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造船、鉄鋼、建機、化学…海外需要と技術革新で勢いが止まらない “重厚長大”業界が採用復活!胸を熱くする仕事と技術
鉄鋼、造船、建設機械、重電etc.――俗に“重厚長大産業”と呼ばれる分野が今、好景気に沸いている。90年代には構造不況業種などといわれたのも今は昔。中国をはじめ経済成長著しいBRICsなどでの需要急増を受け、各分野で生産が追いつかないなどのうれしい悲鳴が聞こえる。この好景気は採用増にも結びつきそうだ。
(取材・文/伊藤憲二 撮影/竹本宗文 総研スタッフ/高橋マサシ)作成日:06.07.19
Part1:造船 新造ラッシュの世界造船業界、光る日本陣営の技術力
 近年の世界的な好景気、経済成長は、海運の需要を激増させた。それによって顕在化したのが「船不足」。新造船の発注が、造船メーカー各社に殺到している状況で、各社とも売り上げを大幅に伸ばしている。現在、日本は中国、韓国とともに造船三大国を形成している。生産トン数では既に世界一ではなくなっているが、省燃費、高性能、環境対応といった技術面では、いまだに他国の追随を許さない。日本の造船、健在である。
三井造船:巨大タンカーから深海1万mの探査船まで「技術のデパート」
自分の設計図が巨大な船舶になる醍醐味
 造船業界大手の一角を占める三井造船は、超巨大タンカーや貨物船などのコンベンショナルな船舶の建造力で高い評価を受ける一方、古くはホバークラフト、近年ではテクノスーパーライナーといった超高性能ハイテク船、世界の深海を制覇する1万m級の深海探査機「かいこう」、また日本の自主エネルギーとして期待されているメタンハイドレード運搬船などの多様な独自技術をもつ、ユニークな造船メーカーだ。
「船の開発というのは本当に面白いですよ。自分が設計した船がドックで建造されていく様子を見るのは実にエキサイティング。弊社社員の中には、岡山県の玉野事業所で巨大船の進水式を見て、その迫力に感動して造船業界を目指した人もたくさんいます。コスト、技術開発、安全性確保など、厳しい要求が出される造船は、決して夢だけでつくれるものではありません。が、それでもやっぱりロマンチックなところがある。そこがいい」

 1979年に入社後、一貫して船体の基本設計を手がけてきた仁保治設計部長はこう語る。仁保氏がこれまでに設計を手がけてきた船は数十種類。近年設計したもののうち、ハンディマックスとよばれる5万6000載貨重量t、全長190mのばら積み運搬船は、同型船が80隻も売れたという、造船業界では類のない大ヒット商品となった。
「船というと、ただ浮いているように見えますが、実際はハイテクの固まりなんです。例えば大型船で喫水線下が20mだとすると、そこには2気圧の圧力と波の力がかかる。そのストレスは1気圧差の力を受ける宇宙船以上なんですよ」
 船の設計は重量、耐久性、凌波性、抵抗低減など、多くのスペックを満たす必要がある。それらの中には、あちらを立てればこちらが立たずという、トレードオフの関係にある項目も少なくない。だが、技術開発によって、欲しい性能を同時に並び立たせることもある程度可能だ。
大型タンカーの鋼板、厚さがわずか20mm
 原油高が続けば、省燃費性に優れた船の人気が高まる。軽量化は高騰する鉄鋼の使用量を削減でき、また同じ船体のサイズで積載量を増加できる。高速化は航海時間の短縮で航海回数を増やし、海運会社の運送サービスの競争力強化にもつながる。
「さまざまな性能を並び立たせる船を、われわれは高技術船と呼んでいます。今後は高技術船の技術レベルが競争力を左右する要素になると思います。技術開発競争はまだまだ続きますよ」
 幅60mの大型タンカー「VLCC」の船体に使われる鋼板は、厚さわずか20mm。仁保氏は「ポリ袋が水に浮いているようなもの」と形容する。船舶の開発はそのような、にわかに信じがたいことを可能にする技術のオンパレードだ。
「船の世界は独特で、だれもが簡単に開発できるというわけではありません。しかし、船に関連するスキルをもっていて、なおかつ船が好きというエンジニアにとっては、飛び込んでみるだけの価値が十分にある世界だと思います」
5万6000tのばら積み運搬船
5万6000tのばら積み運搬船
三井造船のスマッシュヒットとなった5万6000tのハンディマックスサイズ。
17万700tのばら積み運搬船
17万7000tのばら積み運搬船
全長290m、17万7000t型ばら積み運搬船。高い環境性能を有する。
仁保 治氏
船舶・艦艇事業本部
基本設計部長 工学博士
仁保 治氏
北極圏も航行するLNG運搬船
 全長290mの大型LNG(液化天然ガス)運搬船は、三井造船の最新鋭船のひとつ。用途はノルウェー北部のガス田で産出する天然ガスの輸送。高強度で凌波性に優れた船体をもち、波高10mも珍しくない北極圏での航行も可能という高技術船だ。ちなみに、船舶には電化製品にあるような商品名や型番はなく、製品名は「○○船」といった表記になる。個有の船名を命名するのはオーナーだ。
三井造船の人材ニーズ  船は無数の技術の集合体。求めるエンジニアは多様
 船は多くの要素技術の集合体で、システム工学的な要素が強い。大きく分けて、性能設計、構造設計、船体艤装、機関艤装、電気艤装の5つがあり、それらが統合してひとつの船になります。
 性能設計はスクリューや船体の流体力学的設計、波や風のシミュレーションなどを手がける部署で、造船全般の知識が問われます。構造設計も陸上の構造物とは違うノウハウを必要としているので、やはり専門的な知識が要求されます。未経験者にも比較的門戸が開かれている分野は、主にエンジンと電気関連でしょう。
 船のエンジンは、その大きさをはじめ自動車のエンジンと異なる部分は多いのですが、機械系エンジニアの技術は生かせます。また、電気は強電全般や制御機器の経験があると入りやすいでしょう。
仁保 治氏
Part2:建設機械 BRICsの都市開発を支える日本の高性能建機
 道路、橋梁、建築物など社会基盤を整備するための土木作業に欠かせないのが、パワーショベル、クレーン車、ブルドーザーなどに代表される建設機械だ。この建機の需要が今、中国をはじめBRICsとよばれる経済成長国で急増している。経済成長の波及効果で、その周辺諸国でも公共工事の立ち上がりがみられる。既に各建機メーカーは生産が追いつかないほどの状況だが、この活況は当分の間は続くと予想されている。
コベルコ建機 見てよし乗ってよし、しかも安全な高性能建機をつくる
「頑丈で便利」だけでなく、環境、乗り心地、騒音抑制へ
「今日、建機に求められている性能はさまざまです。故障しにくくて耐久性が高く、パワーがあるというのは当たり前。そのうえで低騒音、低燃費、低排出ガスといった環境性能や、付加価値としての快適性も強く求められているんです」
 建機のニーズについてこう語るのは、神戸製鋼グループの建機メーカー、コベルコ建機ショベル開発部の下垣内宏部長。コベルコは今、「さすがコベルコ!」をスローガンに、選択される「商品」「社員」「会社」を目指している。その商品づくりは単なる高性能の追求にとどまらない。ユーザーのニーズにこたえる、さらには都市の景観にもマッチするような高いデザイン性をもたせるなど、ニーズを先取りする商品開発がコベルコの身上だ。

「例えば快適性。鋼製クローラー(無限軌道)を装備する中型以上の建機は、どうしても乗り心地が悪い。そこで快適性を高めるために、操縦室を液体封入型マウントで支える方式を幅広く採用しました。20tクラス以上の大型モデルについては、シートにもサスペンションを装備可能です。また、室内はとても静かになっています」(下垣内氏)
 工事現場において苦情の原因となる室外騒音についても、音の大きさそのものの抑制はもちろん、どういう音が耳障りになっているか分析し、音質もマイルドに仕立てている。体感的には20年前の半分程度の騒音(不快感選択評価)にまで削減されているという。
ハイブリッド建機が登場。黄砂への対応も
 また、自動車業界ではハイブリッドカーが注目されているが、何とコベルコもハイブリッド建機に取り組んでいる。
「エンジンとモーター、ジェネレーターを装備し、状況によってエンジンとモーターを使い分けています。さらに、建機の旋回などの動きを止めるときには、その運動エネルギーを電気として回収しています。高い環境性能をもつ製品の開発を、今後もさらに強化していきたいですね」(下垣内氏)
 コベルコの建機は気温50度を超えるような中東から、カナダ北方やロシアなど酷寒の資源地帯まで世界中で使われている。だが、最近建機の売れ行きが好調な中国での使用環境には驚いたという。コベルコでは現場主義にのっとり、使用環境の視察やトラブルの掌握の際には現地に赴く。

「まず使われ方は国内に比べてとてもハード。また中国では微粉末である黄砂がエアフィルターの目詰まりを引き起こしていました。また、可動部の摩耗を引き起こす可能性もあるかもしれない。超えるべきハードルがまた出現したと、気持ちを新たにしているところです」(技術管理部・矢仲徹太郎部長)。
 開発陣にとって仕事の励みになるのは、やはりコベルコのロゴを工事現場で見かけたときだという。
「社員旅行でバスに乗っているときも、ウチの建機が見えると思わずうれしくなってしまいますよ。ウチは開発から営業まで全員、車両系建設機械の運転免許を取得しています。愛着もひとしおなんです」(矢仲氏)
後方超小旋回ショベル「グランビートル70SR」
後方超小旋回ショベル
「グランビートル70SR」

旋回範囲を車幅の範囲内に収めることで、旋回時の事故のリスクを大幅に軽減した、安全性重視の小型油圧ショベル。
ホイールクレーン「パンサー250」
ホイールクレーン「パンサー250」
最大懸吊重量25tの能力をもつ中型ホイールクレーン。上位モデルとして50tモデルもある。建設現場になくてはならない建機だ。
下垣内宏氏 矢仲徹太郎氏
開発生産本部
ショベル開発部 部長
下垣内宏氏(左)

開発生産本部
技術管理部 部長
矢仲徹太郎氏(右)
最新油圧ショベル「アセラ・ジオスペックSK200」
 今年6月にフルモデルチェンジされた中型油圧ショベル「アセラ・ジオスペックSK200」。70%の急勾配登坂能力をもち、さまざまなシーンでの作業を可能にしている。旧型に比べ、作業効率を8%アップ、燃費を約20%低減させ、コストパフォーマンスを向上させている。また、環境面でも世界最高水準のクリーン性能を実現。
コベルコ建機の人材ニーズ  メカトロ、電気、解析、生産、品管……さまざまな要素技術
 建機業界は弊社を含め、エンジニアニーズがかなり高まっています。求められる経験やスキルも、開発から生産、製造、品質管理、さらには保守まで極めて多岐にわたっており、多くの人にチャンスがあると思います。
 車両系では動力部分はトラックなど自動車関連エンジニア、パワーショベルなどのロボット部分では制御、油圧などのメカトロ関連はもちろん、機械工学、電気工学全般の経験を生かすことができます。
 設計はCAEによるところが大きく、オペレーションや各種解析の経験も役立てることができるでしょう。生産部門では調達、品質管理、品質保証のスキルも非常に有用です。建機の開発は、いろいろな要素技術があって、大いに楽しめると思います。
石原良一氏
総務部 総務グループ長
石原良一氏
Part3 ようやく扉が開いた重厚長大産業のエンジニア中途採用
財閥系の大手企業が重い腰を上げた
 建機、重電、造船、宇宙航空、鉄鋼といった分野が俗に重厚長大産業と呼ばれている理由は、つくっているものや用途が大きいということばかりではない。その企業の多くが財閥など大規模企業集団に属しており、伝統と格式を重んじていたことも異名の由来である。
 これら重厚長大産業は、求人についても新卒主導で、外部の人材を中途採用するケースはごく少数だった。その流れが最近、大幅に変わってきているという。
 日本最大の転職エージェントであるリクルートエージェントの瀧田幹氏は、その変化を次のように語る。
「以前はひとりの中途採用を考えただけでも大変でした。本当に外部の人間が社内の雰囲気に調和できるのかなどとかなり慎重でしたから。ところが今では、業種にもよりますが、『あの重厚長大企業が』と驚くくらい、積極的に人材を受け入れようとする気運が出てきています。重厚長大産業で中途採用ということ自体、転職市場の変化を表すエポックメイキングなことだと思います」
 確かに、一昔前までは鉄鋼や造船などの分野では、転職者を受け入れるなど思いも寄らぬことだった。重厚長大産業への転職は、まさに今がチャンスなのである。
瀧田 幹氏
リクルートエージェント
EMCカスタマーマーケット
マーケットオフィサー
瀧田 幹氏
宇宙、航空、造船のニーズは今後に注目
 中途採用が多いのは、何と言ってもBRICs向けの販売が絶好調な建設機械業界だ。
「人手不足は深刻。建機はユーザーのニーズや相手国の文化、風土に応じて細かくカスタマイズすることが多く、その作業だけでも膨大。研究開発からカスタマイズまで、広く募集しているケースをよく見ます」
 また、近年の業界好調を受け、化学業界の中途採用ニーズも急増しているという。
「以前は同業で同じような案件を手がけたエンジニアに限定するケースが多かったのですが、最近は極端な話、無機でも有機でも大学で専攻した経験があれば可というケースも増えています。化学業界はチャンス大ですね」
 中途採用ニーズがゼロに等しかった鉄鋼業界でも、中途採用の気運が出始めている。材料の基礎研究、加工工程を開発するプロセスエンジニアなどがメインだ。特に延伸、圧延については求人が増えている。
「宇宙航空や造船の中途採用は件数的にはまだまだ少ない。ですが、既に個別に動き出した企業も少なくなく、中途採用のバリアは破られていると言ってよいでしょう。両業界とも人手不足気味で、中途採用が本格化する可能性は大いにあります」
 転職を考えるうえで、重厚長大産業も今や縁遠い存在ではない。上記の分野に関心があるエンジニアは、転職先として一考するだけの価値がありそうだ。
重厚長大業界の先端技術とエンジニアニーズ
業界
話題の技術
エンジニアニーズ
造船
低燃費、環境対応、高技術船
船体設計は造船関連の専門知識や経験を要するが、エンジン、電気など艤装関連では他業界での経験者にチャンス。
鉄鋼
高張力鋼板、超鉄鋼
圧延、延伸など加工分野や材料研究で、他分野の人材に門戸が開かれ始めている。無機化学、加工機経験者は要注目。
建設機械
高性能建機、ハイブリッド建機
自動車、機械、電気、メカトロなど幅広い分野のエンジニアに門戸が開かれている。品質保証、調達などの経験も歓迎。
航空
次世代旅客機、ビジネスジェット
機体設計より機構設計がメイン。メカトロ、機構設計経験者は有利。金属、複合材などの材料系エンジニアも。
化学
電池材料、新樹脂、触媒材料
人材需要多し。有機、無機、物性化学、粉体、複合材などの各分野の知識があればチャンス。金属からのジョブチェンジも。
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何だか「血が燃える」という感じです。でっかくて、ゴツくて、メカニカルで、しかしそれを支えているのは神経質なほど細微で高度な技術力。三井造船さんは東京で取材をお願いしたのですが、帰り際に「今度はぜひドックに来て船を見てください」とのこと。絶対に行きます!
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