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厳選★転職の穴場業界 第7回 次世代Webアプリケーション Google Mapsでユーザーの度肝を抜いた「Ajax」
JavaScript、XML、HTTPリクエストなど、既存のWeb技術の組み合わせによって生まれた技術形態Ajax。軽く、速く、アプリケーション開発も簡素化されるとあって、採用もしくは採用を検討するASPが激増している。デスクトップアプリに取って代わる可能性すら内包するAjaxは、プログラマにとって絶対見逃せないスキルだ。
(取材・文/伊藤憲二 総研スタッフ/高橋マサシ) 作成日:05.12.14
業界動向:簡易構築ツールも登場し、一躍メジャーなテクノロジーに
 Web上におけるインタラクティブに革新をもたらすと期待されているAjax。2000年ごろから登場していたが、インターネット検索世界大手のGoogleが、ユーザー向けサービス「Gmail」「Google Maps」などをAjaxベースで構築。操作の軽さ、待機時間の短さでユーザーの支持を集め、一気にメジャー化した。

 Ajaxとは、Asynchronous JavaScript+XMLを縮めた造語。クライアント側にAjaxエンジンがあり、ウェブサーバーへのオーダーはHTTPリクエストで行い、データはXMLで送られてくる。それをAjaxエンジンでHTTP+CSSに変換し、ブラウザに表示させるという仕組みだ。
 AjaxによるWebアプリは、既存のWebアプリのように、操作のたびに画面のリロードはしない。必要となる差分データだけをサーバーに要求するため、ユーザー側の操作はきわめて軽く、快適になる。
 一方、近年リッチコンテンツ化が進むにつれて負荷が重くなる一方だったWebサーバー側も、表示の材料となるデータをHTTP+CSSの形に整えなくてすむため、オーバーロードの悩みから解放される。

 このAjax、現在普及しているビジネス向けなど各種ソフトウェアの、代替テクノロジーとなる可能性も秘めている。現時点においても、表計算やプレゼンテーションなどを、かなりのレベルまでこなすことができる。
 JavaScriptの弱点であるブラウザへの依存性など、弱点もなくはないが、注目度が急速に高まったことを受け、世界でさまざまなテンプレートが作られるなど、一般化の動きが加速している。「将来的にはAjaxであることがWebアプリの生き残りの条件になる」という声も聞かれるようになった。今後の動向から当分目を離せない。
注目企業:Ajaxを使ったWebアプリ構築ツールを開発したHOWS
 IEやネットスケープなどのブラウザをOS代わりに使い、表計算やアニメーションといったダイナミックアプリケーションをも可能にするAjax。ベンチャー企業のHOWSは、簡単な操作で動的なサイトやアプリケーションを設計できる「AjaxBuilder」を完成。IT界に革命を起こしたいと意気盛んだ。
■年内に発売予定の「AjaxBuilder」 ■Ajaxを使った同社の名刺管理システム
年内に発売予定の「AjaxBuilder」 Ajaxを使った同社の名刺管理システム
Ajaxを使った動的Webアプリケーション構築ツール。赤い枠を使って画像やオブジェクトの張り付け位置を指定し、青い枠を使って範囲指定やキャプチャーを行う。このふたつの操作のみで、プラグインなしでのスライドショーや動画の描画、アプリケーションの設計など、さまざまな作業が可能。張り付けを行った段階で、Ajaxのコードはすべて自動生成される。 山本修平氏がAjaxで製作した社内システム。ブラウザのGUI上での操作はAjaxエンジン上で処理され、サーバーへのアクセス待ちなどは発生しない。スクロールタイマー、表示タイマーなどにより、データを開いたり名刺を裏返したりといったビジュアル上の操作はすべてシームレスかつソフトに行われる。地図情報も実装し、道順なども表示される。
Ajax構築ツールを開発するためにベンチャーを設立

「Ajaxエンジンを使ったWebアプリケーションを、コードを書かずともだれでも簡単に設計できるソフトを作りたい。これがAjaxBuilderの開発動機です」
 HOWSの創業メンバーである庄司渉副社長はこう語る。同社はAjax関連技術を使った事業展開を前提に、今年5月に設立されたソフトハウスである。
 作業を簡単に、しかも素早く行うことができるマンマシン・インターフェースを考案したのは、同社主任研究員の高田純氏。AjaxBuilderのコードを実際に書いたのは研究員の山本修平氏だ。実際の開発作業は、基本的にこの2人だけで進められたという。両氏ともHOWS以前はAjaxに関する知識はほとんど持ち合わせていなかったという。

「Ajax自体は、興味をもってから勉強を始めても十分に間に合うし、勉強のための材料もネット上にいくらでも転がっています。プログラミングとモノづくりが好きな人なら、だれでも飛び込める世界だと思います。実際、プログラムを書いた山本は、今年5月に入社したときはAjaxについてはまったく白紙状態。それが半年もたたないうちに、AjaxBuilderのコーディングをすべてこなせるまでになった」(高田氏)


Ajaxを使った動的Webアプリを簡単に自在設計

 AjaxBuilderの操作は、基本的にGUIによる。画面上にあるのは張り付け位置を指定する赤いフレームと範囲指定やキャプチャーを行う青いフレームの2種類。この2つを使って画面上の任意の部分を指定、張り付けという作業を行うことで、動的なスクリプトを簡単に製作することができる。
 通常ならAjaxでWebアプリを構築する場合、JavaScriptでXMLやHTTPリクエストのオブジェクト作成コード、Ajaxエンジン関数などを作らなければならない。知識のないエンジニアには難関だが、内部でこれらの面倒な作業をすべて代行するAjaxBuilderなら、半素人でも開発可能だ。

「Ajaxの最大のメリットは、特別な開発環境を必要としないこと。これまでエンジニアの独占物であったアプリケーション開発を、一般ユーザーに開放するだけのパワーをもっていると考えています。極端な話、将来的にはソフトウェアはAjaxベースのものでないと売れなくなると言ってもいい。AjaxBuilderはそんな新時代において、ソフトウェアをユーザー自身が開発するための支援ツールです」(高田氏)


ユーザーフレンドリーの発想が差別化のカギを握る時代に

 今後の戦略だが、同社ではAjaxBuilderをまず5000円程度でユーザー向けに販売する一方、商用環境向けのコンポーネント開発などを含め、エンタープライズニーズにも対応していくという。
「今後、同様の発想で作られたソフトウェアとの競合は出てくると思います。その際に競争力の決め手となるのは、『心配り』ではないでしょうか。エンジニアは概して、プログラミングには熱を入れても、ユーザーの使い勝手などについてはあまり配慮を払わない。
 AjaxBuilder上では、画面ができた段階で設計は完全に終わっています。Ajax時代では、エンジニアには技術力以上に、ユーザーフレンドリーの発想が求められると思います」(山本氏)

 同社では、「AjaxはITの世界を根本から変える」と考えている。さらにAjaxBuilderを使えば、表計算、名刺管理、さらにはグラフなどを使ったプレゼンテーション文書も簡単に製作できる。平たい話が、現在市場に出回っているデスクトップアプリが不要になるとも想定しているのだ。
「心意気は日本発の世界トップです。AjaxBuilderとそれを使ったビジネスモデルには、それだけの潜在的可能性があると思っています」(庄司氏)
 Webアプリの高機能化の決め手とも言われるAjax。HOWSの挑戦はまだ始まったばかりだが、今後の市場拡大には大いに期待がもてそうだ。
高田純氏
株式会社HOWS
技術部 主任研究員

高田純氏

大学では法学部に在籍するが、個人的にプログラミングを学習。卒業後、不動産仲介会社、ソフトハウス、SIerなどを渡り歩く。前職のソフトハウスでネットワークを手がけ、Web関連の知識を得た。HOWS設立と同時に入社。
山本修平氏
技術部 研究員
山本修平氏

大学では機械工学を専攻。大学院ではUNIX上で計算結果をグラフに表示させるプログラムなどを製作。修了後にソフトハウスに入社し、Linux、UNIX、Java、php、データベースなどを手がけたのち、HOWS設立と同時に入社。
HOWSの社内風景
HOWSの社内風景。エンジニアはどこで仕事をしてもよく、自宅や喫茶店で開発を行う人が多い。むしろ社内には、間借りしている「知り合い」や「仲間たち」が目立つ。
穴場求人:Ajaxでの開発を主眼としたエンジニアニーズはこれから
 注目度が急速に高まっているAjaxだが、それ自体は既存のWeb関連技術の組み合わせであり、Ajaxという看板を掲げての求人はまだほとんどない。だが、それをもってAjaxが転職のキーワードにならないと考えるのは、大きな間違いである。なぜなら、Ajaxの構成要素であるXML(XHTML、DOMなどを含む)、JavaScriptなどを知っているからといって、すぐに開発ができるわけではないからだ。

 Ajax開発に必要なスキルには、XMLやJavaScriptをはじめ、データのやり取りを行うWebサーバー、必要なデータをいかに的確に抽出するかという点ではデータベースなどが挙げられる。  しかし、Ajaxは成長途上の技術であるため、ノルマを手堅くこなすというタイプのエンジニアより、自らのアイデアをどんどん形にしていくような積極的なタイプが向くものと思われる。「発想力」が求められるからだ。

 注目企業に登場した山本修平氏は「プログラムでツールをいろいろと作ったりするのが好きな人であれば、極端な話、スキルをもっていなくても大丈夫です。JavaScriptもHTMLから読むものとは全然違うので、どのみち勉強し直すことになりますから」と、現有のスキルより好きであること、勉強する気が旺盛であることのほうが重要であると示唆する。
 つまり、今からAjaxに挑戦する価値は十分にあるということ。  将来、Webアプリ開発の主流になる可能性を大いに秘めているAjax。すべてのソフトエンジニアにとって、その動向は注目に値する。
Ajax業界のエンジニアニーズ
・ ユーザーフレンドリーなプログラムを志向する誠実さが何より大事
・ XML、JavaScriptなど、Ajaxの構成技術はぜひ勉強しておくべき
・ サーバー、データベースの知識はアプリ開発のバックグラウンドになる
・ 各種エンジンの開発経験は、高レベルのアプリ開発を行うにあたり有用
 
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  高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ  
高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ
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久しぶりに熱いベンチャーに出合いました。副社長の庄司氏はGoogle Mapsより早く、Ajaxで地図アプリを開発していたエンジニア。その彼が「高田がいたから設立した」と語り、高田氏が引っ張ってきたのが山本氏。今回庄司氏が表立って記事に出なかったのは、「若い2人を中心にしてほしい」という要望からでした。最近聞かれなくなってきた「日本発の世界トップ」を目指すHOWSに、期待大です。
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