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大手総合電機メーカーから半導体ベンチャーへの転職

システムLSIのファブレス・ザインエレクトロニクスへ

カリスマエンジニアの飯塚哲哉氏が率いるザインエレクトロニクス。同社は薄型テレビなどに使われる画像表示制御LSIで、世界でトップクラスのシェアを握り、最近はミックスドシグナル型システムLSIを車載対応製品へ展開。さらにはデジタル家電やRF(高周波無線)への応用も射程にとらえている。今回はRFICの量産品開発を目指して応募した、中堅エンジニアをリポートする。
(取材・文/須田忠博 総研スタッフ/高橋マサシ) 作成日:06.01.25
ザインエレクトロニクス
応募したエンジニア 企業の面接担当者
菅野孝之さん
菅野孝之さん
(当時30歳)
野上一孝氏
第3ビジネスユニット長
野上一孝氏
当時の職種
車載情報通信機器の開発エンジニア
募集職種
RFICエンジニア
業務内容
次世代車載情報通信機器セットの開発・試作。
仕事内容
GHz帯RFもしくはそれに準じるRFシステム、製品、ICの設計開発。RFデバイスの評価とテスト。
職務経歴
電子情報工学科卒。大手総合電機メーカーで車載機器の量産立ち上げと、次世代機向けRFICの研究開発、次世代機の試作を計6年半担当。
応募資格
RFICの設計開発経験。
志望動機
RFICの研究開発に特化して取り組み、量産品のリリースまで手掛けたい。
募集背景
事業の成長に伴い、常に体制の拡大・強化を継続している。
面接の流れ
人事部門と技術部門で選考する。
技術部門のマネジャークラス1〜3人と人事部門1人で面接を行う。所要時間は約1時間。
役員が面接を行う。所要時間は約1時間。
雇用条件の擦り合わせを行い、双方合意のうえで正式の内定とする。
【通過率:約5割】

【通過率:約5割】

Part1
中学から大学卒業までの学生時代
小・中学校ではバスケット部のキャプテン
野上:
 それでは面接を始めさせていただきます。【Point1】最初に、経歴書に沿って中学あたりからの経歴を説明してください。
菅野:
 私は○○県出身で、地元の中学から○○県立××高校へ進みました。クラスは理系です。学業のほか、バスケットを小学校からずっと続けてきて、高2と高3のときはインターハイの全国大会に出場しました。
野上:
 部活で部長やキャプテンなどをしていましたか?
菅野:
 小・中学ではキャプテンでしたが、高校では違います。選手登録はされていましたが、スターティングメンバーではありませんでした。ただ、厳しいクラブ活動をやり通したことが、頑張れる今の姿勢につながっていると思っています。
野上:
 大学は●●●大学ですね。そこを選んだのはどうしてですか?
菅野:
 国公立志望だったのと、推薦制度があったこと。それに、自分のやりたい分野があったからです。
野上:
 そのときのやりたい分野というのは?
菅野:
 根本的には、実家が電気店で電気に興味があったんです。漠然とですが、半導体や無線通信の勉強ができればと。それで電子情報工学科に入学しました。
卒研はFDTD法での携帯端末アンテナの解析
野上:
 【Point2】大学ではどんな生活を送りましたか?
菅野:
 私は寮に入っていたのですが、その寮は学生が運営する形態の自治寮でした。寮委員をやり、寮の運営にどっぷりつかっていた感じです。
野上:
 寮生の日常生活にかかわることを、委員会で決めて実行するわけですか?
菅野:
 そうです。
野上:
 寮委員をしていて困ったことはありませんでしたか?
菅野:
 食堂の調理係の人たちにベースアップを要求されたときがいちばん困りました。皆さんには長く働いてほしいし、寮生の負担は重くしたくない。板挟みでした。
野上:
 給料交渉もしていたのですね。【Point3】それでは、卒業研究のテーマは何でしたか?
菅野:
 FDTD法という電磁界解析の手法を用いた、携帯電話端末アンテナの解析です。FDTD法でアンテナのモデリングをし、アンテナが人体の側にあるとどんな電波特性の変化が生じるかのを、シミュレーションしました。
野上:
  なるほど。それで結論は?
菅野:
 指向性が変わります。基本的に、頭と手があるほうへは電波は飛びにくくなります。ならば、アンテナをどうすればいいのかという話になるわけですが、卒業研究では影響を調べただけで、その先へは進みませんでした。
Point1
[面接官]私は大体、中学時代から聞くようにしています。部活などでリーダーシップを発揮した経験を知りたいからです。人の上に立った体験は中学時代といえども貴重で、大人になってからも原体験として生きているはずだと思っています。
[応募者]この質問に違和感はありませんでした。それより、中学・高校時代のことは忘れてしまっているので、思い出してきちんと答えねばと一瞬焦りました(笑)。
Point2
[面接官]この質問の意図もリーダー体験を探るところにあります。当社では、関係者をどんどん引っ張っていくタイプのエンジニアでないと、実際の仕事になりません。中学から大学までの10年間を尋ねることで、人物像のアウトラインをつかみたいわけです。菅野さんの答えは当社にマッチしそうな印象があり、好ましく感じました。
Point3
[面接官]卒業研究は通常、きちんと責任をもって研究ができる初めての場です。チャンスといってもいい。そういうときに研究の目的と意味を理解し、主体的に取り組んだのか、チャンスを生かしたのかどうかを知りたい。研究の内容は関係ありません。卒業研究への取り組み姿勢は、採否に影響を及ぼす要素のひとつです。
[応募者]卒業研究は私のエンジニア人生の出発点です。面接のときに話せれば話したいと思っていました。実際の面接では技術的にかなり突っ込んだ質問がいくつかあり、無線を知らない人に説明するのは難しいレベルだったと覚えています。
Part2
 職務経験と技術レベル

車載情報端末機の量産立ち上げと次世代機開発を担当
野上:
 就職のとき、今の勤務先である△△△(大手総合電機メーカー)を選んだのは、どんな考えからですか?
菅野:
 携帯のアンテナを研究したこともあり、携帯端末メーカーを志望したからです。
野上:
 携帯端末メーカーは何社もありますが、その中でなぜ△△△だったのですか?
菅野:
 △△△はちょうど携帯電話に注力しようとしていました。学校推薦枠が既に修士卒で埋まっていたのですが、無線通信の技術職なら学部卒でもう1人受け入れようという話があり、携帯を初めとして無線通信に力を入れる姿勢だとわかりました。
野上:
 では、入社後の職務経歴をざっと説明してください。
菅野:
 はい。入社後の配属先は携帯電話ではなく自動車機器の事業部です。無線を志望していたことから、車載情報端末を担当せよということで、最初は量産の立ち上げ業務を行いました。そのメドが立ってから4年強の間、研究所で次世代機の開発に携わりました。
 そこで担当したのは、コアになるMMICの開発です。その開発完了を前に、次世代機の試作に参加するために自動車機器の事業部へ戻りました。現在も試作機の開発を続けています。
野上:
 【Point4】入社して1年半ほど携わった量産化業務で、担当したのは何品種ですか?
菅野:
 1品種です。その端末を利用したサービスはまだ始まっていない時期でした。
野上:
 具体的には何の量産立ち上げを担当しましたか?
菅野:
 ガリウムひ素ICを使ってバイアス回路を設計したり、その量産ラインの中の試験ラインを構築したりです。外付けアンテナの設計もしました。
野上:
 量産の立ち上げで最も苦労した点は?
菅野:
 ガリウムひ素ICはバラツキが大きいので、歩留まりをよくするために、バラツキを吸収するような回路設計にしなければならない点です。
試行錯誤を繰り返した研究所時代のIC開発
野上:
 研究所ではいくつくらい設計しましたか?
菅野:
 送受信部が入ったワンチップのIC1つです。その中で私が設計を担当したのはバッファアンプと送信側の変調器、それに受信側のLNAなどで、どちらかというと全般的に研究要素の少ない個別回路です。研究要素が多いところは元々の研究所スタッフに任せるという役割分担でした。
野上:
 プロセスは何ですか?
菅野:
 【Point5】シリコンゲルマニウムを使いました。
野上:
 【Point6】その設計では、どんな点に特に注意を払いましたか?
菅野:
 使用周波数が高くなると、どうしても寄生成分が影響します。シミュレーションと実測が合わない。そこにはとても苦労しました。回路的には、変調器のリニーアリティ確保、つまりベースバンドをいかにしてきれいに変調させるかという点で試行錯誤を繰り返しました。
野上:
 シミュレーションと実測が合わないという問題にはどう対応したのですか?
菅野:
 いろいろとトライしましたが、例えばトランジスタ単体ごとにオン・ウェハ測定をし、シミュレーションとの相違を調べました。
野上:
 自分自身で測定までしたのですね。モデルの合わせ込みもですか?
菅野:
 寄生成分や配線パターンを考慮するところまではやっていました。
野上:
 現在、試作開発している次世代車載通信機器はどんなものですか? 差し障りのない範囲で教えてください。
菅野:
 高速道路、駐車場やデパートなどで、車に乗りながらでも決済ができる車載機です。私が現在担当しているのはICではなく、車載機セットのほうです。
Point4
[面接官]当社のビジネスでは、量産品を設計開発した経験が重要です。研究所などの最良の条件下で設計した経験と、世の中に大量に供給したものの設計経験とでは意味が違います。端的に、不良品を伴うといった「大量生産の現実」を知っているかどうかの差。そのあたりをチェックするために、この質問から2、3続けて聞きました。
Point5
[面接官]4年強の期間でシリコンゲルマニウムを使ったRFICの設計という経験は、採否の判定で非常に高いポイントになりました。というのは、弊社が今開発を推し進めているRFIC製品は、シリコンゲルマニウムを使うものであり、RFではそこに特化したいと考えているからです。また、高い周波数での知識も役立ちます。つまり、彼の経験はそっくり弊社で生かせるわけです。
Point6
[面接官]これに続く一連の質問への答えを聞けば、RFIC設計の技術レベルがおおよそ判定できます。現実的にはどこが難しいとわかっているのか。それに対処する方法を身につけているのか。この2点をチェックします。
[応募者]実際の面接では、RFIC設計についての細かな質問がもっとたくさんありました。使用した測定機まで聞かれたのです。採用されたら、シリコンゲルマニウムでかなり高い周波数のRFICを設計する仕事が、中心業務になるのだろうと感じました。
Part3
転職の動機・入社後の貢献度
RFICの自社製品をもつメーカーに転職したい
野上:
 【Point7】今回転職を考え、弊社に応募されたのはどうしてですか?
菅野:
 研究所で4年あまり、1つの製品の開発に取り組んだわけですが、研究所という立ち位置もあって、自分の手では製品化させることができませんでした。私はエンドユーザー向けの製品化開発をしたくて△△△に入社したこともあり、残念でなりません。その一方で、車載情報機器セットの設計という仕事を通じて、ICの重要性を強く認識しました。
 この2点から、RFICの自社製品をもつ、あるいはもとうとしている半導体メーカーへ転職し、今後はRFIC開発を専門に行いたいと思っています。そんな希望に御社はぴったりな企業と判断し、応募いたしました。
野上:
 【Point8】社内でIC製品の開発を行う部門へ異動することは考えませんでしたか?
菅野:
 考えましたが、部門を越える異動は難しいのが現実です。
高周波と車載情報機器の経験が生かせる
野上:
 もし弊社へ入社したら、どんな点で寄与できると考えていますか?
菅野:
 高い周波数を使用したシステムの開発は、そうそう経験できることではないと思っています。この経験は御社に生かせるはずです。また、車載情報機器の知識が役立つのではないでしょうか。今後、自動車はますます情報化されていき、IC製品の市場として拡大するのは間違いないと思います。
(このあと、野上氏は菅野さんに質問を促し、菅野さんからの質問に答えた)
Point7
[面接官]なぜ転職を考えるのかという点には注意を払います。ネガティブな動機や、納得できかねる理由を挙げる応募者が結構いるからです。そういう場合には突っ込んで尋ねますが、菅野さんの転職動機と志望理由は、すんなりと受け入れられるものでした。
[応募者]初めての転職で、最初の面接でしたが、この質問は必ずされると想定していました。ただ、転職を決心するまでに思い悩んだ事柄を述べれば、納得してもらえるだろうと思っていました。
Point8
[面接官]大手メーカー出身者には大体、この質問を付け加えます。社内異動で不満を解決できる可能性があるにもかかわらず、そのことを全く考えないという人には、やはり疑問が残ります。
面接官はココを見た!
●RFICの設計経験があり、一定以上の技術レベルにあるか。
●主体的に動き、リーダーシップを発揮した体験があるか。
●転職の動機は前向きなものか。
 RFICの設計開発では、シミュレーションと現実とのギャップが著しい。それを熟知し、過去の経験を踏まえて、製品化までもっていける知見があるかをチェックする。RFでなくともよいが、IC製品の量産について広く知識があることも重要となる。人物面では、主体性とリーダーシップを中心に判定する。ザインエレクトロニクスの社風にマッチするかどうかを探るためだ。転職の動機も必須のチェックポイントで、判定材料として軽くはない。
菅野さんはコレで決めた!
「面接を通じて、社内の雰囲気のよさを感じました。
また、私が希望する仕事とここで求められている仕事とが
一致していると確信できたのです。」
 実際の面接でも堅苦しいところがなく、エンジニア同士の雑談に近い印象でした。雰囲気がいい会社だと思いました。また、そういう面接を通じて、私がやりたい仕事と求められている仕事が一致していると確信できました。この2点は入社を決断した大きなポイントです。また、面接に臨んで、私はある考えをもっていました。特別な工夫をせずストレートに自分を出すので、それが受け入れられるかどうかを判定してほしいということです。好結果が出てよかったです。
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無線系のエンジニアは決して数多くありませんが、今後ますます重視されていく職種のひとつです。だからこそ企業も獲得に動くわけですが、こうした狭いマーケットであっても、相思相愛は簡単に生まれるものではないのです。菅野さんのような転職成功体験を別の職種や業種で知りたい方は、ぜひ下のフォームよりご意見をください。
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