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プログラマが優秀ならSE:PG=6:4の「キャイ〜ン型」? お笑いコンビと同じ? SEvsプログラマ☆謎のギャラ比率 イラスト
ふと、「どうしてアイツのほうが、俺より高いお金をもらってるんだろう?」と疑問に感じたことのある人は多いだろう。ブラックボックスになることの多い、SEとプログラマのギャラは、どんな割合にするのが妥当か。また、当事者のすべてが納得できる取り分の決め方とはどのようなものか。エンジニアにとって気になる「ギャラの取り分」について、識者に聞いた。
(文/白谷輝英 総研スタッフ/根村かやの イラスト/野村タケオ)作成日:06.03.22
Part1 編集部が強引に推測!SEとプログラマの「取り分」をお笑いコンビに例えると?
みんなが満足するようにギャラを分けるのは難しい
 システム全体の設計、顧客との折衝などを担当するSEと、現場でコーディングを行うプログラマ。仕事内容や役割は全く違うし、労働時間や責任の重さも異なる。
 そんなSEとプログラマが、ひとつの仕事のお金の「取り分」を決めるとなれば、かなりの難問だ。SEの取り分を大きくしすぎると、プログラマから「現場で苦労しているのは俺なのに、どうしてSEのほうが高いんだ?」という不満が出る。一方、プログラマを優遇しすぎれば、SEは「俺が仕様書を書き、顧客と交渉しなければ何も始まらない。こちらがもっともらってもいいはずだ」と思うに違いない。

 このあたりの事情は、フリーのエンジニアに限った話ではない。会社に所属しているSE・プログラマの中にも、「どうしてSEはあんなに高い給料をもらえるんだ?」「うちの会社はプログラマに給料を払いすぎだ」と考えたことのある人は多いだろう。
 自らの働きに対して、もらえるお金の割合が少ないことは、エンジニアにとっては「評価されていない」ことを意味する。それは不幸なこと。そこで今回は、SEとプログラマの「妥当な取り分」とは何か、考えてみた。
SEの取り分は6割程度のことが多い
 フリーのSE、プログラマの報酬の実態はどうなっているのか。フリーエンジニアを組合員として組織している支援団体「首都圏コンピュータ技術者協同組合」(本部:東京・港区高輪)の事業統括部企画広報課で、マネジャーを務める内田幸一氏に取材した。

「こちらの組合に所属しているエンジニアの平均的な報酬額は、SEが65万円/月、プログラマが55万円/月程度です。エンジニアの報酬は、おおざっぱな相場ができ上がっていて、基本単価はSEのほうが上。また、仮にひとつの案件をSEとプログラマの2人で手掛けたとすれば、報酬の分け前は、6対4程度になるかもしれません」

 顧客企業と交渉して予算の総額を決めるのは、SE以上であることがほとんど。ギャラの分け方を含めた予算管理がSE以上に任されるケースも多いという。また、プログラマに比べてSEのほうが、仕事上の責任は重い。
「プロジェクトの初期段階で、SEがダメな仕様書を書いてしまえば、後からどう頑張っても取り返しはつきません。逆に、優秀なSEの設計によって、システムの効率が劇的に改善するのはよくあることです。一方のプログラマは、少なくとも仕事の質という点では、他者との差別化が図りにくいもの。また、SEはプロジェクトリーダーとしての責任も負っています。こうした背景があるため、SEの報酬のほうが高くなる傾向にありますね」
両者の力関係で、分け前が変わることも
 SEとプログラマの分け前は、前述のとおり、6対4前後になることが多い。しかし、状況によってはこの比が変わることもある。
 例えば、SEが非常に優秀で、プログラマは指示のとおりにコーディングすれば事足りるという状況なら、SEの取り分がさらに増える可能性は十分に考えられる。逆に、特殊なスキルをもっていて、プロジェクトに絶対に欠かせない人材だと判断されたプログラマは、相場より高い取り分を得られる場合もある。
 そこで、SEとプログラマの「力関係」「ギャラの比率」を、現在活躍中のお笑いコンビに強引に例えたのが、下の図だ(ネタを書く側をSE、そうでない人をプログラマにあてはめている)。
■SEとプログラマの「力関係」と「ギャラの比率」
■SEとプログラマの「力関係」と「ギャラの比率」
※それぞれのタイプ分けは、編集部が勝手に名付けたものです。実際のコンビのギャラ比率実態を表したものではないので、ご注意ください。
(A)「優秀なSE」と「経験の浅いプログラマ」のDonDokoDon型
SEの取り分:プログラマの取り分=7:3
■力関係
 非常に優秀なSEと、経験の浅いプログラマという組み合わせ。SEがプロジェクトリーダーを務め、対外的な営業・折衝担当者の役割もこなす。また、SEがプログラマの人事権をもっている。
 SEとプログラマの上下関係ははっきりしており、SEはプロジェクトの中で絶対的な権力を握っている。なお、ある程度以上の年代の人には、ネタを構成し、しゃべりまくるビートたけし(システムを設計し、細かい仕様まで決めるSE)に対し、ただうなずくだけのビートきよし(指示されるままにコーディング作業だけを担当するプログラマ)の「ツービート型」と言い換えたほうが通りがいいかも。
■ギャラ比率の決まり方
 ギャラの比率は、SEがひとりで決める。プログラマ側に交渉のカードはほとんどない。
 プログラマがより多くの取り分を望むなら、ネタの書けるメンバー(システム設計に意見を出せるプログラマ)に成長して発言権を増す、マネジャーを兼ねる(営業的な仕事を担当する)、スキルを磨いてピン芸人になる(SEとして独立する)などの方法がある。
(B)「リーダーシップのあるSE」と「スキルのあるプログラマ」のキャイ〜ン型
SEの取り分:プログラマの取り分=6:4
■力関係
 SEがプロジェクトのリーダーを務め、プログラマに指示を出す。ただし、プログラマの側にもそれなりのスキル、キャリアがあり、時にはSEに対して意見をすることもある。司会として上手に場を仕切る天野君(開発チームをひとつにまとめるSE)と、強烈なボケをかますウドちゃん(キラリと光るスキルをもつプログラマ)が互いに助け合い、大きな成果を生み出す。エンジニアの業界では、最も一般的なパターン。

■ギャラ比率の決まり方
 SEにとって、優秀な相方(プログラマ)は得難い人材。あまりに厳しい条件を提示すると、コンビ別れになる(優秀なプログラマがほかのプロジェクトに移籍してしまう)危険性もある。一方、SEに顧客との交渉などを任せているプログラマも、強い立場には出られない。そのため、互いに歩み寄り、6対4程度の分け前で妥協することになる。
(C)「プログラムもできるSE」と「仕切りもできるプログラマ」のさまぁ〜ず型
SEの取り分:プログラマの取り分=5:5
■力関係
 SEとプログラマの間は、完全に平等。一応のリーダーは存在するが、暫定的に務めているという側面が強く、別のプロジェクトで一緒に働く機会がくれば、役割が逆転することも十分にあり得る。
 必要に応じてコンビを組む、「Wコウジ(今田耕司・東野幸治)型」もこの変型。フリーのエンジニアがひとりで抱えきれない業務を請け負い、仕事仲間に仕事を手伝ってもらうケースが該当する。

■ギャラ比率の決まり方
 SEとプログラマは全くの同格。そのため、ギャラは折半ということになる。SEのほうが大きな取り分を得る場合も、「今回はプログラマをやってもらったけど、別のプロジェクトでお前がSEをやるときは、俺がプログラマで参加させてもらうよ」という形で、バランスを取るケースが多い。
(D)「そつなくこなすSE」と「突出したスキルのプログラマ」の南海キャンディーズ型
SEの取り分:プログラマの取り分=4:6
■力関係
 何らかの事情があって、プログラマのほうが立場が強い場合。
 納期が目前に迫っていて、プログラマが突貫工事をしなければならない。あるいは、特殊な技術を身につけているプログラマが、プロジェクトの成否を左右するなどのケースが該当する。強烈な個性を放つしずちゃん(スキルのあるスーパープログラマ)が「この仕事辞〜めた」と機嫌を損ねると、山ちゃん(実直が取り柄のSE)はお手上げ。コンビは一気に崩壊の危機に瀕する。

■ギャラ比率の決まり方
 プログラマ側の発言権は、かなり大きい。そのため、お金についての交渉でも、プログラマはかなり強気に出られる。ただし、顧客との交渉、プロジェクトのとりまとめはSEが担当しているので、一方的に有利なわけではない。
(E)「修業中SE」と「修業中プログラマ」のオリエンタルラジオ型
SEの取り分:プログラマの取り分=6:4
■力関係
「キャイ〜ン型」と同様、SEが主導権をもっているが、プロジェクト全体の予算額がかなり小さいケース。
 実績の少ないエンジニア集団が、予算規模の小さいプロジェクトを請け負うときなどに相当する。スキルを身につけ、大きな舞台に立つ(ビッグプロジェクトを担当する)までは、単価の安い仕事もどんどん受けますよ、という若手お笑いタレントのイメージ。

■ギャラ比率の決まり方
 互いの力関係は、「キャイ〜ン型」と同じ。そのため、6対4程度の分け前になるのが普通だ。しかし、全体の金額が絶対的に小さいため、SEはプログラマに、「仕事をしながら最新の技術が身につけられる」「SEに人間的魅力がある」など、金銭以外のメリットを提供することが必要になる。
Part2 SEとプログラマの「不公平感」の正体は?
「貢献度に比例して受け取る」のが理想
 ギャラの分け前が決まって、「これだけ働いたのに、どうして○割しかもらえないの?」「大して働いてないヤツが、どうして俺よりもらってるんだ?」などの不満を感じることは少なくない。そこで、どうして「不公平感」が生まれてしまうのか、日本大学大学院の田中堅一郎助教授に聞いた。

「本来もらえるはずの利益を得られず、怒りや嫉妬を感じることが、不公平感の原因です。焦点になるのは、プロジェクトに対する貢献度と、そこから得られる利益の比。これが各メンバーの間で異なっていると、人は『不公平感』を覚えるのです」
 人は自分と立場の近い人を、比較の対象にするものだと田中氏は語る。
「普通、ビル・ゲイツと自分の収入を比べたりはしません。比べるのは、自分と比較的近い立場の人。例えば同僚であったり、ほかの企業で働いている同じ職種の人ですね。それらの人々と比べて、自らが得ているものが少ないと感じる場合、モチベーションは著しく下がります。場合によっては、退職や社内いじめ、組織に対する非協力的行動など、深刻な事態を引き起こす危険性もあります」

 また、貢献度に比べて見返りが多すぎても、いい結果は生み出さないそうだ。
「過度に高い報酬を得てしまうと、周囲に引け目を感じたり、仕事を甘く見てしまったりする。給与や報酬が少ないのはよくありませんが、もらいすぎるのも逆にやる気を削ぐ結果に終わると、さまざまな実験データが証明しています」
■「貢献度」と「取り分」のバランス
 表内の値は、各メンバーの「貢献度と取り分の比」を示す。分数の分母が貢献度、分子が取り分で、値が大き くなるほど「働きの割に取り分が多い」ということになる。
「うちの職場は、SEの役割が大きい『DonDokoDon型』なのに、ギャラはプログラマのほうが多いんだよな」など、貢献 度と取り分の比が一致していない場合、メンバーの満足度は下がる。
図
事前に分け前の基準を作ることが大切
田中堅一郎氏
日本大学大学院総合社会情報研究科
助教授 田中堅一郎氏
日本大学大学院文学研究科、博士後期課程心理学専攻修了。浜松大学国際経営学部助教授、広島県立大学経営学部助教授などを経て、2003年から現職。著書に、『従業員が自発的に働く職場をめざすために』『増補改訂版 産業・組織心理学エッセンシャルズ』(共編著)などがある。
 では、メンバー全員が不公平感をもたないようにするには、どうしたらいいのだろうか。田中氏は、事前に分け前を決める手順・基準を、きちんと決めておくことを推薦している。
「人によって、プロジェクトへの貢献度は異なります。ですから、その人の果たした役割に応じて、報酬に差が出てしまうのは避けられません。そのとき、貢献度の大小を判断する手順と基準が事前に明示されていて、かつ、メンバーの合意が取れていることが大事。そうすれば、分け前に差があっても、納得できるものなのです」

 また、プロジェクトによっては、作業の途中で大幅な軌道修正が行われることもある。そんな場合に備えて、異議申し立ての機会を設けておくことも、不公平感をなくすためには必要だ。
「オリンピックの代表選考に漏れた選手が、仲裁機関に提訴することがありますよね。あのように、プロジェクト終了後、不満がある人は申し出られる仕組みを用意しておくと、工程の途中で作業の負担が増えた場合にも対応できます」
 貢献度の判断が公正で、ガラス張りであること。そして、終了後の異議申し立てが可能であること。この2点が備わっていれば、不公平感を覚える危険性は大幅に減らすことができる。もしあなたが転職を考えていたり、フリーのエンジニアとしてプロジェクトに参加しようとしていたりするなら、この2つの条件を満たした企業・プロジェクトを目指してはいかがだろう。そうすれば、お金について不満を抱く危険性は低くなるだろう。
Part3 妥当な「分け前」を求めて転職するのも良し
 SEとプログラマの取り分の決め方には、いくつかのパターンが存在する。もし、現在の取り分に不満があったり、自らの貢献を公正に評価する仕組みがないと感じていたりするなら、より妥当な「分け前」を求めて転職するのも、ひとつの考え方だ。また、上司や仕事仲間と交渉し、より大きな「分け前」を要求する手もあるだろう。もしあなたがSEとしてメンバーのギャラの決定にかかわれる立場だとしたら、プログラマのやる気を引き出す取り分の設定を再考することが必要かもしれない。
 現在もらっている「分け前」は、本当に妥当なものだろうか? もう一度見つめ直してみてはいかがだろう。
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根村かやの(総研スタッフ)からのメッセージ 根村かやの(総研スタッフ)からのメッセージ
(A)「SE:プログラマ=7:3」タイプのネーミングにはかなり苦労しました。現役人気お笑い芸人には「ひとりは台本どおりにうなずいているだけ」というコンビがほとんど見当たらないからです。それこそツービートの時代には、そんなコンビがいくらでもいたのに。
IT業界でも同じように「プログラマはただ言われたとおりコーディングしているだけ」というプロジェクトは減っているのかもしれない、と思いました。

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