際には何を望んでいるのか。そしてブームの背景には何があるのか。
(取材・文 総研スタッフ/高橋マサシ イラスト/石野点子)作成日:06.08.23
Part1 なぜモテる第二新卒。拡大する求人マーケットとその理由
 リクルートエージェントによると、2年ほど前から第二新卒の求人数が増加。技術職については1年半ほど前から目立ってきたという。当初の募集は主にIT企業でのソフト系職種、それがメーカーのハード系職種まで拡大したという。まずは全体的な傾向をつかもう。
異業界からの未経験者も採用するほどのエンジニア不足
佐藤麻衣子氏
株式会社リクルートエージェント
第二ビジネスユニット
第二新卒キャリア支援マーケット
4グループ
グループマネジャー
佐藤麻衣子氏
 第二新卒の採用理由は一般的に、社会人・会社員としてのマナーが身についていて初歩的なトレーニングが必要ない、若い年齢層なので高給与を支払う必要がない、などが挙げられる。しかし、エンジニアの場合は少々違うようだ。
「圧倒的な人手不足が背景にあります。新卒採用や中途採用で足りない人材を、第二新卒で積極的に採用している状況です。そのため、職種や業種が未経験というより、技術未経験の異業界転職も多く見られます
 例えば、現在は接客業や販売業に就いている人。もともとパソコン好きで趣味でプログラムも書いており、新卒時はIT業界を希望して不採用となった。あるいは学部が文系なのでエントリーすらしなかった。そんな技術職未経験の若者が、大手SI企業などに転職するケースが珍しくないという。

 そしてこのエンジニア不足に拍車を掛けているのが、技術職から別職種への転職と、長く続いた企業の正社員採用縮小傾向である。
「第二新卒は全職種で採用意欲が高まっていますから、ソフト開発から広告営業、同じ技術職でもIT業界から金融業界へといった転職もあります。こうして若手エンジニアが他社や他業界へと動くことによる人材不足と、バブル以後の景気低迷を受けて採用を控えていたために、コアな社員の年齢層が上がり、次の核となる20代の自社社員が不足しているという二つの大きな背景があります。このため、企業は採用条件を緩和していますので、これまでは少なかった派遣社員から正社員への転職も増えています
業界によって差が出る第二新卒の給与待遇
 新卒社員に比べて2、3歳上の第二新卒世代が入社した場合、同じ年齢ならプロパー社員と実務経験の差が出る。未経験ならなおさらだ。その場合の給与待遇は一般的にどうなるのだろうか。
「一概には言えませんが、大きくIT業界のソフト職とメーカーのハード職に分けた場合、前者は同年齢の社員と同額くらいの給与、逆に後者は新卒社員と同じくらいで、同年齢の社員より若干少なくなるケースが多いですね。ただ、メーカーの多くは給与テーブルがしっかりしていますから、長いスパンで考えれば安定しているといえるでしょう」
 リクルートエージェントでの第二新卒エンジニアの登録者は、昨年比で約120%アップ。比べて企業からの求人数は下表のように倍増している。需給の差は広がるばかりで、売り手市場はしばらく続きそうだ。
この1年で倍増する第二新卒への求人数
※出典:リクルートエージェント
Part2 募集企業に取材! ウチの会社でほしい「第二新卒のエンジニア」
 第二新卒を積極採用している企業2社に、彼らへの期待と魅力、そして採用時のポイントを聞いた。当たり前だが、いくら人気が高い世代とはいえ、若いというだけで採用する企業はない。企業は何を基準とし、応募者のどこを見ているのか。
ネクステック株式会社 仕事の面白さを知った若手は伸びますよ
■ 未経験の若手を採用する3つのポイント
 製造業に特化した業務改善コンサルティング、基幹システム導入などを手掛けるネクステック。新進のコンサルティングファームでありながら大手メーカーからの依頼が絶えない同社では、社員の約1割が第二新卒採用だ。
「弊社の社員はおよそ100人ですが、30%が製造業での設計・製造出身、30%がコンサルティングファーム出身、30%がSIer出身、残りの10%が第二新卒です。彼らの前職はさまざまで、製造業やコンサル業界に無縁の人が多いですね
 こう語るのは執行役員の中村洋一氏。中村氏いわく「第二新卒については経験や知識はあるに越したことはないが、結果的に業界・職種の未経験者が多くなっている」とのこと。ポテンシャルが評価対象というわけだが、採用のポイントは大きく3つあるという。

「まず『素直さ』。お客さんは大手製造業ばかりなので、製品も技術も最先端。自分の過去の価値観に縛られている人は追いついていけません。次が『柔軟な頭』。素直な心で見聞きした内容を、貪欲に吸収してほしい。そして『チームワーク』。コンサルタントが一匹狼なんてうそですよ。担当するお客さんがいて、その先に顧客企業がある。社内では同じプロジェクトのメンバーや関係部署の社員がいる。だから、相手の言葉を理解して、自分の気持ちを相手に伝える、コミュニケーション能力が大切なんです」
 この3つに合致する第二新卒が2人いて、一方が経験者で他方が未経験者ならどちらを採用するか。中村氏の答えは「もちろん両名を採用します。仕事は山ほどあってお客さんを待たせている状態ですから」
中村洋一氏
執行役員 CAO
中村洋一氏
■ 毎週金曜は全社を挙げての研修日
 ネクステックが第二新卒採用を行う理由のひとつは、社員に人材育成のチャンスを与えるため。同社では部下の育成もマネジャーの評価項目のひとつで、業務での成果より重視される場合もあるという。また、若手社員のための「メンター制度」も設けている。
「私が最初に入社したシンクタンクに3年上の先輩がいたのですが、論理的かつ情熱的な自分の言葉で語れる人で、『俺もああなりたい』といつも感じていました。本を読んで勉強するより、そんな先輩に接して学んだほうが100倍も成長します。私もメンターのひとりですが、当時の先輩のようになりたいと思っています」

 また、毎週金曜日は丸一日を研修日とし、顧客との契約にその旨を明記しているという。お客さんにとっては週4日のスケジュールとなるが、トラブルはないという。
「一度もご迷惑をお掛けしたことはありません。なぜなら、品質を維持した成果物を期限内に納めているからです。毎週金曜日にきちんと教育を受ける機会を、会社が社員に対してコミットしているので、弊社のコンサルタントやエンジニアは確実に成長していけるのです。弊社はコンサルファームによくある『Up or Out』型(一定期間内に成長できないと解雇される、あるいは自主退社する)ではありません。未経験者を採用するのも、採否のバーを下げているのではなく幅を広げたいから。仕事の面白さを覚えれば、若手はぐんぐん伸びるものです」
第二新卒者へのメッセージ
株式会社クレスコ 将来像を描いてから、人生をリスタートしてほしい
■ 20〜30人が10月入社。同期意識が連帯感を生む
 金融、製造、流通など多くの分野で、主に大手企業の基盤システムや組み込みソフトの開発を行うクレスコ。社員約750人中に技術職が約680人と、多くのエンジニアを抱えるSI企業だ。同社の第二新卒採用には独自の特徴がある。
「昨年から始めたのですが、採用した第二新卒社員を一括して10月入社とし、同時に研修からスタートするスタイルです。新卒のように『同期入社』をして皆で一緒に勉強し、実務の現場へと出ていきます。業務が効率的に進められるという理由以上に、同期意識をもたせて、共に成長できる仲間をつくることが狙いです」

 研修期間は1カ月〜1カ月半、その後は実務で仕事を覚えていくが、社内には30以上のフォロー研修コースがある。JavaやDBなど個々に必要な技術スキルは、実務とセミナーの両面から習得していく。
「昨年は20人弱の第二新卒が入社しました。今年は技術職全体で約90人を中途採用する予定ですが、第二新卒は30人ほどと考えています。昨年入社組もセミナーなど社内イベントの後で飲みに行ったりして仲良く仕事をしていますので、しばらくはこの方法を続けるつもりです」
細田敦史氏
人材開発部 採用課 課長
細田敦史氏
■ 条件は開発経験1年以上だが、成長意欲が何より大切
 同社が第二新卒を採用するのは、ビジネスマナーや基本的な仕事の進め方など「社会人意識」が備わっているから。即戦力としては期待していないが、まったくの技術素人は困るという。
「業種や案件を問わず、開発経験1年以上が条件です。ただ、技術の素地は必要というレベルで、技術力や経験年数で採用を決めるわけではありません。大切なのは成長意欲。『こうなりたい』『だからクレスコでこれがしたい』といった夢が語れることが大切。本当にやりたいことがある人は目の色が違いますよ」
 同社では派遣会社の社員も採用の対象とのことだ。さまざまな会社で働いた経験は環境適応力を高め、多様な技術に触れた幅の広さも期待できるという。ただ、責任ある仕事に就きにくいという欠点もあるはずだ。 「それは派遣を10年続けた人に危惧すること。経験1〜3年の若手なら心配ありません。リーダー職などのポジションを与えてあげれば、想像以上に成長するものです」

 細田氏は「第二新卒は人生のリスタート」と語る。それまでの経験はすべて捨て、新しいことに一から挑戦するつもりで転職してほしいという意味だ。
「新しい会社で始めたいこと。これが具体的に描けてから動くべきでしょう。企業は何らかの環境を用意しているはずなので、それを生かせるかどうかは本人次第。これまでの経験を捨てる覚悟がないなら、無理に転職しないほうがよいと思います
第二新卒者へのメッセージ
Part3 企業を知り、対策を立てて、「リセット転職」を実現する
 第二新卒のエンジニアを求めているのは、具体的にどんな業界、企業なのか。Part1で登場したリクルートエージェントの佐藤麻衣子氏に、その内容と応募時の対策、今後の動向について語ってもらった。
狙い目は大手SI企業、Web系ベンチャー、大手系列メーカー
「エンジニアの第二新卒には、大きな受け皿が3つあります。ひとつは大手SI企業。3〜6カ月の研修制度が整っている場合が多く、そのため未経験者の採用にも積極的。例えば、プログラミングの経験がなくても研修などで学びながらSEになるなどです。もうひとつはWeb特化型のベンチャー企業。ポータル系、SNS系、BtoC系などの、比較的規模の大きなシステムを手がける企業です。この企業群はこれまでは実務経験が必要でしたが、未経験採用も開始しました。ただ、組織的な研修制度をもつ企業は多くないので、業務でなくても何らかの技術的経験が問われます。例えばHTMLで自分のホームページをつくっていた、PerlやPHPで趣味のプログラムを書いていたなどです」
 業務知識については、SI企業では研修で学習し、Web系企業では「転職者自身が顧客」という事情でスムーズに進むようだ。

「一方、ハード系職種の主な求人先には、大手企業系列のメーカーが目立ちますね。大手完成車メーカー系のサプライヤー企業、大手電気メーカー系の制御系開発企業、大手半導体系メーカーの系列企業などです。化学、機械、電気・電子系学部の出身者なら未経験でも採用可能ですが、逆にいえば学部指定があるわけです。ただ、これは1年前なら最低1年の実務経験が必要だったのが、今年の4月ごろから未経験採用が始まった結果。ハード系エンジニアにとっても、採用基準は大きく緩和されています」
今秋以降が第二新卒転職の大きな山場になる
 では、経験の浅い、あるいは未経験のエンジニアを採用する場合、企業はどこをチェックしているのか。まず、「動機と希望の筋が通っていること」と佐藤氏は語る。
「転職動機と入社理由の整合性です。例えば、残業が多くて転職するのに、Webの開発がしたいから御社を選んだでは、何のための転職かわかりません。また、求人条件が『未経験も可』であっても、やはり経験者のほうが有利。その差を埋めるのがコミュニケーション能力です。話し方は朴とつであっても自己PRをきちんと行い、一生懸命な姿勢を伝えることが高いポイントにつながります」
 加えて、上記3業界別ではアピールポイントも多少異なるという。
「SI企業では研修後にSEとしてお客さんにアサインされる場合も多いので、コミュニケーション能力があるかどうか。Web系企業であればその製品やサービスへの興味の深さ、詳細に知っているかどうか。ハード系職種なら学生時代の研究内容です。実務経験を重視しないとはいえ、職務経歴書にはじっくりと目を通します。学生時代の専門的な勉強を、十二分に記載したほうがよいでしょう」

 第二新卒ブームが起こって1年以上たつが、企業の採用意欲はますます旺盛だ。これはこの1年間に入社した前の世代が成果を残している証拠。まじめに人生と仕事の「リセット」を考えているなら、今がチャンスであることは間違いない。
「求人職種としては、SEはもちろんですが、今後はネットワーク系職種も増えてきそうです。ハード系職種の未経験採用も広がるでしょう。また、転職時期は夏に募集して10月入社、10月募集の来年1月入社が大きな山になると思います」
編集部が関係者にヒアリングした「使える若手」と「頼りにならない若手」
使える若手 頼りにならない若手
転職理由が前向きで、自分なりの将来像が描けている。「こうしたい」という目的が明確なので、新しい環境の中でも素直に謙虚に仕事に取り組む。結果的に先輩社員に期待され、好意的な指導を受けて、自己成長ができる。「リセット転職」の成功例だ。 売り手市場だし、社会人経験もあるので、どこかは雇ってくれるだろうという甘い考え。退職の理由があいまいで、目的も特にない。仮に転職できてもやりたいことが見つからないため、社内で浮くか、再度転職してしまう。こうしている間に「第二新卒の特権」を失う。
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  高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ  
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この記事をつくるにあたって、25歳のころの自分を思い出していました。私、バックパッカーやってて、ニュージーランドとかアジアを回っていたんですよ。当時に今のような「第二新卒積極採用」があれば、日本を出ずに転職していたかも。第二新卒世代の方々、無理な転職は勧めませんが、チャンスであることは間違いないですよ!
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