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“ヒーローエンジニア”を探せ!vol.1 とにかく目立ったモン勝ち! バンダイのエース直撃!「ヒット・ガンプラ」誕生秘話
誰? 日本の技術に元気がないなんて言っているのは? そこで、Tech総研編集部が日本全国から、前例・常識にとらわれず、独創的発想で活躍している若手エンジニアを探し出してご紹介申し上げたい!今回登場するのは、バンダイの「ガンプラ」でヒットを飛ばす長髪イケメン設計者の若手エースだ。
(取材・文/上阪徹 総研スタッフ/宮みゆき 撮影/栗原克己)作成日:06.06.28
ユーザーの心を揺さぶる「ヒット・ガンプラ」を世に送り出す!
1982年、長野県生まれ。専門学校で3次元CADを学んでいた。精密機械メーカーに就職するつもりだったが、あるとき学校に今の上司が見学に。ガンプラのCAD設計という仕事が将来の選択肢にあることを初めて知った。2003年に入社。以来、入社4年目ながら高評価のヒット商品を次々と手がけてきた。
バンダイホビーセンター
これまで3億7000万個を世に送り出した「ガンプラの聖地」と呼ばれているのが、静岡市のバンダイホビーセンター。パーツ点数が数十点の子ども向けシリーズから、1000点近いパーツの上級者向けシリーズまで、今も最新鋭のガンプラが作り続けられている。
ユーザーの心を揺さぶる「ヒット・ガンプラ」を世に送り出す!
 金型上で最小40ミクロンまでの再現を可能にするレーザー加工機。4種類の色と4つの異なる素材を同時に成型できる多色成型機……。日本のプラモデルは今や世界で高い評価を得ているが、それもそのはず、使われているのは最高性能のマシンなのだ。そんな自分のイメージを表現できる環境の中で、ユーザーの心を揺さぶる商品を世に送り出している設計技術者、前田さんに仕事の楽しさを語ってもらった。
ここまでこだわるのか、と大きな衝撃を受けた新人時代
前田哲也氏
 入社直後は先輩のお手伝いから始まりました。最初に設計を担当したのは、数百のパーツがあるマスターグレードの小さな武器。ナイフのような武器です。しかし、これが大変でした。例えばナイフといっても、歯の部分の長さ、切れる部分の幅など、微妙な違いでリアル感が変わってくる。先輩は、こうした本当に細かい部分にこだわり抜いて全体像を作り上げているんです。「こんなんじゃダメ」「これは設定のイメージと違う」……。僕の設計は、何度もボツになりました。ここまでこだわるのか、と衝撃的でした。
 そもそもガンプラはアニメや設定画から作られるわけですが、実際には3次元のものはないんです。例えば、アニメには真正面や真横の顔はありません。つまり設計は、そこから考えなければならない。まずは2次元の絵を元に図面にし、3次元として立ち上げ、パーツ割りを考えて、分割して設計していく。可動や色にも気を配らないといけない。また、絵で見るとかっこいいけれど、実際には絶対に成立しない体の形になっている場合もあったりします。それを、いかに現実の形にしていくか。さらにはスケールの大きさによって、プロポーションのバランスはまったく変わってくるんです。
 どうすればかっこよく見えるものが作れるか。言ってみれば、設計はその至上命題との戦いですが、これが本当に難しい。肩軸の位置が数mm上になるだけで、あるいは顔がちょっと細くなるだけで、また面一枚一枚の角度の膨らみ方が微妙に違うだけで、違った印象が出てくるんです。そして部分部分のかっこよさに加えて、いかに全体像をまとめていくか。しかも、時間には限りがある。それこそ、闘いの日々なんですよ(笑)。
入社2年目で浴びた超人気商品ゆえの厳しい洗礼
 1年目の後半から、一人で一製品を任されるようになりました。入社以来、ずっと心がけていたのは、器用にやろうとしないこと。いろいろ試したり、時間をかけたり、作業をわざと増やしてみたり。もちろん締め切り時間を過ぎることはできませんが、間違えてでもいいから、自分なりに考えて、少しずつでもソフトや設計に対する知識を深めていこう、と思っていました。今もそうですが、自分なりにあえて場数を踏もうと思っているんです。これまで4年間で12の商品を世に送り出しましたが、だんだんと要求されるレベルが上がってきていて(笑)。うまく仕事をさせてもらっているな、と感じています。でも、周辺からもユーザーからも期待は大きいし、プレッシャーも大きい。緊張感はいつももっています。
 すでにある商品のスケールダウンなどを経験し、ガンダムの主役級商品を任されるようになったのは、2年目の後半からでした。ところが、最初から手痛い経験をすることになりました。自分なりに納得した形を目指したのですが、力不足が露呈してしまったんです。大きな期待を集めた商品だったんですが、各方面から厳しい批評を受けてしまって。特に、プロポーションがひどい、と。これはヘコみました。
 でも、そこから逃げちゃいけない、と思って。以来、特にプロポーションには気をつけるようになりました。おかげで、その次に手がけた、やはり主役級商品は高い評価を得ることができました。各方面から「設計者が違うとこうも違うのか」と言われましたが、実は同じ設計者なんですけどね(笑)。失敗を次のステップに生かすことができたと思います。
前田哲也氏
自分が設計したものが世に出て行く、という感動を忘れない
前田哲也氏
 商品開発の過程で、設計と金型に与えられる時間は約100日。だいたい設計は約60日程度ですが、実際には相当、短いんですよね。ただ、1日でも遅れると後工程の人たちを追い詰めることになる。正直、キツイです。徹夜したことも何度もある。そうしないと、こだわりを形にできないから。ただ、実は3月にオフィスが移転しまして、設備が増強されました。表現にはものすごいプラスになります。微細技術は細かいモールドを可能にしますし、光造形があれば実際手にとって形が見られる。こういう最新の環境をどんどん活用していきたいと思っています。
 もしかしたら、最近のガンプラは知らない、という方もいらっしゃるかもしれません。僕はそういう人にこそ、今のガンプラを見てほしいです。接着剤は使いません。組むだけで色は再現されます。腕や脚は可動するし変形もする。ガンプラがいかに進化してきたか、ぜひ知ってほしい。技術のこだわりをぜひ見てほしい。脳のトレーニングにも効果があるそうなので、ぜひとも、です(笑)。
 どうして僕がこういう場で取材されてるか、ですか? 髪形のせいじゃないですか(笑)。とにかく目立ったモン勝ちだと僕は思いますよ。クサってる、なんて問題外。明るくやらないと。だって、雰囲気が悪くなるじゃないですか。それじゃ、周りの人に迷惑をかけてしまう。もともとファッションとか音楽も好きで、いろいろ影響を受けます。入社したときは、丸坊主でした。それが伸びて今の髪形になりましたが、正直、最初は何を言われるか、という思いもあったんです。ところが、「おー、いいんじゃん」と言ってくれる人がずらり(笑)。かしこまりすぎてガチガチよりも、楽しんでやっているほうが周りの人にもプラスになると思うんです。
 いちエンジニアとしては、自分が設計したモノが世の中に出ていく、これこそ醍醐味だと思っています。それこそ最初の小さなナイフだって、親や友人に自慢していましたから(笑)。モノが形になって世の中に出ていく。考えてみれば、すごいことだと思うんです。営業職や接客業には、味わえない醍醐味ではないでしょうか。だからそれは今も僕の原点だし、仕事のモチベーションになっています。このすごさを、忘れてはいけないと思っています。
ヒーローの野望 “エンジニア”だという固定観念に縛られない仕事をしたい
 たくさんの人に喜んでもらうものを作る。それがエンジニアだと僕は思っています。それがあくまで最終ゴールであるなら、その手段は限定的であるべきではないと思うんです。例えば、設計という仕事に縛られることはないし、ガンプラという垣根に縛られることもない。仕事の枠を超え、カテゴリーの枠を超えて、できることはないか、ということ。実際、僕は今の仕事をファッションや音楽とリンクさせられないか、と思っています。エンジニアだからって、エンジニアだけで終わる必要はない。むしろ、エンジニアだ、という固定概念が邪魔にならないよう、仕事をしていきたいと思っています。


脅威のヒットプラモデル「ガンプラ」。2次元の世界のアニメから3次元の立体プラモデルは作られる。ユーザーをうならせるかっこよさを大きく左右するのが、設計だ。

 

仲間の目 人の話がちゃんと聞ける。その上で自分の意見が出せる
 
自分の意見をしっかりもっていること、あとは責任感があることですね。だから、大きな仕事が任されていく。ただ、もっともっと成長してもらわないと困りますけどね(笑)。これからの世代を引っ張っていかないといけないですからね。
 やっぱりやりたい仕事をやっているということが、一番のモチベーションになってるんじゃないかな。自分に合った仕事に就けた、というのもあるかもしれないけど。
彼は、人の意見を素直に聞ける。だから、一緒に仕事がしやすい。それで意見は聞くけど、流されるままでは決してない。強引に走るべきところは、ちゃんと走るし。だから、年数の割に力があるし、人気商品も任されているんでしょうね。  
それはある。話を聞いて、納得して、その上で自分の意見を出せるのは強いですね。実際、周りから本当にたくさんのことを吸収しているんじゃないかな。いろんなチームとコミュニケーションを交わして、いろんな知識を吸収しているんだと思う。
実際には、納期が厳しいなど、キツイ仕事もある。でも、そういうときにどうやって進められるか、自分なりに意見が出せるのは、やっぱり強いですよね。後輩の面倒もちゃんと見てるし、信頼されてる。他部署からもね。人当たりいいし、泣き言をあまり言わない頑張り屋。なんか将来は海外でも仕事がしたいなんて言ってたけど、独特の意見をもってますよね。  
ヒーローを支えるフィールド 「これが好きだ」が集まっている職場だから、居心地がいい
 バンダイにおける「型破り」を許せる社風、環境とは何か? 技術者たちが、仕事に徹底してこだわることができ、納得するまで頑張れる環境だという。そこには、型にはまった仕事は求められることはない。ユーザーの生活環境とか、立場とか、目線とかに立つことは、制作者としてはとても大事なこと。

 バンダイには、がんじがらめのルールとかがない。服装も自由、商品開発に役立てるためならば、仕事中に漫画を読んでもネットを見ててももちろん問題ない。ロン毛だって歓迎なのだとか。 でも何より、モチベーションを支えているのは、彼らの作るガンプラを楽しみにしているユーザーの反響がリアルに感じられること。時に厳しい反響があっても、それを覆すための努力と工夫を重ねていく。

「そういえば、真剣な顔してグチ言ってる人はいないですよね(笑)。眉間にしわが寄ってる人もいない。でも、新しいアイデアとかって、冗談みたいな話から始まってイメージが膨らむことが多いと思うんですよ。もちろん夜中に意見が対立して口論することもあるけど、基本的には、みんな明るいし、ギスギス感はない」と福元さんが語るように、みんなこれが好きだ、で集まってるから、こういう職場になるらしい。そしてまた、類は友を呼び、ヒーローエンジニアが生まれていくのだろう。
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  宮みゆき(総研スタッフ)からのメッセージ  
宮みゆき(総研スタッフ)からのメッセージ
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2006年3月に新たに立ち上がった「バンダイホビーセンター」。そこでは、1980年からの歴代ガンプラが勢ぞろい。その技術進化の過程がリアルに感じ取れてとても楽しい。工場内はシャア専用のカラーリングで作られた無人搬送機や、ガンダム風の扉など、随所に遊び心やユーモアあふれるセンスが満ちてました。一般の工場見学も実施しているので、興味のある方はぜひ、見学して創作意欲をかき立ててみるのもいいですよ!
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