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成功をシミュレーションする、楽な転職は意味がないと奮い立たせるetc ハード編 「自分の技術は通用する?」転職の不安解消法
転職を成功させたエンジニアは、転職活動中に浮かび上がった不安をどのように解消していったのだろうか。前回のIT業界編に引き続き、今回はハード業界のエンジニアたちへの声を拾ってみた。
(取材・文/中村伸生 総研スタッフ/山田モーキン)作成日:06.08.09
その1 転職に対する不安第1位は、「自分の技術力が通用するのか?」
転職活動を行う際に最も不安を感じているのは、異業種もしくは異職種への転職を考えている人だろう。同業他社からスキルが認められての同職種転職では、職を変えるというハードルも低く、多くの人への参考にはならない。そこで異業種(異職種)に転職を成功させたハード系エンジニアにアンケートを取ったところ、予想どおり多くのエンジニアが不安を抱きながら転職活動を行っていたことが判明。中でもIT系でも一位だった「自分のスキルが通用するか不安」という回答が特に多く、エンジニア共通の不安と言えそうだ。また、標準技術が確立しているIT 系エンジニアと異なり、つくるものが違えばつくり方も大きく変わるというハード系エンジニア。「ゼロからのスタートに戻るのが不安」という意見も多かった。では、こうした不安を解消して転職を成功させるためにはどんな手を打つべきか。異業種転職を成功させた2人のハード(電気・機械)系エンジニアに聞いてみた。
異業種(異職種)転職する時に抱いていた不安(複数回答)
ケース1 「念願のコンシューマ製品の開発に参加」ソフトハウス→自動車メーカーに転職 T・Iさん30歳
ソフトハウスのプログラマから業界を飛び越えて転身したT・Iさん。それも人気の大手自動車メーカーへの転職を成功させている。その成功の秘訣は? そして今回のテーマでもある、不安解消法は? 取材で浮かび上がったのは、T・Iさんならではの数々の転職ノウハウだった。
転職前の最大の不安
「前職とつながりのない業界で自分が活躍できる場所はあるだろうか」
T・Iさん
T・Iさん プロフィール:
新卒で100人規模のソフトハウスに入社。通信関連システムの分野でICの制御プログラムから交換機アプリケーションまで、幅広いソフトウェア開発に参加。社会人になる前からコンシューマ製品の開発がしたいと考えていたことと、会社の経営方針に疑問を感じ、退職。就職活動を開始して、わずか2カ月間のブランクで大手自動車会社の内定を獲得。
就職活動に積極的に取り組むわけでもなく、教授推薦やゼミの先輩のルートで“何となく”新卒入社してしまったというパターンが、ハード系エンジニアには少なくない。往々にして、入社して数年たってみて“こんなはずでは……”と進路の軌道修正を図らざるを得なくなる。T・Iさんもまさにこのパターンだったそうだ。「理系の大学を選んだのもモノづくりがしたかったからです。本来は自分がつくった製品を多くの人に使ってもらえるような、そんなコンシューマ向けの仕事がしたかったのですね。でも、通信系ソフトハウスではそうした醍醐味を味わえる機会がほとんどありませんでした」。

そんなT・Iさんが転職活動を始めるに際して、第一志望に定めたのは自動車メーカーだった。制御系プログラミングの技術では相当のスキルがついたと自負するT・Iさんだが、まったくの畑違い。当然のことながら、自分の技術が通用する場所があるのだろうかと不安がわき起こったと言う。
T・Iさんの不安解消法(1) 「勝つための第一歩は、相手を知ること」
相手をよく知らないから不安が募るのは、転職活動に限ったことではない。特別クルマに詳しいわけではなかったT・Iさんは、ネットや書籍で自動車産業の業界勉強と情報収集を徹底して行った。これには2つの意味がある。まずは自分のスキルを必要とする部門・業務の存在を突き止めること。もうひとつは面接での話題づくり。これを前職の退職1年前から開始していた。一方で自分を知ることも大切。自分は何をやりたいか、何ができるのかを書き出して自分を客観理解することに努めたそうだ。そのおかげで、自動車業界が注力するITSの技術開発に、自分の組み込みソフト開発スキルが求められていることを知った。
T・Iさんの不安解消法(2) 「情報感度を磨く」
情報収集は志望企業のことを知るためだけの行為ではない。応募書類の作成や面接を前に、どのように転職活動のステップを進めたらいいか、事前にイメージしておく必要がある。T・Iさんは前の会社から先に転職に成功した先輩に就職活動に役立つヒントや注意点を聞いて、万全の事前準備に努めた。さらに転職エージェントの会社をうまく使ったり企業のホームページを定期チェックしたりして、募集意欲の高い企業や採用活動を行うタイミングを探った。
T・Iさんの不安解消法(3) 「第一志望の受験前に面接慣れをしておく」
T・Iさんは言う。「本命企業に応募する前に第二志望や第三志望の企業を受けること」と。理由は第一に面接慣れ。企業は自分のどこに着目するか、どんな質問を投げかけてくるか、それにどう答えたらよいのか……。いざというときにうまく反応するための練習台になるという。第2に、内定をもらってスベリ止めをもっているのといないのとでは、第一志望の面接の際の余裕が違う。さらにT・Iさんのように退職してから転職活動を行うエンジニアにとっては内定や入社時期を通常スケジュールより早めてほしいものだが、そんなときに「1社に待ってもらっている」というひと言は効く。
ケース2 「転職をキャリアアップ手段と位置づけて不安を直視」4回の転職を重ねる S・Yさん34歳
一方、転職を自分のキャリアアップに不可欠な手段として積極的にとらえ、「不安なんかあって当たり前。不安のない転職など自分を成長させない」と語るのはS・Yさん。転職を4回重ね、現在は某コンピュータメーカーでCPUまわりの回路設計に携わる、自称“現場たたき上げ”のエンジニアだ。
転職前の最大の不安
「自分が通用するのか」という不安を逆手に取る
S・Yさん
S・Yさん プロフィール:
ハードやソフトの分類どころか、理工学系の技術がまったくない状態から、自分が手に職をつけるならエンジニアしかないと一念発起し、最初に入社する企業をハローワークで探す。入社した会社で技術を磨き、転職を手段にさらなるスキルアップと給与向上を求めた結果、現在の会社は5社目。
その会社で得るものがなくなったら次の転職を考えるというS・Yさん。それゆえ、同業他社で今までと同じようなポジションや仕事内容に転職することなどあり得ない。転職に際しての不安は、あって当たり前と語る。むしろ、自分がすぐに通用するはずがないと考えて転職に臨む。当然、面接する企業側に何らかの採用メリットを見せなければならない。それは若いうちは成長意欲であったり、キャリアを重ねていくうちに、今までの成長実績や現状の正確な技術レベルだったりするという。肝心なのは、入社後にかなりの努力をするという、セルフコントロールにあるそうだ。
S・Yさんの不安解消法(1) 「技術が低いうちは意欲をアピールして突破!」
「これはスキルレベルが低い若手の間しか通用しないかもしれないが」と断ったうえでS・Yさんが語ってくれたのは、入社したいという意欲をストレートにアピールすることが正面突破の際に有効だということを示すエピソードである。彼の最初の企業選びはハローワークだった。就職情報誌などの募集資格はハードルが高かったそうで、技術スキルが全くないS・Yさんは採用ハードルが低い(それでも彼にとっては高い)少人数の会社に応募し、面接に出てきてくれた社長に熱意を訴えた。その意気込みをその社長は受け止めてくれたという。当初の彼の給与はアルバイトレベルだったそうだが、“働きながら学べる”と考えて意に介さなかった。
S・Yさんの不安解消法(2) 「転職フェア、職場見学でその会社の素顔を知る」
スキルが通用するかどうかに関しては不安などあって当たり前と言うS・Yさんだが、その会社の風土やメンバーとの相性が合うかどうかに関しては、さすがに不安視することもあると語る。同じような職域であっても、会社が違えば仕事の進め方が違うし、人づき合いの様子や教育に対する姿勢も大きく変わるからだそうだ。この不安を解消するには、実際に会社の様子を探るしかないと言い切る。転職フェアでは先方の人事とだけではなく、エンジニアと積極的に語り、面接の際には必ず職場見学を申し出るそうだ。
S・Yさんの不安解消法(3) 「面接は自分への理解を深める貴重な場」
多くの応募者にとって、面接は緊張する場面だろう。そこで話が盛り上がればよいし、自分を積極的に評価してもらいたいと思うのは誰しも思う。ところが、S・Yさんの場合は面接に対する考え方も独特のとらえ方をしている。例えば、自分が思ったよりも低く評価された時こそ、耳を傾けるのだそうだ。自分には何が足りないのか、どこを伸ばしたらよいのかという課題抽出をするに当たり、最大の助言だからである。今までに何度、辛らつな意見を言われたか数知れないらしいが、その度に軌道修正のための客観意見と発奮材料にしてきたそうだ。
その2 ハードエンジニア100人の、転職不安解消術とは?
対照的な2人のハード系エンジニアの転職に対する不安解消例を紹介したが、そのほかにもエンジニアの不安解消例を紹介しよう。アンケートを分析してみると、IT系エンジニアと変わらない解消法が浮上した。採用面接の中で不安が薄れていったという意見である。その一方で、ネットや雑誌で情報収集して不安を解消したという意見はIT系エンジニアに比べて少ない。むしろ目立ったのは、「エンジニアは一生勉強が当たり前だから仕方がない」「今までも不安の大きい課題に挑んでクリアしてきた」という意見だ。また、「業界が異なって開発商品の知識がゼロなら、ユーザーの感覚に近い開発ができる」という意見も見られた。ハード系エンジニア、なかなか考え方はタフである。
「自分のスキルが通用するのか」不安の解消・軽減ポイント(複数回答)
ハード系エンジニアの主な不安解消術 ハード系エンジニアならではの不安解消術

分野が違っても技術的な共通基盤を見いだす

面接で自分のスキルと期待値をすり合わせる

面接で評価されることで前向きな意欲を引き出す

先回りして勉強する

製品知識がない場合はユーザー視点に立てると考え方を変える

エンジニアは一生勉強だと割り切る

事前情報がIT系より希薄ゆえ情報感度を磨く

事前情報よりも現場対応力の自負
まとめ 情報感度を高め、自分の市場価値を正しく把握することが、不安解消の第一歩
T・Iさんは入社前に転職先について徹底して勉強して事前準備によって不安を解消していったタイプ。S・Yさんは転職時につきまとう不安を、むしろ発奮材料にしていくタイプといえるだろう。

では、一方で採用側であるIT/エレクトロニクスメーカー企業はハードルが高いと思われる、つまり不安要素の大きい異業種・異職種転職をどう見ているのだろうか。今回もリクルートエージェントの協力により、同社でエレクトロニクス業界のキャリアアドバイザーを担当している遠藤厚身氏と平川俊マネジャーに語ってもらった。

「理系の大学を出たなど基礎知識があり、第ニ新卒層とされる20代中盤までの方でしたら、業界未経験・関連技術スキルがないという場合でも採用に至るケースがメーカーでも増えてきました。技術者派遣の会社からメーカーへの転身例も増加しています。20代後半や30代前半でも、年齢相応の技術スキルをおもちなら、かつては難しいとされたソフト開発会社からメーカーへの転職もあり得ます。また、日本のメーカーは人を育てるのが得意。自社ならではの教育で、技術を人づてに受け継いできたのです。だから、入社してから足りないスキルを十分に身につけられる」

そう語るのは、平川マネジャー。若いうちは基礎技術、後は年齢相応のスキルがあればハード系エンジニアへの転身や業界をまたいだハード系エンジニアの転職も難しくない模様だ。だが、ここでハード系エンジニア特有の問題として、転職を望みながらも消極的な面があると遠藤氏は言う。

「“コレがしたい”という希望ではなく、“私には何ができるでしょうか”と言って面談にいらっしゃる方が多いようです。せっかくエンジニアとしてステップアップできる可能性がありながら、自分を過小評価して市場価値を低く見積もるエンジニアは、IT系よりハード系のエンジニアに顕著に見られます。新卒入社時に教授推薦でそのまま入社するなど、キャリア開拓の意識が低いことも原因のひとつでしょう。また興味の範囲が狭くて深いという志向性もマイナスに働いているのかもしれません。自分の会社以外のことは知らないという方も少なくないですね。今はネットを活用すれば簡単に企業の採用情報を手に入れられますし、私たちのようなキャリアアドバイザーを上手に使えば、自分の思いもよらなかった可能性が発見できるかもしれないですよ」

IT系に比べベンダー資格などわかりやすい指標がない、地方拠点勤務が多いことなども、ハード系エンジニアが転職に挑みにくい構造をつくっているのだろう。だが、人材市場は想像以上に開かれている。今こそ転職を考えるハード系エンジニアには、情報感度を高め、自分の価値を正しく把握し、納得できるキャリアプランを見つけ出していく積極行動が望まれるのではないか。
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  山田モーキン(総研スタッフ)からメッセージ  
山田モーキン(総研スタッフ)からメッセージ
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今回も前回のIT編同様、不安解消法を探ってみましたが、「エンジニアは一生勉強」という類の意見がIT職種に比べて数多く見受けられました。そのことからもソフト開発とモノづくりの現場環境、それぞれに特徴があり、そのことを事前に把握したうえで転職活動をすることも重要かなと思います。
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