6月9日からいよいよ、FIFAワールドカップTM(W杯)2006ドイツ大会が始まる。日増しにW杯への注目度も高まっている。そこで今回はW杯を記念し、その開催国・ドイツに焦点を当て、日本に進出しているドイツ系企業の魅力について探ってみた。
(総研スタッフ/関洋子)作成日:06.05.24 |
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■系列を離れた開発部門で、日本のさまざまなメーカーと相手に
シーメンスは1887年創業のドイツの老舗企業。もともと、通信機器メーカーとして発展し、現在は世界190カ国で事業を展開、医療機器や照明などの分野で大きな成果を上げている。シーメンスグループのカーエレクトロニクス部門を担当するのが、シーメンスVDOオートモーティブ(以下、シーメンスVDO)である。
シーメンス同様、シーメンスVDOはグローバルサプライヤ。特にメーターに関しては世界でもトップクラスのシェアを誇る。 そんな同社に2005年1月に転職した金子剛さんは現在、新しいメーターの製造に関して、日本のメーカーとドイツにある設計部門の間に入り、仕様を調整するという仕事に携わっている。 「前職で培ったメーターの製造技術の知識を生かせる職場を探していたところ、シーメンスVDOに出合いました。前職は某完成車メーカー系列のサプライヤだったため、顧客は某メーカーに限られていた。現在は複数の顧客を相手にしているので、その数だけのやり方や文化を吸収できる。そこが面白い。知識の幅の広がりを実感しています」 ■自分の考えを実行に移せる環境と、生ビール29杯を空ける仲間たち
前職でも4年間、英国で働いた経験のある金子さんは、同じ欧州系でもドイツ系企業は日本人になじみやすいという。
「開発部門とのやり取りや電話会議など、英語を使う機会も多いですが、双方ともネイティブではないので、英語を話すことに身構える必要はありません。また譲歩したり、折り合いをつけたりするなど、日本人的なメンタリティも持ち合わせている。この辺が比較的日本に近い、といわれるゆえんかもしれません」 もちろん、前職との違いも実感している。最も大きな違いは、業務分掌が明確になっていることと裁量権の大きさだと金子さん。 「メーターに関しては納期や品質、物流に至るまですべて、私が顧客の窓口として対応するんです。前職では決まったことをこなしていくような仕事が多かったですが、現在は自分が『こうしよう』と決めて行動していかなければならない。責任は大きいですが、その分、やりがいも大きいですね」 ドイツ企業(?)ならではの、こんなエピソードも披露してくれた。日本の顧客の新しいメーターの開発プロジェクトが発足すると、その期間中に4〜5回は、ドイツの設計部門から技術者が来日する。金子さんが、ある焼き肉チェーン店にドイツ人技術者3人を連れて行ったところ、生ビールを29杯飲んだという(ちなみに金子さんの分は含まず)。 「顧客は日本の完成車メーカーですが、工場はアジアや欧州など、世界各地にある。日本にいながら、ワールドワイドで仕事をしていると実感できるんです。これも、シーメンスVDOで働く魅力です」 |
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■商品化には欠かせない「医療機器の安全性認証」を審査
テュフズードグループはドイツで生まれた第三者試験・認証機関。同社が品質保証をした「テュフマーク」は、ドイツでは最もポピュラーなマークのひとつとして認知されている。その日本法人が、テュフズードジャパンである。
2005年3月に同社に転職した大原昌幸さんの仕事は、ISO13485(ISO9000シリーズに医療機器を製造する事業所向けの要求事項を追加した品質システム)の審査員(オーディター)。さらに昨年度の薬事法の改正に伴い、第三者認証機関での認証が可能になった医療機器のクラスU(管理医療機器)の適合性審査も担当している。 「クラスUの適合性審査業務には2種類あって、工場の品質システムの審査と、それによって作られる製品自体の審査があります。その双方が認証されて初めて、医療機器メーカーは新製品として世に出すことができます。医療機器の開発が攻め(push)の技術だとすると、品質安全のオーディターは守る側の技術。実際に工場に行ってそのシステムや製品を審査するわけですから、求められる知識の幅も広い。医療機器の安全性・有効性を審査する仕事は、責任は重いが、その分やりがいもあります」 ■年齢や役職も関係なし 審査員としては同格として扱われる
前の職場との最大の違いは、組織が非常にフラットだということ。「例えば上司である部長も、60歳ぐらいの大ベテランの先輩もオーディターという意味では同じ立場です。従って専門分野によっては、私がリードオーディターとなり先輩たちを指揮することもある。年齢や役職によるコミュニケーションレスもなく、風通しもよい」と大原さん。
またテュフズードジャパンは人材をじっくり育てる風土が感じられるという。「一般にドイツ企業には社員の自主性と意志を尊重する風土があり、それが労働者を大切にする印象となって表れます。それがテュフにも根付いているのでしょう。」 テュフズードジャパンの社長はテュフオートモーティブ出身のドイツ人。大原さんの上司もドイツ人であり、同僚には他国籍の外国人もいる。日本にいながら国際的な職場環境だ。だからこそ、先のようなフラットで風通しのよい組織が実現しているのだろう。 オーディターの研修はドイツ・ミュンヘンやシンガポールなどの海外拠点で行われることが多く、そこにワールドワイドの拠点から人材が集まり、いろいろな国の人たちと交流できる。それもテュフズードジャパンで働く魅力のひとつだ。 「オーディターの仕事は、新しい技術もどんどん出てくるうえに法規制も改正されるなど、マンネリのない仕事です。また工場の審査では、さまざまな製品の設計・製造プロセスを見ることもでき、エンジニアとしての知的好奇心も満足させられる。とにかく非常に刺激的で魅力的な仕事なんですよ」 |
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ドイツ企業の特徴と魅力をさらに深く探るため、在日ドイツ商工会議所・広報部マネジャーのパスカル・グードルフ氏に話を伺った。
グードルフ氏は、母国であるドイツの大学で日本語を勉強。そのスキルを生かすために、現在の職に就いたという。現在は、流暢な日本語を話し、500社にもおよぶ在日ドイツ企業の支援を行っている。 |
4月1日に入社式を行う──、こんな光景はドイツにはない。ドイツでは、新卒・中途という区別はなく、人材が必要になったとき、その要件を満たす人を採用するという方法を採っている。というのもドイツでは大学の卒業時の年齢は25〜26歳。ほとんどの学生が、在学中に2〜6カ月間のインターンシップを経験するため、日本の新卒のように社会経験がゼロという人がいないし、ゼネラリストの採用ということもない。
もちろん日本に進出しているドイツ企業の中には、4月に新卒採用を行っている企業もあるが、基本的には通年採用が一般的である。従って、上司が年下である、という場面も珍しくない。また同期入社という概念も存在しない。 日本ではなかなか取りにくい長期休暇。しかしドイツでは年2回ほど、長期休暇を取ってリフレッシュするのが一般的だ。グードルフ氏自身も、日本人の有給休暇に対する考え方に、いちばんの違いを感じたという。
日本に進出しているドイツ系企業でも、上司がドイツ人であれば長期休暇を取る可能性が高いので、日本企業よりも取りやすくなるのではと考えられる。 従業員の意見を大事にするところも、ドイツ企業の特徴である。例えば上司から「こういうふうにしよう」と言われたとしても、その意見を改善したほうがよいと思った場合は、地位や役職にかかわらず、だれもが意見を言え、その意見を聞き入れられる土壌が備わっているという。 たとえマニュアルや慣例があったとしても、そのやり方がおかしいと意見をし、妥当であれば、すぐにそれを取り入れてくれるフレキシブルさも有している(グードルフ氏いわく、マニュアルという概念があまりない)。 |
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