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意欲と技術志向で勝負した「開発実務未経験」エンジニアの転職

組み込み用Java「JBlend」で快走するアプリックスへ

アプリックスが開発した『JBlend』は、携帯電話やデジタル家電に搭載すると、リアルタイムOSやCPUの違いを超えてJavaアプリを動かせる。加速度がつく普及に対して、技術サポートも増強中だ。今回は、そんな同社へ開発実務未経験で応募した、若手エンジニアの面接を再現する。
(取材・文/須田忠博 総研スタッフ/高橋マサシ) 作成日:05.12.21
アプリックス
応募したエンジニア 企業の面接担当者
橋元 崇さん
橋元 崇さん
(当時25歳)
野口 毅氏
研究開発本部
第1グループ 課長
野口 毅氏
当時の職種
品質保証担当エンジニア
募集職種
開発エンジニア
業務内容
携帯電話端末の組み込み機能や通信性能などのテスト・評価。
仕事内容
組み込み向けJavaプラットフォーム『JBlend』の開発、顧客へのエンジニアリングサポート。
職務経歴
大学の経済学部を卒業後、技術者派遣会社に2年8カ月勤務。携帯電話キャリアに派遣され、端末の品質テスト・評価を担当。
応募資格
C、C++、Javaによるプログラミング経験、技術英語読解力、ソフト開発業務での設計工程の経験など。
志望動機
機器組み込みソフトの本格的な開発エンジニアを目指したい。
募集背景
『JBlend』の普及に伴う技術サポート要員の増強。
面接の流れ
最初に人事担当者が選考。次に技術部門の課長クラスが選考する。
C言語やJavaの基礎的なプログラミングスキルをチェックする。所要時間は2時間。判定には実務経験年数や志向性を加味する。
技術部門の課長クラス2人が面接を行う。所要時間は約1時間。
技術部門の部長1〜2人が面接を行う。所要時間は約1時間。通常は1次と2次の間に人事労務部長の面談があるが、選考には関与しない。
1週間以内に主にメールで通知する。
 
【通過率:4〜6割】

【通過率:7〜8割】

【通過率:約8割】
Part1
職務経歴、転職動機、志望理由
携帯電話キャリアの営業から品質保証業務へ
野口:
 選考面接を始めさせていただきます。まず、職務経歴をご説明ください。
橋元:
 私は大学卒業後、エンジニア派遣会社の○○○に入社し、●●●(携帯電話キャリア)へ派遣されていました。担当業務は端末の実装機能や通信性能などのテストと評価です。開発エンジニアになりたいという思いから、先々月に同社を退職。現在は無職です。
野口:
 【Point1】最初は営業部へ配属されていますね。ご自分の希望だったのですか?
橋元:
 いいえ。技術志望で面接を受けたところ、初めは営業を経験するのもいいのではと説明され、承諾のうえでそうなりました。
野口:
 当初から3カ月間の約束だった?
橋元:
 いえ、期間は設けられていませんでした。私が会社で技術書を読むような姿を見て、それほど強く望んでいるならと技術部門へ異動になったのです。
野口:
 【Point2】品質保証とは具体的にどんな業務でしたか?
橋元:
 3G携帯電話端末の評価です。機能や性能のすべてが仕様書どおりかどうかを実際に試して、テストします。例えば、メールの送受信を繰り返して文字化けがないか、容量は決められたとおりかを調べたり、通信性能は屋内班と屋外班に分かれて通信ログをチェックしたりします。屋外班は車で移動しながらデータを取るなどもします。
自分の時間を使ってプログラミングを独学
野口:
  先々月に退職した理由は開発エンジニアを志望するためだそうですが、もう少し詳しく説明してください。
橋元:
 技術部門の中でも開発、特にプログラミングをする部署へいきたかったんです。【Point3】そのために、空いた時間や退社後の時間はほとんどすべてプログラミングの勉強にあてて、努力を続けてきました。業務支援ツールをつくってみたりもしました。会社へは何度も、派遣先を変えてくれるように希望しました。
 しかし、結局はかなわなかったんです。フラストレーションがたまる一方で、思い切って転職の決断をしました。【Point4】御社への応募は先に決めていましたので、提出作品をつくる時間が必要だと思いました。そのために退職を早めたのです。
野口:
 開発のほうへ移れなかった理由は何だと、自分では考えていますか?
橋元:
 派遣という形態では実務経験者が優先されます。また、○○○では教育にあまり力を入れていませんでした。私はプログラミング技術を独学で身につけたわけですが、実力を認めてもらうチャンスがありませんでしたし、実際の力も不足気味だろうと思います。
野口:
 自分自身で実力不足と認めながらも、開発エンジニアを本気で目指すんですね?
橋元:
 はい。ここまで独学をしてきて、やっていけそうな感触をつかめました。自分に合っているとも思っています。
『JBlend』に魅力を感じてアプリックスに応募
野口:
 【Point5】当社を志望するのはなぜですか?
橋元:
 【Point6】ひとつの分野の技術を深く突き詰めていける、というのが大前提です。次に、ミドルウェアを扱っているからです。上層のアプリ開発よりも間違いなく技術的に面白いと思っていますし、やりがいも大きいと思っています。
野口:
 ミドルウェアをつくっている会社は少なくありません。その中で当社を選んだのはなぜですか?
橋元:
 やはり『JBlend』に魅力を感じるからです。国内はもとより海外へも広めようとされている。自分もそこに参加して何かをつくりたいというのが、御社へ応募したいちばんの理由です。
野口:
 【Point7】『JBlend』は知っていましたか?
橋元:
 ●●●へ派遣されて知りました。ただ、アプリケーションの評価は別チームの担当で、私はしていませんでした。
野口:
 アプリ自体は使ったことがある?
橋元:
 はい。使いまくって楽しんでいます。
Point1
[面接官]開発エンジニアの応募者で営業を経験している人は珍しい。キャリアづくりのうえで特別な考えがあったのかどうかを知りたくて、この質問をしました。
[応募者]この質問は必ずされると思っていました。何の脚色や誇張もせずに事実を答えるつもりでした。
Point2
[面接官]橋元さんに開発の経験がないことは応募書類でわかっていましたが、事前に提出してもらったソフト作品がまあまあの出来(部長の評価)で、プログラミングの筆記試験も合格ラインに達していました。ということは、独学で覚えたはず。これはあとから突っ込んで聞きますが、まずは開発未経験を確認するために職務内容を尋ねました。
Point3
[面接官]本人に開発志向があることはこの答えで十分にわかりました。それがどのくらい強いかはあとから探ります。
Point4
[応募者]開発の実務経験がないので、ソフト作品を提出して見てもらうのが最も効果的だと考えていました。アプリックスのホームページの採用情報には、自作ソフトを提出してもかまわないと書いてあり、これをやらねばと思ったわけです。
Point5
[面接官]この質問と次の質問にどう答えるかには特に注目します。本人の志向性がはっきり現れるからです。
Point6
[応募者]志望理由について、実際の面接ではかなり長く話しました。私にとっては、ぜひともわかってほしい点のひとつでした。
Point7
[面接官]この質問への答えが採用に影響することはほとんどありません。入社意欲をチェックするための参考材料程度です。というのは、『JBlend』に触ったことがある人の大部分はアプリ側からであって、ソースコードなど内容を知っているわけではないからです。もし『JBlend』のインターフェースを知っているというのであれば、質問したいことは山ほどあります。
Part2
 独学のプログラミング、自主開発ツール

幅広く開発できて制限のないC言語が魅力
野口:
 【Point8】プログラミングはどのようにして独学したのですか?
橋元:
 とりあえずVBから手をつけました。書籍を購入し、サンプルプログラムを打ち込むところからのスタートです。そのあとJavaに移ったのですが、当時はよく理解できなかったし、これも私が求めるものとは少し違うような感じがしたんです。それで、C言語の勉強を始めました。C言語はネイティブに近いので、組んでいて面白みを強く感じ、私が求めるプログラミングとはこういうものだと目を開かせられた気がしました。
野口:
 ずっと独学なのですね? 実質的にはどのくらいの期間ですか?
橋元:
 【Point9】本格的に始めてから丸2年です。主に参考書とWebサイトを活用しました。
野口:
 【Point10】C言語はよりネイティブに近いので面白いということですが、具体的にはどこが面白いですか?
橋元:
 低いレベルで面倒を見なければならない点が多いことです。VBやJavaに比べ、コールの必要がすごく多いですよね。メモリやポートが生のまま見えて、そこにプログラミングをするのはたまりません。幅広くできて、制限がない。そこが私にとっては魅力です。
自主開発したツールで検査の作業効率がアップ
野口:
 【Point11】先ほど、職場で業務支援ツールをつくったという話がありました。何をつくったのですか?
橋元:
 つくったのは2つで、1つ目は膨大な量の試験結果を集計しやすくすると同時に、ミスを見つけ出すツールです。エクセルVBAを使いました。2つ目は、車で移動試験を行う際に、異常な通信ログを発見しやすくするツールです。
 後者はC#を使い、採取した通信ログデータの中から、「怪しいログ」のキーワードを指定してピックアップするものです。以前はWindowsの標準出力から人の目で探す作業でしたが、このツールによって効率がよくなりました。
野口:
 その2つのツールは業務命令で、勤務時間中につくったのですか?
橋元:
 【Point12】いえ。私の自由意思からです。ほとんど自宅で行いました。
野口:
 きっかけは何でしょう?
橋元:
 人の役に立つものを何かつくりたいという欲求と、自分の勉強のためです。実際に使ってもらえれば感想や改善点を聞けるという期待もありました。
野口:
 2つ目のツールは橋元さん以外の試験スタッフも使い、作業効率がアップしたのですか?
橋元:
 はい。移動検査中でも異常ログを見分けやすくなりました。
Point8
[応募者]この質問は必ずされると思っていました。C言語の面白さに目覚めた経緯を話すつもりでした。
Point9
[面接官]筆記試験の結果を見る限り、品質保証という仕事をしながらの2年間の独学にしては、プログラミングの数をこなしたのだろうと思いました。向上心がある証拠のひとつです。
Point10
[面接官]「プログラミングは面白い」と表現するのは簡単です。しかし、本当にわかっていて「面白い」といっているのかどうか。具体的なことを答えられなければ、わかっていないのです。
Point11
[応募者]こう尋ねられて、とてもうれしかったです。業務支援ツールをつくった話は大きなアピール。質問されなかったら自分から話すつもりでした。
Point12
[面接官]この積極性は当社のポリシーに合っています。当社では、自ら積極的に動く者が重視され、逆に積極性がなければ仕事にならないのです。開発実務経験がないにもかかわらず橋元さんを評価したのは、この積極性がポイントです。ちなみに、自主的につくったツールが実際に役立ったという点が、評価のカギになっています。
Part3
業務に即した貢献度
スキル不足の現在よりも将来に期待してほしい
野口:
 橋元さんを採用した場合、当初の配属先は顧客への技術サポートをしつつ開発を行うという部署になります。具体的には、DoJaプロファイルを開発して端末メーカーさんへリリースし、メーカーさんに技術サポートをする仕事です。
 【Point13】この仕事には期限が付きもので、製品として世の中へ出すには技術上の妥協というか、割り切りも必要になります。こういう点についてはいかがですか?
橋元:
 純粋に技術上の100点満点を目指すという姿勢は、エンジニアにとってとても大切なことだと思います。しかし、お客さんのメリットを最重視しなければならない部署では、その限りではありません。期限から考えて現実を選択する必要もあります。
 前職でも、パーフェクトの試験結果を求めたのでは製品の発売に間に合いませんでしたから、一定の範囲内で評価を下していました。必要性に迫られた割り切りはわきまえているつもりです。
野口:
 わかりました。それでは、今説明したような仕事において、橋元さんはどんな貢献ができると思いますか?
橋元:
 【Point14】技術スキルの不足は自覚しています。これこれの貢献ができると申し上げたいのはやまやまですが、そうもいきません。私は、ソフト開発エンジニアへ転職すると決心した時点で命をかける覚悟をしています。そういう気概で取り組みますので、目に見える貢献ができるときは必ずやってきます。それを信じていただけませんでしょうか。
野口:
 技術サポートでは、忙しいと徹夜の作業になることもあります。大丈夫ですか?
橋元:
 そういうことも含めて覚悟はできていると思ってください。
 (このあと、野口氏は橋元さんのほうからの質問を促した)
Point13
[面接官]当社の次世代プラットフォーム開発では期限など気に掛けず、とことんまで技術を追究してもらいます。しかし、ビジネスとしての技術サポートではそうもいきません。お客さんが決めたタイムスケジュールで最良のアウトプットを出す。そういう仕事の性格にひどく抵抗を感じるようでは困ります。
Point14
[面接官]率直にいって、橋元さんを即戦力で使うことはできません。入社後にどれだけ伸びるか。そこに賭けた採用選考でした。従って、開発への強い意欲を示す言葉が聞け、面接の締めくくりとしての印象はアップしましたね。
面接官はココを見た!
●基礎的なプログラミングスキルをもっているか。
●業務に対して積極的な姿勢があるか。
●顧客志向での判断力があるか。
 C、C++やJavaに関する筆記試験の結果を踏まえて、プログラミングスキルをどのようにして習得してきたのかを探る。同時に、筆記試験でわかったレベルよりも上なのかどうかをチェックする。積極性は、チームワークに好影響を及ぼす前向きさや、アプリックスの社風・ポリシーに合った自主性などから判定する。顧客志向での判断力は技術サポート職ならではの要件で、強い技術志向を前提にした顧客志向が求められる。
橋元さんはコレで決めた!
「面接した部課長の皆さんは、技術にのめり込みそうなタイプ。
『ソフト技術に対する愛』がある会社だと感じました。
開発エンジニアとして学ぶには最高の環境に思えたんです」
  1次と2次の面接を受けてみて、いちばんに感じたのは「ソフト技術に対する愛」がある会社という点でした。面接してもらった課長も部長も技術にのめり込むタイプに思えたのです。ここには、ソフト開発エンジニアとして学ばせてもらえる、十二分な環境があると確信しました。イメージしたどおりの会社です。自分の力を伸ばしながら、より重要な仕事を望んでいけば、それが与えられる会社でもあるとわかりました。
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テスト系、あるいはサポート系職種から開発職を目指すエンジニアが多くいます。しかし、橋元さんのように、寝る間も惜しんで独学する人はまれといえるでしょう。そんな彼でも即戦力にはなり得ず、採用の壁はある。その一方で、アプリックスのようにポテンシャルと意気込みを買う企業もあります。そんな可能性を見せられる面接現場を、今後も紹介していきます。
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