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厳選★転職の穴場業界 第8回 バイオセンサー 人間の気持ちを読み取る驚愕の「感性解析システム」
脳波から体温、心拍まで、さまざまな生体情報を取得する技術であるバイオセンサーで今、技術革新ブームが勃発している。車に乗っただけでその日の体調や精神状態がわかったり、果ては脳波の解析で人間の喜怒哀楽まで測れてしまう時代が、もう目前にきているのだ。最新のバイオセンサー事情を徹底検証した。
(取材・文/伊藤憲二 総研スタッフ/高橋マサシ) 作成日:06.01.11
業界動向:医療から先進自動車安全技術まで、バイオセンサーのニーズが急増
 人間の身体のさまざまな情報を読み取ってデータ化する技術、バイオセンサーへの関心が高まっている。バイオセンサーそのものは既に広く用いられており、心電図や血圧・心拍計は健康診断でおなじみの機器、家庭用体重計に実装されている体脂肪計もその一種だ。
  ほかにも、脳波計や筋電位計など病院での専門医療に使われる機器から、尿糖値計や内臓脂肪計といったヘルスケア用品まで、そのバリエーションは多様である。

  比較的枯れた技術の多いバイオセンサーが今、あらためて注目されているのは、解析アルゴリズムの進歩によるところが大きい。
  今までは取得したデータを医師やユーザーが見て、直観的に身体の様子を判断していた。しかし90年代中盤以降、IT関連技術が長足の進化を遂げ、複雑なデータの短時間での処理が可能となったことで、複数の生体情報を取得し、その相関関係によって身体の異変をより多角的に察知できるようになったのである。
  血圧と心拍数、呼吸数、呼吸の深度などを複合的に分析し、ストレス性の疲労の度合いを測定したり、複数の心電図のデータを取って、心臓のどの部位に異常があるかを3Dで検知する技術などがその好例だ。

  これら新世代型のバイオセンサーは予防医療、健康管理、メンタルヘルス管理などのヘルスケア、疲労や眠気によるドライバーの集中力欠如対策を行う先進自動車安全技術など、幅広い分野への活用が期待されている。
  明確な市場予測などはまだなされていないが、医療機器、自動車、IT関連など多くの分野の企業が開発に乗り出し、新商品も登場している。市場と技術の拡大は、既に水面下で始まっているのだ。
注目企業:人間の感情を計測する驚異のセンサーを開発した脳機能研究所
 喜び、怒り、悲しみ――抽象的なものだと考えられてきた人間の感情。それを定量化して計測できる時代がこんなに早くこようと、だれが想像しただろうか。複数の脳波のパターンから人間の感情を読み解いたり、脳波の流れをビジュアライズして脳内異常を検知したり。現実にしたのが脳機能研究所だ。
■感性スペクトル解析システム ■脳内ニューロン劣化度診断法
感性スペクトル解析システム 脳内ニューロン劣化度診断法
従来のようにセンサーをひとつずつ頭皮に取り付けるのではなく、センサーが装着されたヘルメットを被ることで、簡単に脳波が計測できるようになった。センサー数は10点で、合計45パターンの脳波の伝達状態を測定する。PC上にディスプレイされている脳波はあくまで一次情報。刻一刻と変化するこれらの強度や相関関係を喜怒哀楽の「感情4要素」に変換するアルゴリズムが、このシステムのコアテクノロジーだ。トップの写真では右の診断法のために、21センサータイプのヘルメットを着用している。 左のシステムにアドオンされた診断法の画像。脳内の静電気の流れをグラフィカルに表示し、脳の中で電気が流れにくくなっている部分を検出、アルツハイマーや部分脳梗塞の発生を的確に診断できる。画像は実際にはリアルタイムで動いており、左の正常な脳と右のアルツハイマー発症脳では、静電気の流れはだれの目にも明らかなほどに異なっている。アルツハイマーは発症後も治療によって進行を止めたり症状を改善させることが可能で、早期発見や治療効果測定への活用が期待されている。

1/fゆらぎリズムの権威が退官後にベンチャーを起業

  生体電気情報センサーのひとつである脳波計は、一般人にもごく身近な装置だ。その脳波計測を高度化し、脳内の電気の流れ具合、さらには人間の感情を科学的に計測する技術を考案したのが、バイオセンサーのベンチャー企業、脳機能研究所だ。
  社長の武者利光氏は、東京工業大学教授時代から生体情報に関する研究を続け、3D心電図などの新技術を考案してきた人物。1/fゆらぎリズムの研究でも世界的に名高い。大学を退官後、複数の生体情報を多元的に解析するアルゴリズムのノウハウを脳波に適用する研究を行うため、同研究所を設立した。
「ストレスについて研究してやろうというのが、脳波の研究を始めた動機でした。私が東工大を退官した当時、中高年の突然死や過労死が社会問題になっていたので、ぜひそれを解決してみたいと」

  脳波には大別してデルタ、シータ、アルファ、ベータ、ガンマの5種類があるが、計測するのはこのうち感情にかかわるシータ、アルファ、ベータの3つ。感情の動きにより脳波がどのように変化するかを分析した。
「特別な訓練によって、喜び、悲しみといった感情を自由に出すスキルを身につけた人にサンプルになってもらいました。どういう感情で3つの脳波がどう変化を起こすのか。その相関関係を分析し、アルゴリズムを構築したのです」

  武者氏が作り上げたシステムは、人間の感情の4要素である「喜怒哀楽」を計測するもの。光の3要素になぞらえて「感性スペクトル解析システム」と名付けた。
「人間の感情は複雑ですが、基本は喜び、ストレス(怒り)、悲しみ、リラックス(楽)の4つです。例えば気分が高揚しているような感情は、喜びとストレスが混じり合ったものですし、疲労困憊しているのはストレスと悲しみの複合形なのです。この4つの要素を計測することで、さまざまな感情を測ることができるのです」

各業界のトップ企業がマーケティングや開発に利用

  この感性スペクトル解析システムは、多くの分野の企業や研究者から注目されている。ある広告代理店は、テレビCMが狙いどおりの効果を発揮できているかどうかの調査に活用。大手完成車メーカーは、高速道路や一般道、渋滞路など、さまざまな交通環境の中でのユーザーの緊張状態や集中力の変化を物理的に測定し、開発に役立てた。
  ほかにも、楽曲により音楽を聴く人の感情や集中力がどう変化するか、よい都市景観とはどのようなものかといった、各方面での調査で実績を上げている。
「今も、モーツァルトの音楽はなぜ日本人に好まれるかをテーマに、分析の依頼がきています。ちょっと難しいかな(笑)」
  これまで、抽象的なものとされてきた人間の感情を物理的に測定可能とした感性スペクトル解析システムは、心地よい商品やサービスの開発など、モノづくりのあり方に革命をもたらすだけの可能性を秘めている。

高齢化社会のアルツハイマー治療に期待大

  さらに武者氏は、頭内における脳波の流れを3次元測定することで、アルツハイマーや部分脳梗塞などの診断を行うことができるシステム、「脳内ニューロン劣化度診断法」も開発した。
「CTやMRIなどの計測器が脳の物理変化をとらえるものであるのに対し、このシステムは現象を測定します。目で見えない異常を察知し、またアルツハイマーの治療の効果測定も行うことができます。今後、高齢者の脳疾患に関する予防医学技術として、大いに貢献できるものと確信しています」
  武者氏の開発した感性スペクトル解析システム、脳内ニューロン劣化度診断法は、バイオセンサーの技術革新の方向性についての示唆に富んでいる。単一の生体情報取得にとどまらず、複数の生体情報の相関性を利用することで、身体における特定現象との関連づけの可能性を格段に広げることができるのである。

武者利光氏
株式会社脳機能研究所
代表取締役社長
東京工業大学名誉教授

武者利光氏

1931年生まれ。東京大学を卒業後、電電公社(現・NTT)電気通信研究所、スウェーデン王立技術研究所などを経て東京工業大学、東京理科大学、パリ第7大学教授に。東京工業大学を定年退官後、94年に脳機能研究所、ゆらぎ研究所を設立。量子電子工学から生体情報工学まで幅広い分野で実績をもち、特に1/fゆらぎリズムの研究で著名。
脳波計測のセンサーが埋め込まれたヘルメット
脳波計測のセンサーが埋め込まれたヘルメット。導電性を確保するためのワックスを不要にするなど、現在も改良が進められている。電極の数は感性スペクトル解析用が10個、脳内ニューロン劣化度診断用が21個。
穴場求人:バイオセンサー関連の求人は増加中。最先端はアルゴリズム開発
 バイオセンサーに関する人材ニーズは、水面下では既に相当な水準まで高まっている。ヘルスケア製品、医療機器ともに需要が高水準であり、開発元はもちろん、センサーやソフトウェアなどの要素技術を開発する企業でも、開発にかなりの人的リソースを割いているためだ。
  リクナビNEXTでは「生体」「バイオセンサー」などをキーワードに検索すれば、求人情報をゲットできる。センサー、医療機器、自動車部品、バイオメトリックス関連など、多くの分野の企業がそれぞれエンジニアを募集しているので、条件検索も有効に活用したい。

  求められるスキルは、ジャンルによって異なる。ヘルスケア製品、医療機器などのハードウェア関連ではデジタルおよびアナログ回路設計、各種センサー、マイクロデバイスなどの開発経験があると有利。それらに付随する組み込みOSなどのスキルも生かせる。
  医療機器ではメカトロニクスの経験、さらに遠隔監視デバイスが増加する見通しであることから、情報通信関連のスキルも歓迎される。

  一方、注目企業で紹介した「感性スペクトル解析システム」のような新アルゴリズムの考案も、各種生体情報分野でニーズが急速に増えていくものと思われる。これについては高等数学およびソフトウェア開発についてのセンスを持ち併せていればOK。「あとはむしろ興味、関心と熱意の問題。最初に本を読んで生体情報の勉強をするよりは、開発を進めながら勉強したほうが効率がいいくらい」(武者氏)であるという。
  今後、各分野で大ブレイクすることが期待できるバイオセンサー。求人も今後増加していく可能性が高いだけに、各媒体で常時情報を収集しておくことをおすすめする。
バイオセンサー業界のエンジニアニーズ
・ 医療分野との関連大きいが、医学や医療の知識がなくてOKのケースも多い。
・ ハード開発では回路、センサー、メカトロなど多くのエンジニアにチャンス。
・ 組み込みOSはじめ、ソフトウェアエンジニアにも門戸が開かれている。
・ アルゴリズム開発ではセンスを重視。必要なスキルは数学とソフト開発力。
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  高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ  
高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ
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取材のときにライターの脳波を測定しました。あまり顕著な波形が出なかったのは「緊張していた」ことが理由だったようです。感情を測るための脳波の出方が、感情に左右されていたわけで、ちょっと面白かったです。ところで、測定前のライターは「アルツハイマーが出たらどうしよう」とかなり悩んだ表情。そうです。私もそれが怖かったので、彼に「被験者」になってもらったのです。
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